特集 2013年4月22日

水のおかわりが8種類あるカフェ

アートだけでは終わらない
アートだけでは終わらない
北アルプスの清流が流れる自然豊かな土地、長野県の安曇野。地名の響きだけで美しい景色や澄んだ空気が思い起こされてくる。

美術館やおしゃれなレストランも多々あり、別荘地としてもよく知られているだろう。今回はそんな中から見つけた、個性的なカフェを紹介したいと思う。
1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」

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芸術が爆発しそう

やってきたのは安曇野市にある、JR大糸線の穂高駅。神社のようにも見える駅舎が美しい。
屋根の角度と壁の木目がかっこいい
屋根の角度と壁の木目がかっこいい
駅前には観光情報センターがある。まずはそこで周辺の情報を仕入れることにしよう。
おもしろそうなカフェを発見
おもしろそうなカフェを発見
気になったのは「スプーンアート」という名前のカフェのチラシ。その名の通り、スプーンを材料にしたアート作品がたくさんある店とのこと。チラシ写真のニンジンを抱いたウサギは、よく見ると確かにスプーンでできているではないか。

これは楽しそう。駅からもすぐそこなので行ってみよう。
明るい雰囲気の店内
明るい雰囲気の店内
スプーンなどを使った作品が並ぶ
スプーンなどを使った作品が並ぶ
すぐに見つけて店内に入ってみる。大きな窓から射した光が黄色い壁を照らし、それだけでもう楽しい雰囲気が漂う。棚にはスプーンを素材とした作品がさまざまに並ぶ。
独特の曲線が光るスプーンアート
独特の曲線が光るスプーンアート
スプーンが考えたこともない使われ方をしていて、言われなければそうとは気づけないかもしれない。写真の白鳥、首部分の連なり方が特徴的だ。
かわいい動物モチーフの作品たち
かわいい動物モチーフの作品たち
シンプルながら楽しいおたまじゃくし
シンプルながら楽しいおたまじゃくし
素材を生かした果物や野菜
素材を生かした果物や野菜
男の子が目を輝かせそうなロボットも
男の子が目を輝かせそうなロボットも
作品のモチーフは多岐にわたっていて、眺めているだけで感心させられる。匙の丸さがいろいろな使われ方をしていて、特にブドウは金属の質感と果物というモチーフの組み合わせが意外。
作者の経歴もわかる
作者の経歴もわかる
ご主人はいくつもの芸術賞で選に入っているようだ。確かにこんな発想の作品はこれまで見たことがない。

しかしこの店は単なるギャラリーではなく、あくまでカフェ。改めて席につくと、そのご主人が水を持ってきてくれた。
遊び心のあるトレー
遊び心のあるトレー
水のコップが乗ってきたおぼんがまた面白い。スプーンがたくさんくっついているのに加え、上にはハンドルまで付いている。黒い部分をひねるとウーウーとサイレンが鳴り響くようになっていて、私たちを楽しませてくれた。

そして「こちらがメニューです」と手渡されたものを開いてみよう。
メニューも斬新
メニューも斬新
それは雨傘。開くと中にドリンクや軽食が書かれているのがわかる。うん、これもアーティスティックな感じ、するかもしれない。
考え込んでしまうメニューばかり
考え込んでしまうメニューばかり
逆に最後の一行が気になる
逆に最後の一行が気になる
中にある品々も、やっぱり一ひねり加えてある。「グルグルゼリー」や「キーマカレー一番しぼり」など、想像力を刺激される名前がずらっと並ぶ。

それだけに、軽食ゾーンの最後にある「焼ソバ」が異彩を放つ。なんでこれだけ普通なんだろう。凝ったメニューを考え過ぎて疲れてしまったのだろうか。

そしてこの店、珍しいことにカフェにも関わらず食べ放題メニューまで備えている。
そろそろいいだろう
そろそろいいだろう
ここまでぼかしてきたものが隠しきれなくなってきた。食べ放題・飲み放題とされているものを見ればわかる。明らかにふざけてる。
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既存の安曇野観を超えた存在

もういいだろう。ここまでギリギリで安曇野のオシャレなアートカフェとして紹介してきたが、この店はそうした枠だけには収まらない。
改めて外観を紹介
改めて外観を紹介
紹介をスルーしていた店構えはこんな感じだ。この店が単なるすかした洒落カフェではないとよくわかるはずだ。

「スプーンアート」という店名アピールはともかく、気になるのは「おもしろカフェ」の看板。個人的には自ら「おもしろ」を名乗る相手には、つい身構えてしまう癖があるからだ。
一見騙される焼肉風メニュー
一見騙される焼肉風メニュー
いよいよおかしい
いよいよおかしい
卓上のカトラリー入れ
卓上のカトラリー入れ
店員さんの呼び鈴はこれ
店員さんの呼び鈴はこれ
しかしこの店の場合、一つ一つのおもしろの質への評価は様々だろうが、おもしろ密度の高さは訪れた人の間に異論はないだろう。息が苦しくなるくらいの圧縮度で迫ってくる。

これでもかとおもしろ洪水が浸食してきて、実に落ち着かない気持ちになる。ざわめく心のまま「呼び鈴代わりに押して下さい」と置いていかれた鶏のおもちゃの腹を押す。予想以上の音量で「ヴァ~ッ!」と鳴り出すから、ざわめきはより激しくなる。
オーケー、これはわかってる
オーケー、これはわかってる
メニューの中から「関西風シュークリーム」なるものを注文したところで、一度トイレに行っておこう。ドアの前には上のような表示があるが、このことは予習済み。店頭にあった看板に「トイレおばけやしき」と書いてあったからだ。
じごくはイヤだ
じごくはイヤだ
でも天国もなんか信用できない
でも天国もなんか信用できない
ブラックライトで照らされたトイレの個室前は、不気味さと文化祭テイストが入り混じって、アートのことを忘れさせる。個人的にはお化け屋敷の類はとても苦手なので、ここは天国の方を選んでおこう。
新しい天国観
新しい天国観
サイゼリヤの天井的なものを想像していた私を迎えてくれたのは、でかい氷川きよしのポスター。赤と緑の光が壁を駆けめぐっていて、ここもまた落ち着いて用を足せない。天国ってこんなおかしくなりそうな感じのとこだったろうか。
また違うおぼんがやってきた
また違うおぼんがやってきた
なるほど、関西風シュークリーム
なるほど、関西風シュークリーム
とりあえず店内に生還すると、注文の品が運ばれてきた。謎めいていた「関西風シュークリーム」は、プチシューにチョコなどがかかっていてたこ焼きに見える、というわけだ。氷川きよしのトイレと違って、意味がわかるってホッとするものだ。

そして、これが乗ってきたおぼんがまた別バージョン。湯飲みやヤカンが固定されていて、どれが運ばれてきた品なのかわかりにくい程だ。
言ってることの軸がおかしい
言ってることの軸がおかしい
おぼんは他にもまだまだあるようで、店内の掲示には40種類と書いてある。今回は傘で出てきたメニューも、全部で8種類とのこと。アピールポイントが新機軸なのだ。
半分セルフサービスの水おかわり
半分セルフサービスの水おかわり
「水のおかわり8種類」とあるのも、水そのもののバリエーションではない。「おかわりの仕方」である。

ご主人が持ってきてくれたのは、自分で蛇口をひねると水が出てくる仕掛けのあるトレー。これはシンプルな方で、店内を見渡すと他にも目につく。
そこからも水が出てくるのか
そこからも水が出てくるのか
出ました下ネタ
出ました下ネタ
自転車のカゴバージョンはまだおとなしい方で、右の写真の股間バージョンはあからさまに下ネタ。

そう、これもここまでぼかしてきたが、この手のネタでもアグレッシブに攻めてくる。この店に興味を持って行ってみたいという方は、自分がどれくらいそれらを受け入れられるか、試すくらいのつもりで臨んでいただきたい。

こうした写真を撮っていると、ご主人が「よかったら一緒に撮りましょうか?」と声をかけてくださった。
僕の負けです
僕の負けです
視界が心配に思えるご主人は、この格好でコーホー言いながら調理や接客をしているわけではないので誤解なきよう。これはあくまで記念写真用の正装だ。

実際そうなってる
実際そうなってる

「これだけ紹介されてしまうと行く楽しみがなくなった」と思う方もいるかも知れないが、これでも一部しか紹介していない。これらの予備知識があっても、この店の非日常感は、その空間に身を置いてしかわからないと思う。

上の写真の「となりはトロロ」、矢印の先にあるのはおろしかけの山芋だ。ダジャレは現実化されると、言葉遊びとは異なる訴求力がある。
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