特集 2012年7月10日

ネットで送ると走って届ける、どっちがはやい?

短パンは高速モバイル通信に勝てるのか
短パンは高速モバイル通信に勝てるのか
モバイル通信の速度がどんどん速くなっている。ひと昔前の家の固定回線ぐらいのスピードがでるという。

でも思うのは、近かったら手でデータ渡したほうが早いんじゃないの?ということだ。どれぐらいの距離だったら手で渡せばいいのか、走って調べてみた。
1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

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犬や雨に負けず

調査方法はこうだ。遠くにいる人に写真を送る。一組はネットを使い、もう一組は走って手渡す。どちらが先に写真を見ることができるだろうか。距離をかえて何度か実験してみるつもりである。
高速モバイル通信という21世紀の方法に「走る」という石器時代からある方法で挑む。戦国自衛隊みたいな企画である。
実験に参加するひとたち(撮影している林はワイプで)
実験に参加するひとたち(撮影している林はワイプで)
いつものデイリーポータルZのスタッフにくわえて、右のスーツの男性はニフティ株式会社 ISP事業部の井田である。
井田がいちおしの@nifty EMOBILE LTE
井田がいちおしの@nifty EMOBILE LTE
井田「下り通信速度が最大75Mbps 絶賛申し込み受付中ダヨ!」
井田「下り通信速度が最大75Mbps 絶賛申し込み受付中ダヨ!
そういえばニフティはインターネット接続の会社だった。こうして企画のなかでLTEを登場させればちょっとは宣伝になるかもしれないしーと思って登場願った。表面上は愛社精神だが、長期的には評価をあげて給料を上げようという自己愛(エロース)である。

登場願ったのが新宿中央公園、しかも雨だ。
そしてつながれてない犬がまわりをうろうろしている
そしてつながれてない犬がまわりをうろうろしている
よだれを垂らして我々のまわりをずっとうろうろしていて気がかりである。これからSDカードを持って走るのだが、犬が追いかけてきたらどうしよう。

犬に追いかけられたので速く走れました~♪という昭和のまんが的な展開もいいが、噛まれたら労災申請したり面倒である。井田にしてもLTEの販促で犬に追いかけられるとは思ってないだろう。
あと蚊がすごい。

実験1)写真1枚を送る競争

犬や蚊に負けずに実験開始である。最初の実験は以下の条件で行った。
・15m離れたところにいる人に
・写真1枚(4.2Mbyte)を送る
・LTEチームも走りチームもSDカードに入ったデータをわたすところからスタート
図解するとこう・犬が大きくなってしまったがここまで大きくない
図解するとこう・犬が大きくなってしまったがここまで大きくない
せーのでSDカードを渡される
せーのでSDカードを渡される
どちらも写真を表示した時点でゴール
どちらも写真を表示した時点でゴール
LTEは上り4.67Mbps/下り13.19Mbpsと快適なスピード(そうなんです)
現地の速度テストではLTEは上り4.67Mbps/下り13.19Mbpsと快適なスピード(そうなんです)
走る編集部安藤はフルマラソン 3時間16分のスピード
走る編集部安藤はフルマラソン 3時間16分のスピード
ちなみにLTEでの送受信は、Dropboxというネット上の共有フォルダサービスにファイルを置き、大声で「置きました~」と叫ぶことでアップロード完了を伝えることにした。
メッセンジャーやLINEの使用も考えたが、「叫んだほうが早い」という結論に落ち着いた。こちらも石器時代ライクである。
では始めよう。
よーい よーい
スタート! スタート!
走り)順調にデータ送信中 走り)順調にデータ送信中
LTE)えーと… LTE)えーと…
走り)早くもSDカードが受信者へ 走り)早くもSDカードが受信者へ
走り)読み込み中… 走り)読み込み中…
走り)表示完了 27.4秒 走り)表示完了 27.4秒
LTE)「おきましたー」 LTE)「おきましたー」
LTE)表示完了 49.3秒 LTE)表示完了 49.3秒
走りの圧勝である。僕の給料アップが遠のいた。
LTEの送信側のノートPCはSDカードを挿すと写真取り込みソフトが起動するのでそれで手間がかかってしまったのだ(よくあるよね)。
じゃあ今度はSDカードを挿した状態から競争してみよう。
肩を落とすLTE井田を見てそう言ってしまった
肩を落とすLTE井田を見てそう言ってしまった

実験2)写真1枚を送る・SDカードを挿した状態から

LTEで写真を送るほうはSDカードを挿してフォルダを開いた状態からスタートする。
スタート!
スタート!
走り)遠慮知らず 走り)遠慮知らず
LTE)今度はすぐに送信 LTE)今度はすぐに送信
走り)でももう手渡してる 走り)でももう手渡してる
走り)表示完了 21秒9 走り)表示完了 21秒9
LTE)おきました~ LTE)おきました~
LTE) 表示完了 40秒0 LTE) 表示完了 40秒0
LTEがタイムを10秒縮めたが、走りのほうまでタイムを縮めてしまった。聞いてみると
「慣れた」
とのこと。そうだ忘れてた、人間は慣れる。

ここまでの実験の結果はこのようになった。
!

わかったこと:15mぐらいで写真1枚ならば走ったほうが早い。

あらためて書いてみると当然である。

次に距離を伸ばして実験してみたい。15mは短すぎた。15m以上にすると犬がいる茂みを突っ切らなくてはならないので避けていたのだが、ルートを工夫して200mぐらいで実験してみよう。

その前にボロ負けさせてしまって悪いのでLTEのバナーを載せておきます。
もちろんこんなバナーはない
もちろんこんなバナーはない
では200mで!
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ナイアガラの滝 一周のコースで挑戦

200mは新宿中央公園の滝(ナイアガラの滝という名前なのだ)を回るコースにしてみた。コース途中に階段もある。
受信側は階段の上にいるが、
受信側は階段の上にいるが、
このようにぐるっと回っていかなければならない
このようにぐるっと回っていかなければならない
まっすぐ階段登ればいいじゃんと思うが200mの距離をとりたかったのでしかたあるまい。不自然さでいえばLTEでファイルをやりとりしているDropboxのサーバはアメリカにあるので新宿中央公園の滝一周どころではない遠回りなのだ。
これぐらい無理なことしてた
これぐらい無理なことしてた
新宿のナイアガラの滝どころかほんとのナイアガラがある国まで行っていた(ウマイ!)。

実験3)写真1枚を送る・200m

今回の実験の条件は以下の通り。
・200m離れたところにいる人に
・写真1枚(4.2Mbyte)を送る
・LTEチームはSDカードがささった状態、走りはSDカードを持った状態でスタート
スタート
スタート
走り)とりゃー 走り)とりゃー
LTE)送信! LTE)送信!
走り)滝のうらを走る 走り)滝のうらを走る
LTE)あれ? LTE)あれ?
走り)表示完了 走り)表示完了
LTE) アップロードエラー LTE) アップロードエラー
Dropboxの調子が悪いのか、このあと2回ほど続けてエラーが表示されてアップロードできなかった。そのたびに編集部安藤は全速力で200m走ったため、ゴールするとしゃがみ込んでいた。
走りの弱点が出た。それは「疲れる」。
走りの弱点が出た。それは「疲れる」。
走りでの通信効率が落ちている。LTEはベストエフォート方式(そのときに可能なスピードを出す)だが、人間もあきらかにベストエフォートである。

そして3回目の勝負

スタート!
スタート!
走り)疲れても速い 走り)疲れても速い
LTE)今度は行けそう LTE)今度は行けそう
どちらもまだ未受信 どちらもまだ未受信
真剣 真剣
走り)きた! 走り)きた!
安藤がSDカードを渡した瞬間、井田の手があがった 安藤がSDカードを渡した瞬間、井田の手があがった
LTE)受信完了 43秒8 崩れ落ちる安藤
LTE)受信完了 43秒8 崩れ落ちる安藤
走り)受信完了 57秒8
走り)受信完了 57秒8
ようやくLTEが勝った。
ここまでで分かったことは

わかったこと:200mはネットで送ったほうが早い

である。しかしこれはすべての場合に当てはまることではなく、ネットの状況や走る人がボルトだった、などで違ってくることをご承知おき願いたい。

そしてもうひとつ

わかったこと:人は疲れる

ということである。これはたぶんボルトも同じだ。
井田「ボルトじゃないかたには@nifty EMOBILE LTEをおすすめします」
井田「ボルトじゃないかたには@nifty EMOBILE LTEをおすすめします」
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長距離ならどうだ

最後に新宿中央公園から1000mほど離れたニフティにデータを届ける競争をしてみたい。200mでLTEのほうが早かったのでこれまでと同じ写真4Mbyteだと結果は分かっている。
なので500Mbyteにした。動画だったらこれぐらい平気でいくだろう。
距離が5倍になったのにデータ量が125倍になっていることには原稿を書いているいま気づいた。
新宿の片隅で行われる戦い
新宿の片隅で行われる戦い
送信側・公園
送信側・公園
1000m離れた事務所でデータを待つ
1000m離れた事務所でデータを待つ
両者スタート 両者スタート
走り)ウホー 走り)ウホー
受信側)こないわねえ 受信側)こないわねえ
走り)こっちだウホー 走り)こっちだウホー
LTE)送信中 LTE)送信中
走り)5分でビルの前に 走り)5分でビルの前に
短パンの男が会社に乱入
短パンの男が会社に乱入
走り)500Mbyteの動画ファイル再生完了! 6分05秒
走り)500Mbyteの動画ファイル再生完了! 6分05秒

短パン11Mbps

約6分で500Mbyteの動画を1000m先の人に届けることができた。ネットのスピードでよく使われるbpsに換算すると約11Mbpsだ。到着した時点でLTEは180Mbyteをアップロードしていた。つまり

わかったこと:相手が1000m先にいて、データが180Mbyte以上なら走って持っていけ

である。ただし短パン姿で会社にいると場違い感は否めない。
LTEアップロード中、生暖かい目で見られる
LTEアップロード中、生暖かい目で見られる
LTE) そして35分で500Mbyteのアップロード完了
LTE) そして35分で500Mbyteのアップロード完了
グラフにすると以下の通りである。
!
走って届いてから約30分あったため、データ受信側の女性ふたりは今晩のばんごはんのおかずをなににするかを話し合っていた(走り:サバ、LTE:エビチリ)。この豊かな時間もLTEならではですね。

またボロ負けさせてしまったので遠慮のバナーである。
!

走ると腹が減る

この日なんども走った安藤は撮影後、自席でメロンパンを2個食べていた。500Mbyteのファイルを送っただけでメロンパン2個(200円)はコスト的にあわないかもしれない。

IT雑誌風にまとめるとこのようになるだろうか。
自分の使用目的に合わせてベストバイしようぜ。
自分の使用目的に合わせてベストバイしようぜ。
外だとパソコンが雨に濡れるのが超デメリット
外だとパソコンが雨に濡れるのが超デメリット
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