特集 2013年8月31日

大阪では「白い恋人」が増殖していた

いつの間にこんなことに…というほど増えてました。
いつの間にこんなことに…というほど増えてました。
北海道みやげの定番といえば「白い恋人」で異存はなかろう。

そして「面白い恋人」といえば、その「白い恋人」のパロディ商品である。本家メーカーに訴訟を起こされたことで知名度は全国区へと広がるも、いつの間にか(2013年2月)和解が成立していたようだ。

和解からちょうど半年。

パロディ商品たちが現地でどんなことになっているのか、大阪に行ったついでに見てきました。
1968年秋田県生まれ。食べたり飲んだりしていれば概ね幸せ。興味のあることも飲食関係が中心。もっとほかに目を向けるべきだと自覚はしています。

前の記事:なぜ埼玉はうどんを緑にしたがるのだろう


大プッシュされまくり

新大阪駅では、どこのおみやげ屋さんでもよく目立つ場所に「面白い恋人」が置かれていた。
この目立ちっぷり。さらに「おもしろいシリーズ大集合」として集められる始末。
この目立ちっぷり。さらに「おもしろいシリーズ大集合」として集められる始末。
本家との和解が「これでもうコソコソする必要はない。堂々と売っていいんだ!」という心理へと繋がったのか定かではないが、とにかく目立つ。

半年に一度は大阪を訪れているが、前からこんなにプッシュされていただろうか。…思い出せない。
ここの売り場は「新パッケージになりました」の表記あり(パッケージの変更が和解の条件だった模様)
ここの売り場は「新パッケージになりました」の表記あり(パッケージの変更が和解の条件だった模様)
ランキングも堂々の1位。売れてるんだな~。
ランキングも堂々の1位。売れてるんだな~。
市内のおみやげ屋が密集する地域にもやってきた。
ここでの推されっぷりも、やはり凄まじいものがある。
販売元である、よしもと興行のおみやげ屋さん。
販売元である、よしもと興行のおみやげ屋さん。
なんと色違いの「面白い恋人」が。
なんと色違いの「面白い恋人」が。
色違いは、中のクリームがミックスジュース味の新商品とのこと。期間限定。
色違いは、中のクリームがミックスジュース味の新商品とのこと。期間限定。
まあ今ならこういう宣伝文句になりがちですよね。あと「和解成立」の報告も。
まあ今ならこういう宣伝文句になりがちですよね。あと「和解成立」の報告も。
こういうお土産屋がズラーっと続く。
こういうお土産屋がズラーっと続く。
雪の結晶らしき模様が元祖を連想させますね…。
雪の結晶らしき模様が元祖を連想させますね…。
やはりすごかった。「面白い~」は販売元が吉本興行なだけに、よしもとのショップが一番盛り上がっているのかと思いきや、他の店もえらいことになっている。

つまり、もう「面白い」だけの時代ではなく、「恋人シリーズ」全体が盛り上がっているのだ。
この棚「恋人シリーズ」ばっかり。派生商品だらけ!
この棚「恋人シリーズ」ばっかり。派生商品だらけ!
「道頓堀の恋人」や「通天閣の恋人」なんてのもある。超地域限定じゃないか。こうなると「法善寺横町の恋人」や「千日前の恋人」がないのが不思議なくらいだ。

どこへ向かうのか

「○○の恋人」というシリーズ商品はいまや全国各地に存在しているらしいが、発祥の地である大阪は、すでに別方向への進化を遂げていた。

えー、こちらをご覧下さい。
濃い…ひと。…う、うん。
濃い…ひと。…う、うん。
一瞬、なんのことだか分からなかった。さすが大阪と思いかけたが、まて、白塗りってことは「京みやげ」じゃないのか? …まぁどっちでもいい。修学旅行生狙いだとしたら、よくウケ、よく売れることだろう。

それより問題はこっちだ。
大阪の恋シリーズ+壇蜜?
大阪の恋シリーズ+壇蜜?
いつの間に我々は、「蜜」という漢字一文字と長髪女性のシルエットのみで特定の有名人を連想してしまうようになったのだろう。

ともあれ、これしか情報がないというのに「そうとう濃厚な味わいのお菓子なんだろうな…」とこちらに感じさせるのはすごいイメージ商法だと思った。
あれこれ買って帰ることに。
あれこれ買って帰ることに。
さっそく自宅で食べ比べといこうじゃないか。

まずはパロディ界の本家本元「面白い恋人」から開けてみよう。

●面白い恋人

すべてはここから始まった。
すべてはここから始まった。
関西で生まれたゴーフレットに、関西で生まれたみたらしを…ってなことが書いてあります。へー、知らなかった。
関西で生まれたゴーフレットに、関西で生まれたみたらしを…ってなことが書いてあります。へー、知らなかった。
みたらし味のクリーム入りゴーフレット。
みたらし味のクリーム入りゴーフレット。
さすが元祖なだけあって、ちゃんとしている。
言われなければ「みたらし味」とは分からないが、サクッと軽く食べられるし、これは会社で「大阪行ってきました」と配られたとしたら普通に嬉しいと思う。

ちなみに「関西以外では売らないこと」が、和解条件のひとつだそうです。

●大阪心斎橋の恋人

「これぞパステルカラー!」と絶叫したくなるほどのピンク&水色! うわ~。
「これぞパステルカラー!」と絶叫したくなるほどのピンク&水色! うわ~。
それぞれ中のクリームが違っていて、プリン味とキャラメル味がある。
それぞれ中のクリームが違っていて、プリン味とキャラメル味がある。
いわゆるプチシューってやつですな。
いわゆるプチシューってやつですな。
こちらはキャラメル味。「うわーっ!」と叫びたくなるくらいに甘い。脳天にくる甘さ。
こちらはキャラメル味。「うわーっ!」と叫びたくなるくらいに甘い。脳天にくる甘さ。
なんというか「女児!」って感じの色使い&味付けである。これほど見た目と味とが一致した食べ物も珍しい。

酒飲みである私には少々厳しいレベルの甘さであった。プチシューひとつにブラックコーヒー2杯は必要な…といえば伝わるだろうか。

●道頓堀の恋人

本家のパッケージに似てる度ナンバー1。
本家のパッケージに似てる度ナンバー1。
下の欧文、よく見ると英語じゃない。damasaretato omotte tabetemi! ときた。
下の欧文、よく見ると英語じゃない。damasaretato omotte tabetemi! ときた。
中はかなりオーソドックスな感じ。
中はかなりオーソドックスな感じ。
みたらしチョコ。それほど甘くなく、サクッと食べられる。
みたらしチョコ。それほど甘くなく、サクッと食べられる。
それにしても、また「みたらし」だ。醤油と砂糖で甘辛くしたものがみたらしだとすれば、ほとんどの洋菓子は醤油さえ加えたら「みたらし味」と主張してもいいのではないか。

そんなことを思わされた関西みたらし味問題である。ちなみに、個人的に醤油は入れたくない派です。

●大阪の恋人

一気に広範囲に。
一気に広範囲に。
パッケージに「ホワイトラングドシャ」と書いてあった。
パッケージに「ホワイトラングドシャ」と書いてあった。
おっ、これは「みたらし味」じゃない。

たぶん中のクリームはホワイトチョコなんだと思う。どこにもチョコの表記がないし、味の判別がつくほどクリームが入ってないから、あくまで想像でしかないのだが。

個別包装には「KOIBITO」としか書いてないということは、箱さえ差し替えたら全国販売が可能という素晴らしさ。…ハッ、だからみたらし味じゃないのか?

これも会社で配られたらそこそこ嬉しいレベル。

●大阪の恋

ついに恋人じゃなくなり「恋」というざっくりとした括りに。
ついに恋人じゃなくなり「恋」というざっくりとした括りに。
そして中はなんと大福。なぜ。だって大福だぞ。
そして中はなんと大福。なぜ。だって大福だぞ。
さすがに食べ方に注文がついていた。
さすがに食べ方に注文がついていた。
これはイチゴクリーム大福。なぜ大福!
これはイチゴクリーム大福。なぜ大福!
もう恋人ではなくなった。恋だ。対象ではなく現象だ。

そもそも大阪の恋って「大阪での恋の話」の意なのか「大阪自体が恋をしている」って話なのか、どっちなんだ。仮に後者だとして、話のスケールが大きくなりすぎてやしないか。

いや、話がスケールの問題で語られてるうちは、まだいいのかもしれない。

次、問題のこちらです。

●白ぬりの濃い人

これは…どう解釈していいのか本当に悩む。
これは…どう解釈していいのか本当に悩む。
新名物って、言ったもん勝ちな気がしてきました。
新名物って、言ったもん勝ちな気がしてきました。
中は意外に普通。ギョッとするのはネーミングとパッケージ写真のみか。
中は意外に普通。ギョッとするのはネーミングとパッケージ写真のみか。
言われてみれば、確かに白い。蒸しパンよりしっとりした柔らかい生地。
言われてみれば、確かに白い。蒸しパンよりしっとりした柔らかい生地。
パッケージの擬似英語(どうやらパロディ商品では基本らしい)によると

Shiro-nuri no beppin-han ni Koi wo shimashita.

とある。中は抹茶クリームが入っていて、なんというか、駄洒落商品なのに結構ちゃんとしてるなー、という印象を持った。

最初がふざけていると評価が甘くなりがちである。そう考えると、得をしている商品なのかもしれない。


●白い恋人

パロディ商品を見たあとだけに、恐ろしいまでの品格が感じられる。なんてシックなの!
パロディ商品を見たあとだけに、恐ろしいまでの品格が感じられる。なんてシックなの!
パロディ商品を見たあとだけに、恐ろしいまでの品格が感じられる。なんてシックなの!
パロディ商品を見たあとだけに、恐ろしいまでの品格が感じられる。なんてシックなの!
「面白い恋人」もそうだが、本家の「白い恋人」も現地に出向かないと手に入れることができない(物産展や通販を除く)。

偶然、友達が北海道に行っていることを知り、比較のために買ってきてもらったのだが…。
企画の主旨を説明しなかったので、まさかの缶入り!(かわいらしい柄!)
企画の主旨を説明しなかったので、まさかの缶入り!(かわいらしい柄!)
なんといいますか、やっぱり本物は違う。なぜ訴訟を? と思わされるくらい違う。
なんといいますか、やっぱり本物は違う。なぜ訴訟を? と思わされるくらい違う。
一番違うのは、やっぱり「味」だった。
一番違うのは、やっぱり「味」だった。
何もかもが違った。パッケージ、味、匂い、雰囲気…。

そして、やはり感動的なまでに差があったのは味だ。芳醇なバターの香りとチョコレートの濃厚な味わい。さらにさらに、ラングドシャとホワイトチョコの厚みが同じくらいなんですよ! なんだこれ、チーズか!

これは会社の「おみやげ」用に配るのがもったいないと感じてしまうお菓子だ。「おもしろ恋人シリーズ」とは食べ物としての格が違う。比べるまでもない。

しかもパロディ商品と、そこまで値段に大きな違いはないときた。…こ、これは。

比べたこと自体に「申し訳ない」と言いたくなってきた。すみませんでした。

恋人シリーズよ、どこへ行く

調子に乗ってるな~、絶好調だな~、というのが今回パロディ商品たちを見た感想である。

何もかもが話題作りなのだ。店で売られているのを見て「わあ」と言い、配った相手に「わあ」と言われる。
そして「こういうのあるんですね」「おもしろいですよね」と普段あまり話さない相手とも言葉を交わす。

ちょっと前に流行った「○○に行ってきました」というみやげ菓子と根は同じだなと感じた。

こういう世界もあっていいと思う。
なんと会社の備品入れとして目的のパッケージが描かれた缶が使われているのを発見。ああそうだ、こういう絵だった! ちなみにちゃんとしたフランス語が書かれております!
なんと会社の備品入れとして目的のパッケージが描かれた缶が使われているのを発見。ああそうだ、こういう絵だった! ちなみにちゃんとしたフランス語が書かれております!
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