特集 2013年6月20日

六本木のクラブで踊らない人生でいいのか

六本木のクラブってどんなところなんでしょうか
六本木のクラブってどんなところなんでしょうか
クラブ(踊る方の)といえばチャラチャラしたイメージがある。そして、チャラチャラと相性がよくなかったこともあって僕はクラブ行ったことがない。

しかし、やっていることはお酒を飲んで、音楽を聞いて、踊るというものでとっても原始的で楽しそうだ。そう考えると一度は行ってみてもいい気がする。

いや、クラブで踊ったことのない人生でいいのか?
1986年埼玉生まれ、埼玉育ち。大学ではコミュニケーション論を学ぶ。しかし社会に出るためのコミュニケーション力は養えず悲しむ。インドに行ったことがある。NHKのドラマに出たことがある(エキストラで)。(動画インタビュー)

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クラブに行くのに服を買う

ダンスなんて小学校の運動会で一生懸命練習してやった記憶があるくらいだが、クラブは練習の必要もない。盆踊りみたいなものじゃないか。

そう思えばいけそうだ。「闇取引」「殴られる」みたいな怖い想像も脳裏に浮かんでは消えるが、たぶん大丈夫だろう。

とは言いつつもちょっとは不安なので、お守り代わりにオシャレなシャツとストールを買った。戦闘服だ。そういえば噂によるとラフな格好お断りのドレスコードがあるという。例えばサンダルはダメらしい。
サンダル禁止はラッシュ時の埼京線と同じだ
サンダル禁止はラッシュ時の埼京線と同じだ

クラブといえば六本木

クラブは渋谷、六本木、銀座に有名な店があるようだ。中でも六本木はイケイケのメインストリームということらしい。

はじめて、しかも一人で行くのに六本木は絶対に向いてない気がするが、勇気を振り絞ろう。

問題はどこの店に行くかなのだが、初心者(しかもひとり)がどこへ行けばいいのか調べてもいまいちわからない。営業時間に関する風営法の摘発で店の雰囲気が変わっている、という情報があっても、何がどう変わったのかはわからない……。

だんだん不安さが増してきた。もうシェーキーズ行ったことないから、「シェーキーズに行った」という記事に変えようか。いや、そういうわけにもいかない。

泣き言を吐きながら、おそらくここなら大丈夫というところをピックアップした。
いざ、六本木
いざ、六本木

ストールを脱ぎ捨てろ!

土曜日の夜9時半ごろ、六本木の街に降り立った。あまり来たことがないし、外国人がたくさんいるし、不安だ。

怒鳴っている人がいると、自分が怒られた気がする。振り返ってみるとただのハイテンションな会話だったりするので、我ながらビビりすぎだと思う。

さて行き交う人の様子を見てみると、ストールを巻いている人なんていないことに気がついた。にわかに恥ずかしくなり、僕はストールを外した。六本木について5分後のできごと。
5分でお役御免となるストールの様子
5分でお役御免となるストールの様子

クラブ発見!

スマホの地図を頼りにチェックしておいたクラブへ向かう。ビルがごちゃごちゃしてわかりにくい。この辺りかなと思っていると、重低音が激しい音楽がドンドコが漏れ出ているような店があった。

入り口はギラギラとした装飾がなされているし、名前もいかつい。これはチェックしていた店とは違うが、クラブなのでは?
調べてきたところとは違うけど、雰囲気的にクラブっぽいぞ
調べてきたところとは違うけど、雰囲気的にクラブっぽいぞ

ついにクラブに入る!

よく見れば店に入ろうとしている外国人が係員にパスポートか何かを提示しているではないか。これが噂に聞くクラブ名物「IDチェック」というもののようだ。

入り口はギラギラとした装飾がなされているし、店の名前もいかつい。これはチェックしていた店とは違うが、クラブなのでは!? クラブっぽいぞ!

僕は意を決して、その店に入ることにした。
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クラブじゃなかった

入り口で免許証を提示して中に入る。入場料は1000円らしい。…なんか安い。 でも僕はクラブ初心者。そういうところもあるのかもしれない。リストバンドを巻いてもらい、そのまま薄暗い階段を上る。

扉があり、ガラス窓からは暗闇に輝くネオンの光が見える。いよいよだ。ドアノブを押す手に力を込める。緊張の一瞬。そして一歩、入る。なんか違う。みんな踊ってない。座って酒を飲んでいる。ただ、BGMは爆音だ。
いかにもクラブっぽかったのに違った
いかにもクラブっぽかったのに違った
しかも見回すと壁に「ダンス行為は厳禁」と書いてある。クラブじゃないなら、ここは一体何なんだ。君たちは何をしているんだ。酒飲んでるのか。じゃあ、IDチェックとリストバンドは何なのだ。クラブごっこか。

とりあえず店内を一周してみる。やはりクラブじゃないようだ。失意に打ち震えながらそのまま出るしかなかった。六本木、恐ろしいところである。

こんどこそクラブに入ります

気を取り直して、スマホの地図を頼りにクラブを探すと、わりと近くに目的のビルが見つかった。焦らなければあんなミミックみたいな店に引っかかることはなかったのだ。

向かって行くと、ビルのエレベータホールには人があふれていた。外国人の団体が大挙しているようだ。みんなクラブへ向かう様子。僕もその群れに揉まれながらエレベータに乗り込んでいく。
混んでいて一度降ろされた
混んでいて一度降ろされた
クラブのある階について、受付で4000円払う。あっさりだ。

免許証を見せたり、腕にリストバンドをつけたりはしない。ここまでは、さっきのクラブじゃない店のほうがクラブっぽかった。

釈然としないまま、おとなしく荷物をロッカーに入れて入場する。

ついにクラブにやってきた

いよいよクラブに足を踏み入れる。ひゃー、音が大きい。薄暗くて照明がビカビカしている。

フロアには150人くらいいるだろうか。今日は国際交流のイベントかなにかがあるようで、外国人の客が多い。
へぇ~ここがクラブかぁ~
へぇ~ここがクラブかぁ~
ちなみに僕はクラブミュージックのことはまったく分からない。数曲に一回、名前はわからないけど無意識のうちにどこかで聴いたことがある気がする曲が流れて「あっ、聞き覚えが……あ…る…?」となる感じだった。

さて、プールに入る前に準備運動が必要なように、ダンスの輪にも準備なしで飛び込んだら溺れてしまう。ということで、踊る前にお酒を飲んで気分をよくしよう。僕はバーカウンターに行き、ジントニックを頼んだ。
僕の小声の大声では店内の音楽に負けていたので、3回くらい「ジントニック!」と言うはめになって恥ずかしかった。
僕の小声の大声では店内の音楽に負けていたので、3回くらい「ジントニック!」と言うはめになって恥ずかしかった。
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踊ってみよう

ジントニックを飲みながら、ダンスの輪に混じってみる。

踊るといってもどうしたらいいのやら。見よう見まねで、左右に上体を揺すってみたり、膝をカクカクさせてみたりしてみる。が、曲に全然うまくノることができず、変な動きになってしまう。

上手な人は両手を顔の高さくらいに上げて器用にクネクネさせているのに、真似して僕がやると謎の拳法になる。意外と難しいものなんだな。
世界は僕をそう簡単にチャラチャラさせてくれない
世界は僕をそう簡単にチャラチャラさせてくれない
それでも音に合わせて体を動かしていると、だんだん楽しさが沸き上がってくる。気持ちの70%は「この僕がおどってやがるぜ」という自意識からくる恥ずかしさだが、25%くらいは「楽しいかも」だった。残り5%は踊らずに抱き合ってるカップルに対する憎悪。

目標:DJブースの前で踊る

さて、普通に踊って楽しむだけでもいいが、もう少し何かを成し遂げてみたいという思いがある。ナンパ? ナンパは無理だろう。自信がある。

様子を観察するとDJブースの前が1番盛り上がっているのがわかる。あそこに行けばクラブを制覇したと言ってもいいのではないだろうか。

今日の目標は「DJブースの前で踊る」ことに設定した。
DJブースの前が中心点のようだ
DJブースの前が中心点のようだ
早速人混みの後ろから近づいていこうとしたが、人の壁が厚くて前に進むことができない。クラブ全体で一番人口密度が高いのがDJブース前なのだ。

直感的に「リズムに乗っていけば、波長の関係で隙間を進むことができるのでは!?」と思ってやってみたが、前進したり後退したりの繰り返ししかできなかった。

キスする男女に囲まれる

そうこうしているうちに、僕はいつの間にか四方をキスする男女に囲まれていた。四組のカップルだったので文字通り「四方」だ。キビシい。
すごかったです
すごかったです
見回すだけで、ソフトクリームを舐めるかのようなフワフワのキスから、顔全体がくっつく程の迫力あるキスまで、世の中にはいろいろなキスがあることがわかる。まるでキスの博物館であり、言い換えると地獄であった。

酸欠になりそうながらそこを抜け出し、事なきを得た。あと少しでも長くいたらどうなったかわからない。
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たしかにハイになる

一息ついて改めてDJブース前を目指す。フロア全体を見て作戦を立てる。すると、後ろから入ろうとすると難しそうだが、横から進んで入ればわりあい容易なようだと気づく。で、実際やってみるとあっさり行くことができた。
簡単なことだった
簡単なことだった
DJブース前の客は踊りが激し目なので、僕自身もまわりと波長を合わせる感じですこし大げさに動いてみようという気分になってくる。

本当にみんな楽しそうだ。我を忘れたように踊り狂う人もいる。きっと我を忘れにここに来ているのだろう。それを見てつられるように僕も気分がハイになる。

こういう気持ちになれたなら「クラブに行って踊る」という今回の目的自体もうまくいったと言えるんじゃないかな。

クラブってこんなところだったのか

その他、気づいたことを箇条書きにすると……

・ポテトから煙が出てる
・事務所に連れて行かれる客がいた
・お立ち台は地上2mくらいのところにあると思ってたけど、高さ50cmくらいの台だった
実は踊り始める前、勇気がなくてこの煙をずっと見てた
実は踊り始める前、勇気がなくてこの煙をずっと見てた
クラブの裏を見た。事務所の中は蛍光灯だった。
クラブの裏を見た。事務所の中は蛍光灯だった。
勉強になった
勉強になった
なお、すべてのクラブがそうなのかは、当然ながら知らない。たぶん違うんだと思う。

さて、はじめてのクラブにも満足した。終電も近いので帰ろう。

お土産まで買って帰る

荷物をロッカーから取り出して帰る準備を整えているときに、受付でこのクラブのグッズが売られていることに気がついた。

ライター、ボールペン、TシャツやiPhoneケースなど多種多様である。六本木のクラブとは思えない野暮ったさだ。
買う人いないだろうなあと思いつつ…
買う人いないだろうなあと思いつつ…
ポロシャツを買った。
ポロシャツを買った。
ポロシャツを買ってしまった。クラブのロゴが入った黒いレジ袋を手にさげ、何か成し遂げた気持ちで帰宅した。

ひとりクラブをやろう

クラブから帰ってきても目が冴え、結局朝まで眠れなかった。よほど興奮したのだろうか。ともあれ、これで六本木のクラブで踊ることはできた。確かに楽しかった。

しかし、まだまだ遊びに通うにはハードルが高い。人前で踊るというのが恥ずかしいのだ。

そこで解決案として、「ひとりクラブ」という遊びを開発した。部屋を暗くしてiTunesのビジュアライザ(Ctrl+T)を眺めながら酒を飲んで踊るというもの。 だいたいクラブ気分になれた。

しばらくこれで練習しようと思う。
ディブプレイの前にあるのは、ミラーボール代わりの丸めたアルミホイル。
ディブプレイの前にあるのは、ミラーボール代わりの丸めたアルミホイル。
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