新宿、高島屋と伊勢丹のたたかい
新宿駅の東側には高島屋と伊勢丹という2つの百貨店がある。
伊勢丹の向こうにかすむ高島屋
2店舗の距離は約400メートル。地上で見る限りお互い離れているように見えるけど、実は地下通路で直につながっていて、ひそかに縄張り争いをしている。
まずは高島屋側から地下に降りると、
こんな地下通路がずっと続いている。
当然、壁には高島屋の看板が続く。
しかし地下鉄副都心線の改札口を出たところで、突如として伊勢丹がでばってくるのだ。
伊勢丹はこっち。さきほどと矢印の向きが逆なことに注意。
地図でみるとこうだ。伊勢丹が攻めて来ているのが分かるだろう。
なぜ伊勢丹の看板はここまで攻めて来てるんだろう?
それはたぶん、ここが改札の出口で、分かれ道だからだ。一方に行けば高島屋、逆は伊勢丹。第一歩をどちらに進むかで運命が全然違う。
ここがちょうど中央付近。
こうやってみると高島屋のほうが矢印が3つもあって、なんとなくそっちに引っ張られる感じだ。伊勢丹がんばれ。
高島屋は伊勢丹の直前まででばっていた。
そして伊勢丹「お入口」。
緑の線は伊勢丹の看板の範囲。青は高島屋。電車のマークは改札の位置。
地上でははっきりと見えない縄張り争いが、地下では見えていた。
高島屋も伊勢丹も、相手の陣地までそれなりにでばっている。そしてその分水嶺となるのは、改札の出口なのだった。
池袋東口には2つの巨大電機店がある
池袋のビックカメラとヤマダ電機。駅を降りると、ほんとうに隣り合ってそびえている。
左がビック、右がヤマダ。
それを踏まえた上で、このビックカメラの店舗案内図を見てほしい。
まず場所だ。地下通路の、ヤマダ電機の入口の目の前。
そこにビックカメラの案内図がある。
目印として載っているのは、みずほ銀行にロッテリア。ヤマダ電機が目の前にあるのに、地図にはまったく載ってないのだ。
比較のために、ヤマダ電機の店舗案内も見てみた。
こちらはヤマダ電機(LABI)の案内図。
LABIというのはヤマダ電機のこと。パルコと西武はあれど、ビックカメラはどこにもない。
それって普通なのか?
念のため、まわりの関係ないお店の案内図をもらって見てみた。
眼鏡屋さんの地図。ビックもヤマダも載ってる
マンションギャラリーの地図にも2店舗とも載ってる。
やっぱりふつうは2店舗とも載ってるのだ。
ほんとにお客のことを考えるなら、分かりやすい目印であるお互いの店を地図に載せたほうがいい。でもそうできない事情も分かる。
お互い意識しすぎるからこそ無視してしまう。思春期の男女みたいだが、ちょっと違うな。
主張の激しい池袋西武
池袋で、こんどは西武と東武のデパートのようすを見てみよう。
池袋駅は、東が西武で西に東武があり、構内は左右対称で迷宮のようであり、ようするにどっちがどっだか分からない。
いけぶくろのどうくつ
そんな様子を端的にあらわしたのが上の地図だ(「
駅の構内はダンジョンだと思う」より)。上が東武で、下が西武。
迷宮の改札を出て最初の一歩をどちらに向かわせるかという意味で、パネル広告をどう配置するかは重要だろう。
で、しらべてみたら西武の広告が圧倒的、東武はあまりにも控えめだったのだ。
山手線の改札を抜けると、そこはSEIBUだった。
場所は、地図の左上。すぐ右に曲がると東武デパートがあるという、東武のお膝元だ。
すごいでばりようである。
JR線の前にSEIBU
丸ノ内線の前にもSEIBU
そしてこちらが西武デパート
西武の領域。緑色の部分。
上の東武にほぼ迫っている。
じゃあ、逆に東武はどうなのか?
東武百貨店の文字は見当たらない
「東武東上線」の案内板ならある
東武東上線があれば、そこに東武デパートがあるということは結果的には分かる。
でも積極的にでばるパネル広告はなかなか見つからない。
「お入口」があるくらいだ。
東武=青、西武=緑。
なかなか自分の領域から出て行かない東武に対して、積極的にはみ出る西武という違いが際立つ。東武、奥手である。
なお、山手線(JR)の改札の内側はJRの広告しかなかった。そこはJRの領域ということなんだろう。
静かなたたかいを垣間みる
競合店どうしの実際の戦いは激しいものだ。互いの状況を調査し、牽制しあう。
でもそういうところじゃなくても、相手を地図に書かないとか、しれっと広告を並べるみたいな静かな戦いもあるんだということがわかった。きっと気づかないレベルで、ほかにもいろいろあるんだろう。ぜひ調べてみたい。