特集 2013年5月3日

福井の油揚げがあつい

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福井県は油揚げの消費量が日本一だそうだ。はぁ、油揚げをなぜそんなに…。そう思いつつ福井の油揚げを食べてみたら衝撃を受けた。

福井の油揚げは厚いのだ。厚揚げじゃなくて油揚げとして厚い。そして熱い。
1983年三重県生まれ、大阪在住の司法書士。
手土産を持参する際は消費期限当日の赤福で受け取る側に過度のプレッシャーを与える。

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存在感が違う

なんだ、あげコーナーって。
なんだ、あげコーナーって。
福井の油揚げ、どんなものかとスーパーに行って探してみたら油揚げだけで一コーナー出来ていた。コーナーの大きさが鶏肉とほぼ同じ。福井県民にとっての油揚げの存在の大きさがうかがい知れる。
何だこのでかさは。
何だこのでかさは。
こっちは厚さが驚異的。
こっちは厚さが驚異的。
展開量の多さにも驚いたが、油揚げ一つ一つの存在感が全然違う。凄くデカイのがあったり、持ち上げるのが大変なほどずっしりと厚いものがあったりと油揚げ自体が違う。

油揚げにこんなにバリエーションがあるなんて。これは、色々食べ比べてみたい。

いざ、油揚げ屋さんへ

買ってその場で食べる気セット。
買ってその場で食べる気セット。
油揚げのパッケージを見てみると、発売元として福井市の中心部辺りの住所が書かれているものが複数あった。じゃあ、直接行けば揚げたてとか食べれるんじゃないかと行ってみる。
あっ、デカイ
あっ、デカイ
福井駅から30分くらい歩き、目的地へたどり着いた。さぁ、どこだ、揚げたての油揚げは!と思ったら、建物がデカイ。あっ。
予想していた厚揚げ屋さんのイメージ。
予想していた厚揚げ屋さんのイメージ。
厚揚げ屋さん、想像以上にデカかった。軒先で油揚げ一個から買えるよ!みたいな所を勝手にイメージしていたのでひるむ。現実は完全に工場である。

これは、揚げたてどうこうの話の前に、厚揚げ一丁とか売ってくれないのではないか。一兆単位での仕入れの話にならないか。
どう見ても小売客の到来を前提としていない出入り口。
どう見ても小売客の到来を前提としていない出入り口。
折角来たのだから、どうにか油揚げが欲しい。意を決してお願いをしてみようと出入り口を開けると、応接室と書かれた部屋からパチン…パチン…と爪を切る音がしてきた。

あっ、なんか、これは、無理だ。

揚げたて食べれたよ

スーパーに卸している位だから、そりゃあ大量に作らねばならぬ。一個だけ売ってくれる所なんてないんじゃないかと思いながらも、他に揚げたてを食べる手段が思いつかないので、とりあえず違う油揚げメーカに行ってみる。
おっ、これはいけそうな雰囲気!
おっ、これはいけそうな雰囲気!
これで売っていなかったら、スーパーで買って帰って食べようかな…。と思っていたが、二件目で光が見えた。豆腐屋さんの冷奴とか書いてある。これは直売してくれそうだ。
揚げたてだ!!
揚げたてだ!!
恐る恐る入ってみると、小窓があってカウンターの様になっており豆腐類の値段が張りだしてある。更に右を向くと、厚揚げがジュワジュワと揚げられているではないか!
まさに揚げたて!アツアツを売っていただいた。

福井の油揚げは超ジューシー

あつあつ厚揚げ(商品名)を手に入れたぞ。
あつあつ厚揚げ(商品名)を手に入れたぞ。
ついに手に入れた福井の厚揚げ。しかも揚げたて。手に持ってみても熱々ですぐにでも食べたい。近くに芝生の公園があったのでそちらですぐに食べてみる。
お醤油でいただきます。
お醤油でいただきます。
今回は出番がないかと思われたお皿とお醤油が大活躍。揚げたての厚揚げは、福井の油揚げは一体どんな味がするのだろうか。
じゅわーっ。
じゅわーっ。
歯ごたえのある表面を噛むとホロホロに柔らかい中味が広がって、口の中にじゅわーっと旨味の濃い液体があふれ出してくる。うあわぁ、油か!?と、思ったがどうも違う。豆腐だ、肉汁みたいな豆腐汁。
ハンバーグみたいに、上から押したら肉汁ならぬ豆腐汁があふれてくる。
ハンバーグみたいに、上から押したら肉汁ならぬ豆腐汁があふれてくる。
ジューシーでしっかりと食べごたえがあるのに、さっぱりとしている不思議な感覚。大豆は畑の肉と言うが、ミンチカツみたいだ。畑のミンチカツ。これは美味い。
家の近所で買った厚揚げ。中身の違いが一目瞭然。
家の近所で買った厚揚げ。中身の違いが一目瞭然。
今まで食べていた厚揚げは豆腐に揚げ目を付けたものだったが、福井の厚揚げは物凄く分厚い油揚げ。面白いし美味しい。もっと色々食べてみよう。
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油揚げでも千差万別

こちらも小売り感低め。
こちらも小売り感低め。
気を良くしてまた違う油揚げメーカに来てみたが、こちらも直売を大々的にはしていなかった。
凄く厚そうな厚あげって文字。
凄く厚そうな厚あげって文字。
オフィスのような所で「油揚げって、売ってくださいませんか…?」というと「あぁ…はい」と売ってくださったが、パッケージングされて、すでに冷蔵庫で冷やされていたものだった。

油揚げ大国福井といえども揚げたてにありつくのはなかなか難しいのかもしれない。
油揚げに今まで感じたことのない魅力を感じる。
油揚げに今まで感じたことのない魅力を感じる。
と、いう事で家に帰って焼いて食べてみた。大きさのせいもあるが、油揚げが圧倒的に主役級の存在感。あまりにも美味そうである。
表面が硬めで中がモロモロッとしていて対比が楽しい。
表面が硬めで中がモロモロッとしていて対比が楽しい。
パリッとした焼き目の食感香りと上からかけたポン酢がドドッと攻めて来て、その後にほわほわーっと広がるモロモロ豆腐と豆腐汁が混ざって徐々にマイルドになっていき最終的に旨味と甘みが残る。ストーリー仕立ての様な油揚げ。

調理法の違いもあるが、前に食べた油揚げと食感、味が全然違って面白い。
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食べた感想表。右に行くほど中味がふわふわの油揚げ化している状態。上下で表面の食感を表している。

二つ食べただけで福井の油揚げの異質さをまざまざと見せつけられたが、まだまだこんなものじゃなかったぜ。

いっぱい食べます

ちなみに、一軒目に行って厚揚げを買えなかった所の物もスーパーで買っておい
バリバリ感強め。(岸田食品大判揚げ)
バリバリ感強め。(岸田食品大判揚げ)
こちらはしっかりと揚がっていてこんがりとしたキツネ色。歯ごたえが良くて食べごたえがある。
内部構造が本当に油揚げ。
内部構造が本当に油揚げ。
内部も外側は油揚げ化でふんわりしており、中心の辺りはみっちりと詰まっていて味が濃い。豆の味を強く感じる一枚だった。
今回最厚の一枚。(ウスヤ食品 おたの厚揚げ)
今回最厚の一枚。(ウスヤ食品 おたの厚揚げ)
更にスーパーで買っておいた物をもう一枚。一枚と言うより、一塊と呼ぶ方がいいかもしれないくらいの厚さ、大きさ。
だいぶ豆腐よりな存在
だいぶ豆腐よりな存在
こちらはだいぶ豆腐よりだが、表面の油揚げ化もしているので味の絡みが良くて豆腐のプルンとした食感との差が大きくて面白い。そして豆腐自体もみっちりと詰まっている感じでデカイしみっちりだし、存在がデカイ。
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福井の油揚げと一言で言ってきたが、それぞれで味わいが全く違う。しかしどれも主役になれる力があって調理法や好みでどれを選ぶかが変わってくるだろう。そりゃあ福井の油揚げ消費量が他より多いよな。という感じ。

次は食堂併設の油揚げ屋さんに行って食べてきますよ。
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油揚げ食べるのも楽じゃないぜ

駅がカッコイイ。
駅がカッコイイ。
レンタサイクルという相棒を手に入れた。
レンタサイクルという相棒を手に入れた。
福井市から少し離れた永平寺というところに人気の油揚げ屋さんがあると聞いてやってきた。駅からも距離があるという事でレンタサイクルで向かう事にした。
何か大変な所へ向かっているような。
何か大変な所へ向かっているような。
山をひとつ越えてしまった。
山をひとつ越えてしまった。
地図で調べると駅から7キロちょっとと書いてあったので自転車ならすぐだろうと思って走っていると、山に向かい、ひと山越えることとなってしまった。
なにがだ。
なにがだ。
なんでこんなことになっているのか、こんな所に油揚げ屋さんは本当にあるのか。そんな思いを友人にメールでグチっていると「狐に化かされてるんじゃないですか?油揚げだけに」と上手いこと言った風な返信が来てイラッとした。

大人気すぎる油揚げ

山の中に油揚げ屋さんは本当にあった。
山の中に油揚げ屋さんは本当にあった。
ほんとに大人気すぎる
ほんとに大人気すぎる
自転車で走って約一時間弱、山の中に油揚げ屋さんが見つかった。必死の思いでたどり着いたが、このアクセスの悪さで人気ってホントかよ。と思っていたら、駐車場は満車で、飲食スペースは1時間待ちだった。

何だこの人気っぷりは。周りは本当に何もないのにここだけ大混雑。みんな、狐に化かされてるんじゃないですか(ドヤッ)!?
これが大人気の油揚げ一枚定食だ。
これが大人気の油揚げ一枚定食だ。
自転車で山を越えて、一時間待ってお目にかかる油揚げ。しかも定食で1260円。そのお姿がこちらっ。

漆の器に上品に乗せられた油揚げは、今、たった今揚げられたばかりの様でシューッシューッという音を立てている。
カリッカリすぎて箸が通らない。
カリッカリすぎて箸が通らない。
薬味を乗せていただこうとするも、箸が通らないくらいにカリッカリ。しょうがない!と思って切らずにかぶりついたらあふれ出るジューシーさと熱さで、いまだかつてないレベルで口の中がデロデロになった。
油揚げ化100%
油揚げ化100%
恐ろしい食感とジューシーさ。中まで完全に油揚げ化されており、他の地域の人たちが認識している厚揚げと真逆を行くような要素の詰まった油揚げだ。
油揚げからあふれ出た水分の量が凄い。
油揚げからあふれ出た水分の量が凄い。
見た目のインパクトから食べた時の衝撃。それに売りだし方がおしゃれている。これは人気になるのも納得だ。
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こっちは国道沿いでアクセス良い。
こっちは国道沿いでアクセス良い。
更に、近くに油揚げの直売をしている所があったのでやってきた。こちらは道が平坦でとても良い。自転車にやさしい厚揚げだ。
飲食スペースのメニューはこの四つのみ。潔さ。
飲食スペースのメニューはこの四つのみ。潔さ。
さっきとは打って変わっての落ち着いた感じと庶民派な雰囲気。何と定食が450円。吉野家の牛丼大盛り(440円)とほぼ同じ値段。

そして今ホームページ見てみたら、一日におから一トン出るから入れ物持ってもらいに来てね!って書いてあった。何という地域密着感。
えっ、450円!?
えっ、450円!?
ホットあげ定食を頼むとカウンターの奥からジュワジュワと揚げる音が聞こえて来て、しばらくしてから来たホットあげ定食は450円とは思えないボリュームと内容。

写真を撮っていたらば「えっ、写真撮るならこれも一緒に撮ってって~」と言って豆乳を下さった。なんというサービス精神の旺盛さ。
満足感の高さ。
満足感の高さ。
こちらのあげは中味はほぼ豆腐のままの一般的な厚揚げに近い。しかしながら揚げたての香ばしさ、コクとバリバリの食感が凄く美味しい。こっちもあるのか、こっちも美味いのか福井の油揚げたちは。
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適当に作っていた表であるが、ほぼすべての辺りが埋まってしまった。福井にはまだ色々な油揚げが売られている。どんな油揚げでも自分好みの油揚げが食べられる。福井は素晴らしい油揚げ天国だ。そりゃあ消費量日本一になるわ、凄いわ福井。
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厚い油揚げが食べたい

最も油揚げ力の高かった谷口屋の豆腐を買ってきた。
最も油揚げ力の高かった谷口屋の豆腐を買ってきた。
買って帰ってきた分も含めてたっぷりと堪能した福井の油揚げ。しかしながら、やはり思う、いつでも食べたいと。あれ、家でも作れないかな?
丸ごと揚げれば良いんだろ(単純)。
丸ごと揚げれば良いんだろ(単純)。
と言う事で揚げてみよう。おそらく揚げ方が違うだけで福井じゃないと出来ないという事は無いはずだ。
感じるダメな雰囲気。
感じるダメな雰囲気。
同じメーカの豆腐を使ったから、同じように出来るはずだ。と、揚げるがどうにも旗色が悪い。前に油揚げを作ろうとして全く膨らまなかった時と同じ感じになっている。
すが入った状態と油揚げは違う。
すが入った状態と油揚げは違う。
無理に揚げ続けると良くないと判断して早めに取りだす。切ってみるとやはり油揚げ化ではなく、すが入った様な状態になっていた。
油揚げ向きかどうかで同じ大きさの豆腐がこれくらい変わる。(良くわからない形していますが、油揚げです。)
油揚げ向きかどうかで同じ大きさの豆腐がこれくらい変わる。(良くわからない形していますが、油揚げです。)
以前油揚げを作った際の経験から、油揚げ化するには揚げ方とかよりも豆腐自体の資質が大きな違いになるという事が分かっていた。だから同じメーカの豆腐なら出来るだろうと思ったが今回揚げたやつ、そう言えば絹豆腐だった。そりゃだめだ(油揚げは木綿豆腐から作る。(たぶん))。
でも食べたら美味かった。
でも食べたら美味かった。

油揚げは才能なんですよ

福井の豆腐なのに福井の油揚げにはならなかった。きっと油揚げには油揚げ用の豆腐を作って揚げているのでしょう。そう、油揚げは才能なのだ。
我らが油揚げの天才、とうふ庵 京鳳のもめん。
我らが油揚げの天才、とうふ庵 京鳳のもめん。
以前近所のスーパーに売られていた10種類の豆腐のうち最も油揚げに適していた豆腐。近所の星、京鳳のもめんで勝負をかける。
丸ごとドン。
丸ごとドン。
以前薄切りにしたものであれば見事に油揚げとなったが丸ごとではどうなるか。我らが希望、京鳳よ頑張ってくれ。
じょわじょわじょわじょわじょわ
じょわじょわじょわじょわじょわ
良くわからないが、低めの温度でじっくりと揚げていく。なんとなく、高温だと焦げそうでしょ。少し浮かんできたのでフライ返しで押さえて鍋を見つめる。
フライ返しで押さえられない浮力。
フライ返しで押さえられない浮力。
しばらくすると色がついて膨らんで来た。これくらいの温度で良いのかどうか、不安ながらも見つめていると、重しとして置いてあるはずのフライ返しを持ち上げて浮かび上がってきた。

中の水分が気化したのか、油揚げ化している証拠か。浮力が凄い。油揚げすべてがこうなのだろうか。福井では浮輪に困らなさそうだ。

自作油揚げの恐ろしい美味さ

豆腐を揚げ始めて20分。さていったいどうなっただろうか。
座布団が出来た!
座布団が出来た!
これ以上揚げると焦げちゃいそうだなぁと思って豆腐を引き上げる、と、おぉ!ぷっくりと膨らんでカリッとしている。ちゃんと座布団みたいになっているぞ。これは、もしかして出来たんじゃないか。
表面バリッバリ。
表面バリッバリ。
表面の質感は硬いフランスパンみたいになっているが、中はどうか、味はどうか。
うおおおおおお、油揚げ化しておる!!
うおおおおおお、油揚げ化しておる!!
恐る恐る持ち上げると中はふわっと油揚げ化していた。わっ、で、出来たと喜びながらも熱いうちに急いで食べたら人生史上二度目位に口の中がデロデロになった。

バリバリふわふわ、ジュワッジュワーで凄く美味い。これは出来たといえるのではないか。やはり油揚げは才能、とうふ庵 京鳳最高や!
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今回の自作油揚げは大体ここら辺な感じ。揚げ時間で融通は効きそうなので色んな揚げ時間で楽しめそうだ。

厚油揚げ、とうふや油揚げが好きな方ならば是非ともオススメ出来る一品。福井に行くか油揚げの才能のあるお豆腐を探すと良いでしょう。


福井の油揚げは予想以上に凄かった。身近にある食材なのに違う地域では全然違う食べ物であった。

折角だからと友人にもお土産で買って帰ったら「ありがとう、近所のスーパーで見かけて興味あったけど高かったから手が出なかったの」と言われた。えっ、近所にも売ってるの…!?

ショックではあったが近くでも食べられる。それに、この美味しさは世界に広がってしかるべき。自分で揚げたり買ったりして福井風の油揚げを今後も楽しんでいけるのがうれしい。
巨大がんもにも興味が沸く。福井の豆腐加工食品はデカイ。
巨大がんもにも興味が沸く。福井の豆腐加工食品はデカイ。
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