特集 2013年11月4日

「飯田橋」をくぐって秘密のトンネル潜入

見たことありました? これが「飯田橋」なんです
見たことありました? これが「飯田橋」なんです
飯田橋ってどんな橋だかご存知か。
東京のひとには、JRの駅名でおなじみだが、ほとんどの人は橋だと意識して渡ったことはないんじゃないだろうか。
飯田橋という橋は存在する。そして今もその下をきっちり川が流れている。
川からアクセスしてくぐってみたら、とても不思議なことになっていた。
1984年うまれ、石川県金沢市出身。邪道と言われることの多い人生です。東京とエスカレーターと高架橋脚を愛しています。

前の記事:香港のエスカレーターには各停と急行がある

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隅田川から出発して楽しい手漕ぎの旅

まず飯田橋までどうやって行くかという話だが、手漕ぎの船で行く。私が船と呼んでいるのは当サイトでも何度か登場した、パドルボードと呼ばれる乗り物である。マイボードを買っちゃったので、どこでも行き放題なのだ。というか、行かなくては損なのだ。この夏も、Canal SUP Associationの皆さんにいろんなところに連れて行ってもらった。
(これまでの顛末はこの記事この記事 をご参照あれ)
隅田川のリバーサイドテラスで膨らませて準備する。
隅田川のリバーサイドテラスで膨らませて準備する。
このままスカイツリーまで漕いでいけそうな気持ちのいい陽気だが、隅田川は我々手漕ぎのゴムボードにとっては大海原だ。屋形船や大型水上バス、水上バイクがひっきりなしに行き来し、船の引き波が反響して常にうねってえらいことになっておる。

自転車で高速道路に乗り込むみたいなことなので、ここを水路として利用するのは無理だ。タイミングを見計らって慎重にボードを出し、すぐ波の立たない神田川へと逃げ込む。本当は神田川から直接ボードを出したいところだが、自由に使える桟橋が皆無なのが現状なのだ。もしも真似したいというひとがいたら、くれぐれも経験のあるひとと共に、天候やコンディションに十分注意して挑んでほしい。
神田川入り口は、屋形船の溜まり場。
神田川入り口は、屋形船の溜まり場。
スタート地点から、神田川を西へと進みます。
当サイトでもみんなこぞって船に乗り、もはやおなじみと言ってもよい神田川だが、最近は、日本橋に便利な船着き場ができたこともあって、神田川(地図紫色)から日本橋川(地図赤色)、隅田川をぐるっと一周するクルーズが人気だ。
この日も船とたくさんすれ違ったが
この日も船とたくさんすれ違ったが
乗客の皆さんは、だいたいこの木っ端舟スタイルに驚いて大喜びしてくださる。
乗客の皆さんは、だいたいこの木っ端舟スタイルに驚いて大喜びしてくださる。
橋からも注目される。すごく見られるし、手を振られるし、話しかけられる。
橋からも注目される。すごく見られるし、手を振られるし、話しかけられる。
あるいは、音がしないのでまったく気づかれないこともある。忍者気分。
あるいは、音がしないのでまったく気づかれないこともある。忍者気分。
秋葉原までのエリアは、建物が完全に背を向けて建っていて、ひとの気配がない。忍び感が増すが
秋葉原までのエリアは、建物が完全に背を向けて建っていて、ひとの気配がない。忍び感が増すが
最近できた新しいビルだと、川に向かって大きくガラス張りになっていたりして、コミュニケーションがはかれるのであった。どうもこんにちは。
最近できた新しいビルだと、川に向かって大きくガラス張りになっていたりして、コミュニケーションがはかれるのであった。どうもこんにちは。
私が川に興味を持った5,6年前には、神田川、日本橋川の定期クルーズは、電気船による「エコクルーズ」だけだった。神田川や日本橋川は汚れた川というイメージがあって、船で行って何が楽しいのかと怪しまれたものである(川からにょきにょきと生える高速道路の高架が大好きなのだとは、「エコクルーズ」のNPOの方にはとてもじゃないが言えなかった)。それが、だんだんに都心の川にも注目が集まってきて、私はとてもうれしいのだ。だから言ったじゃーん。

いまや、万世橋の旧駅舎にオシャレの極みのような商業施設がオープンし、オシャレの極みの水辺テラスが誕生。ここぞとばかりに木っ端船団は注目される。
いまや、万世橋の旧駅舎にオシャレの極みのような商業施設がオープンし、オシャレの極みの水辺テラスが誕生。ここぞとばかりに木っ端船団は注目される。
いつもとちょっと違う川からの視点を一度経験するとやみつきなのだ。一度、動力船でもいいので乗ってみられることをオススメする。
古いアーチの三連橋。ダイナミック。
古いアーチの三連橋。ダイナミック。
そして、地上に出る丸ノ内線と聖橋。
そして、地上に出る丸ノ内線と聖橋。
聖橋をすぎると、中央線の線路すぐ脇に、圧倒的大自然が広がっているのも興味深い。
聖橋をすぎると、中央線の線路すぐ脇に、圧倒的大自然が広がっているのも興味深い。
どこの渓谷か。
どこの渓谷か。
と、ここまではいまや定期観光船でもおなじみの景色。わざわざ手漕ぎできたのには訳がある。

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そこかしこに秘密のトンネル

神田川の手漕ぎじゃないといけないところパート1、それは分水路である。当サイトでも三土さんがこの記事などで詳しくレポートしているが、流路の狭い神田川には、増水時に水を逃がすバイパスとして、たくさんのトンネル状の水路が並行して走っている。ここを探検するのに、このパドルボードという乗り物はぴったりだと思うのだ。その証拠に、三土さんにこの乗り物の話をちらっとしたところ、えらく興奮していた。だよね。
これがその入り口。超入りたい!
これがその入り口。超入りたい!
立派に名前が書いてあったりする。どうぞいらっしゃい、というふうに見える。
立派に名前が書いてあったりする。どうぞいらっしゃい、というふうに見える。
しかし、こんなふうに、入り口が閉じられているところもある。(三土さんが上の記事で内側から見ているけど)
しかし、こんなふうに、入り口が閉じられているところもある。(三土さんが上の記事で内側から見ているけど)
勇んで入っていって、もしも出口が閉じてたら、たまったものではない。分水路に入るのは法律上は問題ないそうだが、急に水位があがって出られなくなったりだとか、ガスがたまっていて呼吸できないとか、危険はいくらでも考えられる。あくまで自己責任の世界なのでご注意召されたい。
と言っても短めのところを狙ってあとで入るんだけど。
ベスト・オブ・入りたい分水路はこれ。お茶の水と水道橋の間、大渓谷にぽかりと出現する秘密の神殿である。
ベスト・オブ・入りたい分水路はこれ。お茶の水と水道橋の間、大渓谷にぽかりと出現する秘密の神殿である。
吸い寄せられるように入っていく仲間たち。
吸い寄せられるように入っていく仲間たち。
すごく居心地よさそうに見える。宴会ができそうだ。
すごく居心地よさそうに見える。宴会ができそうだ。
どこへ続くとも知れぬ暗闇が誘う。
どこへ続くとも知れぬ暗闇が誘う。
もったいぶってすまないが、分水路はあとからちゃんと入るので、本記事の本題であるところの飯田橋までまず行ってみよう。

神田川、その先へ

これも駅名にある橋、「水道橋」
これも駅名にある橋、「水道橋」
駅反対側の「後楽橋」をくぐると
駅反対側の「後楽橋」をくぐると
ゴミ処理船が作業していて
ゴミ処理船が作業していて
いつもはこの先で、南に折れて日本橋川へと進む。神田川はこの先、江戸川橋のほうへと北に折れて、ずぅっと上流の井の頭公園までつながっているのだが、ここから先へ行くには川が浅すぎるし幅が狭くて引き返すのも大変だし、動力船だとなかなか難しいのだ。
ここが、手漕ぎで行きたい神田川、パート2である。

じゃーん、だってほら、この先もすごく格好いいんです!
じゃーん、だってほら、この先もすごく格好いいんです!
ちなみに、橋脚にある四角いでっぱりは、このまま神田川の上を覆ってまっすぐ作ろうとしていた未成線のためのもので、それは私もちょっと、実現しなくてよかったかも、と思っている。(詳しくはこの記事 https://dailyportalz.jp/b/2010/12/18/a/)
ちなみに、橋脚にある四角いでっぱりは、このまま神田川の上を覆ってまっすぐ作ろうとしていた未成線のためのもので、それは私もちょっと、実現しなくてよかったかも、と思っている。(詳しくはこの記事

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地図でいうとここだ。後楽橋をこえて、日本橋川のほうからきた首都高と並走、そのまま北に折れて江戸川橋へと川はつづく。
地図でいうとここだ。後楽橋をこえて、日本橋川のほうからきた首都高と並走、そのまま北に折れて江戸川橋へと川はつづく。

この、飯田橋のところ。地図でみるだになんか大変なことになっているではないか。市ヶ谷駅前には、現在釣り堀になっている外濠があるけど、そこまでひょっとして水、流れてるのか?飯田橋は、橋なのか?
行ってみたら、こうなってた。
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「飯田橋」、その奥へ

首都高下をちらっと離れると、見えるのは、飯田橋駅前の歩道橋だ。
首都高下をちらっと離れると、見えるのは、飯田橋駅前の歩道橋だ。

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陸から見ると、こんな五叉路に複雑に歩道橋が絡む場所。
え、ここって下、川?だったっけ??というような場所だが、川なのだ。
川だ。橋と歩道橋が複雑にからみあっている。
川だ。橋と歩道橋が複雑にからみあっている。
それをくぐると
それをくぐると
飯田橋!すごく小さいけどたしかに飯田橋と書いてある!
飯田橋!すごく小さいけどたしかに飯田橋と書いてある!
ほう、これが飯田橋か、と思うより先に、その奥に続いている二股のトンネルが気になる。

そしてまた吸い寄せられていく仲間たち。
そしてまた吸い寄せられていく仲間たち。
入り口にものすごく大きな魚が泳いでいる。いまにも吹き出しがついてなんか喋りそう。
入り口にものすごく大きな魚が泳いでいる。いまにも吹き出しがついてなんか喋りそう。
そして暗い。
そして暗い。
あえて写真を加工せずそのままお伝えするが、カメラのフラッシュをたいてこのありさまだ。実際はさらに暗い。ほぼ何も見えない。30秒でわくわく感がしぼみ気が滅入る暗さである。非力なヘッドランプで手元の障害物だけ確認しつつ進む。わくわく入ってきたくせにもう出たい。出口はまだか。

あ、明かりだ!明かりが見えるぞ!(と、こういうとき必ず言ってしまうこの台詞の元ネタってなんだっけ)
あ、明かりだ!明かりが見えるぞ!(と、こういうとき必ず言ってしまうこの台詞の元ネタってなんだっけ)
トンネルの出口ってなんだか神々しい
トンネルの出口ってなんだか神々しい
え、電車?
え、電車?
なんだか、ぽかんとしてしまう場所に出た。段差があって、水がしたたり落ちている石垣は、ちょっとした公園の小粋な滝のようで風流だ。
どこ、これ。


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飯田橋駅の先ほどと反対側の出口、駅ビルすぐ横の、このこんもり緑が茂ってるところの下が、この場所らしい。
ものすごく、ものすごく駅前じゃないか。
大冒険をしてきたつもりが、都会ど真ん中の見慣れた駅前。駅のあっち側の入り口からこっち側の入り口に抜けただけ。お釈迦様の手のひらで遊ばされた孫悟空もかくやである。
孫悟空と違うのは、そうと知ってもなんだかうれしい、ということだ。
本来は、このまま外濠とつながっていたようだ。ほへー。
そして二股に分かれたことに特に意味はなく、反対側も並行してこの場所に出るようになっていた。緑が生い茂っていてやはり宴会向きの場所。
そして二股に分かれたことに特に意味はなく、反対側も並行してこの場所に出るようになっていた。緑が生い茂っていてやはり宴会向きの場所。
帰りに率先して先頭でトンネルに入っていったら怖すぎて泣くかと思った。なんなのこの謎の数字。
帰りに率先して先頭でトンネルに入っていったら怖すぎて泣くかと思った。なんなのこの謎の数字。
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分水路答えあわせ

さて先ほどの歩道橋下まで戻ってきて(いい橋脚)
さて先ほどの歩道橋下まで戻ってきて(いい橋脚)
分かれ道を今度は北に進むと、本気の神田川だ。
分かれ道を今度は北に進むと、本気の神田川だ。
神田川は、本来いまの日本橋川のほうに流れていた平川という自然河川で、これを家康がお茶の水の本郷台地を削りに削って東に掘り、隅田川までつなげたものである。なのでここから先の神田川は、自然の川らしい流路で井の頭公園まで続くのだ。あの有名な歌に歌われたのもここから先のほうだろう。

江戸川橋までは高速道路と並走してるので
江戸川橋までは高速道路と並走してるので
補修中ともあってやたらとかっこいい
補修中ともあってやたらとかっこいい
いつか井の頭公園まで漕いでみたい。
いつか井の頭公園まで漕いでみたい。
今日のところはここで引き返して、そうです、分水路に入らなくてはいけません。

分水路、答え合わせ


より大きな地図で 分水路マップ を表示
地点はおおよそです。間違ってるかも。
地図A地点に、水道橋分水路入り口。ここは短くて出口も見えるので入っていっても安心。
地図A地点に、水道橋分水路入り口。ここは短くて出口も見えるので入っていっても安心。
たぶんマンホールにつながってるのであろう、はしごっぽいものなんかが見えます。
たぶんマンホールにつながってるのであろう、はしごっぽいものなんかが見えます。
またすぐ次の分水路入り口があります。(地図C地点)
またすぐ次の分水路入り口があります。(地図C地点)
ここは途中でさらに奥の分水路の入り口の水門がでてくる。またまた三土さんによると、これを暗渠二連というそうだ。(地図D地点)
ここは途中でさらに奥の分水路の入り口の水門がでてくる。またまた三土さんによると、これを暗渠二連というそうだ。(地図D地点)
光が見えると本当にほっとする。暗闇中の体感時間は長い。
光が見えると本当にほっとする。暗闇中の体感時間は長い。
これが水道橋分水路のもうひとつの入り口(地図E地点)
これが水道橋分水路のもうひとつの入り口(地図E地点)
というわけで入ったのは短めの水道橋分水路のほうだけだが、
さっきの暗渠二連の奥を進むと、この神殿入り口に通じており(地図F地点)
さっきの暗渠二連の奥を進むと、この神殿入り口に通じており(地図F地点)
さらに神殿入り口から東に進むと、お茶の水分水路入り口につながっているというわけなのですな、なるほどー(地図G地点)
さらに神殿入り口から東に進むと、お茶の水分水路入り口につながっているというわけなのですな、なるほどー(地図G地点)

たのしい手漕ぎの旅、冬も、やってます

神田川のクルーズは動力船でもたくさん出ているわけだが、どうだろう、やっぱり手漕ぎって楽しそう、と思わなかっただろうか。パドルボードは基本的に海のスポーツなのでちょっと調べると江ノ島とか湘南とか出てきちゃうと思うのだが、完全文化系な視点では、Canal SUP Associationと、横浜では「水辺荘」という拠点で活動しているので、よければそれぞれFacebookページ、ホームページをチェックしてみてください。

Canal SUP Association Facebookページ
水辺荘 ホームページ

野田監督が、また川のDVDを出すそうです

川仲間の映像作家、野田真外さんが、また川のDVDを出すそうだ。最近流行のクラウドファンディングというやつで、私は特に参加したりしているわけではないのだが既に出資してしまったので、ぜひ完成してほしい。興味があれば、ぜひ応援してあげてください。ちなみに既に神田川、日本橋川、大阪、名古屋版が出てますので、そちらも買ってあげてください。おすすめです。

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