特集 2014年11月12日

小学生時代に描いた黒歴史マンガを読み返す

学習ノートに渾身の作品群が
学習ノートに渾身の作品群が
イラストレーターのこいしゆうかさんと飲んでいた時のこと。ふと小学生時代の話になり、彼女が言った。「そういえば私、ずっとマンガを描いてたんです。実家にあるはずだけど、黒歴史すぎてとても読み返せないなあ」。なるほど、読み返しましょう。
ライター。たき火。俳句。酒。『酔って記憶をなくします』『ますます酔って記憶をなくします』発売中。デイリー道場担当です。押忍!(動画インタビュー)

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「ミスターチュルドレン」の衝撃

果たして、そのマンガノートはちゃんと実家に保存されていた。お母さん、偉い。

アウトドアコーディネーター、ライターとしても活躍中のこいしさんは、『キャンプ、できちゃいました。』(アスペクト)という面白アウトドア本も出版している。
かわいく、たのしいキャンプの勧め
かわいく、たのしいキャンプの勧め
ペグの向きを間違えるシーン
ペグの向きを間違えるシーン
このようにイラストレーターとして大成した人物は、小学生時代にどんなマンガを描いていたのだろうか。いよいよ、その全貌が明らかになる。
こちらでーす
こちらでーす
知人のデザイン事務所を借りて鑑賞会である。なお、感動をともに分かち合いたいので、こいしさんもまだ中身を見ていない。

「マンガを描いていることは誰にも言ってなくて、唯一、同じクラスの羽田さんにだけ見せていました」

当時の写真も持ってきてもらった。
小4時代。左から2人目が羽田さん、4人目がこいしさん
小4時代。左から2人目が羽田さん、4人目がこいしさん
さて、ページをめくろう。
「ミスターチュルドレン」の衝撃
「ミスターチュルドレン」の衝撃
「うわーーーーーー!」

頭を抱えて叫ぶこいしさん。いきなり、すごいのが来た。

「ミスチルが好きだったんですよ。覚えたてのローマ字も使いたかったんでしょうね」
長い旅路になりそうだ
長い旅路になりそうだ

試合は早々に切り上げて、恋愛シーンが始まる

ところで、どんな子どもだったんだろう。

「ボケボケでした。学校に着いたらランドセルの中に何も入ってなくて、お母さんに持ってきてもらったり。あと、ジャズダンスを習っていたので、朝、『おはよー』って言いながら教室の真ん中で踊るブームもありました」
続きを読みましょう
続きを読みましょう
とにかく、好きなマンガからいろいろとパクって描いていたという。

「『ジャンプ』の『スラムダンク』、『りぼん』の『天使なんかじゃない』、『なかよし』の『きんぎょ注意報』、『ちゃお』の『水色時代』がバイブル。私が『りぼん』、羽田さんが『なかよし』と『ちゃお』を買う担当でした。『ジャンプ』はお父さんが買ってくるので」

お小遣いは月に500円。自由にマンガを買えないので自分で描いていたフシもあるそうだ。
この目は『スラムダンク』の影響
この目は『スラムダンク』の影響
しかし、シュートシーンはあまり上手に描けない
しかし、シュートシーンはあまり上手に描けない
ページをめくるこいしさんの手が止まった。バスケの試合を早々に切り上げて、いきなり恋愛シーンが始まったからだ。
せつない片思い?
せつない片思い?
「完全に自分の世界に入ってますね。妹が11歳下だから、家の中で遊び相手もいなくてずっと恋愛妄想をしていたんです。お母さんは恋愛とかに興味ないと思っていたはず」
『天使なんかじゃない』へのオマージュ
『天使なんかじゃない』へのオマージュ
作品の巻末には、著者からのメッセージコーナーがあった。
苦労して描いた旨が綴られている
苦労して描いた旨が綴られている

同じクラスの石川君っていう子が好きだった

次の作品は『めちゃくちゃぐみスペシャル』。

「これは、クラスのことを描いたマンガ。とはいえ、羽田さんしか読まないんですけど(笑)」
「勝負しようぜ」というセリフから物語は始まる
「勝負しようぜ」というセリフから物語は始まる
「あーー、同じクラスの石川君っていう子が好きだったから、ちょいちょい出てきますね」
クラスマンガというより石川君ストーリー
クラスマンガというより石川君ストーリー
小5のこいしさん
小5のこいしさん
と、ここでノートに何かの紙が挟まっているのを発見。広げてみるとテストの答案用紙だった。
漢字は苦手のようだ
漢字は苦手のようだ
「たしかに、セリフとかを見るとひらがなばっかりですよね(笑)」
しかし、努力は怠らない
しかし、努力は怠らない
赤い下敷きで隠すスタイルの勉強法である。ノートの端には、懐かしき相性占いの痕跡もあった。
何やら不穏な空気
何やら不穏な空気
「『こいしゆうか』だと『522331』だから、誰と誰を占っていたんでしょうね」

Gペンを使いこなせなかったので、マンガ家はあきらめた

ひとつの作品を1日か2日で描き上げる。かなりのハイペースだ。

「自分でタイトな締め切りを設定して、忙しい毎日でしたよ。ストーリーを早く進めたいから、たいてい後ろの方は絵が雑になるんですが」
おお、タッチが変わっている
おお、タッチが変わっている
しかし、惜しくもスペルが「WINTR STROY」。ハイペースで描くには、細かいところをいちいち確認している暇はないのだろう。
自分で自分にボツ出しをすることも
自分で自分にボツ出しをすることも
さらに、当時の作文も出てきた。
テーマは運動会と年間目標について
テーマは運動会と年間目標について
小6のこいしさん。あ、クリスマスだ
小6のこいしさん。あ、クリスマスだ
「じつは、当時の日記もいっしょに保管してあったんですが、それはちらっと見てあまりにも恥ずかしすぎたので持ってきませんでした」

いやあ、十分面白かったですよ。「Gペンを使いこなせなかったので、マンガ家になるのはあきらめた」というこいしさん。今ならパソコンで何とかなるはず。マンガ誌編集者の皆さん、この早熟の奇才に仕事を依頼してみませんか?
大事に持ち帰りまーす
大事に持ち帰りまーす

決して黒歴史ではなかった

力強い足どりで帰宅の途につくこいしさん。その後ろ姿は、どことなく晴れ晴れとしている。彼女が小学生時代に描いたマンガは、決して黒歴史ではなかった。むしろ、多感な少女の確かな未来を指し示す道標である。最後に感想を書いてもらった。
20年前の自分にも宛てた手紙
20年前の自分にも宛てた手紙

<取材協力>
イラストレーターこいしゆうかのホームページ
http://koipanda.jimdo.com/
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