特集 2013年6月4日

“プレーンお好み焼き”が持つ無限大の可能性

小麦粉と水が織り成す、無限の可能性を括目せよ
小麦粉と水が織り成す、無限の可能性を括目せよ
「プレーンお好み焼き」というものがある。一切の具材を入れず、小麦粉を水で練って焼いただけの極めてシンプルなお好み焼きだ。

それはもはやお好み焼きではないという意見があるかもしれないが、お好み焼きとは好みの具材を使うからお好み焼きと言うのだろう。具材を入れないのもまたお好みである。

お金が無い時や、あるいはてっとり早くお腹いっぱいになりたい時に便利。プレーンお好み焼きは、そんな素敵な食べ物なのだ。
1981年神奈川生まれ。テケテケな文化財ライター。古いモノを漁るべく、各地を奔走中。常になんとかなるさと思いながら生きてるが、実際なんとかなってしまっているのがタチ悪い。2011年には30歳の節目として歩き遍路をやりました。2012年には31歳の節目としてサンティアゴ巡礼をやりました。(動画インタビュー)

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安くて腹もちが良い、プレーンお好み焼き

プレーンお好み焼きの持つ最大のメリットといえば、やはり安く済むという事だ。

普通のお好み焼きは、肉やら野菜やらをあれこれ買ってくる必要があるので、意外とお金がかかるものである。しかしプレーンお好み焼きならば、小麦粉だけを用意すれば良い。

小麦粉は1kgで200円ぐらい。1kgあれば10枚は焼けるので、一枚あたりの費用は20円だ。薄く焼く場合は10円である。
小麦粉を計ったりはしない。自分で食べられると思う量を使う
小麦粉を計ったりはしない。自分で食べられると思う量を使う
水も計量はしない。良い感じと思う量を入れる
水も計量はしない。良い感じと思う量を入れる
料理と言えば材料の計量が鉄則だが、プレーンお好み焼きの場合にはむしろ計らない方が良い。

いつも同じ焼き上がりだと、飽きてしまうのだ。時には固かったり、時にはゆるかったりと、その時々によって出来上がりの差異を楽しむべきである。
良く混ぜる。多少ダマになっても気にしない
良く混ぜる。多少ダマになっても気にしない
あとはフライパンで焼くのみ。片面3分、生焼けには注意しよう
あとはフライパンで焼くのみ。片面3分、生焼けには注意しよう
はい、あっという間にできあがり
はい、あっという間にできあがり
小麦粉を練って焼くだけなので、下準備なども不要である。調理時間は10分足らず。お腹が空いたらすぐに作る事ができる。

しかしこれだけだと、さすがに味もへったくれもなく、食べる事は困難である。お好み焼きとしての体裁を成す為にも、ここはソースが不可欠だ。
ソースを塗りたくって食べよう
ソースを塗りたくって食べよう
ほら、立派なお好み焼き
ほら、立派なお好み焼き
ソースを含めても、まぁ、一枚30円は上らないだろう。驚くほどに腹もちも良く、一枚食べればしばらくは何も口にしたくなくなる。そのような点でもリーズナブルだ。

しかも、具材が一切皆無という極限的なシンプルさ故に、どのような味付けでも調和するのが嬉しい。ソース味に飽きたら、別のものを塗れば良いのである。
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何を塗ってもそれなりにイケる

というワケで、ソース以外のものを塗ってみる事にする。

再び小麦粉を溶いて焼こう。調理時間が短いプレーンお好み焼きは、何枚でも好きなだけ作る事ができる。
今度はややゆるめ、薄く焼く(先程のが腹にたまっているので)
今度はややゆるめ、薄く焼く(先程のが腹にたまっているので)
通常よりふにゃっとした感じにできた
通常よりふにゃっとした感じにできた
今度は砂糖醤油で行こう
今度は砂糖醤油で行こう
醤油の香りが食欲をそそる
醤油の香りが食欲をそそる
ん……これは、濡れ煎餅だ。濡れ煎餅の味と食感だ
ん……これは、濡れ煎餅だ。濡れ煎餅の味と食感だ
醤油はソース程パンチが効いていないので、小麦粉の方が主張強めになる事が多い。しかし今回は薄目に焼いた事が功を奏し、ちょうど良い塩梅であった。

むしろ、くにゃっとした食感の生地に砂糖醤油が染みこみ、まるで濡れ煎餅のような食感でおもしろかった。このような思わぬ発見もまた嬉しいものだ。
お次はケチャップでキメる
お次はケチャップでキメる
ケチャップは砂糖醤油以上に甘口である。これはこれで良いのだが、コクが足りないので飽きも早い。ソースを少し混ぜたりと、工夫の余地があるだろう。
ポン酢もイケる
ポン酢もイケる
あっさり和風なポン酢醤油で食べるのも良い。大根おろしやもみじおろしなどを乗せれば、よりさっぱりとおいしく食べられるだろう。

……とまぁ、プレーンお好み焼きは基本的に何にでも合うので、どのように食べてもそれなりにイケる。

家にある調味料の何を使っても良いのだ。お好み焼きの厚さや固さ、そして調味料の組み合わせにより、その可能性はまさに無限大である。
何を塗って食べてもOK。いろいろ試行錯誤して楽しもう
何を塗って食べてもOK。いろいろ試行錯誤して楽しもう
小麦粉を水で練って焼いたプレーンお好み焼きは、要は発酵させないパンである。今度はパンと同じように、バターを塗って食べてみた。
バターを塗り塗り塗りたくる
バターを塗り塗り塗りたくる
んー、生地に味が無いためか、ビミョーに物足りない
んー、生地に味が無いためか、ビミョーに物足りない
醤油を少し垂らせばより味に深みが出る
醤油を少し垂らせばより味に深みが出る
バターだけだと小麦粉の味が勝って微妙だが、醤油を垂らす事で調味料と生地の強さがとんとんとなり、イケるようになった。

アツアツのご飯にバターを乗せ、醤油を垂らして食べるバターご飯が私は好きだが、これもそのような感じだろう。
シロップをかけてデザートに
シロップをかけてデザートに
今度は少し失敗してしまい、水を多くし過ぎて生地がやわやわになってしまった。どうしようかと少し迷ったが、シロップをかけて食べてみた。

これがとろけそうな程に柔らかい生地とよく絡み合って、なかなかおいしかった。バターを加えればもっと良いかもしれないが……って、それはもはやホットケーキだ。
お次もデザート。バナナを包んでみた
お次もデザート。バナナを包んでみた
プレーンお好み焼きで丸ごとバナナをやってみた。が、生地に味が無いのでいささかのっぺりとした味わいである。

バナナの持つ甘みを堪能できるとも言えるが、やはり生地を少し甘くするか、あるいは生クリームを絞ったりするのが良いだろう。
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野菜を入れても良いが、一品だけ

プレーンお好み焼きは、余った野菜をおいしく食べる為の手段でもある。

冷蔵庫の底でダメになりそうなキャベツを、ネギを、テキトウに切ってぶち込んでみれば、それだけで立派な御馳走だ。
葉っぱ一枚でもあれば、十分な具材だ
葉っぱ一枚でもあれば、十分な具材だ
青みが差し、みずみずしさであふれるフライパン
青みが差し、みずみずしさであふれるフライパン
ジャキジャキした歯応えが嬉しい
ジャキジャキした歯応えが嬉しい
うん、やはり野菜は良いものだ。キャベツの葉っぱ一枚入れるだけで、随分と真っ当な料理になった。

面倒なので千切りにはせず、料理ばさみでテキトウに切っただけだったが、それが逆にジャキジャキとした歯触りと食感を生み、具が入っている事をがっつり実感できて実に良い感じだ。
しなしなになったネギ。お前もお好み焼きにしてやろうか
しなしなになったネギ。お前もお好み焼きにしてやろうか
ネギは大好物なので、丸々一本使った
ネギは大好物なので、丸々一本使った
良い香りが漂ってくる
良い香りが漂ってくる
ネギのぬめりとピリリとした辛みがたまらない
ネギのぬめりとピリリとした辛みがたまらない
当然ながらこれもまたうまい。いや、ぶっちゃけて言うと、具材たっぷりな普通のお好み焼きよりもうまい。

野菜を一品しか入れない事で、その野菜本来のうまさが際立つのだ。プレーンお好み焼きは、野菜の個性を発揮させる格好の舞台である。
ニラは痛みが早いので、使うタイミングを逃したらすぐにお好み焼きへ
ニラは痛みが早いので、使うタイミングを逃したらすぐにお好み焼きへ
これはもう、うまくないはずがない
これはもう、うまくないはずがない
って言うか、これ、ニラ焼きってやつだよね
って言うか、これ、ニラ焼きってやつだよね
ソースでもOK、ごま油入りの醤油でもOK
ソースでもOK、ごま油入りの醤油でもOK
いやはや、文句無しにうまい。これでもかと言うくらいに、野菜を食べられる幸せを噛み締める事ができた。

日本料理は引き算の料理だという。余計なものを極力省き、素材そのものの味を最大限に引き立てようという考え方である。

素材のうまさを十分に堪能できる野菜一品だけのお好み焼きは、まさにその理念に合致した料理といえるだろう。
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足し算の手法はどうだろう

日本料理が引き算なのに対し、西洋料理は足し算の料理だという。数多くの具材やスパイスを加える事で、複雑なうまみを出すという考え方だ。

今度はその西洋の考え方、足し算の手法をプレーンお好み焼きに適用してみよう。生地に味を足すのである。

何を足せば良いかと考えていた所、鍋に昨晩のカレーが残っていたので、それをぶち込んでみる事にした。
余りのカレーを生地に加える
余りのカレーを生地に加える
しっかり混ぜて小麦粉と馴染ませる
しっかり混ぜて小麦粉と馴染ませる
食欲をそそる良い香りだ
食欲をそそる良い香りだ
うーん、単体ではちょっと味が薄いかな
うーん、単体ではちょっと味が薄いかな
ソースを付けつつ食べるとイケる
ソースを付けつつ食べるとイケる
イモなどが入っているかつスパイスが香る為、インドのサモサのような感じである。

我が家のカレーはかなり濃い目の味なのだが、さすがにお好み焼きの生地に混ぜると薄まってしまうのか、ソースが必要だった。

ソースではなく醤油を付けても良いだろう。カレーに加えるのはソース派か醤油派か。それぞれの好みに合わせるのが吉である。
私は味噌が好きなので、生地に練り込んでみる
私は味噌が好きなので、生地に練り込んでみる
焼き味噌の香ばしい匂いが漂ってきた
焼き味噌の香ばしい匂いが漂ってきた
一口目はうまいと思ったが……すぐに飽きた
一口目はうまいと思ったが……すぐに飽きた
味噌はあまりよろしくなかった。最初こそはなかなかイケる。これをおかずにしてご飯を食べたいと思ったりもしたが、二口目、三口目と口に含む度にまずくなってきた。

冷めてくるにつれ香ばしさが消え、代わりにしょっぱさが増し、さらにぐねぐねとした食感が味噌とミスマッチなのだ。これは失敗だった。
ツナマヨネーズ、これは合うだろう
ツナマヨネーズ、これは合うだろう
ツナだけだとなんなので、少し醤油を足してみた
ツナだけだとなんなので、少し醤油を足してみた
醤油を入れたのは失敗だったか。少し焦げた
醤油を入れたのは失敗だったか。少し焦げた
っていうか、ツナの存在感が皆無である
っていうか、ツナの存在感が皆無である
これもまたうまく行かなかった。ツナがどこにも見当たらないのだ。完全に小麦粉の中に消え失せてしまっている。

ツナの味もほとんど無く、ただ薄い醤油味のプレーンお好み焼きを、マヨネーズで食べているだけという感じだ。

プレーンお好み焼きに関しては、生地に何かを練り込むという足し算の発想は、あまりよろしくないようである。

色々工夫してみたい、プレーンお好み焼き

まぁ、ぶっちゃけて貧乏食ではあるものの、シンプルであるが故に応用も効き、多種多様なアレンジが可能なプレーンお好み焼き。

手軽さと安さはもちろん、その腹もちの良さは本当に恐ろしくなるくらいだ。今回の記事を書くにあたり、三日間かけてプレーンお好み焼きを食べ続けたワケだが、本当に腹がはちきれそうになった(若干気持ち悪くなったりもした)。

しかし、やはり手軽に作れるという点は本当に素晴らしい。とりあえず小麦粉をストックしておけば、何を食べようか迷う必要も無くなるというものである。
手軽に冷凍&解凍ができるのも良い所だ
手軽に冷凍&解凍ができるのも良い所だ
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