特集 2013年9月14日

新種のカエル、サドガエルを捕まえた

2012年12月に新種として登録されたばかりのサドガエルを捕まえてきました。超キュート。
2012年12月に新種として登録されたばかりのサドガエルを捕まえてきました。超キュート。
トキが放鳥されていることで有名な新潟県の佐渡島だが、昨年の12月にこの自然豊かな島から、新種のカエルが登録されたという驚きのニュースが発信された。その名もサドガエル。

新種のカエルなんて、素人がひょいといっても見つけられるものではなさそうな気がするが、サドガエルは佐渡の田んぼで普通に見られるらしいで、捕まえてみることにした。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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サドガエル発見にちょっとだけ沸く佐渡島

8月上旬、新種と認定されたばかりのサドガエルを求めて、3か月ぶり4度目の佐渡島に到着。

サドガエルを探しに行く前に、まずはフェリーターミナルでお土産売り場をチェック。珍しい動物はお土産物になりがちだが、サドガエルもさっそく饅頭になっているらしいのだ。

探してみると、確かに「サドガエル焼きまんじゅう」が売られていた。お土産物の割合としては、トキ関連が99に対してサドガエルが1くらい。
もちろん原材料にサドガエルは入っていません。
もちろん原材料にサドガエルは入っていません。
そこに貼ってあった新聞の切り抜きによると、「カエルにニーズがあるのか不安だったが、期待以上に売れている」らしい。

そんな島の景気回復にも貢献しているサドガエルだが、その鳴き声は「ギューン」らしい。これってどんなトーンのギューンなんだろう。

F1や戦闘機の「ヒューン」的な感じだろうか。あるいは村上ショージ の「ドゥーン」的だったらどうしよう。これはぜひ実際に聞いてみたい。
売り上げ上々らしいです。
売り上げ上々らしいです。
せっかくなのでお土産に購入してみたのだが、いざ開けてみると、かわいらしいパッケージと全然違うヴィジュアルで驚いた。

やるな、サドガエル焼きまんじゅう。
佐渡土産にどうでしょう。
佐渡土産にどうでしょう。
ちなみに、事前に佐渡在住の友人たちにサドガエルについて聞いてみたら、「そういえばそんなニュースを聞いたような気がする」、「なんかいるらしいねえ」という感じで、実際に見たことがあるという人や、探してみたという人はいなかった。

サドガエルの発見秘話

サドガエルを捕まえるにあたって、佐渡市内を闇雲に探すのも大変そうなので、だめもとで佐渡市役所に問い合わせをしてみたら、サドガエルがたくさん住むという田んぼの持ち主を紹介していただいた。

その人の話によると、サドガエルは新種なのだけれど、このあたりでは昔から普通にいたカエルらしいのだ。
昔からいるけど新種ってどういうことだろう。
昔からいるけど新種ってどういうことだろう。
サドガエルが発見された経緯は、トキの放鳥が関係していた。

トキを放つにあたって、学者が餌場の調査をしたり、テレビの取材が来たりしたのだが、その人たちの見たことないカエルがいるということで、ちゃんと調べてみたら、なんとこれが新種だったのだ。

今まで佐渡の人は、ちょっと変わったツチガエルくらいに思っていたらしい。
ドジョウを捕まえるトキ。サドガエルもきっと大好物。
ドジョウを捕まえるトキ。サドガエルもきっと大好物。
そしてこのサドガエルは、最近になってその数がだいぶ増えたそうだ。

日本有数の米どころである佐渡島には、「朱鷺と暮らす郷づくり認証制度」というものがあり、さまざまな生物が暮らせる生態系を取り戻すための取り組みや、減農薬・減化学肥料栽培での米作りをすすめている。

おいしい米作りとトキの暮らせる生態系づくりが、サドガエルの繁殖を支えているのだ。
トキの餌場=サドガエルが生活する場所。
トキの餌場=サドガエルが生活する場所。
そんな訳で、佐渡の豊かな自然とおいしいお米のシンボルともいえるサドガエルを探すために、佐渡在住の友人達と一緒に、張り切って田んぼへと向かった。
これだけ人数がいれば、きっと1匹くらいは捕まるはず。
これだけ人数がいれば、きっと1匹くらいは捕まるはず。
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休耕田で探します

サドガエルを一番探しやすい時期は、田植え前の田起こしの時期だそうで、トラクターで土をかき混ぜると、ピョンピョンと逃げていくのが見えるらしい。

今の季節は田んぼの水の中にいるそうだが、ジャブジャブと入って稲を傷つける訳にもいかないので、生き物を育むビオトープの役割をしている休耕田となっている場所を探すことにした。
この休耕田のどこかにサドガエルがいるはず。
この休耕田のどこかにサドガエルがいるはず。
この土地の所有者である方の話だと、草むらに隠れたサドガエルを探すのはなかなか大変なようだが、私は子供の頃、トノサマガエル(だと思っていたのはトウキョウダルマガエルだったらしいけど)捕りは超得意だったので、きっとどうにかなるはずだ。

今回捕まえるのに協力してくれる人数は多いけれど、こういうのはぜひ一番に見つけて、手柄を立てたいところである。
わりと対等な関係で友達づきあいしている佐渡の小学生。
わりと対等な関係で友達づきあいしている佐渡の小学生。
泥の中に足を突っ込むことに一瞬躊躇したが、すぐにどうでもよくなった。こういう感覚、懐かしい。
泥の中に足を突っ込むことに一瞬躊躇したが、すぐにどうでもよくなった。こういう感覚、懐かしい。

生き物の密度が濃い

休耕田を歩くと、一歩ごとになんらかの生き物が現れる。サドカエルのエサになる昆虫だったり、トキの大好物のドジョウだったり、ものすごく生き物の密度が濃い。

農薬をたくさん使っていた一昔前に比べて、今は格段に田んぼやその周囲に住む生き物の数が増えたそうだ。

生き物の数が多すぎて、肝心のサドガエルが見つからないのが難点だが、この生き物の濃い生態系があってこそのサドガエルなのだろう。
カエルのエサにちょうどよさそうなコオロギがいくらでもいる。
カエルのエサにちょうどよさそうなコオロギがいくらでもいる。
バッタがいるのがわかりますか?
バッタがいるのがわかりますか?
これはサドガエルではなくてアマガエルかな。
これはサドガエルではなくてアマガエルかな。
水の中には、ドジョウがウジャウジャ。これくらいドジョウがいないと、トキは生活できないのだろう。
水の中には、ドジョウがウジャウジャ。これくらいドジョウがいないと、トキは生活できないのだろう。
ちなみに楽天イーグルスの田中投手の奥さんである里田まいさんが育てている「里田米」は、佐渡のお米である。

里田米はさすがに食べたことがないけれど、佐渡のお米は本当においしい。

田んぼの脇を流れる側溝に狙いを絞る

しばらくは休耕田を念入りに探しまくったのだが、どうにもサドガエルは見つからない。そこで田んぼの脇を流れる側溝を狙ってみることにした。

ちょうど雨上がりだし、サドガエルは吸盤がないそうなので、側溝に流されて困っているやつが溜まっている可能性は高い。
きっとここにいるはず。
きっとここにいるはず。
「見つけたらいいものあげる」といったら、俄然やる気を出した友人。
「見つけたらいいものあげる」といったら、俄然やる気を出した友人。
この側溝にも生き物はたくさんいたのだが、それでもなかなかサドガエルは現れない。

しかし、少しずつサドガエルに近づいているのが、今までに培ってきた感覚でよくわかる。

サドガエルはこの側溝に絶対いるはずだ。
ドジョウの数が本当に多い。
ドジョウの数が本当に多い。
いい感じのヤゴ。
いい感じのヤゴ。
このオタマジャクシを育てればサドガエルになる気もするが、そんな余裕はないのである。
このオタマジャクシを育てればサドガエルになる気もするが、そんな余裕はないのである。
ホタルの幼虫のエサになるカワニナ(たぶん)がたくさんいた。きっとホタルもたくさんいるんだろうな。
ホタルの幼虫のエサになるカワニナ(たぶん)がたくさんいた。きっとホタルもたくさんいるんだろうな。

それっぽいカエルを発見!

泥にまみれて側溝を漁っていると、目の前をピョンと茶色いカエルが跳ねて逃げた。

それをみんなで追いかけまわして、どうにか素手で無事捕獲。手の中には確かにカエルを捕まえた感覚がある。
チラっとはみ出ている足。カエルだ!
チラっとはみ出ている足。カエルだ!
ここでサドガエルの特徴をまとめてみよう。

・目の後ろに黒い模様がない(あったらヤマアカガエル)
・腹が黄色くて、背中のイボが小さい(腹が白くてイボが大きかったらツチガエル) 。

目の後ろに黒い模様がなくて、背中に小さなイボがあって、お腹が黄色かったら、それはサドガエルなのである。

さあ、苦労して捕まえたこのカエルはどうだろうか。
サドガエルであってほしいのだが。
サドガエルであってほしいのだが。
腹は…白いな。
腹は…白いな。
そして目の後ろに黒い模様がある。
そして目の後ろに黒い模様がある。
残念。これはどうやらヤマアカガエルだったらしい。

みなさん、 期待させてごめんなさい。
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ようやくサドガエルを発見!

どこだどこだと引き続き側溝でサドガエルを探していると、また茶色いカエルが陸から水の中にチャプンと飛び込んだ。

側溝や 蛙飛び込む 水の音

なんて一句詠んでいる場合ではない。茶色く濁った水の中に手を突っ込み、手探りでカエルの行方を捜索する。
夢中になりすぎてパンツ見えすぎ。
夢中になりすぎてパンツ見えすぎ。
水の中に突っ込んで合わせたこの手に、ヌメっとした手ごたえあり。

そっと中を確認すると、そこにはお腹の黄色いカエルが入っていた。
ほらほらほら!黄色い!
ほらほらほら!黄色い!
田んぼの持ち主にも確認してもらうと、やっぱりこれがサドガエルで間違いないようだ。

サドガエルのお腹が黄色い理由は定かでないが、私の推測では、佐渡に金山があったからだと思う。金が取れるから黄色。実に理にかなっている。確かつりキチ三平で、砂金がとれる川に黄金の魚がいたはずだ。
一番にサドガエルを見つけて小学生相手に勝ち誇る大人。
一番にサドガエルを見つけて小学生相手に勝ち誇る大人。
一匹見つけると要領がわかったのか、一緒に探していた小学生も次々にサドガエルを発見し、短時間で合計4匹も捕まえることができた。

サドガエルを探すなら、田んぼ脇の側溝が狙い目のようだ。
俺が先に見つけたらから、賞品は無しだな。
俺が先に見つけたらから、賞品は無しだな。

サドガエルの観察

がんばって捕まえたサドガエル、せっかくなのでじっくり観察させていただこう。

もしかしたら学術的にもカエルマニアにとっても貴重な資料になるかもしれないので、大きめの写真で紹介させてください。
左下がヤマアカガエルで、それ以外がサドガエル。サドガエルには縦にラインが一本入っているタイプがいるようだ。
左下がヤマアカガエルで、それ以外がサドガエル。サドガエルには縦にラインが一本入っているタイプがいるようだ。
サドガエルの顔が超キュート。指に水かきと吸盤は無い。鳴き声はギューンギューンらしいが、僕は今キュンキュンしている。
サドガエルの顔が超キュート。指に水かきと吸盤は無い。鳴き声はギューンギューンらしいが、僕は今キュンキュンしている。
背中のイボは小さくて縦長。
背中のイボは小さくて縦長。
わりとおとなしいので、写真が撮りやすくて助かる。
わりとおとなしいので、写真が撮りやすくて助かる。
このカエルが身近にいても、普通の人は新種だと気が付かないよね。
このカエルが身近にいても、普通の人は新種だと気が付かないよね。
背中にラインがあるのは、これはこれで別の新種だったらどうしよう。
背中にラインがあるのは、これはこれで別の新種だったらどうしよう。
サドガエルの貴重なバックショット。
サドガエルの貴重なバックショット。
お腹が黄色いのが一番の特徴。この色を佐渡ゴールドと呼びたい。まんじゅうのモデルだけでなく、金運上昇のお守りとかにも使えそうだ。
お腹が黄色いのが一番の特徴。この色を佐渡ゴールドと呼びたい。まんじゅうのモデルだけでなく、金運上昇のお守りとかにも使えそうだ。
片足を伸ばすと歌舞伎役者風でかっこいい。
片足を伸ばすと歌舞伎役者風でかっこいい。
見事サドガエルを捕まえることができ、参加者一同大満足である。

だがしかし、ぜひもう一つ確かめたいことがある。それは「ギューン」という文字で表現される鳴き声だ。

とはいっても、そう都合よくは鳴いてくれないので、サドガエルに一緒にご同行いただき、ゆっくりと観察させてもらうことにした。
突然猛烈な雨が降ってきて、ここに財布が入ったカバンを忘れるという失態を犯すこととなる。
突然猛烈な雨が降ってきて、ここに財布が入ったカバンを忘れるという失態を犯すこととなる。
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なかなか鳴かないサドガエル

この日の宿泊先である山奥の山荘までご同行いただいたサドガエルだが、これが全然鳴いてくれない。

プラスチックケースに閉じ込められているのが気に入らないのか、時間帯的な問題で鳴かないのか。
「リンゴを入れておけばそれに寄ってきたハエがエサになるじゃん!」と小学生が言うので、小さなリンゴが入っている。
「リンゴを入れておけばそれに寄ってきたハエがエサになるじゃん!」と小学生が言うので、小さなリンゴが入っている。
じーっと眺めていたのだが、全然鳴いてくれない。

鳴かぬなら 鳴くまで待とう サドガエル

とはいっても、ただ待っているのもつまらないので、その辺を散歩してきたら、ここもやっぱり生き物の濃い場所だった。
ものすごくかっこいいバッタが産卵していた。フキバッタの仲間かな。小さな羽と足の赤いラインがたまらん。
ものすごくかっこいいバッタが産卵していた。フキバッタの仲間かな。小さな羽と足の赤いラインがたまらん。
これはヒキガエルの子供かな。
これはヒキガエルの子供かな。
憧れのミヤマクワガタを見つけて大興奮。交尾中でさらに興奮。
憧れのミヤマクワガタを見つけて大興奮。交尾中でさらに興奮。
ご飯を食べたり、散歩をしたりしながらも、鳴くのはまだかまだかと気にかけていたのだが、結局鳴いてくれないまま、私が先に寝てしまった。

ちゃんと録画できました

そして翌朝、もしかしたら人の気配がすると鳴かないのではと思い、縁側にプラスチックケースを置いて、その横にビデオカメラをセットして、録画したまま1時間放置してみた。
これで鳴くところを録画できたらいいのだが。
これで鳴くところを録画できたらいいのだが。
この録画した動画をチェックしてみると、正直あまり期待をしていなかったのだが、これがちゃんと撮れていたのだ。

その中から選りすぐりの映像をどうぞ。
これがサドガエルの鳴き声だ!
なんだろう、この調子の悪いハードディスクみたいな鳴き声は。

文字に起こすと、確かにギューンになるのだろうけれど、イメージよりも少し地味なギューンだった。

サドガエルのバックで鳴く、鳥の鳴き声の美しさよ。
せっかくなので別のバージョンもどうぞ。
これはギューンというより、グゥーンという感じだろうか。個体によってその鳴き声は多少違うようだ。

サドガエルの足に吸盤はないのだが、けっこう平気で壁を登るという発見もおもしろい。

そしてなにより、サドガエルのユーモラスな動きが愛くるしい。サドガエル、超かわいい。

捕まえたものは食べてみたい派なので、このサドガエルも食べてみようかなと一瞬考えなくもなかったが、トキの大切なエサなので、元の場所にお帰りいただいた。カエルを食べるならウシガエルにしよう。
おつかれさまでした。
おつかれさまでした。
ちなみにわざわざ田んぼで探さなくても、佐渡市内の両津郷土博物館、佐渡博物館にいけば、生きたサドガエルが展示されています。
両津郷土博物館のサドガエルは縦ライン入りタイプでした。
両津郷土博物館のサドガエルは縦ライン入りタイプでした。

カエル捕り、楽しかったです

昔からみんながその存在を知っていたのに、実は新種だったというサドガエル。捕まえてみれば、まあ素人からすると普通にカエルの一種なのだが、現役小学生と競い合ってのカエル捕りは、夏休みらしくてとても面白かった。

佐渡にはサドガエル以外にも、サドマイマイやサドマイマイカブリ、サドモグラ、サドノウサギなどの固有種がいろいるようなので、これらをどこかのメーカーがフィギュアにして、フェリー内のゲームコーナーにでもガチャガチャで置いてくれたらうれしいなと思う。
去年佐渡で見かけたこのマイマイカブリは、サドマイマイカブリだっただろうか。
去年佐渡で見かけたこのマイマイカブリは、サドマイマイカブリだっただろうか。

覆面をかぶった動物のプロレス団体設立しました

前からプロレス団体のオーナーになるというのが夢だったというわけでもないのですが、このたび覆面をかぶった動物によるプロレス団体を立ち上げました。

MAPW(マスクドアニマルプロレスリング)
所属レスラーはこの人たちです。
所属レスラーはこの人たちです。

このように選手はぬいぐるみなのですが、覆面MANIAという本物のプロレスのイベントにもなんらかの形で参戦予定です。佐渡での旗揚げ戦もおこないました。なにとぞよろしくお願いいたします。
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