特集 2012年3月28日

にぎり寿司は焼いた方が美味い

スーパーで買ったパックのにぎり寿司を焼きました。また食べたい。
スーパーで買ったパックのにぎり寿司を焼きました。また食べたい。
旅番組を好きでよく見るのだけど、魚介類の新鮮さをアピールする為か焼き魚や煮魚の素材について「刺身で食べられるくらい活きが良い」なんて言い方をする。

おそらく、

「刺身で食べられるけど敢えて焼いてあげたんだからね!べ、別に鮮度が悪いからって焼いたんじゃないんだからね!こんなの贅沢なんだからね!べ、別にあんたの喜ぶ顔なんて見たくないんだからね!勘違いしないでよね!」

っていう価値観からの言い方なんだと思う。無理にツンデレ入れて読みづらくなったが敢えて直さない。

つまり、刺身で食べられる魚介類に火を通すのは贅沢な食べ方なのだ。今回は、そんな贅沢を味わいながら色々考えてみたいと思います。
あばよ涙、よろしく勇気、こんにちは松本です。

1976年千葉県鴨川市(内浦)生まれ。システムエンジニアなどやってましたが、2010年にライター兼アプリ作家として自由業化。iPhoneアプリはDIY GPS、速攻乗換案内、立体録音部、Here.info、雨かしら?などを開発しました。著書は「チェーン店B級グルメ メニュー別ガチンコ食べ比べ」「30日間マクドナルド生活」の2冊。買ってくだされ。(動画インタビュー)

前の記事:アプリの力で、好きな夢を見られるか

> 個人サイト keiziweb DIY GPS 速攻乗換案内

これ全部火を通して食べる。
これ全部火を通して食べる。

刺身を買ってきた

という訳で刺身を買ってきた。タイトルは「にぎり寿司を云々」だが、寿司が出てくるのはまだまだ先である。まずは刺身をこねくり回しながら考えていきたい。

買ってきたのは刺身の4点盛りと生しらす、あと生ウニ。全て生食用である。

なお、一番高いのは生ウニで980円だった。普段の僕なら買わない値段だが、清水の舞台から飛び降りてあの風になりつつも生き返った勢いで買った。
誇らしげに「刺身用うに」と書かれている。
誇らしげに「刺身用うに」と書かれている。
○生っていう金色に黒文字のシールが誇らしげ。
○生っていう金色に黒文字のシールが誇らしげ。
ウニはこういう一房が小さめのやつが良い。海外産のでかい奴は大味でいけない。
ウニはこういう一房が小さめのやつが良い。海外産のでかい奴は大味でいけない。
透き通る生しらす。最近は流通が良いので生しらすをスーパーで買えちゃうのです。素晴らしい。
透き通る生しらす。最近は流通が良いので生しらすをスーパーで買えちゃうのです。素晴らしい。
猫が狙っている。港町出身の猫なので魚の匂いに敏感。
猫が狙っている。港町出身の猫なので魚の匂いに敏感。
カラフルで美味そう。
カラフルで美味そう。
生しらすはしょうが醤油でいただきます。
生しらすはしょうが醤油でいただきます。

味見してみた

生しらすは滑らかな食感、口に入れると海と魚の味がする。青臭い春の味だ。ウニは滋味深く甘い。4点盛りのハマチ(またはカンパチかブリ)はとろける脂がたまらない。

当たり前の事を書くが、刺身ってすごく美味しい。スーパーで買ってきたのでも十分美味しい。

でも焼いちゃうんだな、今回は。
ウニをちょっとだけ生のまま食べる。甘い!美味い!ヤバイ!
ウニをちょっとだけ生のまま食べる。甘い!美味い!ヤバイ!

まずはウニを焼いちゃう

ウニは生で食べてもエライ美味い。なのに焼いちゃうとかもったいないと思う。でも生で全部食べちゃうわけにはいかない。だって、それじゃただ生ウニを食べてるだけで記事として成立しない。

以前、ただウニを食べる記事を書いておいてなに言ってるんだって感もあるが今回はちょっと頑張るのだ(参考:回転寿司で、ウニ比べ)。
ウニに小麦粉を付けてバターでソテー。
ウニに小麦粉を付けてバターでソテー。
まずはウニのバター焼きである。刺身で食べられるウニをわざわざ焼いてしまうのだ。なんて贅沢なんだろう。
焼きすぎると溶けてしまうのでほどほどに
焼きすぎると溶けてしまうのでほどほどに
焼いてるとバターとウニの香りが混じり合って、匂いだけで酒飲めるくらい美味しそうである。これはちょっと凄い事になる予感。
焼けた。
焼けた。

刺身で食べられるけど敢えて焼いたウニがすごい

普通に美味しいウニだと思った?!残念!スーパー美味しい焼きウニなんでした!

生ウニも美味しかったんだが、焼いてみたら階段を3段くらいのぼってしまった。甘さとコクと旨味がましましの大盛りである。

食べた瞬間頭の中で「♪ツクツーン」って音が鳴った。なにから伝えればいいのか判らないっていうか、ウニがあんまり美味しいから、ただ素直に美味いと言えないで、いや、言っちゃうか。美味い、美味いよ、焼いちゃったウニ。

次は刺身を焼いちゃう

どんどん焼いていこう。次は魚の刺身を焼くのだ。刺身で食べられる魚を焼いてしまう贅沢を味わいたい。
ウニと同じように粉を付けてバターで焼いてみた。
ウニと同じように粉を付けてバターで焼いてみた。
刺身のムニエルである。
刺身のムニエルである。
味付けはシンプルに塩胡椒。バターの香りが食欲をそそる。まぐろ、ハマチ、サーモンを焼いてみたが一番好きな味はサーモン。次いでまぐろ。

どの元刺身も、刺身で食べるより甘みが増して、魚の味がハッキリわかる。しかも、刺身で食べられるのをわざわざ焼いたという事実が美味しさを増してる気がする。
生しらすもバターソテーにしたら、フワフワした面白い食感の食べ物になった。これも生より美味い。
生しらすもバターソテーにしたら、フワフワした面白い食感の食べ物になった。これも生より美味い。
生しらすを天ぷらにしちゃう。
生しらすを天ぷらにしちゃう。

生で食べられる生しらすの天ぷら

次は天ぷらだ。大抵の食べ物は天ぷらにすると美味しくなる。道ばたの草すら美味しくなるのだから、刺身で食べられる物を天ぷらにしたら美味しい事は約束されているようなもんである。
目が可愛い、生しらすの天ぷら。
目が可愛い、生しらすの天ぷら。

生の高級っぽさや希少価値は忘れよう

江ノ島に行くと飲食店に「しらす丼」というメニューがある。要は釜揚げしらすが乗った丼である。が、釜揚げしらすなんてスーパーで普通に売ってるし高級感なんてない日常の食べ物だ。

でも「生しらす丼」となると話は別だ。生しらすは日常の食べ物ではない、観光の食べ物だ。ハレの食事である。

そう思って江ノ島で生しらす丼を食べた事があった。確かに日常食べるしらすとは別の味で面白い。しかし、釜揚げしらすと比べて際立って美味しいだろうか?ともうっすら思っていた。
江ノ島で食べたしらす丼。生しらすに惹かれて食べた。
江ノ島で食べたしらす丼。生しらすに惹かれて食べた。
断面はしらすでみっちり。
断面はしらすでみっちり。
今揚がったばかりの生しらすの天ぷらは、しらすがとろけて渾然一体となり、やっぱり生の時より味が濃く感じられて美味しかった。

そう、生しらすよりも火を通したしらすの方が美味いのだ。旬を感じさせる生しらすには生しらすの良さがあるが、しらすは火を通した方が美味い。

生ビールとか生キャラメルとか生肉とか、生って付くとなんか良い物っぽく感じられるが、実は生じゃない方が美味しいものも多い。生にはリスクがある事もある。我々は「生」について一度落ち着いて考える必要があるだろう。

まだまだ火を通し続ける

美味しそうな写真を列挙してお腹を空かせる拷問は、畳みかけるようにまだまだ続く。
生ウニの湯通し。甘みが増して大変な美味しさでしたよ。
生ウニの湯通し。甘みが増して大変な美味しさでしたよ。
刺身の唐揚げである。ビールに合うよ。
刺身の唐揚げである。ビールに合うよ。
まぐろとイカの刺身も天ぷらにしちゃったよ。これがまんまと美味いでやんの。
まぐろとイカの刺身も天ぷらにしちゃったよ。これがまんまと美味いでやんの。

グリルで焼いたウニもすごい

さっきはウニをバターでソテーしたが、今度はグリルで焼いてみた。
生ウニをただ焼くだけ。
生ウニをただ焼くだけ。
かさが減りました。
かさが減りました。
グリルで焼いたウニは味が凝縮されて、それはそれは美味しい事になっていた。あー、なんだこれ。ウニだよね、ウニ。知ってるけど生とは全然違う味だ。

刺身用のウニ?いやいや、ウニは焼いて食べる物だよ。焼いて食べないなんてもったいないよ。
焼き締められたウニの美味い事と言ったら!
焼き締められたウニの美味い事と言ったら!
刺身が余ってしまった。
刺身が余ってしまった。

刺身で食べられるけど、一夜干ししちゃう

刺身ってそんなにたくさん食べられる物でもないので余ってしまう事もある。そんな時は一夜干しである。

少し塩を振りかけて干し網に入れて一晩干した。起きたのが遅かったので一夜と半日干しだが、それを焼いて食べたらば、これがまた刺身より美味かったのだった。
干し網に入れて一晩とちょっと干した。
干し網に入れて一晩とちょっと干した。
焼いちゃう。
焼いちゃう。
一夜干しにして焼いても、元刺身という出自に敬意を表してちゃんとタンポポを乗せた。
一夜干しにして焼いても、元刺身という出自に敬意を表してちゃんとタンポポを乗せた。
元イカの刺身。七味マヨネーズを付けて食べると美味い。
元イカの刺身。七味マヨネーズを付けて食べると美味い。
ハマチとサーモンは脂が乗っており、それが焦げて香ばしいし、噛むとジワッと旨味と脂があふれ出てくる。イカの刺身はスルメみたいに味が凝縮されている。こりゃたまらんわい。


刺身が余ったときはわさび醤油に漬けてヅケにしていたが、これからは「一夜干し」にして食べる事にしたい。 最初から干物を買えってご意見もありそうだが、刺身一夜干しの場合は、色んな種類を少しずつ食べられるのがいい。ハマチとかまぐろの干物ってなかなか売ってないし。

そしてにぎり寿司を焼く

ここまでたどり着いた読者の皆さんありがとう、そしてありがとう。いよいよタイトルの内容です。ここまでの内容で、刺身は火を通した方が美味いという事が判っていただけたと思います。

・甘くなる。
・旨味が増す。
・温かい方が味がよく判る。

などの理由で、生より美味しくなるのです。という事は、あの、生魚をライスボールに乗せた料理ことにぎり寿司も焼けば更に美味しくなるはずなのです。

焼きウニとか焼き魚が普通であるように、焼き寿司だってそんなにおかしくないはずなのです!
OKストアで買ってきた。スーパーの寿司としては安くて美味い。
OKストアで買ってきた。スーパーの寿司としては安くて美味い。
テフロン加工の鍋に速水もこみち気取りでオリーブオイルを薄く引いて、そこに寿司を並べてジュワー。なかなか見られない光景でありましょう。
ザ・非日常。
ザ・非日常。
回転寿司で「炙りトロサーモン」とかあるのは知ってるけど、あれはガスバーナーで上から炙った奴。これは直に焼いた奴。しかも、ネタ問わず片っ端から焼いたのだ。
あらまぁ!焦げ目が美味しそうじゃござんせんか!
あらまぁ!焦げ目が美味しそうじゃござんせんか!
中トロもしっかり焼いちゃったよ。マヨネースをちょっと乗せてみた。
中トロもしっかり焼いちゃったよ。マヨネースをちょっと乗せてみた。
ホタテちゃん温かいナリィ・・・。
ホタテちゃん温かいナリィ・・・。
焼いたホタテが美味い。これまでの例に漏れず甘みが増し、火が通った部分の身がホロッと崩れる食感がニクイ。

中トロや赤身は脂が焼けて香ばしいし、玉子焼きを焼き直したら温かくて美味しいし、イカはプリプリしてるし焼いたウニが美味いのは自明だし、なんで今まで生で食べてたんだろう?って思っちゃったくらい美味しかったのでした。

にぎり寿司は焼いて食べるに限る。

肉も生より焼き肉の方が美味い

僕はユッケが好きだが、同じ肉でもユッケよりは焼いた方が肉の味が判るので美味しいと思う。ユッケは生肉の食感を楽しむのにちょっと食べられればいい。食べ過ぎるとお腹壊すし。

肉も魚も、火を通した方が味が引き出されて美味く感じる様に思う。といっても、寿司屋の大将にぼくが「この寿司を焼いてくれ」なんて言ったらどんな顔するだろう、っていうかぶっ飛ばされるっていうか僕の顔がどんなにされちゃうだろうって気がするので言わないけど、家で食べるときは焼いて食べようかなー、なんて思いました。
ツマはみそ汁にしました。
ツマはみそ汁にしました。
レバ刺し、あー、レバ刺しだけは別かもしんない。レバーは生の方が美味しいなぁ。なんでだろ、あれ。僕はキメ顔でそう思った。
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