特集 2014年2月12日

雪の中に穴を掘って一晩過ごしてみた

東京では45年ぶりに記録を更新した大雪の土曜日。家を出た時点で葛西駅前は雪が積もってた。
東京では45年ぶりに記録を更新した大雪の土曜日。家を出た時点で葛西駅前は雪が積もってた。
積もった雪に穴を掘って中で寝る。いわゆる雪洞ビバークである。冬眠中の熊みたいだが、冬山に登る人は普通にやる事らしい。

冬の登山は装備がたくさん必要なので、テント分の荷物を減らしたくて雪洞を選ぶ人もいる。本当は日帰りするつもりだったんだけど、トラブルが起きた為に雪洞を掘って急場をしのぐ場合もある(その時点で遭難なんですが)。

今のところそういう目にあったことはないが、いつ雪洞ビバークをする羽目になるかも判らない。という事で、雪深い山の麓でビバークの訓練をしてきました。
あばよ涙、よろしく勇気、こんにちは松本です。

1976年千葉県鴨川市(内浦)生まれ。システムエンジニアなどやってましたが、2010年にライター兼アプリ作家として自由業化。iPhoneアプリはDIY GPS、速攻乗換案内、立体録音部、Here.info、雨かしら?などを開発しました。著書は「チェーン店B級グルメ メニュー別ガチンコ食べ比べ」「30日間マクドナルド生活」の2冊。買ってくだされ。(動画インタビュー)

前の記事:福島の乳首山に登った

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着いた場所は登山口の斜面

今回は所属している山岳会の訓練として雪洞ビバークを行った。朝、東京を出発して北関東某所の山の麓、登山口にある斜面へ連れて行ってもらった。
こういう斜面で雪洞を掘りました。練習なので山は登りません。
こういう斜面で雪洞を掘りました。練習なので山は登りません。
雪洞は掘る場所選びが肝心である。雪崩や強風、落石などが起りそうにない安全な場所を選ばなくてはならない。また、雪の深さが2mはないと作りにくい。雪質も重要で、新雪ではなく締まった雪で2mである。フカフカの新雪に雪洞は掘れない。

雪の深さや雪質は雪崩救助に使うゾンデ棒という道具で調べる。ゾンデ棒は折りたたみ式で、伸ばせば3mほどになる。これを雪に突き刺して調べるのだ。
折りたたむと赤い袋に入る。そして軽い。
折りたたむと赤い袋に入る。そして軽い。

ひたすら掘ります

場所を決めたらあとは掘るだけ。まずは斜面を垂直の壁にする。中には氷の層なんかもあってスコップが入りにくい場所もあるが、頑張って掘る(持ってればノコギリで雪を切る)。
ザクザク掘りますが、下の方に氷の層があって難儀しました。
ザクザク掘りますが、下の方に氷の層があって難儀しました。
なお、ここで使っているスコップも雪山用の物である。軽くて丈夫で、ブレードとシャフトを分離すればザックに入る。
青いブレードが可愛かったのでこれを選んだ。ブラックダイアモンドのトランスファー3というスコップである。
青いブレードが可愛かったのでこれを選んだ。ブラックダイアモンドのトランスファー3というスコップである。
こんな風に分離する。
こんな風に分離する。
シャフトを伸ばすとこんな感じ。
シャフトを伸ばすとこんな感じ。
手に持つとこんなサイズ感である。山道具ってやっぱ可愛い。
手に持つとこんなサイズ感である。山道具ってやっぱ可愛い。

ガンガン掘っていく

垂直の壁を作ったら横穴を掘る。雪洞の入り口である。入り口は作ってる最中なら多少大きくても問題無い。最終的には雪のブロックを積んで小さくするからだ。
ひたすら掘ります。掘ってる途中は入り口が多少大きくないと作業しにくい。
ひたすら掘ります。掘ってる途中は入り口が多少大きくないと作業しにくい。
最後にはこれくらいの大きさにしました。縦横1mくらいの穴。雪のブロックで入り口を小さめにしました。
最後にはこれくらいの大きさにしました。縦横1mくらいの穴。雪のブロックで入り口を小さめにしました。
入り口から掘り進めて、ある程度の空間が出来たら左右どちらかに折れ曲がって掘り進める。一直線だと風が吹き込んで寒いし、雪が少ないと地面にぶつかってしまう。

長さは横に2mくらい、奥行きと高さは1mちょい。天井は高い方が開放感があるが、高すぎると寒い。頭は入り口に近い方へ。もし落盤した時にも脱出しやすいからだ。

雪洞が崩れる事って割りと良くあるのらしい。マジか。

一人分なら大体こんなイメージを持って掘る。
一人分なら大体こんなイメージを持って掘る。

一人の作業は結構大変

さて、一人分の雪洞は自分一人で掘らなきゃならない。なので、雪洞の中を掘って出た雪は自分で外に出す。じゃないと入り口が埋まってしまうのだ。
気付くと入り口が埋まってる。閉所恐怖症の人にはキツイ作業かも。
気付くと入り口が埋まってる。閉所恐怖症の人にはキツイ作業かも。
掘っては雪をかきだし、掘ってはまたかき出すという作業を続け、ようやく中で寝転がれる程度の空間が出来た。これでほぼ完成である。

あとは細かい内装や外装だけ。天井をドーム状にならしたり、土間や棚、入り口のカーテンを付けたら完成だ。
足を伸ばすと楽ですわー。
足を伸ばすと楽ですわー。
壁に棚を作る。ロウソクを立てたり、小物を置いたりするのに使う。
壁に棚を作る。ロウソクを立てたり、小物を置いたりするのに使う。
入り口はレジャーシートやツエルト(小型テント)などでカーテンを掛ける。これ、必須です。ないと大変な事になる。
入り口はレジャーシートやツエルト(小型テント)などでカーテンを掛ける。これ、必須です。ないと大変な事になる。
エアマットを敷いてみるとこんな空間。カプセルホテルみたいで、結構居心地が良い。寒いけど。
エアマットを敷いてみるとこんな空間。カプセルホテルみたいで、結構居心地が良い。寒いけど。

ちょっと失敗した、雪洞あるある

ここで一つ白状しておくが、今回の雪洞を作るにあたっては一つ失敗があった。最初の壁を作る時点で掘り方が浅かったらしく、天井がかなり薄くなってしまったのだ。外の明かりが透けて見えるほどに薄い。

これだと、雪が上に積もると天井が抜けかねないので危険だ。
雪洞あるある。ついうっかり天井を薄くしてしまいがち。薄いとこで、大体厚さ20cmくらいになっちゃった。
雪洞あるある。ついうっかり天井を薄くしてしまいがち。薄いとこで、大体厚さ20cmくらいになっちゃった。

ここからが楽しいわけですよ

さて雪洞が出来た。あとはご飯を食べて寝るだけだ。ここからしばらくは楽しかった。

続きは次のページ。
とりあえず出来たので休憩。ランチパックのボルシチです。前日スーパーに行ったら大雪の予報にビビッた都民が食料の買いだめに走ったせいで、こういうマニアックなやつしか残ってなかった。
とりあえず出来たので休憩。ランチパックのボルシチです。前日スーパーに行ったら大雪の予報にビビッた都民が食料の買いだめに走ったせいで、こういうマニアックなやつしか残ってなかった。
いったん広告です

雪洞の夜がはじまる

日が落ちてきたので棚にロウソクを立てて火を灯す。雪は光をほぼ反射するので、ロウソク1本でも案外明るい。
ムーディーです。カップルで雪山に行くなら雪洞もアリでは?!(寒すぎて喧嘩になるかも知れんが)
ムーディーです。カップルで雪山に行くなら雪洞もアリでは?!(寒すぎて喧嘩になるかも知れんが)
ロウソクは酸欠を知らせるためのサインとしても有効だ。雪洞は入り口や空気穴が埋まると酸欠になりやすい。 ロウソクが消えたら酸素が薄くなっている証拠なので、すぐに換気するか脱出した方がいい。

と、言われている。が、実際に酸欠になった人に聞いたところ「ロウソクが消えたのは気付いたけど、その時点で酸欠だったみたいで『あれー、なんで消えたんだろうねー』なんてみんなで不思議がってるだけだった」そうだ。

酸欠で頭が回らなくなると、ロウソクが消えた意味も判らなくなってしまうのらしい。恐ろしや。
棚には邪魔な荷物を入れたり出来る。
棚には邪魔な荷物を入れたり出来る。

水を作らないといけません

夕食の前にまず水を作らないとならない。今回は水をほとんど持っていかなかったので、雪を溶かして水を作る。これも雪山ではよくある事だ。

鍋に手持ちの水をちょっと入れておく。そこに外から集めてきた新雪をギューギュー押し込んでガスコンロで加熱。融けたらボトルなどに移して、それを飲んだり炊事に使ったりする。

雪を溶かせば水になるので、そこだけは夏山登山より楽。新雪じゃないと埃っぽいけど。
雪を溶かせば水になるので、そこだけは夏山登山より楽。新雪じゃないと埃っぽいけど。
夕食はカレーうどんにした。具材はジップロックに入れて持って来て、麺はインスタントである。手軽で体が温まるメニューだ。
具材と調理器具。ガスは使いかけのを2本持って来た。これが後に悲劇を生む。
具材と調理器具。ガスは使いかけのを2本持って来た。これが後に悲劇を生む。
具を煮込んで麺を投入。美味しそうな匂いがしてきましたよ。
具を煮込んで麺を投入。美味しそうな匂いがしてきましたよ。
完成!具がたっぷりのカレーうどんです。
完成!具がたっぷりのカレーうどんです。
マルちゃんのカレーうどん。赤いきつねみたいな平麺が美味いのだ。
マルちゃんのカレーうどん。赤いきつねみたいな平麺が美味いのだ。
豚肉をたくさん入れました。
豚肉をたくさん入れました。
雪洞で食べるカレーうどんの美味さたるや。苦労して雪洞を掘った甲斐があったというものである。雪解けの水で料理をするというのも、自然の循環を実感できて嬉しい。PM2.5がどうとか野暮な事を考えてはいけない。

という事で、うどんおかわり。
替え玉です。
替え玉です。

ウイスキー、スノーで

夕食が済んだら酒である。家にあったちょっと良いウイスキーを持って来た。壁の雪を削ってコップに入れて、そこにウイスキーを注ぐ。

ウイスキーの雪割りって寸法である。
ウイスキーの雪割りって寸法である。
たまらんです。
たまらんです。
雪割りのウイスキーは甘く、食道をやさしく灼く。ぬおー、体が温まる!カレーとウイスキーでポカポカする俺。略してポカ俺。

そして読書

最近、風雪のビヴァークという本を読んでいる。戦前から戦後に掛けて活躍したクライマー、松濤明(まつなみあきら)氏による山行記録集だ。

松濤明は数々の初登記録(単独も多数)を持つ天才クライマーであり、文章力も素晴らしい。なんとも美しく、臨場感に溢れる山行文の連続に引き込まれる。

ちなみに、ネタバレであるが最後は遭難して亡くなってしまう(壮絶という言葉もぬるいくらい壮絶)。
登山者必読の一冊。言葉使いが古いのも面白い。『アルバイト』を『労働』って意味で使ってたりする。『ラッセルアルバイトをした』とか。また、ちょくちょく道に迷ったり装備を燃やしちゃったり、バスに乗り遅れたりという失敗もする。そこら辺のドジッ子ぶりも面白い。
登山者必読の一冊。言葉使いが古いのも面白い。『アルバイト』を『労働』って意味で使ってたりする。『ラッセルアルバイトをした』とか。また、ちょくちょく道に迷ったり装備を燃やしちゃったり、バスに乗り遅れたりという失敗もする。そこら辺のドジッ子ぶりも面白い。
松濤明はクライマーなので岩登りの記録が多いのだが、時には厳冬期の南アルプスを単独で縦走したりもする。

そんな山行中の宿泊はほぼ全てビバークである。ツエルトでビバークしたり、雪洞を掘ったり。

そういう本なので是非雪洞でビバークしながら読みたいと思っていたのだ。読んでいると同じルートに行ってみたくなるが、大体が冬の岩壁なので当面は無理そうである(多分死ぬ)。
ロウソクの明かりでもなんとか読めるが、やっぱ暗い。
ロウソクの明かりでもなんとか読めるが、やっぱ暗い。
やっぱ薄暗いなーと思いつつ、ロウソクとヘッドランプの明かりに頼っていたのだが、ひょんな事からヘッドランプを天井に向けたら凄く明るくなった。

前述の通り、雪は光を反射するので天井を照らすと、反射して雪洞全体に光が回るのだ。
ヘッドランプを天井に向けると光が反射して明るい事を発見。
ヘッドランプを天井に向けると光が反射して明るい事を発見。
雪洞で酒を飲みながら、明るいLEDヘッドランプの明かりで風雪のビヴァークを読む。至福である。酒はウイスキーと赤ワインを持って来た。つまみはビーフジャーキー。
赤ワインは瓶だと重いのでナルゲンボトルに入れてきた。
赤ワインは瓶だと重いのでナルゲンボトルに入れてきた。
しかし問題がある。雪洞の中は周りじゅう水分だらけなので結構湿度が高いし、雪の欠片が融けて水がしたたってくる。なので、持ち物全てがしっとし濡れていくのだ。

お肌もしっとりモチモチ肌になるのだが、本もしっとりしていく。そして乾かない。ガスを炊けば乾くのだろうが、そんな余裕はない。
雪洞あるあるその2。持ち物は全て湿っていく。
雪洞あるあるその2。持ち物は全て湿っていく。
濡れ気味の本を読み進め、酒を飲み、眠くなってきた。時間は午後10時。普段ならまだ早い時間だが、早起きしてアルバイトしたので眠い時間である。

ここからが大変だった。
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エアマットが壊れた

さて、実は薄々気付いていたのだが、お尻の下に敷いていたエアマットの空気が抜けていた。エアマットは空気を入れて膨らませると厚さが3cmくらいになる。

膨らんだ状態で使えばそこそこ温かいのだが、ぺったんこでは布きれ1枚と大差無い。雪の冷たさがダイレクトに伝わってくる(しかも全体的に濡れてる)。

いよいよ寝ようと思っていたのだが、寝るどころではなくなった。
絶望のぺったんこ。雪洞あるあるその3、エアマットがパンクしてぺったんこ。
絶望のぺったんこ。雪洞あるあるその3、エアマットがパンクしてぺったんこ。
どこかから空気が漏れているっぽい。空気を入れ直せばしばらく保つんじゃないか?と思ってバルブから空気を入れた。が、空気を入れるやいなや、シューっと音がして風が顔に当たるのだ。

なんと、バルブの横の接着剤が剥がれて豪快に漏れていた。テープを貼って応急処置出来るかな?とも思ったのだが時すでに遅し。濡れたエアマットにテープが付かない。修理は不可能である。

実は寝袋禁止の訓練であった

そして更に絶望のお知らせである。実はこのビバーク訓練は寝袋禁止である。今は2月、厳冬期。厳冬期の雪山で寝袋無し……。

なにせ緊急避難の訓練だ。『日帰りの予定で寝袋持っていくか?』と聞かれたら答えはNOだろう。普通、ツエルトやガスコンロのセットは持っていくが寝袋は持っていかない。

という事で今回使っていい寝具はエアマットとシュラフカバーだけと決められていた。日帰りの予定でエアマットを持つか?って話ではあるが、そこはリーダーの優しさである。つーか、マット無しで雪洞ビバークなんてやったら低体温症になる自信がある。
シュラフカバーってのは、要は布の袋です。
シュラフカバーってのは、要は布の袋です。
シュラフカバーってのは本来、寝袋が濡れないようにするカバーであり、一応防水になっているがペラペラの布だ。もちろん保温性なんて無いに等しい。

空気が入らないぺったんこエアマットの上でシュラフカバーに入って寝た。床は雪。体温がガンガン奪われていく。ヤバイ。寒くて眠れない。

寒くて起きて、二度と眠れない

それでも多少は寝た。多分2時間くらいウトウトした。で、深夜1時頃目が醒めた。体が冷え切っていた。雪山で遭難して「ダメだ!寝たら死ぬぞ!」なんて話になるが、中途半端に寒いと逆に眠れない。
ヤバイと思って顔写真を撮ったが、まだ血の気はあるので大丈夫っぽい。
ヤバイと思って顔写真を撮ったが、まだ血の気はあるので大丈夫っぽい。
ありったけの防寒着を着込んでいる。しかし、うっかりウルトラライトダウンなんて着てきてしまったので寒い。もっと厚いダウンジャケットを持ってくるべきだった。

上半身はそれでもまだ着込んだのでマシだが、下半身が寒い。タイツ、厚手のズボン(ソフトシェルパンツ)、レインウェアの3枚だ。足が冷えてしかたない。

ハクキンカイロ(ベンジンを燃料にした超温かいカイロ)も使っているが、なおも寒い。
ハクキンカイロ(ベンジンを燃料にした超温かいカイロ)も使っているが、なおも寒い。
更にピンチのお知らせである。なんだか入り口のカーテンが内側に膨らんで来たなーなんて思っていたが、なんとなくめくったら入り口が雪で埋まっていた。

そこには雪の壁があった。
衝撃的すぎて笑った。雪洞あるあるその3、入り口が埋まる。
衝撃的すぎて笑った。雪洞あるあるその3、入り口が埋まる。
もう、すっかり埋まってしまって壁である。夜中に一人で「生き埋めかい!」って突っ込んだ。あまりにそのまんまな突っ込みである。

こういう時のためにスコップとピッケルは雪洞に入れておけと指導されていた。本当に必要なんだなぁ。

完全に埋まってる写真はビックリしすぎて撮り逃した。ちょっと掘ってから撮影したのが上の写真。
マジで白い壁になってた。
マジで白い壁になってた。
天井に開けた空気穴も入り口も完全に埋まっていた。が、ロウソクは一応燃えていた。埋まっちゃっても一人だしガスで煮炊きもしていなかったので酸欠まではならなかった様だ。助かった。

堪えかねて朝食を作る事にした

朝5時頃。もはや寝るのも寒さに耐えるのも無理である。まだ早い気もしたが朝ごはんにすることにした。朝食は猫まんまである。
お湯を沸かしてみそ汁を作り、そこにご飯を入れて煮る。
お湯を沸かしてみそ汁を作り、そこにご飯を入れて煮る。
冷え切った体に嬉しい暖かさ。
冷え切った体に嬉しい暖かさ。
昨夜の具材たっぷりのカレーうどんも美味しかったが、冷え切った体にはこのシンプルな暖かさが嬉しい。

熱いみそ汁が体に沁みる。ご飯の甘味が口に広がる。これほど美味しい猫まんまを食べたのは初めてだ。
凄まじく美味しかった。
凄まじく美味しかった。

ガスコンロで暖を取る

朝食も終わったし、2日目で必要なお湯と水も作った。あとはもうガスは必要無いので暖房に使っちゃおう。

ところで、ずっとガスコンロと書いてきたが、実は山の世界ではコレを「ガスストーブ」と呼ぶ。

ホントはガスストーブです。
ホントはガスストーブです。
今までこういう寒い宿泊をしたことが無かったので暖房に使ったことは無かったのだが、こうしてみると暖房用具であり、ストーブという名前がしっくり来る。

しかしここで更に残念なお知らせである。

ガスが尽きた。
徐々に火が弱くなってきた。
徐々に火が弱くなってきた。
段々火が弱くなってくる。ボンベを素手で触って温めると多少持ち直すが、それでも弱くなっていき、遂に消えた。暖を取れたのは大体20分くらいだったろうか。まだ朝の6時だ。終了まであと2時間くらい。
雪洞あるあるその4、ガス欠。
雪洞あるあるその4、ガス欠。
実はガスが残り少ないのは出発前から知っていた。この際だから中途半端にあまってるガスボンベを使い切っちゃおうと思って、そういうボンベを持って来ていたのだ。水作りや暖房で予想外にガスを使い、遂にガス欠である。

簡単に言えば雪洞ビバークを甘く見ていた。とんだドジッ子である。これが練習で本当に良かった。

ただ、朝食後に無くなったのが不幸中の幸いである。じゃなければボソボソに固まったご飯を食べる羽目になっていた。

天井が下がってきた

そして天井が下がってきた。入り口付近の、天井が特に薄い部分が30cmくらい下がっていた。あと数時間すれば落盤する勢いである。
雪洞あるあるその5、下がる天井。
雪洞あるあるその5、下がる天井。
酷い場合は雪洞の天井全体が下がってきて、起きると目の前に迫っている事もあるという。閉所恐怖症でなくても息が詰まる話である。下手すりゃそのまま生き埋めだ。

そういう時は夜中でも起きて天井を削るのだという。絶対に避けたい事態だ。僕の場合はそこまで酷くなく、っていうかほぼ寝てないので事なきを得た。

そしてようやくビバークが終わる。
いったん広告です

ようやくビバーク終了

寒くて長い夜だった。もう、ずっと布団と温泉の事を考えていた。布団や温かい家がどれだけありがたいものなのか。

とはいえ、完全に外で寝るのと比べたら雪洞は温かい。そこら辺に転がしておいた水のボトルが凍ってなかったので0℃以上はあったようだ。
撤収します。一晩ありがとう。
撤収します。一晩ありがとう。
使い終わった雪洞は、特に今回の様な天井の薄い雪洞は壊しておく。もしこの上を誰かが歩いたら踏み抜いて危ないからだ。

作るのは大変だけど壊すのは簡単です。
作るのは大変だけど壊すのは簡単です。
天井の厚みは奥の方で1mくらい。壁の凹みは、ロウソクと小物の棚である。どんな感じで作ったのか書き込むと下の写真みたいになる。
一人ならこのくらいの広さで十分でした。初めて1人で作ったにしてはよく出来た方みたいです。
一人ならこのくらいの広さで十分でした。初めて1人で作ったにしてはよく出来た方みたいです。
次の日は朝から雪上訓練。滑ったりひっくり返ったりして雪まみれになりました。斜面でグルグル回った。

しんどいけど、体を動かしてる方が温かいので凍えるよりは数段マシです。
雪山を安全に登るには色んな技術や道具、経験が必要なんだなぁ。
雪山を安全に登るには色んな技術や道具、経験が必要なんだなぁ。
ちなみに、僕が4ページに渡って書いてきたビバーク体験記、風雪のビヴァークでは『急雪面に穴を掘ってツェルトを被った』と一文でサラッと書いてたりする。事件がないビバークなんて日常の一部だったのだろう。

出来るだけ予定外のビバークはしたくない

ぺったんこのエアマットとシュラフカバーという、かなり酷い装備での雪洞ビバークを堪えることが出来ました。これは大きな自信となりました。ドンと来い緊急避難。

が、やっぱ予定外の雪洞ビバークはしたくないもんですな。寒くて眠れないのはツライです。せめて寝袋は欲しい。装備が豊富なら雪洞泊も楽しいので、また今度、雪洞泊前提でどこか雪山に行きたいなーと思ったのでありました。

なお、この訓練は近くに経験豊富なリーダーが付いてて安全を確保した上で行っております。雪山初心者だけで真似しないように。
上野駅で食べた立ち食いそばが美味いのなんの。
上野駅で食べた立ち食いそばが美味いのなんの。
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