特集 2012年11月27日

輪ゴム人形を作ろう

なぜこうなるかね
なぜこうなるかね
ふだん輪ゴムは使っても数本。なので箱なんかで買った日には使い切れずに大量に余ってしまう。もったいない。

じゃあそれを使ってゴム人形ならぬ「輪ゴム人形」を作ったらどうだろう?なんか簡単そうだし、意外と可愛くできて流行っちゃうかも?!

という訳で今回は、自分が納得するまで輪ゴム人形を作ろうと思います。
東京葛飾生まれ。江戸っ子ぽいとよく言われますが、新潟と茨城のハーフです。
好きなものは犬と酸っぱいもの全般。そこらへんの人にすぐに話しかけてしまう癖がある。上野・浅草が庭。(動画インタビュー)

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目標は投げ出さないこと

このサイトではよく手先の器用なライターさん達が色んな工作をしているけど、準備から始まるその労力たるや本当に大変だと思う。たとえ失敗したとしても最後までやり抜く精神のタフさも必要だろう。

私も以前いくつかトライしたものの、理想と現実のギャップに我慢できずに途中で投げ出した事がある。
例えば自分の歯型で作ろうとした獅子舞。気合を入れて針金を使ったりして徹夜したが口が開かなくなって嫌になった
例えば自分の歯型で作ろうとした獅子舞。気合を入れて針金を使ったりして徹夜したが口が開かなくなって嫌になった
しかし今回使う道具は基本的に輪ゴムのみ(後で色々小細工しますが)。ノコギリやら針金なんかは不要だし馴染みがあって自由度の高い素材。これなら楽しくできるに違いない!

それでは作りましょう

輪ゴム人形というジャンルに正解は無いので全てインスピレーションで進めます。
こんなに輪ゴムあっても日常使わないよね
こんなに輪ゴムあっても日常使わないよね
こうやって適当に結んでいけば
こうやって適当に結んでいけば
人形っぽくなる。いやならない。
人形っぽくなる。いやならない。
こっちの方がいいか。いいのか?
こっちの方がいいか。いいのか?

やっぱりダメかも

大量の輪ゴムを前に広げ、手始めに握った数本をまずは人型に結んでみる。手のひらに乗せたそれを見てみると驚く程急速に気持ちが沈んでいくのを感じた。まだ取り掛かって数分しかたってないのになんだろうこの湧き上がってくる不安は…?

そうだ、レベルが低すぎるのだ。
1号だよ、宜しくね
1号だよ、宜しくね

結んでできた1号『ゴムー』

それでも秘策として買っておいた目玉をつけてあげれば一気に生物らしくなり、漫画「寄生獣」に出てくるミギーに似た感じでちょっと可愛く見えるだろうか。ゴムーと適当に名前をつけた所で、やる気を回復するまで作業をストップした。
投げ出してこのまま5日間放置。
投げ出してこのまま5日間放置。

まとめてできた2号『ゴム丸』

第1号のゴムーが埃をかぶりだした週末の夜、そろそろ向き合わねばと再度大量の輪ゴムに手を伸ばし、TVを見ながらとにかくまとめていった。ほろ酔いだったのもありウッカリ工程を撮り忘れたがだんだん球状になってきた。これに目をつければ…
あれ…コレ可愛いんじゃない?
あれ…コレ可愛いんじゃない?
荒々しく束ねたゴムの塊。そこに目をつけて魂を吹き込む。するとどうだろう?ジブリに登場してきそうな可愛らしいゴム丸の誕生だ。
もうちょっと丁寧にまとめたもの。投げるとよく弾むしキュートさ100%!
もうちょっと丁寧にまとめたもの。投げるとよく弾むしキュートさ100%!
相変わらず単純な作りだけど、これ気に入ったぞ。握っているとストレス解消にもなるし、ボールのように壁に投げつけて遊ぶ事もできる。頭にもう一本輪ゴムを通せばストラップにもなるのだ、これは良いぞ!

皆の意見を聞こう

その翌日。ちょうどデザインフェスタというイベントにデイリーポータルも出展していた。デイリーのコンセプトは「100円ショップ」でライター陣が作ったものを100円で売るというもの。このゴム丸…売っていい代物かと悩んだが、思い切って急きょ参加させてもらう事に。目的は皆の反応を見る事と、今後の改善点を聞きだす事だ。
目や鼻や形状を微妙に変えて
目や鼻や形状を微妙に変えて
増やした
増やした
色んな顔のゴム丸を箱に詰め、意気揚々と会場に向かった。ところが会場に着くと、こんな輪ゴム固めただけの玉を持ってきて良かったのだろうかと全身が重くなった。こんなの誰にだって作れるもんな…買う人いるのだろうか…
意を決して出展だ
意を決して出展だ
しかし大規模な会場に気が引ける
しかし大規模な会場に気が引ける
反応イマイチか?
反応イマイチか?
ライター仲間に見せたところ、「ゴミっぽいけど手間は100円以上かかっていそう」という非常に的確な声が聞こえた。
お客さんの反応はどうだろうか
お客さんの反応はどうだろうか
画板に貼った紹介チラシで特徴アピール
画板に貼った紹介チラシで特徴アピール
「キモカワイイネー」と早速外国人(買わなかったけど)
「キモカワイイネー」と早速外国人(買わなかったけど)
吸い寄せられる子供
吸い寄せられる子供
デザインフェスタに出展されている作品の中でもチンケさ抜群だからだろうか、前を行く人々はみな優しい顔を向けてくれた。その中にキラキラとした目で引きつけられるようにして来るお客さん達が。そう、子供だ。
「あ~ら~可愛らしい…」
「あ~ら~可愛らしい…」
「ちょっとお母様!一生のお願い!」(とまでは言ってませんが)
「ちょっとお母様!一生のお願い!」(とまでは言ってませんが)
最初の不安はどこへやら、いざ出展してみると子供たちの心をガッチリ掴む事ができて、1時間も経たず全部売れた(といっても8個)。大人にはゴミに見えても、子供には純粋にゴム丸の魅力が伝わったみたいだ。
ゴム丸に夢中になる子供達。先ほど微妙な表情を浮かべていたライター西村さんの息子さんも。とても喜んでくれてて、なんだか勝った気がした。
ゴム丸に夢中になる子供達。先ほど微妙な表情を浮かべていたライター西村さんの息子さんも。とても喜んでくれてて、なんだか勝った気がした。
子供達はヨーヨーの様に遊んだり振り回したり触感を楽しんでいた。輪ゴムは安全だし、子供のオモチャにピッタリのようだ。
そこで良かれと思い子持ち2人にあげてみたが、まさかの無言。心外だ
そこで良かれと思い子持ち2人にあげてみたが、まさかの無言。心外だ
輪ゴムと目玉の残りを持ってきていたので、その場で作り子供へのプレゼントだと言って子持ちの2人に渡したのだが両方とも渋い顔をしている。親と子供の反応の差が激しすぎるでしょう。
後で大北さんが送ってくれた写真。渡すとすぐ笑顔になり「ゴムちゃん」と名づけてくれたそうだ
後で大北さんが送ってくれた写真。渡すとすぐ笑顔になり「ゴムちゃん」と名づけてくれたそうだ
古賀さんちでは兄妹で取り合いになる程だったとか。いや嬉しいな
古賀さんちでは兄妹で取り合いになる程だったとか。いや嬉しいな

ゴムーも意外と人気?

手が空いた所で、一応連れてきていた第1号ゴムーを取り出すと、女性陣が「こっちの方が筋張ってて良い」「筋張ってるのにクニャッとしてるのが良い」と褒め始めた。おお、そう言われてみると良く見えて来たぞ。
女性にはゴムーの方が人気。
女性にはゴムーの方が人気。
ちなみに近くのブースには「むすびめ君」という似たタイプがいた。
ちなみに近くのブースには「むすびめ君」という似たタイプがいた。
大きな違いは立てない所。
大きな違いは立てない所。

改善すべきは色!

こちらの「むすびめ君」の作者の方やお客さん達に改善点を聞いた所、「色つき輪ゴムを使ったらどうか」という意見が多かった。形状に関してはこれで充分可愛いという。家に帰って早速色つき輪ゴムを注文した。

より「人形」らしくしたい

色つき輪ゴムが到着する前に第三号を作りたい。ゴム丸は可愛いのだが、人形というよりキャラクターぽい。「輪ゴム人形」と語るならば本来人間の形をしているのが正しいのではないだろうか。生真面目な私は実はそこが気になっていたのだ。
3号「輪ゴム人間」できた。頭がパイナップルになってしまった(市販の人形に輪ゴムを巻き付けた)
3号「輪ゴム人間」できた。頭がパイナップルになってしまった(市販の人形に輪ゴムを巻き付けた)
頭のてっぺんの所は引っかかりが無くて他のようにギチッと固めるのは困難だった。そこで輪ゴムを上から適当に被せた所、このようなパイナップル頭になってしまった。これはこれで個性あって面白いよね。うん。
目くらいつけてあげるか
目くらいつけてあげるか
髪の毛も束ねてオシャレに。
髪の毛も束ねてオシャレに。
ただただ気持ち悪い
ただただ気持ち悪い
…
これは酷いぞー!
これは酷いぞー!
小さい色ゴムは手に入れていたので試しに口を作ってみる。一気に表情が活きたのはいいが、その酷さについのけぞって笑ってしまった。まさか輪ゴムに笑わされる日が来るとは思っていなかった。

スタイルの良い体に乗ったいびつな頭、そしてこの驚きの表情。「ワゴちゃん」にするか。

>ワゴちゃんを使った人形遊びの例

子供から大人まで楽しめる輪ゴム人形

輪ゴム人形はそんなに頭を使わなくても色々作れるし、ゴムを伸ばしたり握っているとなんだか落ち着くしお勧めだ。

いやそれだけじゃない、気づけば寂しい一人暮らしに愉快な仲間がたくさん増えてるじゃないか。何か嫌な事があれば投げつけてしまう事があるかもしれないが、輪ゴムでできた彼女らはきっと優しく跳ね返ってきてくれるだろう。これまで誰に言うでもなくつぶやいていた言葉を、これからは彼女らに向けて言おう。「行ってきます」と「ただいま」を。
「お帰り~!!!」
「お帰り~!!!」
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せっかくだから人形遊びしてみる

「さっ!アタイたちと遊ぶよ、カモン!」
「さっ!アタイたちと遊ぶよ、カモン!」
ワゴちゃんを見ているとつい脱力してしまうのだが、ようやく届いたカラー輪ゴムで仲間や可愛い犬も作り、一応のやり切った感はある。せっかくだからちょっと人形遊びしてみようか。

第一話「友達の輪」

ゴムー子「今日も気持ちいい朝ね~」「ワン!」
ゴムー子「今日も気持ちいい朝ね~」「ワン!」
「ワ…ワワワン!」「あらどうしたの?」
「ワ…ワワワン!」「あらどうしたの?」
「ヘッヘッヘッ」「ワワワン!」
「ヘッヘッヘッ」「ワワワン!」
イケゴム「すみません!うちの犬がいきなり走って行っちゃって」 ゴムー子「(はっイケメンだわ!)い、いえいえ、真っ白で可愛いワンコですね」
イケゴム「すみません!うちの犬がいきなり走って行っちゃって」 ゴムー子「(はっイケメンだわ!)い、いえいえ、真っ白で可愛いワンコですね」
イケゴム「ありがとう。あれ、犬達なんだかすっかり仲良くなったみたいですね。良ければ僕達も散歩友達になりませんか?」
イケゴム「ありがとう。あれ、犬達なんだかすっかり仲良くなったみたいですね。良ければ僕達も散歩友達になりませんか?」
ゴムー子「(ええっ、出会ったばかりなのになんて積極的なのこのゴム?カラーだからって誰でも引っかかると思ってるのかしら、女をバカにしないでよねっ。けど一応様子見ておきますか)もちろん、喜んで!」
ゴムー子「(ええっ、出会ったばかりなのになんて積極的なのこのゴム?カラーだからって誰でも引っかかると思ってるのかしら、女をバカにしないでよねっ。けど一応様子見ておきますか)もちろん、喜んで!」
どこにでもいそうな自意識過剰な普通の女子高生ゴムー子と、最近近所に飛んできたイケゴムとの偶然の出会い。そこからドラマが始まった。

ドラマと言えばライバルの登場だが…。
「♪あ~たい~はワゴちゃ~ん、ゴ~ム大将~♪」
「♪あ~たい~はワゴちゃ~ん、ゴ~ム大将~♪」
そこに登場するのは、見た目はゴツイが実は気の優しいワゴちゃん。みんなと仲良くしたいだけなのに、いつも言動が裏目に出て誤解されてばかりのおっちょこちょい。実はこっちが主人公だったりする。
「あら、楽しそうに話してるゴム達がいるわね。アタイも仲間に入れて貰えるかしら?ゴム丸お願い、ちょっと行ってきて!」
「あら、楽しそうに話してるゴム達がいるわね。アタイも仲間に入れて貰えるかしら?ゴム丸お願い、ちょっと行ってきて!」
ゴロゴロゴロゴロ!!
ゴロゴロゴロゴロ!!
友達になりたい一心でワゴちゃんは年の離れた弟であるゴム丸を思い切り転がし、楽しげにしているゴムー子とイケゴムの間に無理やり入りこもうとする。
「すみません、うちの弟がいきなり走って行っちゃって。良ければアタイも散歩仲間に入れてくれませんか?」
「すみません、うちの弟がいきなり走って行っちゃって。良ければアタイも散歩仲間に入れてくれませんか?」
「(えームリムリー…)」
「(えームリムリー…)」
しかしその乱暴さとワゴちゃんのビジュアルに2人ともドン引き。うまく友達の輪に入ることができなかったワゴちゃんは泣きながらその場を去ることとなった。
落ち込みながら帰るワゴちゃん。その後ろについていく犬達。ワゴちゃんはやたらと動物に好かれるタチなのだ
落ち込みながら帰るワゴちゃん。その後ろについていく犬達。ワゴちゃんはやたらと動物に好かれるタチなのだ
ゴム友達は少ないが、動物にはやたらと好かれるワゴちゃん。犬達はワゴちゃんを励まそうとしてなのか後ろについて来てしまう。

しかしゴムー子とイケゴムは、ワゴちゃんが無理やり犬たちを連れ去ったと思い込み、2人で結託してワゴちゃんに戦いを挑むことに…!
落ち込みながら帰るワゴちゃん。その後ろについていく犬達。ワゴちゃんはやたらと動物に好かれるタチなのだ
落ち込みながら帰るワゴちゃん。その後ろについていく犬達。ワゴちゃんはやたらと動物に好かれるタチなのだ
ゴム友達は少ないが、動物にはやたらと好かれるワゴちゃん。犬達はワゴちゃんを励まそうとしてなのか後ろについて来てしまう。

しかしゴムー子とイケゴムは、ワゴちゃんが無理やり犬たちを連れ去ったと思い込み、2人で結託してワゴちゃんに戦いを挑むことに…!
友達になりたかっただけなのに犬たちを連れ去ったと誤解を受け、2人の敵になってしまったワゴちゃん。この先どうなるのか?次週をお楽しみに!
友達になりたかっただけなのに犬たちを連れ去ったと誤解を受け、2人の敵になってしまったワゴちゃん。この先どうなるのか?次週をお楽しみに!

長いぞこのドラマ

4コマくらいのにしようかと思ったらいつの間にか友情・愛憎入り混じる壮大なヒューマンドラマが始まってしまった。皆さんこの先気になる所でしょうが、収拾がつかなくなってきたのでここで一旦終わりにしたいと思う。

しかし結局輪ゴムは大量に余ったので、もしかしたらこの茶番劇の登場人物は増え続けるかもしれない…
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