特集 2012年3月19日

豆腐じゃなくなろうとする豆腐たち

自分の殻を脱ごうとする豆腐
自分の殻を脱ごうとする豆腐
大豆の加工食品というのは数多くあるが、その代表的な一つは豆腐。そのまま食べたり、料理の材料にしたりとさまざまな食べ方がある。

もともと味の個性が強いわけではないので、食べ方のバリエーションも豊かなのだろう。しかし中には、そこまでやるかというところまで行き着いた豆腐たちもある。

意外なまでに発達した豆腐最前線。そんな豆腐を超えようとする豆腐たちを味わってみた。
1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」

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豆腐における自分探し

豆腐の最新形態を探るためにやってきたのは、東京ビッグサイト。ここで3月10日・11日に「豆腐フェア」というイベントが行われたのだ。
豆腐に思いっきりスポットが当たる一日
豆腐に思いっきりスポットが当たる一日
豆腐メインでこの活気
豆腐メインでこの活気
まず、「豆腐フェア」という名前が気になる。「豆腐+フェア」という言葉の構成が妙に新鮮。

入場ゲートには「豆腐の力で元気な日本を!」とも書いてある。個人的には、豆腐でそんなにパワー出るかな…と、やや消極的に考えていたのだが、これは実に失礼な話だった。会場内はかなりの活気なのだ。
部外者にも伝わるテンション
部外者にも伝わるテンション
とにかく自信満々
とにかく自信満々
豆腐そのものに加えて、豆腐を作るための機材の展示会でもあるこのイベント。「アルティメットフードオイルマシーン」は、それが何かをわからなくてもすごさが伝わるネーミング。

「サクセスプラント パーフェクター」は、豆乳製造装置であるらしい。名前からして自信に満ちている。

小さく書いてある「生ゴの時からグルグル動き、片煮え・ムラ煮えがまったくナシ!!」という説明文は素人にも力強く響く。豆腐業界は想像以上にエネルギッシュだ。
視野がワールドワイド
視野がワールドワイド
商談スペースに「にがり伝説」
商談スペースに「にがり伝説」
「卓上大豆まるごと豆乳製造器」は「世界まるごとHOWマッチ」的なインパクト。実際、説明文は「電源さえあれば世界中のどこでも大豆まるごと豆乳・豆腐が作れます」と、グローバルだ。

会場全体を、白くて柔らかくて味の薄い豆腐の実体とは異なったエネルギーが包む。もちろん、ビジネスゾーン以外の豆腐ゾーンでもこのテンションは共通だ。
戦隊モノ風のかっこよさが漂う
戦隊モノ風のかっこよさが漂う
かわいい系にも変身
かわいい系にも変身
トマトや黒糖といった展開を見せるフレーバー豆腐。色のバリエーションがあったり、「風味抜群!」「新感覚!」とキャッチコピーがついていたりと、豆腐界のゴレンジャー的存在のようにも感じられる。

かっこよさだけではなく、サブレやマフィンとも化して、ほんわかした雰囲気のお菓子にもなっている豆腐もいる。守備範囲が広いのだ。
容器は確かに豆腐パック
容器は確かに豆腐パック
もう豆腐だって言ってない
もう豆腐だって言ってない
一口大にカットして焼いた厚揚げは、最終的に青のりや鰹節をかけられて「タコ焼もどき」として販売されていた。開き直っているようなネーミングに謎の訴求力がある。

貼られていた紙には「職人気質 江戸前製法」と真面目そうな言葉もある上で、でっかく「タコ焼もどき」。この自由さ、一体どういう職人かとも思うが、振れ幅の大きさは好きだ。
イタリア化する豆腐
イタリア化する豆腐
中国には豆腐料理あるけどまた別展開
中国には豆腐料理あるけどまた別展開
チーズやサラミをトッピングして焼いたピザ風のものもあった。値段がついているものなのに、前を通ると「いいから食べていきなよ!」と、店の人がくれたのも含めて陽気なイタリア風か。

このイベントでは餃子の中身も豆腐。豆腐も中華料理に進出かと思ったが、もともと中華には麻婆豆腐などの豆腐料理があった。そういうことを忘れさせる勢いが会場全体にある。
ついにアメリカにも進出
ついにアメリカにも進出
そこに割って入ったか
そこに割って入ったか
こちらはアメリカンドッグの豆腐版だろうか、「豆腐ドッグ」という名前で売られていたもの。皮の生地に豆腐を使いました的な生やさしいものではなく、思いっきり豆腐のまま中に割り込んでいる。

そういう形でアメリカに飛び込んで行ったか。自由の国を逆手に取って、思い切った行動に出ている。

ワールドワイドに展開するだけでなく、あくまでネイティブな感じで進化する豆腐もあった。
豆腐でありつつ超進化
豆腐でありつつ超進化
コクとうま味が急加速
コクとうま味が急加速
こちらは豆腐の燻製と味噌漬けの食べ比べ試食。食べてみて驚いたのは、それほど個性の強い味ではない豆腐という食材に一手間かけることで、うま味が爆発的に増幅していることだ。

燻されたり漬けられたりすることで、豆腐の知らなかったポテンシャルが引き出されている。チーズのように濃厚な味わい。
洋菓子風だけど日本のもの
洋菓子風だけど日本のもの
確かにそれっぽい
確かにそれっぽい
こちらは秋田のローカルフードであるらしい「豆富かすてら」。その名の通り、豆腐を材料にカステラ風に仕立てたもので、味もやさしく甘い。小麦粉ではなく豆腐でカステラを作るとこんな感じになるわけだ。

そして次は今回のイベントで最も楽しみにしていたコーナー、「全国豆腐試食会」だ。
豆腐ファン大喜び
豆腐ファン大喜び
ずらっと並ぶ日本中の豆腐
ずらっと並ぶ日本中の豆腐
500円を払うと、日本各地から集められた豆腐を試食できるというこの試食会。生産者が書いたエントリーシートとともに、たくさんの豆腐が並んでいる。

私はたまたま開始直後に入場したのですぐ入れたが、出る頃にはかなりの行列。1時間待ちとの情報もあったので、人気のコーナーだったらしい。
沖縄の豆腐がでかい
沖縄の豆腐がでかい
全国の豆腐、ということでまず入場したところにあったのは沖縄の島豆腐。独特の堅さがあるものだ。そして単位がでかい。エントリーシートには1kgで480円と書いてある。

オードブルでも乗せてあるような銀皿に豆腐がでんと乗っているのも小さく異常事態で楽しい。
どこかで見たことあるあの人が
どこかで見たことあるあの人が
王様なんだから普通に肉食えばいいのに
王様なんだから普通に肉食えばいいのに
「こく王」という名の豆腐のパッケージには、トランプの王様が描かれている。自分の中では完全にすれ違っていた豆腐とトランプとがこんな形で融合している。

よく見ると「味一番 畑の肉」と、あまり王様らしくないことを言ってる王様。大豆を「畑の肉」と例えるのには欺瞞を感じる部分もあるが、「まあ、王様が言うなら…」と自分を納得させるべきところだろうか。

こうした普通カテゴリーに属する豆腐もあるのだが、その枠を飛び出そうとするものも多々あるのがこのコーナー。
ただ者ではない風格
ただ者ではない風格
ふわふわ感がすごい
ふわふわ感がすごい
豪華な木箱に入ったこの豆腐。容器からしてすごいが、豆腐の表面もよくあるようなツルンとした感じではないのがまた普通ではなさそう。
一丁1000円越え
一丁1000円越え
食べ方の提案も並一通りではない
食べ方の提案も並一通りではない
大きめとは言え、1050円というこの豆腐。シートにあった食べ方も「素のまま→塩→ジャムでもいいよ」と、幅広い。隣には2100円というこの豆腐のずんだ版もあった。

試食してもバックストーリーゆえに冷静に味を判断できない。もうここまで来ると、お豆の水菓子と言った方がよさそうな感じだろうか。
豆腐界のアイドル系
豆腐界のアイドル系
パステルカラー豆腐
パステルカラー豆腐
黒みつ推奨の豆腐も
黒みつ推奨の豆腐も
きなこも確かに合いそうだ
きなこも確かに合いそうだ
パッケージにかわいい女性の写真が印刷されていたのは「きらきら豆腐」。包装やネーミングにもインパクトがあるが、実体もピンク色とファンシー。トマトの色素で色を付けているそうだが、味には影響がなくシンプルな豆腐味なので、口にしたときの不思議感がすごい。

でんぷんが加えられている「もちもち豆腐」は、その名の通りの食感。黒みつやきなこで食べるのがおすすめとある通り、和菓子のような豆腐だ。
そこまで自分を捨てるのか
そこまで自分を捨てるのか
そう言われても君が豆腐だと思えない
そう言われても君が豆腐だと思えない
「とうふマヨ」はもう完全に豆腐であることを忘れているようにも思える。何もそこまで…とも思ったが、卵を使っていないので、アレルギーのある方にニーズがあるだろう。

調味料と化したそれを味見してみると、言われた上でも豆腐の影は感じられないマヨネーズへの擬態ぶり。豆腐を卒業してマヨネーズになった君を祝福したい。

一人称でしゃべり出す豆腐
一人称でしゃべり出す豆腐
元々の個性が強くない分、様々に展開できる可能性を秘めた豆腐。完成品でありながら、素材としても優秀な食べ物なのだろう。

豆腐の納入時に使われたとおぼしき箱には「私は豆腐です。」とシールの貼られたものも。「手渡しで大事に運んでください、お願いします」とも書かれていて、素直に従いたくなる気持ちになると思う。
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