特集 2012年3月16日

ついに完成!TGBを歩いてきた

おそらく最初で最後の催し。この人出すごい!
おそらく最初で最後の催し。この人出すごい!
手塩にかけて育ててきた我が娘が嫁入り。

そのときの父親の気分って、こういうものなのだろうか、って思った。東京ゲートブリッジが先日、2012年2月12日に開通したことに対するぼくの感情だ。

というか、結婚してないし、もちろん娘いないけど。それ以前に別にゲートブリッジを手塩にかけてないけど。
もっぱら工場とか団地とかジャンクションを愛でています。著書に「工場萌え」「団地の見究」「ジャンクション」など。(動画インタビュー

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開通前に歩いて渡れるイベントがあった

なんだかスカイツリーに注目が集まっちゃって、せっかくすごい橋なのに今ひとつ盛り上がりに欠ける(ように思う)東京ゲートブリッジ。東京湾をまたいで、江東区若洲と大田区城南島の間、約8kmを結ぶものだ(ここにかかった→地図

で、開通に先だって「東京ゲートブリッジ完成記念スポーツフェスタ」というイベントが行われた。
スタートにあやうく遅刻というていたらくだったので、かなりの後尾だった。結婚式に遅刻するダメな父親だ。そしてなかなか参列者の列が進まない。
スタートにあやうく遅刻というていたらくだったので、かなりの後尾だった。結婚式に遅刻するダメな父親だ。そしてなかなか参列者の列が進まない。
これは2月4日、5日の2日間に計15000人が、完成したばかりのゲートブリッジを歩いて渡る、というものだ。今回はその様子をお伝えしたい。
「木材ふ頭」って良い名前だよね。横浜にある「ゴム通り」とかも。
「木材ふ頭」って良い名前だよね。横浜にある「ゴム通り」とかも。
いや、歩いて渡るのは2日目の5日のほうに参加した人たちで、1日目はランニングとサイクリングだった。スポーツフェスタと呼ばれるゆえんである。

もちろんぼくは歩きだ。スポーツするようにできていないのだ、ぼくは。
ようやくスタート地点。ここまで30分ぐらいかかった。なんせこの日だけで8000人が参加しているのだ。
ようやくスタート地点。ここまで30分ぐらいかかった。なんせこの日だけで8000人が参加しているのだ。
道路標識にあるマークはこんなだった。
道路標識にあるマークはこんなだった。
歩き始めて数十分、ようやくゲートブリッジが見えてきた。
歩き始めて数十分、ようやくゲートブリッジが見えてきた。
なんだ、みんなゲートブリッジ興味あるんじゃん、って思った。
なんだ、みんなゲートブリッジ興味あるんじゃん、って思った。
こういうふうに橋の真ん中を歩けるのは最初で最後だろうということで、この人出。

なんかさー、みんなさー、スカイツリースカイツリー言っちゃってさー。いいじゃんあいつもう。ゲートブリッジのこともちょっと話題にしようぜ―。って思ってたけど、安心した。この日、行ってみたらぼくだけ、とかだったらどうしようかと思った。ま、べつにぼくが心配することではないんですけれど。
人混みが邪魔になっちゃうので、みんな少しでも高い位置から撮ろうと、中央分離帯に上る。
人混みが邪魔になっちゃうので、みんな少しでも高い位置から撮ろうと、中央分離帯に上る。
そうか、こういうとき身長が高いといいのだなー、とファインダーを覗かずやみくもに撮る165cm。
そうか、こういうとき身長が高いといいのだなー、とファインダーを覗かずやみくもに撮る165cm。
ふと見ると反対車線の柵になんか女性もののバッグが置かれてて、なんか不気味だった。事件性を感じる。だいじょうぶだろうか。
ふと見ると反対車線の柵になんか女性もののバッグが置かれてて、なんか不気味だった。事件性を感じる。だいじょうぶだろうか。
ひたすら歩いて、ようやく橋部分。きっと自動車だと感じないんだろうけど、歩くとけっこうな勾配。
ひたすら歩いて、ようやく橋部分。きっと自動車だと感じないんだろうけど、歩くとけっこうな勾配。
やっと頂上付近。ここまでですでに1時間近くかかっている。まだ半分かー、って思ったけどそれは間違いだった。渡りきって降りた先でUターンしてスタート地点に戻らなければならないのだ!
やっと頂上付近。ここまでですでに1時間近くかかっている。まだ半分かー、って思ったけどそれは間違いだった。渡りきって降りた先でUターンしてスタート地点に戻らなければならないのだ!
ぐるっとパノラマで見たところ。なんど見てもつくづく不思議な橋だよな―。
ぐるっとパノラマで見たところ。なんど見てもつくづく不思議な橋だよな―。
…とまあ、同じような写真ばかりで申し訳ない。退屈ですか。いやでもぼくは感慨深かったんですよ。冒頭で「手塩に~」云々と書きたくなるぐらい、これまでの工事を追っかけてきたので。

ここらへんでひとつ、経緯を振り返ってみようか。
いろいろ思い出しながら歩いてました。
いろいろ思い出しながら歩いてました。
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子供の成長記録しちゃうって、こういうことか

超巨大クレーンが3台もそろい踏み。夢の競演に興奮した2009年。
超巨大クレーンが3台もそろい踏み。夢の競演に興奮した2009年。
船上から呆然と見るぼく。すげー!
船上から呆然と見るぼく。すげー!
DPZに東京ゲートブリッジの記事を書いた最初は2009年の9月。「いま東京湾ですごいことが起こっている」というタイトルの通り、すごいことが起こっていた。

全ページで渡っていた下のトラス部分は陸上で造られて、それをえいっとクレーンで持ち上げて橋脚に載せる、という作業を見たのだった。その後夢に出てきて、良い意味でうなされる光景であった。うーん、うーん。
このトラス、なんと重さ6000トン!東京タワーの1.5倍の重さだそうだ。意味分からん。うーんうーん。
このトラス、なんと重さ6000トン!東京タワーの1.5倍の重さだそうだ。意味分からん。うーんうーん。
で、これですっかり東京ゲートブリッジの工事進捗状況に夢中になったぼくは(当時はまだ「臨海大橋」という仮称だった)、その後節目節目にそのスペクタクルショーを見に行くことになる。
翌年、上の写真のトラスの上にさらにトラスが乗っかる。
翌年、上の写真のトラスの上にさらにトラスが乗っかる。
船でその間を通ってみたりした(360度動画)。このときも遠くにクレーン船がいるのが見える。
2010年には、トラス部分は全て橋脚に載っかって「アプローチ部」と呼ばれる部部との接続の段階に入った。【→「引き続き東京湾ですごいことが起こっている」】ちょっとしたビルの大きさ・重さのものをひょいと載せているのだ。いや「ひょい」とではないけども。
2010年には、トラス部分は全て橋脚に載っかって「アプローチ部」と呼ばれる部部との接続の段階に入った。【→「引き続き東京湾ですごいことが起こっている」】ちょっとしたビルの大きさ・重さのものをひょいと載せているのだ。いや「ひょい」とではないけども。
このとき以降、もの好きたちを募って、一緒に見に行っている。夜明けと同時に工事が始まるので、ちょう早起きして集合した。もの好ききわまれり。
このとき以降、もの好きたちを募って、一緒に見に行っている。夜明けと同時に工事が始まるので、ちょう早起きして集合した。もの好ききわまれり。
そして2011年、最後の架設工事が行われた【→「最後の架設工事が大混雑」】
そして2011年、最後の架設工事が行われた【→「最後の架設工事が大混雑」】
さいごに真ん中部分をはめ込むをなんて、粋だよね(いや、粋とかそういう問題じゃないんだろうとは思いますが)
さいごに真ん中部分をはめ込むをなんて、粋だよね(いや、粋とかそういう問題じゃないんだろうとは思いますが)
寒い季節の早朝、がんばったぜ!
寒い季節の早朝、がんばったぜ!
とまあ、記事にしているだけで2009年から3年見続けて、ついに完成したわけだ。実際工事に携わった方々からすれば「だから、なに」ってな感じだろうが、ぼくとしては感慨深い。おそらく今後いっとき東京湾でこのレベルの工事が行われることはないだろうと思うと、いっそう。

それにしても見返すと、どれも寒い季節に工事してるなー。これはあれか、われわれ見学者の根性を試しているのか。今回のイベントも冬まっただ中だったし。

橋の上から見えるもの

さて、今回のウォーキングに戻ろう。

ごらんのようにこれまでは、造られていく橋自体を注視してきたわけだが、橋が完成してその上を行くとなると、今後はそこから見えるものが気になる。どんなものが見えたか、見てみよう。
結論から言っちゃうと、なんだかんだで荒涼とした「チューボー」の風景が最も強烈だったわけだけれども。
結論から言っちゃうと、なんだかんだで荒涼とした「チューボー」の風景が最も強烈だったわけだけれども。
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まずはスカイツリー。みんなこれ撮ってた。まあ、もうさ、いいじゃん、やつのことは。たしかにくっきり見えたから、しょうがないから写真こうやって載せるけどさ。(自分でもなんでこんなにスカイツリーに屈折した感情を持っているのか分かりません)
まずはスカイツリー。みんなこれ撮ってた。まあ、もうさ、いいじゃん、やつのことは。たしかにくっきり見えたから、しょうがないから写真こうやって載せるけどさ。(自分でもなんでこんなにスカイツリーに屈折した感情を持っているのか分かりません)
東京湾に架かる橋、ということはこれまで望むことのできなかったアングルから東京周辺を見ることになる。へー、この方角にこれが見えるのか―、っていう驚きがいくつかあった。
すぐお隣はディズニーシー。そういえば園内からは世俗の構造物が見えないように樹木が配されていると聞くが、ゲートブリッジは見えちゃうんじゃないかしら。
すぐお隣はディズニーシー。そういえば園内からは世俗の構造物が見えないように樹木が配されていると聞くが、ゲートブリッジは見えちゃうんじゃないかしら。
反対の方を見ると、みなとみらいが見える。手前の中防越しに見るとなんだかSF映画のワンシーンみたいだ。
反対の方を見ると、みなとみらいが見える。手前の中防越しに見るとなんだかSF映画のワンシーンみたいだ。
そこからちょっと横に目を向けると、川崎の工場。ナイス!
そこからちょっと横に目を向けると、川崎の工場。ナイス!
さらに、湾を挟んで向こうには千葉は君津の新日鉄!ナイス工場!右のけったいな建造物はアクアラインの換気塔「風の塔」
さらに、湾を挟んで向こうには千葉は君津の新日鉄!ナイス工場!右のけったいな建造物はアクアラインの換気塔「風の塔」
品川方面を見れば、青海、大井のかわいいキリンの群れが!中防越しに見ると、ほんとにサバンナみたいだ。すてきだ。
品川方面を見れば、青海、大井のかわいいキリンの群れが!中防越しに見ると、ほんとにサバンナみたいだ。すてきだ。
足下を見れば、なんか海中から顔を出しているやぐら状の構造物や、
足下を見れば、なんか海中から顔を出しているやぐら状の構造物や、
大量のトンパック(大型の土嚢。1tぐらい入ることからこう呼ばれるらしいです)なども見えて楽しい。誰もこれを見てなかったけど。
大量のトンパック(大型の土嚢。1tぐらい入ることからこう呼ばれるらしいです)なども見えて楽しい。誰もこれを見てなかったけど。
と、このようにけっこうインダストリアルな風景が各種鑑賞できて楽しかった。ここから見える木場とか辰巳のあたりって、いままで見られることのなかった街なので、全体としてぬかってるのだ。それがいい。ぼく好みだ。

しかし、いずれレインボーブリッジからの風景と同じように、見られることを意識しだして変わっちゃうのだろうか。化粧を覚えた女の子みたいに。木場が。それはそれでちょっと楽しみだけど。
足下を見れば、こういうできたて道路ならではのディテールもあって楽しい。
足下を見れば、こういうできたて道路ならではのディテールもあって楽しい。

謎の文字

さて、ゲートブリッジから見えるもので、謎めいたものがひとつある。それは若洲側の橋のたもと、若洲ゴルフリンクスというゴルフ場と海岸との間にある公園に意味不明の文字が書かれているのだ。
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"NICE T & GO"とある。なにそれ。
航空写真で見ると、カニの絵も(大きな地図で見る
なんだろう"NICE T & GO"って。"T & GO"っていうのはたぶん「タッチ アンド ゴー」のことだと思うんだけど。羽田空港が近いから?でもなんでナイス?

ゲートブリッジができるまではほとんど気づかれることのなかったこの文字。ほんとなんなんだろう。ご存じの方がいたら、教えてください。

引き返します

橋の真ん中でぐるっと180度パノラマ。
橋の真ん中でぐるっと180度パノラマ。
一昨年、まだここがつながっていなかったときのことを思い出す(写真はそのときの。こわー!)
一昨年、まだここがつながっていなかったときのことを思い出す(写真はそのときの。こわー!)
こんなだったのが、
こんなだったのが、
こんなふうに。いや、ほんと立派になっちゃって…!
こんなふうに。いや、ほんと立派になっちゃって…!
さて、前述したように、橋を渡りきったらそこがゴールではない。中防側はまだ造成中でそこから先へ行くことはできないので、来た道を引き返さねばならないのだ。

正直、折り返し地点ですでにしんどかった。
しかも折り返し地点が、橋降りたはるか先。まじか…
しかも折り返し地点が、橋降りたはるか先。まじか…
ようやくUターン。これで半分か…
ようやくUターン。これで半分か…
本記事冒頭のこの写真はこういう風にへこたれた状態で見た光景だったのだ。
本記事冒頭のこの写真はこういう風にへこたれた状態で見た光景だったのだ。
しかも復路のほうが勾配がきつい(と思う。たぶん)
しかも復路のほうが勾配がきつい(と思う。たぶん)
ようやく終わりが見えてきた、というところ。人がまばらなのは、最後尾ぐらいだから。のんびりしすぎた。
ようやく終わりが見えてきた、というところ。人がまばらなのは、最後尾ぐらいだから。のんびりしすぎた。
ゴールが見えてきた。
ゴールが見えてきた。
冬でなければもっと余裕があったのかな、と思ったけど、真夏はもっとたいへんだっただろう。自動車用に造られた道路がいかに歩く用とは違うかがよくわかった。

ちなみに、上の写真、ゴール地点(スタート地点でもあるが)の部分には屋根がかかっているが、これは隣がゴルフ場だからだ。ボールが飛び込んでこないように、というわけだ。有明ジャンクションのところと一緒だ。
有明ジャンクションのこの部分。ここだけ屋根がかかっているのは、昔となりにゴルフ練習場があったからだとか。その後なくなってしまったので、いまや無用の長物。噂では近いうち撤去されるらしい。(大きな地図で見る

そして実は…

長かった…
長かった…
ゴール!(なんかもうへこたれてゴールの瞬間の写真も撮ってなかった)
ゴール!(なんかもうへこたれてゴールの瞬間の写真も撮ってなかった)
そうんなこんなで、へこたれながらゴール。

このへこたれぐあいといい、なんか、自分がつくづく建設途中に興味が偏っている人間だと言うことが分かった。

だって、実は、正式に開通してからまだここ走ってないんだもの!

こんどちゃんと走ってみよう

なんか尻切れな記事で申し訳ない。でも、きっと娘が嫁入りした後の父親の虚脱感ってこういうことなんだと思う(まだ言うか)。

ともあれ、ちょっとちゃんと開通後の様子を走って確かめないと。歩道もあって徒歩でも行けるので、暖かくなったらそっちでも行こうと思う。

[告知]「うまくならない写真ワークショップ」やります

うまくなりません!
うまくなりません!
不定期にやっている、写真のワークショップをまたやります。うまくならないです。でも楽しいです。写真って真剣にやろうとすると、うまくなるための修行みたいになっちゃうけどそうじゃないよね!?というもの。今回は千葉の柏で。興味ある方はぜひ!詳しくはこちら
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