特集 2015年8月5日

暑くてカラシ豆腐しか食べる気にならない

これがカラシ豆腐だ。
これがカラシ豆腐だ。
最近暑い日が続いていますが、どう?夏バテしてる!?

わたしゃあもう、もう完全に無理。完全にもう食欲なくて豆腐くらいしか、カラシ豆腐しか食べる気にならない。

そう、カラシ豆腐ならイケる。俺の生活の支え。赤ちゃんにとってのミルク的なことになっているカラシ豆腐についてどうぞご覧ください。
1983年三重県生まれ、大阪在住の司法書士。
手土産を持参する際は消費期限当日の赤福で受け取る側に過度のプレッシャーを与える。

前の記事:名古屋の麺事情が柔軟すぎて、うちゅう

> 個人サイト owariyoshiaki.com

謎の存在カラシ豆腐

からしとうふ…?
からしとうふ…?
名古屋に引っ越してきて、豆腐売り場に初めて見るものがあった。からしとうふ。カラシが練りこまれているのか、それは美味いのか。気になって買ってみた。
バニラ青のり、みたいな見た目。
バニラ青のり、みたいな見た目。
開けてみるとサーティーワンのアイスクリームみたいな形状で特に辛そうな香りなどは無し。
結構な量入ってますな。
結構な量入ってますな。
割ってみると、中にガッツリとカラシが入っている。生地というか、豆腐自体は普通に豆腐。薬味というか、風味付けなのだろうか。

食べてみるとサッパリとした豆腐に、予想以上にガッツリなカラシがッツッーンッ!!と来る。周りの気温に溶け出しそうな自分の体が、感覚が、ガツーンとやられて、直後輪郭がハッキリしてくる、目が覚める。

この完全に夏、夏の味ってカンジがするのに、暑さを無くせる食べ物。良い…、良いぞ、カラシ豆腐…ッ!!

カラシ豆腐の名産地へ

夏前に存在を知ったカラシ豆腐、夏になるとそればかりを食べるようになった。カラシ豆腐を…、もっと、カラシ豆腐を…。求めるがゆえに名物を産んだ地に行きたいと思った。
岐阜駅予想よりもデカイ。
岐阜駅予想よりもデカイ。
そして辿り着いた岐阜。デカイ、暑い。岐阜。サイコーのカラシ豆腐に会えるだろうか。
岐阜名物をいっぱい売ってるお店だぞ!
岐阜名物をいっぱい売ってるお店だぞ!
銘菓 オグリキャップ…!?
銘菓 オグリキャップ…!?
まずは駅の中を見てみる。岐阜名物を売る店がある。ならばカラシ豆腐が!と思ったけれども、オグリキャップしか見当たらなかった。笠松(岐阜県)競馬のスターとはいえ、僕より年下で銘菓になるってオグリキャップの凄さがすごい。

名物だけど食べられるところはほぼないらしい!?

とりあえずは情報収集。どこかおいしいカラシ豆腐のお店がないか、観光案内所で聞いてみる。
鵜飼も有名。カラシ豆腐は鵜が鮎を飲み込んでいる時を表しているという説もある(ウソ)。
鵜飼も有名。カラシ豆腐は鵜が鮎を飲み込んでいる時を表しているという説もある(ウソ)。
僕「スミマセン、カラシ豆腐が食べたいんですけれど」

案内所の人「あぁ~カラシ豆腐、名物ですもんね。そこら辺のスーパーにあると思いますよ」

僕「えっ、スーパー…?どこかカラシ豆腐で有名なお店とかないんですか…?」

案内所の人「えっ…?そんなのあるのかしら?みんな家で食べるもんやでねぇ…」

予想外の展開…。名物ならばどこにでもあるだろうと思っていたら、まさかの来客は現地で食べられないというカラシ豆腐。


僕「じゃ、じゃあ、定食屋さんで冷奴に薬味でカラシ付いてたり、ってことはありませんか?」

案内所の人「ええ~!?冷奴にはカラシはつけんでしょう?」

何を妙なことを言ってるんだ…?みたいなリアクション。


カラシが入ってる豆腐は好きなのに冷奴にカラシつけるのは「ナシ」らしい。何なんだ、その複雑な心理は。
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どこでもカラシ豆腐の本場なのかもしれない

観光案内所の人の言うとおり、まずはスーパーにやってきた。とりあえず来たからにはなんらかの成果を手にしたい。
岐阜県の名産品がいっぱい売ってた。
岐阜県の名産品がいっぱい売ってた。
駅併設の名産品がいっぱいのスーパー。もちろんカラシ豆腐はあった。あったけれども、名古屋でも売られていたものと全く同じ商品…。
マックス斜めバリュ
マックス斜めバリュ
いやしかしッ!と思って違うスーパーにも行ってみたが、なんと置いてあったのは同じ商品。この商品がカラシ豆腐のトップシェアを誇るのだろうか。圧倒的な支配力。

と、いうことは岐阜市民もみんな同じカラシ豆腐を家で食べているって言うことで、もしかして、名古屋に居ながらにして本場の味を寸分違わず堪能していた。ということにはならないだろうか。

いや、でも、なんかあるでしょ、なんか。

岐阜市まで来てみたものの岐阜市民のカラシ豆腐への難しい感情を聞いただけで、特に成果ナシ。いや、あるだろ。ホントはあるだろう。
「やなな」だ!
「やなな」だ!
なにか、カラシ豆腐のなにかを追い求めて商店街を歩く。ちょっと前まで存在した顔だけ被り物で体は妙に肉感的なゆるキャラ「やなな」の旗を見て、髪の毛がカラシみたいだと思ったりなどした。
喫茶店、カラシ豆腐の気配なし。
喫茶店、カラシ豆腐の気配なし。
沖縄料理店、カラシ豆腐の気配なし!
沖縄料理店、カラシ豆腐の気配なし!
いろいろ見て回るが、ホントに全然カラシ豆腐の気配がない。神戸のいかなごのくぎ煮とか、和歌山の茶粥みたいな、家庭料理だけど名物。みたいなポジションか。
命が関わってる気がしてくる…。
命が関わってる気がしてくる…。
カラシ豆腐の無さと共に暑さもすごい。暑さもすぎるとカラシ豆腐すら食べたくなくなる。しかも、頭がフワーッとして奥のほうがガンガンとしてきた…。カラシ、豆腐…、いらん…。エアコン…。エアコンがほしい…。

とにかく涼しいの最高

普段なら一人では入るのに勇気がいる店構え
普段なら一人では入るのに勇気がいる店構え
もう…、むり…。あつい…。って言いながらとりあえず目についたお店に入った。
涼しいのでここが岐阜最高の地。
涼しいのでここが岐阜最高の地。
涼しい店内は最高。涼しい…。涼しい…。
豆腐と湯葉と枝豆のあんかけ丼、美濃姫丼。
豆腐と湯葉と枝豆のあんかけ丼、美濃姫丼。
何も考えず入ったお店だが、豆腐と湯葉の丼が滋味深くサッパリとしていて非常に美味しかった。カラシ豆腐じゃなくても全然食べられる。

豆腐に湯葉、岐阜は豆腐が名物なのだろうか。

僕「ごちそうさまでした。すごく美味しかったです。豆腐と湯葉のオリジナルメニューって、名産なんですか?」

お店の人「いえいえ、枝豆がこのへんの名産なんで、それに合うものをと思いまして」

そっちか。枝豆か。

僕「そうなんですね、カラシ豆腐とかもあるし豆腐自体が名物なんだと思ってました」

お店の人「豆腐屋さんがちょこちょこあるくらいで名産ってことはないと思いますけどねぇ。カラシ豆腐なんてどこにでもありますし」

僕「あっ、カラシ豆腐って岐阜にしかないみたいですよ。なんか、名物みたいで」

お店の人「えっ、ええ~~っ!?ホントに!?あー、そうなんですかー?!わぁー、知らなかったー!!」

すごいテンションの上がりよう。これ、アレだ、「秘密のケンミンSHOW」で、常識だったことが県民性だって知らされた時のアレだ!

僕「だって、冷奴にカラシってつけないでしょう?」

お店の人「そういえばそうやねぇ、そうやったんやぁ~」

冷奴にカラシはナシ。っていうのも統一見解か。
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噂の豆腐屋さんがいるらしい

先ほどのお店でケンミンSHOWの凄さを味わい、更に話していると、このへんでリアカーを引いて販売している豆腐屋さんが今もいるらしい。ということを聞いた。

リアカーで巡回する豆腐屋さん。一体どこに行けば会えるのか。「リアカー 豆腐屋 岐阜」で検索してみると、リアカーがリヤカーと修正された上で一発で出てきた。
レンタサイクルを手に入れた。
レンタサイクルを手に入れた。
とうふ屋銀次多分ここだろう。でも、これでも今現在の場所はわかんねーな。と思っていたら、備考欄に「携帯電話にかけてください」。という文言と電話番号が!
今まで見た中で一番アバンギャルドなデザインのメガネ屋看板。
今まで見た中で一番アバンギャルドなデザインのメガネ屋看板。
恐る恐る電話をかけてみると、今は長良西小学校というところの近くにいるそうだ。すぐに行きます!と言ってレンタサイクルで向かう。

かっこいいぞ、豆腐の移動販売

指定された場所近くに到着して、辺りを見回す。いないなぁと思っていたらば、プ~~ピ~~プ~~っていうサザエさんか「映画 三丁目の夕日」くらいでしか聞かない音が聞こえてきた。
鬼退治に行く桃太郎みたい。
鬼退治に行く桃太郎みたい。
あっ、アレだ!リヤカー引いて豆腐売ってるっていうから、なんとなく首元ビローンとしたTシャツにハラマキしてるオッサンを想像していたけれど、なんかスタイリッシュ!
豆腐屋銀次の銀次さん
豆腐屋銀次の銀次さん
しかもイケメンだし、なんかイメージ違うぞ!!

予想よりすごいビジネスモデルかも

豊富なメニュー
豊富なメニュー
男前豆腐、じゃなくて、イケメン豆腐屋さんから豆腐を買う。予想以上の品揃えに目移りする。とりあえずカラシ豆腐と、ワサビ豆腐っていうのもあったので買ってみた。岐阜市民は豆腐に辛いものの組み合わせが好きなのか。

あとは、冷やし茶碗蒸しと豆乳わらび餅というのも買った。大漁である。
引っ張らせてもらったけど、なんか締まらないな…。
引っ張らせてもらったけど、なんか締まらないな…。
それにしてもなぜ今の時代にリアカーで販売を…?と聞いてみた。

豆腐屋銀次さん「場所代がかからない。っていうのもありますけど、ちゃんと人と触れ合いながら広い区域で販売したい。ってなるとこういう形がいいかなと」

僕「確かに、スーパーとかに卸すと広い地域で売れますけど触れ合って売るって形にはなりませんね。でも、こうやって歩いてて呼び止める人っているんですか…?」

豆腐屋銀次さん「もう5年位こうやって売ってて、呼び止めてくれる人もいますが、今は顔なじみというかいつも買ってくださるお客さんが多くなってきましたね。なので、ある程度決まった日時に決まったところを歩くことが多いです」

おおっ、豆腐のルート営業だ!リヤカー売りの物珍しさで関心を惹き、豆腐の質で心をつかむ。一発売り逃げじゃ出来ない作戦だ。そんなに美味い豆腐なのか…。と思ったら銀次さんは「うちの豆腐は美味いですよ」と笑った。
墓石クリーニング?エアコン掃除?
墓石クリーニング?エアコン掃除?
と、気になるものがまだ。この墓石クリーニングとかエアコン掃除とはなんなんだ。

豆腐屋銀次さん「あぁ、ウチはこうやってお客さんとお話しながら豆腐を売るので、困ってる事も聞くことが多くって、お力になれるようにって協力してたら色んな仕事になっちゃって」

なんと!豆腐屋さんからエアコン掃除への展開!「自分に何が出来るかじゃなくて人が求めてることをする」っていうなんかの本で読んだことを体現してるようなお仕事!!
暑いからって豆腐にいっぱい氷を入れてくれた、汗ダックダクの銀次さん
暑いからって豆腐にいっぱい氷を入れてくれた、汗ダックダクの銀次さん

わざわざそこまで…とか、人に頼むほどでは…といった存在するけれどもこぼれ落ちていっていた需要を触れ合うことですくっていく。それぞれの幸せが増えるお仕事。

これは確かにスーパーに卸したりしていると実現できない。人付き合いとか人柄で生まれる、広がる仕事…。これは大変だけれども、強いシステムだなぁ。と感嘆する。

そういえばカラシ豆腐が食べたかったんだよ

とね、なんかね、リヤカー豆腐屋さんに話を持って行かれているけれど、そういえばワタシはカラシ豆腐が食べたかったんですよ。
豆腐が真っ白で、青のりの緑が濃い。
豆腐が真っ白で、青のりの緑が濃い。
うちの豆腐は美味いですよ。と銀次さんが言っていた豆腐を、近くの公園ですぐにもう食べちゃう。
カラシの!量が!多い!気がする!!!
カラシの!量が!多い!気がする!!!
醤油とお箸は家から持ってきていたのでかけて食べる。これ、カラシの量がすっごい多い気がするんだけど、大丈夫なのか。
おっ、これは、これは…ッ!?
おっ、これは、これは…ッ!?
ううう、かっらい!!!からい!!!!!!
ううう、かっらい!!!からい!!!!!!
モロモロッと甘い豆腐に、大丈夫かな?大丈夫かな…?と思っていたがやっぱり辛い!!もうキッパリと辛くて清々しい。この瞬間だけは暑さを忘れられる。でも辛い!美味い!!

やっと、岐阜だけで味わえる美味しいカラシ豆腐が味わえて非常に満足です。ありがとうございました。

ちなみに、岐阜出身の美容師さんとカラシ豆腐について話して、辛いよね!?って言っても反応が薄く、聞いてみると上の写真のように割ってカラシを溶いて分けて食べるらしい。

試してみると、これも美味い…。でも、今までの激辛体験はなんだったんだ。という気持ちがありますよね。いいよね、カラシ豆腐。でも、冷奴にカラシをつけるのは違うから気をつけてね。
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