特集 2015年5月12日

ボールペンに最適なパンは何か

人類最大の謎にいま答えが!
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現在の実用的なボールペンが歴史上に登場したのは、1940年代のこと。
対して、パンは紀元前の古代エジプトですでに食卓にのぼっていたという。数千年の歴史である。

生まれてたかだか100歳にも満たないボールペンの真似事ぐらい、キングオブ炭水化物であるパンにできないはずがあるだろうか。
当然、できる。
(イベント『デイリーポータルZパンまつり』で紹介する用に制作した内容なので、わりとパンびいきのテンションで書いてます)

では、数多あるパンの中で、最もボールペンとして使うのに適したパンはなんだろうか。そこを、調べてみた。
1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

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なぜ、パンなのか

まず、「ボールペンとパンの類似点」は存在するのか。

そこを考えれば、本当にパンがボールペンとして使用できるかがわかるはずだ。
ほら、そっくり。
ほら、そっくり。
パンはだいたいペンである、ということはご理解いただけたと思う。これなら、ペンの代わりにパンを使って文字を書いても違和感は少ないのではないか。

では、次に「パンをペンにする理由」である。
困った、筆箱にレフィルしかない。文房具あるあるだ。
困った、筆箱にレフィルしかない。文房具あるあるだ。
でも、ここにパンさえあれば大丈夫。
でも、ここにパンさえあれば大丈夫。
たとえボールペン自体が無くても、パンとレフィルがあればなんとかなるのだ。

書けて、しかも食べられる。このサバイバビリティの高さこそが、パンをペンにする最大のメリットであると言えるだろう。

パンでペンの作り方

では、早速パンをペンにしてみよう。

作り方は非常に簡単である。
固くないパンならドリルも不要です。
固くないパンならドリルも不要です。
まず、パンの先端に穴を開ける。このとき、パンの重心をはずした部分に穴を開けてしまうとあとからの筆記がすこしやりにくくなる。

うまくパンの重心を見極めた穿孔を心がけて欲しい。
穴にレフィルをぐいっと挿し込む。
穴にレフィルをぐいっと挿し込む。
あとはもう簡単。パンの中にレフィルを挿し込むだけである。

衛生面が気になる人は、レフィルにあらかじめラップを巻き付けてから挿入しても良い。
これで完成。
これで完成。
これで、ボールパンの完成である。制作所要時間は、最大でも2分弱。

この手軽さも、パンをペンにするメリットの一つといえるかもしれない。
見よ、この威風堂々たるフォルム。
見よ、この威風堂々たるフォルム。
ボールパン、筆記姿勢はこんな感じ。
ボールパン、筆記姿勢はこんな感じ。
書くたびに、パンの香ばしいかおりがする。

空腹時にはたまらない。はやく仕事を済ませてご飯にしたい。馬車馬の鼻先にニンジンをぶらさげるような、そんなスピードアップ効果も期待できる。
でもちょっと重いし、持ちづらい。
でもちょっと重いし、持ちづらい。
ちなみに、今回作例として使用したバゲットの、ボールペンとしての性能は下記の通りである。
パンのペンとしての機能を表す斬新なチャート。
パンのペンとしての機能を表す斬新なチャート。
五角形のチャートは、外周(茶色線)を通常のボールペンとして比較したものである。

バゲットは頑丈さが高いが、太さ・重さのせいで手へのフィット感が大きく損なわれていた。

あと、汚れなさ値は、筆記域周辺に散ったパンくずなどの汚れ度合を表す数値である。
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ペンに最適なパン、第7位

今回は、作例として紹介したバゲットをのぞいた8種類のパンを調査し、ランキングした。ワーストは後ほど紹介するとして、まずは7位である。
メロンボールパン。
メロンボールパン。
7位は、おやつにお馴染みのメロンパン。

パン屋以外にコンビニやスーパーでも入手可能と身近な存在であるメロンパンだが、残念ながらボールペンとしては下位となった。
やっぱり丸いパンは持ちづらい。
やっぱり丸いパンは持ちづらい。
良い点は、そこそこ硬度がありホールドしやすいこと。悪い点は、丸い形状がペンに向かないこと、そして手がべたべたすること。

外殻が甘いパンは全体的にペンには向かないと思う。
あと、粉がすごい。
あと、粉がすごい。
最大の問題点は、粉。とにかくぼろぼろと崩れてくるので、どうしても紙が汚れてしまう。

仕事の書類をこれで書いたら、絶対に「メロンパン食べながら書類を書いたな」とバレてしまうだろう。正しくは「メロンペンで書類を書いた」だけど。

やはりメロンパンはペンにしないほうが良い。

ペンに最適なパン、第6位

ペンに最適なパン、6位はこれだ。
ペンに最適なパン、6位はこれだ。
ペンに最適なパン、6位はこれだ。
総菜パンの主戦力、フランクパン。

とりあえずご飯にするならこれ、という人も多いはずだ。
今回の発見。ソーセージはパンよりも穴を開けにくい。
今回の発見。ソーセージはパンよりも穴を開けにくい。
今回購入したフランクパンはパン部分が薄かったので、ソーセージ部に穴を開けてレフィルを通すことにした。
どちらかというと、このまま口に持って行きたい。
どちらかというと、このまま口に持って行きたい。
フランクペンの良い点は、ソーセージが軸になっているため、比較的安定した握り心地になること。

悪い点は、油。
表面に光る油。
表面に光る油。
握るたびに中からじわっと油(マヨネーズ)がしみ出してくるため、手がてきめんに汚れる。
で、こうなる。
で、こうなる。
できるだけ気をつけていたつもりだったが、テスト終了後に紙をみたら、やはり油染みができていた。これは失点である。
手に油がしみ出る感触は、あまり気持ち良くない。
手に油がしみ出る感触は、あまり気持ち良くない。
粉はほぼ無し、握りやすさも悪くないのだが、やはり手が汚れるのと油染みのせいで汚れなさ値が低くなった。

どうしてもペンとして使用する必要がある場合は、事前にウェットティッシュなどを用意しておく方が良いだろう。

ペンに最適なパン、第5位

第5位は、パンの特殊性を活かした機能性ペンとなった。
3色パンに3色ペン。
3色パンに3色ペン。
3方向から飛び出すペン先がかっこいい。
3方向から飛び出すペン先がかっこいい。
クリーム、チョコ、小倉と3色の味が楽しめる上に、黒・赤・青の3色で書ける。

合計して6色ペンだ。
ふかふかで美味しかったけど、その分握りにくい。
ふかふかで美味しかったけど、その分握りにくい。
良い点は、やはり3色使えるその機能性だろう。
悪い点は、ふかふかで握りにくいこと、購入が難しいこと。

かつては3つの味が一気に楽しめる豪華さが人気だった3食パンだが、現在は製造しているパン屋も減少し、入手が困難となった。
全体的にペンとしての性能は低いが、機能性ボーナスを加味して5位に。
全体的にペンとしての性能は低いが、機能性ボーナスを加味して5位に。
あと、今回入手した3色パンが上からゴマを振ってあるタイプだったため、筆記中に落ちたゴマで紙が汚れるという問題もあった。
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ペンに最適なパン、第4位

さて、ペンに最適なパン第4位は、これもみんな大好きなあのパンである。
安い、うまい、ペンとして4位、と三拍子そろったナイススティック。
安い、うまい、ペンとして4位、と三拍子そろったナイススティック。
学生の頃はばくばく食べていたが、1本で約450kcalというハイカロリーさに怯えて最近は手に取る機会の減ったナイススティック。でも美味い。

では、ペンとしての性能はどうだろうか。
あの柔らかさが仇に!
あの柔らかさが仇に!
ペンとして握ってみると、とにかく柔らかい。レフィルを通して書いてみようとした瞬間に、ふなり、と曲がって折れてしまった。写真を撮る隙もない。

パンとしてはあのソフトさが嬉しかったのだが、ペンとしては頼もしさゼロ。
左端にうっすらついたクリームのシミも失点。
左端にうっすらついたクリームのシミも失点。
本物のボールペンに肉薄する細さは握りやすさ満点に近いのだが、とにかく脆い。

これ以上折れない、というところまで折れてからならば十分に機能するので、まずはある程度まで食べてからペンにする、というのがナイススティックペンの正しい使い方かもしれない。

ペンに最適なパン、第3位

ベスト3には、わりと意外なあのお総菜パンがランクイン。
これも美味しい。たまごフィリングが嫌いな人間などいないのではないか。
これも美味しい。たまごフィリングが嫌いな人間などいないのではないか。
お総菜パンのライバル、フランクパンを引き離してのベスト3入りを果たしたのは、たまごサンドペンだ。
最初からこういう商品だったかのような収まりの良さ。
最初からこういう商品だったかのような収まりの良さ。
フランクパンと同様にパン部が薄いので、たまごフィリングとパンの境目にレフィルを挿し込んでみたのだが、これが違和感なくかなりしっくりと収まる。みっちり詰まったたまごの重量でレフィルが固定されるため、筆記時のがたつきも無し。

さすがにベスト3入りするレベルのパンともなると、ペンとしてのクオリティも高くなってくる。

悪い点は、やはり周囲のパンのふかふか具合。総菜・おかし系パンの美味しさに直結するふかふかとした食感は、残念ながらペンとしてマイナス要素か。
握りやすさ、フィット感とともに汚れなさも高得点。
握りやすさ、フィット感とともに汚れなさも高得点。
たまごフィリングの湿度のおかげでパンがしっとりし、乾いたパンくずが発生しないのも高評価につながった。

あと、たまごの重量感も手へのフィット感と書きやすいバランスを生んでいたように思う。

今後は、文房具メーカー各社とも本物のボールペンにたまごフィリングを搭載することを検討しても良いのではないか。

ペンに最適なパン、第2位

続いてベスト2は、そろそろ出るかと予想されていた方もいるかもしれない、あのパン。
フランスが生んだ高性能ボールパン。
フランスが生んだ高性能ボールパン。
クロワッサンは、実際に試す前から「これは書きやすそうだ」と目星をつけていたパン。

実際に試してみても、ペンとしてかなりの性能を発揮してくれた。
とにかく握りやすくて書きやすい。
とにかく握りやすくて書きやすい。
とにかく、三日月の形状がもたらすフィット感が最高。あのカーブが手にふわっと寄り添い、筆記時の負担を軽減してくれる。

さらに生地の軽さもプラスに働き、まるでペン先と手が一体となったかのような感触すらあった。
パンくずさえなければ、クロワッサンはもうペンでいいと思う。
パンくずさえなければ、クロワッサンはもうペンでいいと思う。
残念なのは、やはりパンくず。

パリパリサクサクとした食感と、紙を汚すくずはトレードオフの関係にある。しけってパンくずの出ないクロワッサンならペンとして最適なのかもしれないが、あとから食べるならサクサク美味しい方が良いに決まっている。

製パン業者と文房具メーカー、どちらが「美味しいけどパンくずが出にくいボールペン用クロワッサン」を先に開発するか、期待されるところだと思う。
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ペンに最適なパン、第8位(ワースト1)

トップオブペンに最適なパンの前に、ワーストのパンを紹介しておこう。これはもう誰が考えてもあのパンである。
もっともペンに向かないのは、カレーパンだ。
もっともペンに向かないのは、カレーパンだ。
とにかく、カレーパンはあらゆる点でボールペンに向いていない。

内部の空洞が多いため、握った時の安定感が薄い。形状も握りにくい。
見た目はこんなに荒々しいのに、握ると頼りない。
見た目はこんなに荒々しいのに、握ると頼りない。
なにより、汚れがすごい。油で揚げて作る製法にくわえて、まぶされたパン粉がとにかくマイナス方向に仕事をしてくれる。
1行書いただけで、この油汚れ。
1行書いただけで、この油汚れ。
手は汚れるし、当然、紙の上は油の染みたパン粉まみれだ。
カレー漏れも要注意だ。
カレー漏れも要注意だ。
さらに、レフィルを通すように開けた穴の隙間からカレーが漏れ出すという問題も大きい。

うっかりカレーが手についたことに気付かず紙の上のパン粉を払ったら、この有様である。
見ての通り、ペンとしては最低評価。
見ての通り、ペンとしては最低評価。
これらの問題点はすべて、揚げたてであればあるほど危険性が高まる。

揚げたてで美味しいカレーパンは、ペンにせずに素直に食べていただきたい。

最もペンに最適なパンは

カレーペンの危険性を告発したあとは、いよいよベストオブペンとして使えるパンの発表である。

最もペンに最適なパンはなにか?
疑いなく、最も書きやすかったベーコンエピ。
疑いなく、最も書きやすかったベーコンエピ。
書きやすく、手にフィットし、頑丈で、汚れも少ない。

ベーコンエピが、最強のボールパンであると断言しよう。
見よ、このフィット感。
見よ、このフィット感。
分割されたパーツは一つ一つが握りやすい細さであり、さらにその分割した分かれ目がクロワッサンに匹敵するフィット感を与えてくれる。そして比較的固めの生地のおかげで安定感もある。

ベーコンエピペン、軸後端に変なオブジェのついたおもちゃボールペンよりも、よほど書きやすいぞ。
もう、ほとんどボールペンの域に達したパン。
もう、ほとんどボールペンの域に達したパン。
残念ながらわずかにパンくずは発生したが、中にベーコンという油モノを封入しているにもかかわらず油染みはゼロ。これも固めのパン生地に包まれている効果だろう。

油っけがあって食べやすく美味しいのに、クリーンかつ書きやすい。

この点においてベーコンエピは、もはやボールペンを上回る優れた筆記具と言っても過言ではないだろう。
今後は筆記の新ジャンルとして、ベーコンエピを考えていく必要があるのではないか。

今回は、『デイリーポータルZパンまつり』というイベントのために制作した記事だったのだが、やってみると、とにかくベーコンエピの筆記性能の高さに驚かされた。

なにより、ベーコンエピは美味しい。

保存性に難があり持ち運びが難しいという欠点はあるが、それさえ解決できれば弁当兼筆記具として筆箱に常備したいぐらいである。
今回試し書きしたパンは全ておいしくいただきました。
今回試し書きしたパンは全ておいしくいただきました。
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