フェティッシュの火曜日 2014年2月18日

廃造船所で行われる、まつり

幕末からの歴史を持つ造船所で、開催されるお祭りがあるのです
幕末からの歴史を持つ造船所で、開催されるお祭りがあるのです
東京湾の入口に位置しており、ペリーの黒船が来航した開国の地でもある浦賀。その深く切り込んだ浦賀湾の根元に、住友重機械工業の造船所が存在する。

いや、2003年に閉鎖したので“存在した”と過去形でいうべきか。しかしその廃造船所の敷地には、いまだほとんどの建造物が現存しており、運用されていた当時の景観をほぼそのままに留めている。

普段は固く閉ざされ、立ち入ることはできないものの、年に一度、1月下旬に行われる「中島三郎助まつり」だけは例外だ。壮大なる廃造船所を、心行くまで堪能することができるのである。
1981年神奈川生まれ。テケテケな文化財ライター。古いモノを漁るべく、各地を奔走中。常になんとかなるさと思いながら生きてるが、実際なんとかなってしまっているのがタチ悪い。2011年には30歳の節目として歩き遍路をやりました。2012年には31歳の節目としてサンティアゴ巡礼をやりました。

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駅前から広がる造船所の工場群

「中島三郎助まつり」の会場である旧住友重機械工業浦賀造船所は、浦賀の中心もいいとこ、駅前にどどんと広がっている。

かつては町の経済の根幹を支えていたんだろうなと、想像に難くない立地である。
山の斜面にへばりつくように建てられた浦賀駅
山の斜面にへばりつくように建てられた浦賀駅
その駅前から見える、造船所の工場群
その駅前から見える、造船所の工場群
5分ほど歩いて正門に到着。正面の機関工場が会場だ
5分ほど歩いて正門に到着。正面の機関工場が会場だ
飾り気のない工場の入口に、「中島三郎助まつり」の文字が躍る
飾り気のない工場の入口に、「中島三郎助まつり」の文字が躍る
「そもそも中島三郎助とは何者じゃ?」という声が聞こえてくるような気がするが、まぁ、大雑把に説明すると、「カイコクシテクダサーイ」やってきたペリーの黒船に、日本人として一番最初に乗り込んだ人物である。

浦賀奉行所の与力(中間管理職)であった三郎助さんは、「偉い奴にしか会わない。話したくもない」と駄々をこねるペリーに対し、副奉行と身分を詐称して黒船へと乗り込み、ペリー側との交渉窓口として役割を果たした。
黒船の中を歩き回り、船の設備についてあまりに色々質問しまくったそうで、スパイなんじゃないかとペリーに疑われたそうだ
黒船の中を歩き回り、船の設備についてあまりに色々質問しまくったそうで、スパイなんじゃないかとペリーに疑われたそうだ
ペリーが帰った後は軍艦の重要性を幕府に進言し、浦賀にて日本初の洋式軍艦である「鳳凰丸」を建造。さらには長崎海軍伝習所の一期生として造船を学び(同窓生である勝海舟とは犬猿の仲だったらしい)、その後は吉田松陰や桂小五郎などにも教えを説いたそうだ。

幕末のスターたちとも交流があり、与力から海軍士官にまで出世した三郎助さんではあったものの、幕府への忠義から戊辰戦争で旧幕府軍につき、箱館総攻撃によって戦死している。なんとも波乱万丈な人生だ。

「中島三郎助まつり」は、そんな三郎助さんの功績を讃えるべく始められた催しである。地元中心のささやかなお祭りではあるが、その会場は廃造船所なだけあってスケールがでかい。
どどんと広がる工場の中、展示パネルや出店が並ぶ
どどんと広がる工場の中、展示パネルや出店が並ぶ
地元の方々が様々なお店を出しているのだ
地元の方々が様々なお店を出しているのだ
海の町らしく、軽トラで生わかめも絶賛販売!
海の町らしく、軽トラで生わかめも絶賛販売!
あつあつの黒船シチューはパン付きで200円
あつあつの黒船シチューはパン付きで200円
奥にはステージもあり、偉い人が挨拶をしていた
奥にはステージもあり、偉い人が挨拶をしていた
巨大な三郎助さんの肖像がまつりを見守る
巨大な三郎助さんの肖像がまつりを見守る
そして頭上に広がる天井の高い工場空間
そして頭上に広がる天井の高い工場空間
他では見られない、ちょっとシュールな光景である
他では見られない、ちょっとシュールな光景である
とまぁ、「中島三郎助まつり」はこのような感じである。壇上では地元の方々による演舞やコーラス、バンド演奏などが行われ、なかなかの盛況っぷりだ。

まつり自体も非常に楽しいものではあるが、やはりどうしても気になってしまうのは、まつりの会場となっている廃造船所の建造物群である。

続いては、廃造船所見学という視点で、会場を眺め倒してみるとしようじゃないか。

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