特集 2014年1月28日

ホーロー看板をどんどんバッジにしていく

渋い趣味はいかがですか。
渋い趣味はいかがですか。
UVレジンというものを最近知って、ちょこちょこいじっている。それが何なのかはあとでご説明するとして、使い方によってその質感が「ホーロー看板」ぽいところがあるのだ。これは作ってみねばなるまい。「ホーロー看板風レジンバッジ」を。
1970年群馬県生まれ。工作をしがちなため、各種素材や工具や作品で家が手狭になってきた。一生手狭なんだろう。出したものを片付けないからでもある。性格も雑だ。もう一生こうなんだろう。(動画インタビュー)

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放浪バッジか


いきなり「UVレジン」と「ホーロー看板」という無関係そうな2単語を持ち出してしまった。どこから手を付けたらいいか自分でも途方に暮れているが、まずはホーロー看板からたどっていこう。

例えばこういう、有名どころなレトロ広告があるだろう。ホーロー板で作られた、野外用の広告である。
マスターピース オブ ホーロー看板(写真提供:T斎藤氏)。
マスターピース オブ ホーロー看板(写真提供:T斎藤氏)。
ホーロー看板御殿(写真提供:玉置豊氏)。
ホーロー看板御殿(写真提供:玉置豊氏)。
皆さんも、じかに目にしたことが一度はあるに違いない。あのホーローの質感を思い出してみてほしい。少々の反り返りのあるあの質感を。

さてUVレジンである。

レジンとは透明な樹脂で、素晴らしいアクセサリーを作れる、実にいいものだ。当サイトのライター四方さんの記事に詳しく丁寧に紹介されていますので、ぜひこちらを参照ください。

中でもUVレジン。UVランプに照射すると数分で固まるということで、こりゃあいいや話が早い、と思って一式手に入れたのが去年のこと。
大掛かりに見えるがランプは3千円くらいだった。そのぶんレジン液は安くはない。
大掛かりに見えるがランプは3千円くらいだった。そのぶんレジン液は安くはない。
買ったはいいが、たまにアイデアを実験したりその結果失敗したりして、微妙な距離感でもってこの機器と接していたのだが、田舎でホーロー看板を目にするにつけ、気付いたのだ。似てるんじゃないか?

まあ見てちょうだい。
まず試しに、看板の写真を印刷して、レジンを塗る。
まず試しに、看板の写真を印刷して、レジンを塗る。
窯(UVランプ)に入れる。
窯(UVランプ)に入れる。
2分ほど照射。
2分ほど照射。
取り出す。固まってるさまが、ホーロー看板に似ているような。
取り出す。固まってるさまが、ホーロー看板に似ているような。
そもそもホーロー自体、金属の表面にガラス質の釉薬を焼き付けたものなのだから、UVレジンで似たような雰囲気にできるかもしれない。


実際はもう少し細工をするが、とにかくホーロー看板を、片っ端からUVレジンで再現してみたいと思ったわけです。

思ったからには、急いで実家のある群馬へ向かったのだった。
いい年をして親に車を出してもらう。ほら、土地鑑忘れてるし…
いい年をして親に車を出してもらう。ほら、土地鑑忘れてるし…
群馬のことだ、実家(元は村だった)の周辺には古い納屋などがたくさんあり、よってそこにはホーロー看板があふれているだろう。実際「菅公」学生服とか水原弘の「ハイアース」とか、こんちゃんの「オロナミンC」とか見たことあるし。

と思っていたのだが…
ホーローだけど、イメージ違うな。
ホーローだけど、イメージ違うな。
もっと全国区のがいいな。
もっと全国区のがいいな。
洗濯機、だからどうしたというのだ。
洗濯機、だからどうしたというのだ。
古い建物自体が相当少なくなってきている。よって、そこに取り付けてあったであろうホーロー看板を見つけるのも、非常に難しくなっている。あるいはコレクターに引き取られていったか。この数十年、変わってないように見えた風景も、少しづつ変わっているのだった。

そんな中でも、やはりあったよ、飼料系の看板。ここはひとつおさえておくか。
味の素が出してる、さぞ味のあるえさなんだろう。
味の素が出してる、さぞ味のあるえさなんだろう。
お醤油っぽくもあるデザイン。
お醤油っぽくもあるデザイン。
ぐるぐる走り回ってもらううち、ありそうな場所がわかってきたからか、ぽつぽつと見つかるように。
ご当地だけど入れたい「きりしん」。やたらとある。
ご当地だけど入れたい「きりしん」。やたらとある。
これもホーロー。入れておくとするか。
これもホーロー。入れておくとするか。
太陽のX線写真かと思った。
太陽のX線写真かと思った。
言わずとも“キッコーマン”と主張してやまない。
言わずとも“キッコーマン”と主張してやまない。
もうちょっとメジャーなのはないか、と諦めきれずになおも山間部に入ると、あった、あったよありました。プチ・ホーロー御殿が。
御殿というにはおとなしいが、金鳥にファンタ、コーラ。もうフィールドワークは十分だろう。
御殿というにはおとなしいが、金鳥にファンタ、コーラ。もうフィールドワークは十分だろう。
もっと縦横無尽に探し尽くせば次々見つかったかもしれないが、これ以上放浪もできないのであとは仲間に助けを借りよう。当サイトライターのT斎藤さん、玉置さんからそれぞれ、記事初頭の画像を提供していただいた。もうそれらで十分だったかもしれないくらいのものだ。ありがとうございました。

これらでもって、ベースとなる画像データを制作しよう。
トリミング、はいいとして斜めからの撮影だったりするので、ゆがみを補正して四角にする。
トリミング、はいいとして斜めからの撮影だったりするので、ゆがみを補正して四角にする。
これを高品質紙に印刷し、いよいよ作業の始まりである。次は金属も登場します。
いったん広告です

仕事だとしても楽しい

プリントしてみた。このまま壁に貼り付ければ「ホーロー御殿」の完成である。
プリントしてみた。このまま壁に貼り付ければ「ホーロー御殿」の完成である。
もちろん、これ切り抜いてレジン塗って固めるだけではブローチにならないので、真鍮板を土台にしてみる。バッジとしてのしっかりとした重み・質感を求めるなら0.5mm厚、切りやすさも考慮すると0.3mmくらいか。
多少薄くてもレジンで丈夫にするし。
多少薄くてもレジンで丈夫にするし。
それでは、ここからはひたすら「切って」「貼って」「固めて」「取り出して」「ヤスリかけて」…、の繰り返しになる。自分の作業としてはすごく楽しくて没頭できるのだが、見ている皆さんは飽きてしまうだろう、よってダイジェストでお送りする。
切り抜くのは単純に楽しい。
切り抜くのは単純に楽しい。
写真だともう完成に近い。が、まだペラッペラだ。
写真だともう完成に近い。が、まだペラッペラだ。
板にレジンを塗って、紙を置いちゃう。
板にレジンを塗って、紙を置いちゃう。
UVランプで2分照射しちゃう。
UVランプで2分照射しちゃう。
これで紙は定着。金切りバサミで切り抜く。
これで紙は定着。金切りバサミで切り抜く。
ハサミで切るとゆがむので、ペンチで出来るだけ直す。
ハサミで切るとゆがむので、ペンチで出来るだけ直す。
カドをヤスリで丸くしておきたい。
カドをヤスリで丸くしておきたい。
写真ではわかりにくいけど、真鍮板が裏に付いて重みが増え、モノっぽくなってきた。
写真ではわかりにくいけど、真鍮板が裏に付いて重みが増え、モノっぽくなってきた。
いてててて。金属板を28枚切り出したので、手が非常に痛いぞ。でもつらいのはたぶんここまでだ。あとは楽しい「UVレジン盛り」工程である。だんだんバッジに近づいてきた。
いったん広告です

なんでもバッジになる!

現在の状況はどうなっているかというと、UVレジンを接着剤代わりにして、真鍮板に紙が貼ってあるだけの状態だ。この紙の上にレジンを垂らして広げ、ホーローよろしくコーティングしていく。これでグッとホーロー看板&バッジっぽくなるだろう。
適当な量を垂らして…
適当な量を垂らして…
つまようじで延ばす。粘度はけっこう高いので、表面張力でもって溢れ落ちずにいてくれる。
つまようじで延ばす。粘度はけっこう高いので、表面張力でもって溢れ落ちずにいてくれる。
ひたすら照射。照射。照射…
ひたすら照射。照射。照射…
ホーローだ!
ホーローだ!
元は古く、錆も出てツヤも失われているはずの看板が、UVレジンでピカピカに生まれ変わった。必要以上にピカピカな感じだけど、なかなかにホーロー気分だ。

こうして28個、レジンを盛ってバッジ表面は完成。
裏に、これまたUVレジンを接着剤にしてピンを取り付ける。
裏に、これまたUVレジンを接着剤にしてピンを取り付ける。
はい、照射。この記事でこのランプとはグッと打ち解けた気がする。
はい、照射。この記事でこのランプとはグッと打ち解けた気がする。
自分が小学生だったらもっと興奮してたであろう、たくさんのバッジ。
自分が小学生だったらもっと興奮してたであろう、たくさんのバッジ。
うん、かなりホーローっぽいです。撮影時の影の出方もそのままバッジになってご愛嬌。
うん、かなりホーローっぽいです。撮影時の影の出方もそのままバッジになってご愛嬌。

作ったあとどうするかとか考えてなかったが、とりあえずたくさん作って非常に満足した。

ドラえもんの秘密道具に「バッジカメラ」ってあっただろう。撮ったものが片っ端からバッジになって出てくるという、子供にとっては夢のようなカメラだ。バッジって響きも憧れのもので、アレ、欲しかったなあ。

工程はすごく多いが、これもバッジカメラと言っていいだろう。今度は自分のヘンな格好とかを撮影してバッジにしてみたい。
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