特集 2013年12月13日

人狼に学ぶウソの付き方

ウソが苦手です。
ウソが苦手です。
自分はこれまでウソをつかない人生を送ってきた。
ウソつきは泥棒の始まり、ウソをつくことは悪いことだと教わってきた。

一度健康診断で「好き嫌いはありませんか?」と聞かれて「ありません」と即答した時、横にいた友人から
「さっきクレソン残してたじゃねーか!」
とツッコまれたことがあったが、クレソンは飾りみたいなものだからウソには入らないだろう(刺し身についてきた菊の花は食べないでしょ?)。

そんな自分なので、ウソをつかなければならないトークゲーム、「人狼(じんろう)」をやり始めた頃はどうしたらいいかわからなかった。が、ある程度やり込んだら少しウソのつきかたみたいなものがわかってきた。そのあたりを語ってみたいと思う。
長崎より九州のローカルネタを中心にリポートしてます。1971年生まれ。茨城県つくば市出身。2001年より長崎在住。ベルマークを捨てると罵声を浴びせられるという大変厳しい家庭環境で暮らしています。

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人狼(じんろう)とは

「人狼(じんろう)」というゲームが話題だ。

カルカルでは何度もイベントが行われてるし、テレビでも取り上げるようになったので名前くらいは知ってる人も多いと思う。

概要を簡単に説明すると、
村に人間のフリをした人狼がまぎれている。夜になると人狼は村人を襲い、毎晩一人ずつ犠牲者が出る。このままでは村が全滅する。村人はみんなで話し合い、昼間に怪しい者を一人ずつ処刑していくことにした。こうして昼に一人、夜に人狼によって一人と徐々に人が減っていき、人狼が全滅したら村人の勝ち、村人が全滅したら人狼の勝ち。

人狼(じんろう)とは

という、通りがかりの人にゲーム中の会話を聞かれたら通報されそうなエグい内容である。

人数は9人以上いないと基本的にできない(※)。うち一人はゲームマスターとなり、進行役に徹する。

※少人数でできるルールもある

最初に、それぞれの役割を決めるカードを配る。
左のカードを引いた人が人狼。右が善良な村人。
左のカードを引いた人が人狼。右が善良な村人。
カードは伏せておき、けして人に見せてはいけない。テレビではカードを使わずデジタルな画面でやってたが、こういうのは絶対アナログがいいと思う。

人狼は大体2枚ほど入れる。人数が多い時は少し増やして3枚とか。それ以外は善良な村人となる。
「占い師」
「占い師」
村人の中には、いくつか役職(=能力)を持つ者もいる。「占い師」は人狼には欠かせない役職で、このカードを受け取った者は、夜中に誰か一人の正体を知ることができる。

村人達にとって最大のヒントとなる重要人物だが、自分が占い師であることを明かすのは注意が要る。真っ先に人狼の餌食になるからだ。いつ正体を明かすかはひとつのポイントとなる。

役職は他にもいろいろあるが、他の役職は入れたり入れなかったりで、ゲームに慣れてきたら少しずつ増やして変化を楽しむ。

飲み会での人狼

しばらくの間、私にとって人狼は飲み会の時にやるものだった(2年くらい前からだったかな?)。人が大勢集まらないとできないのでそうしていたが、基本的にトークゲームなので飲みながらやるのにぴったりだった。
夜の場面。(怪しい儀式みたいだ!)
夜の場面。(怪しい儀式みたいだ!)
ゲームマスターが
「恐ろしい夜がきました。皆さん目を閉じてください。」
と言い、参加者全員が目を閉じる。

飲みの席で全員目を閉じるというシチュエーションはかなり新鮮で、怪しい儀式に参加してる気分になれる。

こうしている間に、マスターの指示に従って人狼がこっそり目を開け今夜襲う村人を決めたり、占い師が誰か一人を占ったりする。いずれも声を出さずに指差しやジェスチャーで会話するので、村人たちには何が行われたのかわからない。

殺された人はゲームから脱落し、「あの世」と呼ばれる別テーブルに移動する。その後はゲーム終了まで傍観者となる。あの世卓は最初こそ人がいなくて寂しいが、徐々に賑やかになってくるのでそっちはそっちで楽しくお酒を飲める。
!

ウソの付き方1:いつもと変わらぬ素振り

さて、もしあなたが人狼役になったらどういう行動をとるだろうか?

誰もが最初に考えることは、尻尾を出さぬよう、いつもと変わらない行動を取ることだ。

・無口になったり、逆にお喋りになったりしない。あくまでもいつものペースで。

・村人サイドに立って考えてるポーズをとる。時には人狼を探してる風な発言も行う。

情報を与えないことで村人に紛れ生き延びようという行為で、これが誰しも考える日本人的なウソではないかと思う。
何度も飲みの席で使っていたらテーブルの水でふやけたりしてマークドになってしまった。(で、買い直したりコーティングするなどした)
何度も飲みの席で使っていたらテーブルの水でふやけたりしてマークドになってしまった。(で、買い直したりコーティングするなどした)
また自分が村人側になった時にも共通するセオリーとして個人的に思っているのは、


・自分に疑いがかけられても、あまり反論しない。

と言うのも 、
「たくさん喋った人から殺されていく」
という傾向があるからだ。

一例を挙げると、ある男性が疑いをかけられて、それに対し自分の正当性を論理立てて(結構長々と)力説した。それはわりあい筋が通っていたにもかかわらず、
「そんなに反論するのは人狼だからじゃない?」
と言われてあっさり処刑されていった。そして人狼ではなかった!

(一方、逆に無口=情報の糸口が無い=わからない、ということで無口の人から処刑していくグループもいるらしい)
ミラーズホロウの人狼(The Werewolves of Millers Hollow) 使い込んでるのでだいぶボロに。
ミラーズホロウの人狼(The Werewolves of Millers Hollow) 使い込んでるのでだいぶボロに。
カードを使うのは最初の役割決めだけなので、トランプでもなんら問題なく代用できるし、箸袋に印をつけたやつとかでもできる。とはいえ、やはり専用のカードを使った方が雰囲気が出る。

私が気に入ってるのは、「ミラーズホロウの人狼」というやつ。デザインがシャレれててかっこいいが耐久性が低いのが玉にキズ。
絵が抽象的で字が一切ないので応用が効く。自分たちで新しい役職を作ってもいい。ルールも必ずしも付属のルールにこだわらなくてもいい。
絵が抽象的で字が一切ないので応用が効く。自分たちで新しい役職を作ってもいい。ルールも必ずしも付属のルールにこだわらなくてもいい。

本格的に人狼をやる人たち

その後、プレイスペース的なお店で定期的に開かれている人狼会にも参加するようになった。(知り合いがそういうお店を開いた)

そこでは、それまでやっていた飲み会での人狼とはまったく様子が違い、序盤から熱く議論が交わされることに驚かされた。

飲み人狼では、あまり込み入った議論はされず、特に序盤などはほぼ勘で、
「なんとなく怪しいから」
というノリだけで昼間の処刑者を決めていた。実際、人狼は序盤はヒントがあまりなく、議論しろと言われてもなかなか難しい。

それに対し、人狼会の方はかなりアクティブに議論が進められ、人狼が一人だけだったら昼間のターンに確実に仕留める!みたいな勢いだった。ウソが下手だった自分はたしか8連敗くらいした。
人狼には細かいルールが違うさまざまなバリエーションがある。こちらは「タブラの狼」より、霊媒師と用心棒。
人狼には細かいルールが違うさまざまなバリエーションがある。こちらは「タブラの狼」より、霊媒師と用心棒。

ウソの付き方2:攻めのウソ

そこで学習したのが、「攻めのウソ」だ。

自分が人狼になった時に、自分から
「私が占い師です」
「私は霊媒師です」
と名乗り出ていく。

これはもちろん危険を伴っていて、「本物」が名乗り出てきたら2択で処刑されてしまう。

が、ハマった時は非常に強力で、たとえば序盤にどうもたまたま霊媒師を殺害できたようで、この場に霊媒師はいない・・・と思ったら思い切って「霊媒師は私です」と名乗り出てみる。そこで真・霊媒師が出てこなければ、けっこうな信用度を得ることができる。そして一度周りに思い込みを作らせると、その後の展開が非常に有利になる。

逆に、こういう「攻めのウソ」を仕掛けず、村人のフリをするだけの「守りのウソ」を続けていると、いずれ占い師に正体を見破られたり、あるいは消去法で疑われる等で追い詰められる。追い詰められると「守りのウソ」は論拠が無く、とても脆い。

「タブラの人狼」
「タブラの人狼」

人狼バリエーション

「タブラの狼」は数ある人狼パッケージの中でも日本で最もポピュラーなもの。私もルールはこれが一番好き。

死んだ人が脱落せず、幽霊となってゲームに参加し続けるルールがあったり、昼に必ず容疑者を2名選出し、決選投票を行うなど細かい部分がスタイリッシュにまとまっている。
決選投票用のチップ。
決選投票用のチップ。
レジスタンス:アヴァロン
レジスタンス:アヴァロン
「レジスタンス」シリーズは、人狼の欠点だった
・9人以上必要
・早々に脱落した人が暇を持て余す
という点を改善し、5~10人ででき最後まで全員で参加できるようにした人狼の亜種。

裏切り者をみつける腹のさぐり合いをうまい具合にシステム化している。
いろいろなアイテムがごっちゃり入ってるレジスタンス:アヴァロン。
いろいろなアイテムがごっちゃり入ってるレジスタンス:アヴァロン。
ワンナイト人狼
ワンナイト人狼
どちらかが全滅するまで夜を繰り返す人狼を、一夜限りの一発勝負にすることで短時間・少人数で遊べるようにした「ワンナイト人狼」。

一発勝負にも関わらず、人狼の面白さが見事に凝縮されていて、私もこれを繰り返し遊ぶことで、「攻めのウソ」の重要性がよくわかった。

ウソの難しさと人狼ゲームの面白さ

ウソは難しい。
咄嗟に辻褄が合うようなウソを考え回答しないといけないし、それもやがて新たな事実とともに辻褄が合わなくなり、そのことをツッコまれた時に再び整合性を保つウソが要る。そういう頭の良さを持ってないから、そういう苦しさが嫌だから自分は人生において正直路線を取ることにしたんだ、ということを再確認する次第だ。

にしても人狼は、シンプルなルールにも関わらず非常に奥が深くて面白い。やる相手・場所などによってプレイ感が全然異なるが、論理的に議論しまくる人狼会スタイルも、勘と雰囲気重視の飲み人狼スタイルもどちらもそれぞれ面白く、もう1回、もう1回と時間があれば永遠に繰り返したいほど盛り上がった。

内容的にも示唆に富んでいるので、そのうち企業の研修とか就職試験の一環とかにも使われたりするんじゃないだろうか?
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