川沿いの店から川にむかって伸びているのが川床。広いベランダみたいなものだ。
すのこを買ってきてそれに脚をつければ似たようなものができるのではないか。
近所のホームセンターと100円ショップで材料は全て揃ってしまった。意外に川床への道は近かった。Do it your川床。
しかし当日は雨。延期しようかと思ったが今回は我々のほかに漫画家のカラスヤサトシさん+秋田書店「もっと」編集部も呼んでいるので決行することにした。濡れることよりも延期しての日程再調整の面倒さが勝った。
それにすのこなので増水して流されたとしてもイカダになるので安心である。
川床がイカダになって発進するなんてサンダーバードの基地みたいだし、ほんものより風流だ(サンダーバードにイカダは出てきません)。
川床はすぐできた
雨なので場所は橋の下である。河川事務所に撮影を申請した範囲(ちゃんと手続きしてるんです)で屋根があるのがここだけだったのだ。
風流が音を立てて崩れてゆく
橋の下の場末感は半端ではなかった。お前は橋の下で拾ったんだよという言葉の悪意をあらためて理解した。
しかし、川にむかって階段状になっているので柱が片方だけですむ。この多摩川の護岸の作りは将来川床を作ることを念頭においているに違いない。
すのこの下に角材をおいて
釘で固定
恐る恐る乗ると…
川床!
3ステップでできてしまった。
なぜこんなに慎重に乗っているかというと、100円ショップで買ってきたすのこに「人は乗らないでください」と書いてあったからである。庭で植木鉢を置いたりするすのこらしい。いわんや脚をつけて川床をや、である。
川床に乗るときにミシミシッと音がするのだが、うぐいす張りのようでまた風流だ。
釘がちゃんと刺さってなかったり
なぜか柱が浮いていたりする
このあとカラスヤさんをこの川床に乗せるのかと思うとドキドキした。きっとカラスヤさんも喜んでくれるだろう。
多少リスキーでも変わったものを誰でも喜ぶと思っているが、世間的にはそうでもないということは最近うすうす気づきはじめた。
秋田書店チームも加わり、計4つの川床が完成
川床の乗り方のコツもつかんだ
なるべくコンクリの上に座るようにして、川床には脚だけを乗せると安心である。
川床の前のほうに重心を置くと容易に川床が崩壊して滑り台のようになることが予想できた。
子どものころ見たドリフのコントでこういう階段があった。スイッチひとつで滑り台になるのだ。むかしものすごくあれに乗りたかったが、期せずして35年後、自分が作ることになった。因果応報である。
カラスヤさん登場
川床が完成したところでカラスヤさんが河原にやってきた。第一声は「えっ、これ?」であった。
川床に言葉を失う人気漫画家
「はー」とも「うー」ともとれる声で川床を観察
カラスヤさんに川床が大丈夫であることをアピールするために乗ってみせたのだが、そのときに僕がうっかり真剣な顔になってしまったのもまずかった。
林「大丈夫ですよ…………、ほ……ら………」
全然大丈夫ではない。カラスヤさんの顔にこれぞ苦笑という表情がみてとれる。
さっきつかんだ川床の乗り方をカラスヤさんに伝授して川床にチャレンジしてもらった。
風流を目指したはずなのにうかつにチャレンジなんて言葉をつかってしまった。失敗失敗。
逆上がりに挑戦する子どもを応援するかのように「そう、そこ!」「そのまま」という声をかけて川床に乗ってもらう。風流はどこへ
しかし乗ってしまえばこの笑顔である
この川床はきもちいいぞ
この川床、多少不安だが乗ってしまうと楽しいのだ。予想以上に風流である。川を通る風は心地よく、川の水は静かに流れている。ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。
秋田書店編集駒林さんもまじえて贅沢な時間
プレミアムモルツのCMかと思うぐらいの景色
通り過ぎる東横線に手を振ったり
背後には生演奏
生演奏? そう、この生演奏の若者たちは偶然いたのではなく、わざわざ呼んだのである。
モノブライトのみなさんです
モノブライトは夏フェスにも出るしCDも出しているれっきとしたプロのミュージシャンである。この風流な遊びを完璧にするためにBGM係をお願いした。まさに貴族の遊びである。鴨川以上かもしれない。
モノブライトの楽器を借りるおっさんふたり
B’z
諦めも肝心
川床が徐々に本気でまずい感じになってきた。
不安な脚の傾き
上の板もぼろぼろに
自作川床に長居は無用。滑り台になって川に転落する前に撤収することになった。この刹那なところも風流である。イエス、風流って言えばなんでも許されると思ってます。
僕は飲み始めるとなかなか切り上げられずについ飲み過ぎてしまうので、このように土台が時限装置的になっていると安心である(ポジティブ)。
あっというまに解体される川床
このすのこはいま編集部古賀さんの家で活躍している。
風流は作れる
自作の川床、十分にありである。ミシミシ言ったり乗り方にコツが必要だったりするがじゅうぶん楽しい。これはあれだ、子どものころに公園の植え込みのなかに作った秘密基地に通じる楽しさだ。
自分で作った場所でビールといなり寿司を食べる。ネットもあるし、また楽しい遊びをひとつ見つけてしまった。
川床が怪しくなってきたらビニールシートの上で飲んじゃってもいいしね
この取材の様子がカラスヤさんがまんがにしてくれています。カラスヤさんの視点だとこれはどう描かれているのか。発売中の「
もっと!vol.4」に掲載されています。