特集 2014年5月13日

2014年のアクリルロボット

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小学6年生のころ、三井康亘さんが書いた「アクリルロボットの工作」という本を図書館で借りた。1980年代前半のことである。
その本に載っていた透明な四足歩行や六足歩行のロボットはまさに未来の工作という感じがした。

自分でも作ろうとしたがロボットの足のリンク機構がうまくできず、タイヤを付けて走る車にしたのであんまり未来にはならなかった。

そのアクリルロボットの始祖、三井さんが新作キットを出したというのでアトリエに行ってきたのだ。
1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

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レジェンドの家に

行ってきたのだ、などと軽く書いているが、小学校高学年の僕にとって三井さんは星新一ぐらいのスターだったので緊張する。
7年前にカルチャーカルチャーでロボットのイベントがあり、そのときに配布したタミヤのロボットキットの監修が三井さんだったのだ。そこでレジェンドとつながりができた。カルチャーカルチャーがあってよかった。
大人になってから買い直した。アクリルロボットの工作
大人になってから買い直した。アクリルロボットの工作
これの作り方が書いてある。これを見て夢中にならない小学生はいないだろう
これの作り方が書いてある。これを見て夢中にならない小学生はいないだろう
三井さんの自宅兼アトリエは富士山のふもとの別荘地にある。日当たりのいい広々とした部屋に作業机と工具が並んでいる。外からはテープかと思うぐらいはっきりとしたウグイスの声。誰がどう見ても「男の夢」だ。
レジェンド 三井さんと素敵なアトリエ
レジェンド 三井さんと素敵なアトリエ
三井さんはもともとイラストレーターなのだが、趣味で作ったロボットが1974年から話題になり1977年に「アクリルロボットの工作」を出版した。その後はイラスト制作のほか、ロボットの制作やタミヤのロボクラフトシリーズを開発している。
横から登場するメカ担当ふたり
横から登場するメカ担当ふたり
今回の取材は編集部石川とテクノ手芸部よしださんが同行している(工作好きだ)のだが、僕を含め3人ともこのアトリエにノックアウトされていた。

万力もドリルもいろんなサイズのネジもある。作品を動かすことができるテーブルもある(撮影するために作業していた場所を片付けるとかしなくてもいいのだ)。

アトリエに見とれている場合ではなかった、三井さんの新作である。

新作はサッカーロボット

三井さんの新作は赤外線リモコンサッカーロボット。ヴイストンからキットになって4月に発売された。なんと30分で組み立てることができる。
アクリル&モーターむき出しなんだけどどこかかわいいのが三井さんの作品
アクリル&モーターむき出しなんだけどどこかかわいいのが三井さんの作品
このサッカーロボット、駆動部分はモーターの軸そのままである。モーターの軸が直接地面に設置していて、モーターの軸が回転すると前に進む。
駆動部分はこれだけ
駆動部分はこれだけ
実はこの仕組み、三井さんがむかし著書で紹介しているものなので「ははーんあれですね」と偉そうに相槌を打ってしまったが実物を見るのははじめてである。モーターの角度によってスピードを変えることもできる。
このシンプルな機構でこれぐらいスムーズに動いてしまう
これがリモコン
これがリモコン
操作は赤外線のリモコンで行う。30年前の三井さんの著書で紹介されているロボットはどれも有線のリモコンで操作するものだったのだが、最近になって電子回路をマスターして赤外線リモコンに辿り着いたという。
小学生のころに見たあのロボットはその後も進化していたのだ。
もう続きが読めないと思っていたマンガが実は続いていた、みたいな嬉しさである。

そして4人でサッカーに興じているのがこの動画。興奮しすぎてよだれが垂れそうになった。
リモコンは4チャンネル切り替えられるので4人同時プレイが可能
どのロボットも同じなのだが不思議なことにすぐにどれが自分のロボットかわかるし、あのゴール前でくるくる回っているのは石川だな、などと操作している人も分かる。
そして自分のロボットがどんどん好きになる。家帰ったらステッカーを貼ろう。

他にもいろんな作品が出てくるわけですよ

アトリエには子どものころに本で見たロボットや試作品などいろんな作品があって知恵熱ぐらい軽く出せる楽しさだった。まずは恐竜ロボット。
カタカタと前に歩くのね、と思ったらそれだけではないのだ
カタカタと前に歩くのね、と思ったらそれだけではないのだ
なんと方向転換もするのだ
方向転換の秘密はしっぽの先についた小さなモーター。
振動するように軸に半円状のおもりがついている
振動するように軸に半円状のおもりがついている
このモーターで振動をおこして本体を回転させるのだ。発明である。
こんな仕組みシンプルでほかに見たことがない。トレンドたまごに余裕で出られそうなアイデアである。

で、こっちは「作ってみたんだ」と軽く言っていた猫パンチロボ。
電磁石のオンオフで腕が動く
腕が戻るときは腕の重さで自然と戻るような絶妙なバランスで成り立っている。そんな巧みなセンスで作ったのが猫パンチだなんてもうたまらん。
そしてこれが「アクリルロボットの工作」の代表作である六本足ロボ。進化してラジコンになっている。
動きがほんとに虫っぽい
猫が襲ってもいいように安定のいい六本足にしたそうだ。なのでこんなぼこぼこしたテーブルでも平気である(昼ごはんを食べたおそばやさんです)。
三井さんいわく「ロボットは小さければ小さいほうがいい」だそうです。なるほど。
三井さんいわく「ロボットは小さければ小さいほうがいい」だそうです。なるほど。

アクリルロボットは続いていた

アクリルの質感が1980年前後の時代感覚(YMOや映画「トロン」など)に通じるものがあって、いわゆるレトロフューチャーってことになってしまうのかなと思っていたが、そんなことお構いなしに三井さんはもりもり進化していた。超現役だ。
進化のなかでもありがたいのはキットになって僕でも30分で組み立てることができるようになっていたことである。ちなみに30分は家じゅうのリモコンから単4電池を抜いてくる時間込みでの30分である。
おかえしに石川からデイリーの作品を披露してもらった
おかえしに石川からデイリーの作品を披露してもらった
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