フェティッシュの火曜日 2014年12月2日

しみったれた先輩におごられるツアー

しみったれ飲み会、最高でした。
しみったれ飲み会、最高でした。
大学のサークルやゼミ、あるいは初めて入った会社などで、しみったれてはいるけれど、妙におごりたがる先輩はいなかっただろうか。

基本的にはケチだけど、俺についてこい気質という、相反する要素を持ち合わせた愛すべき先輩の姿は今いずこ。

ということで、しみったれのおごりたがりの先輩と、それについていく万年金欠の後輩の関係を、男四人で再現してみることにした。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。

前の記事:「宇宙人みたいなムラサキダコを食べる」
> 個人サイト 私的標本趣味の製麺

一人目の先輩はライターの大坪ケムタさん

今回のルールは、男4人のうち1人がしみったれた先輩役となり、金のない後輩役の3人を飲みにつれて行って、全額おごるというもの。

全員が一回ずつ先輩役をやらなければいけないので、都合4軒のハシゴ酒だ。いくらしみったれとはいえ、店や他のお客さんに迷惑を掛けないというのが大前提である。

メンバーは平日の昼間からこんな企画のために、ニヤニヤしながら集まってくれた精鋭ぞろい。落語でいうところの与太郎の集まりだ。

まず一件目の先輩は、ライターの大坪ケムタさん。当サイトでも長年執筆していたので、ご存知の方も多いだろう。ライターとしてリアルに先輩のお方である。
先輩の背中から三歩下がって付いていくのが後輩のたしなみ。
先輩の背中から三歩下がって付いていくのが後輩のたしなみ。

オートレース場へとやってきた

先輩が指定した待ち合わせ場所は、まさかの西川口駅である。わざわざ西川口駅に集合するということは、一体どういうことだろうか。健全な男なら誰しもピンとくるものがあるはずだ。

しみったれた先輩のことだから、多少のデッドボールは覚悟の上でソワソワしながら背中を追うと、着いた場所はバス停だった。
ここからバスで移動するらしい。
ここからバスで移動するらしい。
行き先は川口オートレース場の一択。
行き先は川口オートレース場の一択。
どうやら行き先は川口オートレース場のようである。レースで一山当てて、軍資金を増やそうということだろうか。

このオートレース場行きのバスは、なんと無料で乗ることができる。普通は有料の乗り物に無料で乗れるというお得感を力説する先輩の姿は、いつになく饒舌で誇らしげだ(そういう遊びなので)。
無料なので発券する機械がない!
無料なので発券する機械がない!
「なんだか温泉旅行にでもいく気分ですね~」と、連れてこられた後輩達もご機嫌である。
「なんだか温泉旅行にでもいく気分ですね~」と、連れてこられた後輩達もご機嫌である。

しみったれた男のアミューズメントパークへようこそ!

無料バスに乗ってやってきた川口オートレース場は、入場無料となっていた。先輩の話だと、レース開催日は有料だが、今日は開催日ではないため無料なのだそうだ。

レースをやっていないのになぜ開場しているのかというと、別の場所でやっているレースの券を販売するため。この日は浜松でレースが行われていて、モニターによる観戦ができるのである。
どこか誇らしげな入場無料の看板。
どこか誇らしげな入場無料の看板。
「ここでは俺たちなんて若造だ。人生の先輩方に失礼がないようにな!」「はい!」
「ここでは俺たちなんて若造だ。人生の先輩方に失礼がないようにな!」「はい!」
「レースのある日は入場が有料だけど、芸能人を見るチャンスだから覚えておけよ。HEY!たくちゃんとか」
「レースのある日は入場が有料だけど、芸能人を見るチャンスだから覚えておけよ。HEY!たくちゃんとか」
この日は浜松で東京エレキテル連合が営業していた。ネタではなく客いじりをしている彼女らをみられるのは、とてもレアだなと思った。
この日は浜松で東京エレキテル連合が営業していた。ネタではなく客いじりをしている彼女らをみられるのは、とてもレアだなと思った。
レース前になると、スーっとワイプで小さくなった流行語大賞。
レース前になると、スーっとワイプで小さくなった流行語大賞。
車券の裏のラッキーマークは、ギャンブラー達ののエンゼルマーク。
車券の裏のラッキーマークは、ギャンブラー達ののエンゼルマーク。
オートレース場という場所に初めて連れてきてもらったのだが、雨の平日というシチュエーションもあり、そこには独特の空気が流れていた。昭和を色濃く残すテーマパークのようである。レトロではなくリアルなのに。

私のように興味本位で来るのは諸先輩方には失礼かもしれないが、日光江戸村ならぬ川口昭和村は入場無料のアミューズメントパークだ。

先輩が温かい酒をおごってくれた

先輩は電光掲示板をしばらく眺めると、車券を買うでもなく、「とりあえず酒だよな」と、売店へと足をむけた。

どうやらお酒をおごってくれるらしい。
読みにくい店名ですね。
読みにくい店名ですね。
「…酒、4つね!」
「…酒、4つね!」
エサをもらう野良犬のように大人しく待つ後輩(私含む)。
エサをもらう野良犬のように大人しく待つ後輩(私含む)。
「ほら、温かい酒だぞ!」

先輩がドヤ顔で渡してくれた紙コップには、アツアツの甘酒が入っていた。トンチか!
必勝の紙コップがかっこいい。
必勝の紙コップがかっこいい。
甘酒130円。オロナミンCより安いぞ。
甘酒130円。オロナミンCより安いぞ。
さすがはしみったれた先輩である。ワンカップの熱燗でも買ってくれるのかと思いきや、まさかの甘酒。とりあえずビールでもなく、とりあえず甘酒。

肩すかしを食らった感もあるけれど、なんだかちょっと早めの初詣にでもきた気分で悪くない。体が冷え切っているので、甘さたっぷりの熱い甘酒はとてもおいしかった。

さすがは先輩、きっとこの天気も計算の内なのだろう。
先輩、ありがとうございます!
先輩、ありがとうございます!
「そのコップ、まだ捨てるなよ!なにかに使えるかもしれないからな!」
「そのコップ、まだ捨てるなよ!なにかに使えるかもしれないからな!」

オートレース場グルメをおごってもらう

甘酒で体が温まると、次第に胃袋が動いてくる。こうなるとやはり何かを食べたいところ。

雨に濡れて震える後輩三人が、ひもじさとせつなさと懐の寂しさを訴えると、先輩は「名物料理を教えてやるよ!」と売店へと向かった。
「大人数で行くのはまずいから(人数分注文しないといけないので)、お前らはここで待っていろ!」
「大人数で行くのはまずいから(人数分注文しないといけないので)、お前らはここで待っていろ!」
先輩、あの2個150円の肉まんが食べたいです。
先輩、あの2個150円の肉まんが食べたいです。
しばらくすると、先輩はワニの手みたいな大きなフライを持ってきた。

「ほら、これが川口オートレース名物のゲソフライだ!夕方になると投げ売りが始まるから、本当ならその時間がお得なんだけどな!」
先輩、揚げ物が最高に似合うっす!
先輩、揚げ物が最高に似合うっす!
イカフライならぬゲソフライって初めて見た。博物館とかで「恐竜の足フライ」として売るといいと思う。ゴジラフライでも可。
イカフライならぬゲソフライって初めて見た。博物館とかで「恐竜の足フライ」として売るといいと思う。ゴジラフライでも可。
「さあ、遠慮せずに食べろよ!」と差し出されたゲソフライは1本200円。4本ではなく1本。しみったれだから。

しかし、さすが先輩がおすすめするだけあって、4人で食べても十分に楽しめるボリュームと歯ごたえだった。
「かったい!いやでも、うまいです!」「だめだ、おまえ先に固いっていっただろ!」と叱られる後輩。
「かったい!いやでも、うまいです!」「だめだ、おまえ先に固いっていっただろ!」と叱られる後輩。
「う、うまいです」「そうだろ!」と、先輩に見守られながら他に選択肢のない感想を言わされる後輩。
「う、うまいです」「そうだろ!」と、先輩に見守られながら他に選択肢のない感想を言わされる後輩。
食べてみると、確かに固いが相当うまい。これで温かったら最高なのだが。
食べてみると、確かに固いが相当うまい。これで温かったら最高なのだが。
「かぶりつくなんてできない!」という上品な人、あるいは歯の弱い人のために、切られたものも売っている。
「かぶりつくなんてできない!」という上品な人、あるいは歯の弱い人のために、切られたものも売っている。

先輩、ビールが飲みたいです

渡り鳥が冬になると南へと旅立つように、味の濃い揚げ物を食べたらやっぱりビールが飲みたくなる。口の中に残る油とソースを、ビールの泡と苦みで流したい。

ちなみにルール上、後輩の自腹による飲食は禁止である。どうにかしてしみったれた先輩におごってもらわなくてはならないのだ。
「先輩、ビール飲みたくないっすか?」「一杯だけ、ね!せーんーぱーい!」
「先輩、ビール飲みたくないっすか?」「一杯だけ、ね!せーんーぱーい!」
「ほらほら、おいしいラーメンっていう店もありますよ!」
「ほらほら、おいしいラーメンっていう店もありますよ!」
「ちっ、しょうがねえなあ、じゃあ一杯だけだぞ!」
「ちっ、しょうがねえなあ、じゃあ一杯だけだぞ!」
先輩はしぶしぶ売店へと並び、1杯の生ビールを買ってきてくれた。

「1杯だけっていっただろ!だからみんなで1杯な!甘酒の紙コップ、捨ててないだろうな!」

1人1杯ではなく、みんなで1杯だった。

ちなみにビールを買いに行った先輩は、「ビールを受け取る時にさ、今ならイカゲソ150円ですよっていわれて、チックショウだよ!」と、買った後の値下げに心底ガッカリしていた。
「シェアだ、シェア。流行ってんだろ、シェア」
「シェアだ、シェア。流行ってんだろ、シェア」
三者三様の表情を読み取ろう。
三者三様の表情を読み取ろう。
内側にうっすらと甘酒がコーティングされた紙コップに注がれた生ビールは、美容研究家がおすすめする洗顔フォームのように見事な泡立ちを見せた。

ビールとしては問題ありだが、これはこれでうまいのが悔しい。
ビールの泡好きなのでうれしい誤算っす!
ビールの泡好きなのでうれしい誤算っす!
「さすが先輩、ビールなのにイタリアのジェラートみたいですよ!クリーミー!これ表参道とかで売れるんじゃないですか!」

メガネを掛けた後輩が、適当なことをいって持ち上げると、気をよくした先輩がつまみを追加してくれた。しめしめである。
「だろ、うまいだろ!じゃあもっとうまいものを教えてやるよ!」と買いに行く先輩。実はパシリにしていないかという疑惑あり。
「だろ、うまいだろ!じゃあもっとうまいものを教えてやるよ!」と買いに行く先輩。実はパシリにしていないかという疑惑あり。
コンビニでおなじみの棒に刺さった唐揚げと、コンビニでは見かけない魚肉ソーセージフライを買ってきた。
コンビニでおなじみの棒に刺さった唐揚げと、コンビニでは見かけない魚肉ソーセージフライを買ってきた。
そして荒々しい牛モツ煮。どこの部位なのかは謎。ペットボトルに大五郎を入れて持ってくればよかった。
そして荒々しい牛モツ煮。どこの部位なのかは謎。ペットボトルに大五郎を入れて持ってくればよかった。
唐揚げも魚肉ソーセージフライもモツ煮も、うまくいえないのだがこの場所の空気にあった味付けになっていて、ビールの泡がすすむ味だった。

男だけで来るオートレース場、ヘタなテーマパークにいくよりも断然楽しい。今度はちゃんと車券とやらの買い方を勉強してから、じっくりとこの空間を攻略したいと思う。
一応レース場を眺める後輩。「やってないですね」「雨だしね」
一応レース場を眺める後輩。「やってないですね」「雨だしね」
浜松の結果が発表された。「な、浜松まで旅行にきた気分だろ!」と、感想を求める先輩。
浜松の結果が発表された。「な、浜松まで旅行にきた気分だろ!」と、感想を求める先輩。
すいとんもメニューにあるのか。
すいとんもメニューにあるのか。
レース場をぐるりと一周してくると、入り口横の売店が安売りをはじめていた。
レース場をぐるりと一周してくると、入り口横の売店が安売りをはじめていた。
「先輩、揚げ物とかおにぎりが100円になっていますよ!あと肉まん食べたいっす!できればビールももう一杯!」

「(聞こえないふりをして)さあ、帰りのバスが出ちゃうから、早くいくぞ!」
「次いくぞ、次!」
「次いくぞ、次!」
足早に出口へと向かう先輩。この大きな背中から、たくさんのことを学んだ一日だった。

ケムタ先輩、 ごちそうさまでした!
2軒目の先輩を務めるパリッコさんに、イラストを描いてもらいました。
2軒目の先輩を務めるパリッコさんに、イラストを描いてもらいました。

DPZトップへ

この記事を送る

お知らせ

デイリーポータルZをサポートする
じゃあせめてこれだけでも メルマガ SNS!


イッツ・コミュニケーションズ株式会社