特集 2013年2月25日

ウイスキーの瓶に炎が沈む宴会芸

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昭和時代に、「ウイスキーの空き瓶に煙を詰めて燃やす」という定番の宴会芸があったらしいが、僕は聞いたこともない。
21世紀でこの文化が絶えてしまわぬよう、再現してみたいと思う。
1978年、東京都出身。漂泊の理科教員。名前の漢字は、正しい行いと書いて『正行』なのだが、「不正行為」という語にも名前が含まれてるのに気付いたので、次からそれで説明しようと思う。

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昭和の学生はみな、ウイスキーの炎を眺めた

かつてウイスキーが高級品だったころ、「ウイスキーの瓶が空く」というのは記念すべき出来事であったらしく、昭和時代の学生は欠かさぬ儀式のように、空いたウイスキーの瓶に炎を灯していたらしい。
高級だった角瓶。炎を眺め、ぜいたくの余韻にひたったのだという。
高級だった角瓶。炎を眺め、ぜいたくの余韻にひたったのだという。
しかしバブル以降の育ちである僕らは、そんな文化を聞いたこともない。
タバコの煙で作る輪っか、おしぼりのアヒルなど、役に立たない宴会芸ならだいぶ聞いてきたが、ウイスキー瓶で炎を燃やすなどというのは初耳だ。
聞いた手順通りに挑戦してみよう。

(1)ウイスキーの瓶を空ける

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学生の頃、毎日のように部屋飲みに明け暮れていた。部屋飲みの合間に大学に通っていた、と言ってもいい。
夜、バイトから帰ってきたら知らない人が自分の部屋で飲んでいたことがある。ここは公共施設か?と思ったが、疲れていたので僕は寝て、そのまま飲み会は続いた。
朝起きたら冷凍庫にハーゲンダッツが3個置いてあって、知らない人が来るのも悪くないなと思った。

(2)ウイスキーの瓶にタバコの煙を詰める

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まだタバコがかっこいい時代で、みんな当然のように部屋の中で吸いながら酒を飲んでいた。
みんなでタバコに火を灯け、空いたウイスキーの瓶に向けてひと吹きずつ煙を詰めていく。
インディアンの部族のようなこの儀式は、酔った昭和の若者たちにとってなかなかに盛り上がるひとときだっただろう。

(3)ふたを閉め、太ももにこすり付けて温める

この作業がいちばん大変だ。
少なくとも体温以上になるまで瓶をこする。かなりハードだ。(僕は翌日、筋肉痛になった)
みんなで煙を詰めた後、「おらーー!!」などと叫びながら、、酔っ払いみんなで順番に力の限り瓶をこする。
金はなくともノリと勢いだけはある若者には、無駄にもりあがる一瞬だ。

(4)マッチに火をつけ、中に落とす。

さあ最後にふたを開け、マッチを落とそう。
すごい、炎が燃えた! 青い炎が燃えた!
青い炎はすうっ、と上から下へなめらかにゆっくりと落ちていく。魔法のような一瞬だ。
溶けるように瓶に沈む青い炎
溶けるように瓶に沈む青い炎
ウイスキーで程よく酔っ払った頃に、タバコを吸ってクラクラしながら、瓶を全力でこすりまくる。酒は脳内に完全に回りきる。
そしてみんなで瓶を囲み、火照る体と、静かな気持ちで眺める、一瞬の青い炎。
こんなの絶対に、人生で何度思い出しても幸せになれる最高の記憶じゃないか。
空いた瓶って、吸い殻入れになったりとかしてたよねー。
空いた瓶って、吸い殻入れになったりとかしてたよねー。

学生時代に戻ってやってみたい

ウイスキーの簡単には燃えないアルコール度数と、みんなの力でこすって温める熱気と、気化したアルコールと煙の粒子のバランスと、タバコがカッコ良かった時代の憧憬と、さんざんに飲み会に使われた僕の部屋と、Yシャツと私と、とにかくいろいろなものが混ざって、青い炎はゆっくりと燃え、瓶に沈む。
若い人はぜひやって欲しい。絶対これ、盛り上がります。
それはそうと、ペットボトルに移したウイスキーは、恐ろしいほど麦茶に見える。
それはそうと、ペットボトルに移したウイスキーは、恐ろしいほど麦茶に見える。
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