特集 2015年6月23日

プラレール喫茶と鉄道模型つけ麺めぐり

大人でも想像以上に楽しいぞ、プラレール。
大人でも想像以上に楽しいぞ、プラレール。
たまに企画に困ると、適当な単語同士を組み合わせて検索してみることがある。

今回は「鉄道模型カフェっていま全国にできてるけど、プラレールカフェって無いのか」とやってみたら、まさにドンピシャなお店に行き当たってしまった。

さらに「じゃあ、鉄道模型カフェじゃなくて鉄道模型ラーメンとかつけ麺とか無いか」と検索をかけたら、またしてもそれらしきお店がある。

これはもう行ってみるしかないだろう。適当な検索ワードを信じて。
1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

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本当にプラレールが走ってるカフェ

京成線高砂駅から徒歩5分ほどにあるカフェ『プラたく』は、全国的にもかなりレアな喫茶店である。

どれぐらいレアかというと、カフェの中をプラレールが走り回っているぐらいにレアだ。

いや、例え話のように書いたけど、『プラたく』は本当に店内をプラレールが走り回っているカフェなのだ(…と、検索でひっかかった)。
プラレールのレールっぽい青色の看板が目印。
プラレールのレールっぽい青色の看板が目印。
事前にネットで「店内に入るといきなりプラレールがドーン!」みたいな情報を得ていたのだが、実際に店内に入ると、想像以上にプラレールがドーン!だった。
縦横無尽に走るプラレール。とにかく密度が半端では無い。
縦横無尽に走るプラレール。とにかく密度が半端では無い。
たたみ一畳ほどのスペースに組み上げられたレールがみっちり詰まってる。

レールだけでたぶん高さは150cm近い。それが台に乗せて展示されているので、大人でも最上部のレールは見上げてしまうほどだ。
走ってる、走ってるよー、うわー
走ってる、走ってるよー、うわー
しかもこの複雑に入り組んだレールの中をあちこち、隙間をくぐりぬけるように何台も電車が走っているのだ(最大で8編成)。
なんかよく分からないでかい構造物の中を、なんか小さい電車がいっぱい走っているのだ。
アップダウンのあるレイアウトのレールをガー!ゴー!とちょっとしたジェットコースターのような音を立てて走っているのだ。

これは興奮するぞ。初見だと「うわ、すげー、走ってる、走ってるー」と、なんの工夫もない感想しか出てこない。

もし自分が小学生の頃にこの店に来ていたら、きっとテンションおかしくなってレールにダイブしていたかもしれない。大人になってて良かった。
おもわずいろんなアングルで撮りたくなる光景。プラレールかっこいい。
こんなのがあちこちを走り回ってたら、そりゃ興奮もする。
こんなのがあちこちを走り回ってたら、そりゃ興奮もする。
で、荷物も下ろさず10分ぐらいぼーっと走り回るプラレール電車を眺めていたのだが、ふと気がつくと店内のあちこち、というかこのレール群以外のところからも電車が走るゴー!という音がする。

視線を上に向けると、なんと天井すれすれ20cmぐらいのところに店内ぐるりと棚が設けてあり、そこに敷かれた上中下4線のレールにも電車が走っていた。
店内環状線は高架(というか天井)を走ってる。
店内環状線は高架(というか天井)を走ってる。
予想外の天井プラレール。
天井を見たり巨大レール群を見たりとあまりにも興奮していたので忘れていたが、ここはカフェなのだ。

ひとまず落ち着こうと席に座ってメニューを手に取ったら、これが飲食メニューじゃなくて『プラレールのはじめかたメニュー』という一覧表だった。
一番手前の青いメニューを手に取ったら、
一番手前の青いメニューを手に取ったら、
プラレールのコースレイアウト解説シートだった。
プラレールのコースレイアウト解説シートだった。
どこまで徹底しているのか、プラレールカフェ。
(もちろん飲食のメニューもちゃんとある。)
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プラレールカフェめずらしい

ひとまずこの徹底しすぎてる気がするプラレールカフェのオーナーさんにお話を聞いてみることにした。
店長の岡田さん。当然のようにバリバリのプラレールマニア。
店長の岡田さん。当然のようにバリバリのプラレールマニア。
「息子がいま11歳なんですけども、2歳の時に私の甥っ子から使わなくなったプラレールをもらったんですよ。ただちょっと量が少なかったので買い足ししてるうちに私がハマってしまいまして…」

――(店内のプラレールを見ながら)はー、だいぶ買い足されたんですねー。

「いや、一緒にプラレールを楽しんでいるサークルがあるんですけども、そこの友人たちにも手伝ってもらってるんですよ。

これ(プラレール群)も、そのサークルで『一畳プラレール』というブログをされている「ぺたぞう」さんという方のご協力を得まして、レイアウトされてます」
中には、オリジナルの『プラたく』店舗も飾られてる。
中には、オリジナルの『プラたく』店舗も飾られてる。
――え、プラレールって一畳ぐらいの場所で遊ぶものなんですか?

「いや、プラレールって基本的には線路をドンドンつなげていって、横に広げて遊ぶものなんですよ。子供に好きにさせといたらあっというまに6畳間いっぱいになったり。

でも、自宅だとスペースの問題であまり広げられないじゃないですか。先のぺたぞうさんも、奥様との約束で『プラレールを広げるのはたたみ一畳分のスペースまで』と言われたそうで」


――まぁ普通の住宅スペースなら、そう言われますよね。
話をうかがいながら、小倉トースト(美味そうだったから)をいただいてます。
話をうかがいながら、小倉トースト(美味そうだったから)をいただいてます。
「でもとにかくレールはつなげたい。じゃあ上下に伸ばすしかないよねー、ということで、このように一畳分のスペースに橋脚を600個使うようなレイアウトが出来上がったわけです」
プラたく名物の巨大クリームソーダはサイズが「橋脚3段分」。
プラたく名物の巨大クリームソーダはサイズが「橋脚3段分」。
なるほど、一畳しかスペースを許してもらえなかったからこそ、縦方向への伸びが生まれたわけだ。

環境の悪化で食べる草が無くなったキリンが高い木の葉を摂るために首を伸ばしたとか、そういう適応と進化みたいな話かもしれない。

プラレールの遊び方いろいろ

「これも、プラレール仲間と一緒にやってるんですけども」と岡田店長が示してくれた壁には、風景写真がいっぱい貼ってある。

これは、プラレールで京成線の駅周辺の風景を再現するというプロジェクトだそうだ。
プラレールによる京成線再現プロジェクト。どれもプラレールと思えない細かさ。
プラレールによる京成線再現プロジェクト。どれもプラレールと思えない細かさ。
「鉄道模型と違って、プラレールは子供が遊びやすいのを優先しているのでスケール感が適当というか、まぁいい加減なんです。なので、なかなか現実の風景を再現するのは難しいですね」
いまは京成八幡で止まっている。ここから先が難しい。
いまは京成八幡で止まっている。ここから先が難しい。
――あれ、でも京成八幡までしかできてないですね。京成線ってまだ成田まで先ありますよね?

「あははは、いやー、ここから先は田舎というか、周辺になにも無くなるので…駅ごとの特徴がなかなか出せなくて」

ジオラマ作りの難敵は田舎、という意外な話である。風景用のパーツの作りがごついので、繊細な違いを出すのは確かに難しそうだ。

大人もこんな感じで楽しいプラレールだが、じゃあ本来のターゲットである子供はどうなんだろうか。
プラレールで遊べるシート。奥にはプラレールを組めるスペースも。
プラレールで遊べるシート。奥にはプラレールを組めるスペースも。
「土日はやっぱりお子さん連れでのお越しが多いですよ。プラレール組み立てたり、レイアウトをずーっとながめてたり。2時間ぐらいずーっと見てるお子さんもいますね」
ちなみにシートの裏側には複雑な分岐線の飾り付けが。かっこいい。
ちなみにシートの裏側には複雑な分岐線の飾り付けが。かっこいい。
「楽しんでいただけるのは嬉しいんですが、ただ、カフェとしては回転率が異常に悪いですよねー」

そりゃまぁ、お客さんが2時間ずーっとプラレール見てたら、店としては普通は大変だろう。

お買い物もできるぞプラレールカフェ

『プラたく』さんが面白いのは、カフェなのにプラレールも売っているという事だ。

というか、この店内を見た後にプラレールを作りたくならないワケはないので、商売としてはかなりウマいな、という感じでもある。
車両もレールもたっぷりあるでぇ。
車両もレールもたっぷりあるでぇ。
「プラレールって、子供さんが小さいうちは楽しんでもらっていても、大きくなると手放されちゃうことが多いんですよね。フリマなんかで大量に出てるのはそういうやつ。なので、うちでも古物商の許可取って中古プラレールの買い取りと販売をやってます」
お買い得な中古車両がぎっしり。
お買い得な中古車両がぎっしり。
「プラレールの車両を長く連結したい時、先頭車両じゃなくて中間車両が欲しいんです。でも、中間車両だけって売ってなくて。そういう時は中古で探してもらうといいと思いますよ」
これはレア。台湾限定の特急プユマ号プラレールも。
これはレア。台湾限定の特急プユマ号プラレールも。
そういえば、僕もはるか昔にプラレールで遊んでいた(プラレールは去年で55周年。ホビーとしてはかなり古い)とき、列車を長くつなげようとすると先頭車両が途中に挟まる珍妙な編成になってしまい、それが嫌でしょうがなかった記憶があるぞ。

中間車両は中古で買うといい。今回の取材でいちばん大きくグリグリとメモを取った部分である。
ちなみにトイレの手洗いもプラレールだった。
ちなみにトイレの手洗いもプラレールだった。
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鉄道模型を見ながらつけ麺が食べられるお店

さて、プラレールカフェに続いては、鉄道模型つけ麺のお店に行ってみたい。
京王井の頭線 駒場東大前駅から徒歩1分。東大生御用達つけ麺。
京王井の頭線 駒場東大前駅から徒歩1分。東大生御用達つけ麺。
東京大学の駒場キャンパス近くにある『つけめん駒鉄』さんは、ラーメン好きにはお馴染みの有名店『つけめんTETSU』プロデュースのお店だ。

現時点では、あとはネットで検索した「鉄道模型つけ麺」という以上の情報は持っていない。どういうお店なのか。
土地柄、たぶん僕以外のお客さんは全員東大生。単位体積あたりの偏差値がすごく高いつけ麺屋だ。
土地柄、たぶん僕以外のお客さんは全員東大生。単位体積あたりの偏差値がすごく高いつけ麺屋だ。
お昼を大きく遅らせた時間にもかかわらず、店内にはお客さんが数人いた。

で、お客さんが座っているカウンター席がパッと見にかなり怪しい。たぶんあそこにアレがあるはずだ。
思わず「うわっ」と声が出るカウンター。
思わず「うわっ」と声が出るカウンター。
つけ麺屋のカウンターで、水のポットや割り箸の向こうに電車が見える。なんだこの異世界感。

しかも、ついさっき見てきたような既視感のある風景だ。

それもそのはずで、どうやらこのお店のある井の頭線駒場東大駅周辺の風景をNゲージでジオラマ化したものらしい。
これ、さっき乗ってた井の頭線だ。
これ、さっき乗ってた井の頭線だ。
駒場東大前駅のホーム越しに今まさにいる駒鉄さんが見える。
駒場東大前駅のホーム越しに今まさにいる駒鉄さんが見える。
取材後に駅のホームから撮った駒鉄さんの店舗写真を見返して「うわー、この写真リアルだなー」と思ったが、違う。こっちが本物だ。
実際に駅のホームからの風景。ジオラマと同じ看板も出てるぞ。
実際に駅のホームからの風景。ジオラマと同じ看板も出てるぞ。
とにかく風景の再現度が高いので、この周辺の地理に馴染んでいる地元の人(と、東大の学生)がこのジオラマを見ながらつけ麺食べてたら、神様になって下界を見下ろしてる感じで食事ができるのではないか。

なんだそれ。天界のつけ麺か。東大生め、天下を取った気分か。妬ましい。
ちなみに駅から階段を下りると、すぐ目の前が東大。立地いいな。
ちなみに駅から階段を下りると、すぐ目の前が東大。立地いいな。

地域密着型(というか店内に地域がある)店舗

なにも悪くない東大生に不条理な妬みをぶつけつづけても埒があかないので、ひとまずお店の方に「天界のつけ麺気分か」と問いただすことにした。
駒鉄の廣松さん。ジオラマ越しだと巨人に見えるが普通の店員さんだ。
駒鉄の廣松さん。ジオラマ越しだと巨人に見えるが普通の店員さんだ。
「うちは3年ほど前にここにオープンしたんですが、まずは地元に溶け込みたいと思いまして…。鉄道模型の専門業者さんにお願いして、店のご近所のジオラマを店内に置いてみました」

なるほど、東大生に神様気分を味わってもらうため、ということではないようだ。

というかむしろ工夫して地域密着型の店舗を目指している、という、いい話だった。

――ところで、これNゲージですよね? ということは電車が動いたりするんですか。

「いやー、開店してしばらくは動かしていたんですが、調理の油煙などで動作トラブルもあったので、今は動かさないようにしています」
今は動かしていない、名残のコントローラー。
今は動かしていない、名残のコントローラー。
冷静に考えれば、確かに動作トラブルは起きそうだ。
つけ麺の汁が線路に飛んでショートとかしたら大変だし。

「あとは、鉄道模型もですけど、やっぱりうちのつけ麺をじっくり楽しんでいただきたいなと思いますし」
このリアルさで動いてたら、そりゃずっと見ちゃうよなー。
このリアルさで動いてたら、そりゃずっと見ちゃうよなー。
これもごもっともな話である。下手に電車が動いていたら、そればっかり見てしまいそうな気もする。

普通にジオラマとして下界を眺めつつ、いい気分でずるずると麺をすするぐらいが丁度良いのかもしれない。

天界のつけ麺をいただく

そういう話をうかがっていたら、やはりつけ麺を食べずに帰るわけにはいかない。というか、神様ビューのいい気分でつけ麺を食べてみたい。
せっかくなので贅沢をして、全部入りの『駒特つけめん』を。神様気分だしな。
せっかくなので贅沢をして、全部入りの『駒特つけめん』を。神様気分だしな。
あ、美味い。

つけ麺好きにはお馴染みの動物魚介のダブルスープだが、わりとこってり感が強い気がする。

学生さん向けにこってり気味にしてあるのかもしれないが、これは普通に誰が食っても美味いわ。
食べるのに夢中になって、ジオラマ見てる写真が撮れなかった。
食べるのに夢中になって、ジオラマ見てる写真が撮れなかった。
食べている様子を何回かインターバルタイマーで撮影していたのだが、結局常に麺に向かいっぱなしで「ジオラマ見ながら食べてる」写真が撮れてなかった。

恥ずかしいので、近いうちに再訪して、今度こそ神様ビューでうっとりしながらつけ麺をいただきたいと思う。

企画の出だしがいい加減だったにもかかわらず、プラレール見ながらコーヒーを飲むのは非常に楽しかったし、つけ麺を食べながら鉄道模型を見るのも想像以上に良かった。

今後もこの手でいこうと、いま「文房具+ラーメン」「ガンダム+オムライス」など無理めな検索をしてみたが、両方ともヒットしてしまった。(秋葉原のガンダムカフェと、札幌の文房具店の中にあるラーメン屋)
もう少し難易度をあげて、さらに無理めなお店を探していこう。
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