特集「でかいもの」 2016年3月2日

デカいボトルのビールは小さいボトルよりうまくて笑える

合成ではありません。9リットルボトル。こういうサイズのビールです。
合成ではありません。9リットルボトル。こういうサイズのビールです。
でかいボトルのビールは小さいボトルのビールよりも美味しい。らしいのです。

なんでも、大きいボトルの方が空気に触れる機会が減り、風味が落ちずに美味しく保たれるそうです。本当なのか?

近所のスーパーで9リットルボトル入りのベルギービールが売っていたので購入して試してみました。確かに中身は同じ銘柄のビールなのに、小さいボトルのものよりも美味しかった。そして、デカさに笑えました。

(この記事はとくべつ企画「でかいもの」シリーズのうちの1本です。)
1972年生まれ。元機械設計屋の工業製造業系ライター。普段は工業、製造業関係、テクノロジー全般の記事を多く書いています。元プロボクサーでウルトラマラソンを走ります。日本酒利き酒師の資格があり、ライター以外に日本酒と発酵食品をメインにした飲み屋も経営しているので、体力実践系、各種料理、日本酒関係の記事も多く書いています。(動画インタビュー

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> 個人サイト 酒と醸し料理 BY 工業製造業系ライター 馬場吉成 website

スーパーで売っていた9リットルビール

今回用意したデカいボトルのビールがこちら。
サンフーヤントリプルサルマナザール。9リットルボトル。隣に並んでいるのが通常サイズのボトル(330ml)。
サンフーヤントリプルサルマナザール。9リットルボトル。隣に並んでいるのが通常サイズのボトル(330ml)。
ブリュッセルの南西、ル・ルゥという小さな町にあるサンフーヤン醸造所のビール。サンフーヤントリプルです。修道院で造られるスタイルのビールを一般の醸造家が造る、アビィビールという種類のビールです。
売り場でも大きい方が美味しいと書いていた。右端が9リットルボトル。その隣が6リットルボトル。
売り場でも大きい方が美味しいと書いていた。右端が9リットルボトル。その隣が6リットルボトル。
味の雰囲気としては、グレープフルーツやハッサクといった柑橘類を思わせる爽やかな香りや甘味。後からフワッと広がる麦芽の旨味が心地よく続いていきます。大変美味しいベルギービールです。
「お祝いに最適な9Lボトル」とある。イベント事じゃなければこんなビール開ける事はなかろう。お値段税込32400円。
「お祝いに最適な9Lボトル」とある。イベント事じゃなければこんなビール開ける事はなかろう。お値段税込32400円。
9リットルボトルは日本に輸入されているベルギービールのボトルとしては最大の物とのことで、それがなぜか東京の北の隅。板橋区内のスーパーで売られていました。
持ち帰る直前まで冷やしてもらっていたので台車で登場。かなり目立つ。
持ち帰る直前まで冷やしてもらっていたので台車で登場。かなり目立つ。
売り場の人に聞いたところ、オープン記念(3ヶ月ほど前にオープン)で入荷したそうで、売り場の人もこのサイズは初めて見たとのことだった。

売り場で見かけたとき「こんな馬鹿デカいビール誰が買うのかね?」なんて思っていたが、うっかり自分が買う事になるとは。

ネタの為に生きるのか。生きている事がネタなのか。そんな日々だ。
ボトルの重さも含めてザッと15kgぐらいあります。背負って持ち帰るのもひと苦労。
ボトルの重さも含めてザッと15kgぐらいあります。背負って持ち帰るのもひと苦労。
購入にあたっては、どうやって冷やすのか、どうやって運ぶか、空いた瓶はどうするのか、など問題がありました。

冷やす件に関しては、店で引き取る直前まで冷やしてもらえて、冬場なので外に出しておけばなんとかなる。運搬も無理やり背負って運べました。空き瓶も持ってきてくれれば回収するとのことだったのでひとまず安心。.

こうして物が揃い、いよいよ開栓です。

注ぐのが大変

流石に9リットルのビールを1人で飲むのは無理なので、酒好きの方々に集まっていただきました。
瓶を抱えるとこのサイズ。さあ、みんなで飲みましょう!日本酒の店ですが、今日はベルギービールです。
瓶を抱えるとこのサイズ。さあ、みんなで飲みましょう!日本酒の店ですが、今日はベルギービールです。
総勢14名。同じ銘柄の通常サイズの瓶も何本か用意したので合計10リットルほどのビール。それだけいれば問題なく空くでしょう。
口のサイズは普通。瓶の厚みが違う。
口のサイズは普通。瓶の厚みが違う。
シャンパンのようなコルクで閉じられていた栓は、ポンッと勢いよく抜けたものの、吹き出すこともなく無事開栓。瓶はデカいが口の大きさは通常と同じでした。耐圧や衝撃などを考慮しているのか、瓶の厚みは通常のサイズの物と比べてかなり厚いようです。
危ないので、15kgほどの物を保持できる力のある方が注いでください。
危ないので、15kgほどの物を保持できる力のある方が注いでください。
栓が空いたところで、早速各自のグラスに注いでいきます。しかしこれがかなり大変。
注ぎ終わったところで乾杯!飲み干しますよ!
注ぎ終わったところで乾杯!飲み干しますよ!
瓶だけでもかなりの重さがあり、そこに9リットルのビール。15kgほどの物を持ち上げ、飛び出さないようにゆっくり傾けて注がなければなりません。手が震えてきます。
えっ!何これ!重い!リアクション女王の編集部古賀さん。
えっ!何これ!重い!リアクション女王の編集部古賀さん。
何人か試しに持って注ごうと試みましたが、持ち上げるので精一杯。9リットルビールを注ぐのにはかなり力が必要です。そうでなければ専用台を作るなど工夫が必要です。
ライターのネッシーあやこさんは持ち上げたものの注ぐのは断念。
ライターのネッシーあやこさんは持ち上げたものの注ぐのは断念。

肝心な味の違いはどうなの?

さて、デカいビールを飲み始めたところで、最初の疑問。デカいボトルと小さいボトルではデカいボトルの方が美味しいという話。
左がデカいボトル。右が小さいボトルの物。見た目はほぼ同じ。
左がデカいボトル。右が小さいボトルの物。見た目はほぼ同じ。
まずは別のグラスに入れて見比べてみました。デカい方はオリが混じったのかやや濁っているものの、色はどちらも透明な黄金色。差はありません。

比べて飲んでみます。
明らかに違う!
明らかに違う!
比べて飲んでみると、明らかに味が違いました。デカいボトルの方は小さいボトルと比べて、香りや甘味などの果実感がより強く感じられ、後半の麦芽の旨味の伸びもより長く感じられます。

対して、小さいボトルの物は味の雰囲気は同じなのですが、全体的にライトな仕上がりになっています。
残り半分を切る。思っていたよりも早いペースで無くなる。
残り半分を切る。思っていたよりも早いペースで無くなる。
デカい方は味のイメージがハッキリしていて、小さい方はサラりとしている。どちらが美味しいかと言われれば、好みの問題なのでなんとも言えませんが、デカい方は小さいボトルでは味わえない美味しさが有る事は間違いないです。
このぐらいの量になれば割と楽に注げます。そして、最初に注いだ時と味に差が出てくる。
このぐらいの量になれば割と楽に注げます。そして、最初に注いだ時と味に差が出てくる。
そして、他にもデカいボトルのビールならではの特徴がありました。最初に注いだ時と、ボトルの半分ぐらいになった時、最後のあたりで味の違いが感じられます。
通常、ベルギービールなどでは瓶底にオリが溜まっているので、少しだけ残して注ぎますが、飲みほした感を味わいたいので全部注ぐ。
通常、ベルギービールなどでは瓶底にオリが溜まっているので、少しだけ残して注ぎますが、飲みほした感を味わいたいので全部注ぐ。
最初の時よりも半分ぐらいになった時の方が香りや味が強くなり、より風味が良くなった感じがします。

時間が経っての温度上昇や、飲んでいる量が増えて舌の感覚が変化したなどの要因も考えられますが、明らかに最初の時よりも味わいが増しています。
9リットル飲み切ったー!
9リットル飲み切ったー!
そして、最後の方になってくると、やや苦みが増して風味が軽く、サラサラとしていました。最初は爽快。中は芳醇。最後は軽快。そんな感じです。

日本酒もしぼり始めを「あらばしり」、中間を「中取り」、最後に力を込めてしぼりきったものを「せめ」と言って味に違いがあります。デカいボトルのビールは1本の中でそれが体験できる感じでした。

意外な発見です。

そしてデカいビールは笑える

最後にもう1つ。デカいボトルのビールのならではの特徴がありました。

見ただけで笑えるということ。
日本酒の1升瓶、四合瓶と並べてみたが、1升瓶が頼りなく見える大きさ。デカいビールはサイズ感が狂って笑える。
日本酒の1升瓶、四合瓶と並べてみたが、1升瓶が頼りなく見える大きさ。デカいビールはサイズ感が狂って笑える。
とにかくサイズ感がおかしい。飲み物が入っていると思えない大きさ。
アルコール度数8.5%。日本の通常のビールの1.5倍以上。酔って笑えるというのもあるけどね。
アルコール度数8.5%。日本の通常のビールの1.5倍以上。酔って笑えるというのもあるけどね。
ボトルのあまりの大きさに、飲んでいる者同士でキャンプファイヤーでもやっているかのような一体感が出てきます。
チームデイリーポータル。既にデカいビールが空いて普通サイズのビールを飲み始める。
チームデイリーポータル。既にデカいビールが空いて普通サイズのビールを飲み始める。
1960年代。東京オリンピックが開催された高度経済成長の頃のチョコレートのCMコピーで「大きいことはいいことだ!」というものがあります。
笑える酒はいい酒だ。
笑える酒はいい酒だ。
今回のデカいビールを飲んでいて、結構合っているのではと思いました。
飲み過ぎには注意ですけどね。
飲み過ぎには注意ですけどね。
理由なんていいんだよ!バーンと行っとけ!バーンと!的な勢いも時には必要だよなと思わせる、そんなデカいビール体験。みなさんも人数集めてやってみてください。うまいです。笑えます。

盛り上がりたいなら迷わずいっておけ!

ちなみに、今回の9リットルビール。途中で書いた通り、1本税込32400円します。330mlの小さいボトルは税込で600円を少し超えるぐらい。

つまり、量だけで言うならば、330mlのボトルで9リットル分を用意すると17000円程度で買える計算になります。約半額。

しかし、9リットルボトルは倍の値段を出しても惜しくない味と面白さがありました。10人集まれば1人約3000円。20人なら1500円。花見の時やバーベキュー時とかどうですか?間違いなく盛り上がりますよ。迷うな!飲みたい時が飲みごろだ!
参加者の人からNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」風の写真が撮れたとこの画像が送られてきた。NHK公式アプリを使って流儀動画にしてしまおうか。
参加者の人からNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」風の写真が撮れたとこの画像が送られてきた。NHK公式アプリを使って流儀動画にしてしまおうか。
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