特集 2016年3月22日

「氷の凶器」より強い!「氷の兵器」を作ったらおいしかった

犯行現場。
犯行現場。
「氷の凶器」
という言葉を聞いたことがあるだろうか。推理小説に登場する氷のナイフやつららを使用したトリックの総称だ。尖った氷で人を刺し、使用した氷を溶かして証拠を隠滅する。

氷のナイフには当サイトでも過去に挑戦しているが、もしかしたらナイフよりももっと犯行に適した形状があるのではないだろうか。

凶器より強いもの、それは兵器だ。
ということで、今回は「氷の凶器」をバージョンアップさせた「氷の兵器」をつくります。
1991年北海道生まれ。埼玉在住。20歳まで海鮮が苦手だったので、
北海道で寿司を食べた経験がほとんどない。もったいないとよく言われるが、自分でもそう思う。

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つまりどういうこと

せいいっぱいの想像図。これが「氷の兵器」だ!
せいいっぱいの想像図。これが「氷の兵器」だ!
氷でバズーカやハルバードをつくれば、ナイフなんて相手にならないくらい強い凶器になるのではないだろうか。ハルバードとは槍と斧が合体した武器で、消しゴムのついた鉛筆のようなものだ。これは強いぞ。

氷のナイフくらいならお見通しの名探偵も、一刀両断された被害者を見て、まさか凶器が氷とは思うまい。期せずして良いトリックを思いついてしまった。警察にマークされたらどうしよう。

1/144の兵器

とはいえ実際に抱えるようなサイズの氷を入手する手段も、加工する技術もない。地元北海道の氷祭りでは氷像をつくるために巨大な氷のブロックをいくつも積み上げていた。いくらなんでもあれはさすがに東京のホームセンターでは買えまい(行ってみたけど売ってなかった)。
初めての型どり。
初めての型どり。
自宅の冷蔵庫でつくれるサイズということで、バズーカはプラモデルサイズでつくることにした。
道具を買い揃えるときはわくわくしました。
道具を買い揃えるときはわくわくしました。
プラモデル用のバズーカの型をシリコンでとり、そこに水を流し込めば、バズーカ型の氷ができるはずだ。それほど難しい作業ではない。
型に水を流し込んで、冷蔵庫に入れる。
型に水を流し込んで、冷蔵庫に入れる。
丸一日置いたらゆっくりと型を開いて中を見る。
丸一日置いたらゆっくりと型を開いて中を見る。
「どうだ!」
「どうだ!」
さきほど「それほど難しい作業ではない」と書いたばかりだが、思いっきり失敗してしまった。水泳の授業がある日なのに、うっかり名前入りブリーフで登校してしまったときくらい恥ずかしい。

おかしい。こんなはずではなかったぞ(ついでにいえば、そんな思い出もない)。

その後も固定するゴムをきつく巻いてみるなどの工夫をしつつ何度か挑戦してみたものの、きちんとバズーカの形になるものはできなかった。
氷のバズーカを持たせるつもりで買ってきた人形に、せっかくなので残骸を持たせてみる。
氷のバズーカを持たせるつもりで買ってきた人形に、せっかくなので残骸を持たせてみる。

氷の拳銃、「氷の銃器」

敗因は型をつくるのが下手で隙間だらけだったことだろう。注いだ水が隙間から漏れていたのだ。

あとはサイズが小さすぎた。うまくいけばマドラーのようになってオシャレかと思ったのだが、小さすぎて型から剥がすときに折れてしまう。こんな工作でオシャレなんて目指すなということなのだろうか。
密造、という言葉が脳裏をよぎった。
密造、という言葉が脳裏をよぎった。
反省を活かして今度はそれなりに大きなサイズでつくることにした。拳銃である。氷の拳銃、弾は出ないが殴っても折れない分、ナイフよりは強いに違いない。

さきほどと同様にシリコンで型をとって水を流し込む。
これも隙間だらけで、冷凍庫が水浸しになった。
これも隙間だらけで、冷凍庫が水浸しになった。
冷凍庫がたいへんなことになったので、器ごと凍らせる作戦をとる。
冷凍庫がたいへんなことになったので、器ごと凍らせる作戦をとる。
試行錯誤の末に完成した、これが「氷の兵器」である。兵器というより銃器だが、もともとダジャレなのだから、響きさえ似ていればいいだろう。
高級感がでるかと思って、赤い布のうえに置いてみた。
高級感がでるかと思って、赤い布のうえに置いてみた。
なかなかの出来栄えではないだろうか。
なかなかの出来栄えではないだろうか。

証拠隠滅にはカキ氷

氷の兵器(銃器)は完成したが、これだけでは完全犯罪とはいえない。今は冬だ。夏ならともかく放っておいても氷は溶けない。放っておいて消えてしまうのは愛だけである。
部屋が寒いので、水に漬けてしばらく放置しても原型を保っていた。
部屋が寒いので、水に漬けてしばらく放置しても原型を保っていた。
凶器を消すのなら、溶けるのを待つよりももっと効率的な方法がある。食べてしまえばいいのだ。証拠を食べるのも推理小説ではよくある展開だ。とはいえそのまま氷を齧るのは難しいので、カキ氷にしよう。

かき氷器は季節外れだからか半額以下で手に入った。季節外れバンザイ! (ただしシロップは売っている店が見つからず、一日中歩き回っても見つからなかった。季節外れ残念。)
シロップはブルーハワイとイチゴのふたつ。
シロップはブルーハワイとイチゴのふたつ。
内部にうまく収まるように氷の拳銃を数回折り、かき氷器に入れる。あとは普通のかき氷をつくるときと同じようにハンドルを回せばいい。まさかこんなお手軽に完全犯罪ができるとは!
「シロクマの頭の中に折った拳銃を入れる」とだけ書くと何をしているのかわからない。
「シロクマの頭の中に折った拳銃を入れる」とだけ書くと何をしているのかわからない。
これが凶器には見えないだろう。
これが凶器には見えないだろう。

ブルーハワイの拳銃

話はすこし脇道に逸れるが、見てもらいたいものがある。かき氷のシロップでも拳銃をつくってみたのだ。
試行錯誤の末、注射器を使って水を注ぐ方法を編み出した。
試行錯誤の末、注射器を使って水を注ぐ方法を編み出した。
色がついていると水が漏れているのがよくわかる。
色がついていると水が漏れているのがよくわかる。
つくり方は全く同じで、ただ使う水にシロップで色を付けただけである。白い氷の写真ばかりだととにかく地味なのでカラフルな写真が欲しかったのだ。
ブルーハワイの拳銃。齧るとほのかに甘い。
ブルーハワイの拳銃。齧るとほのかに甘い。
冷凍庫から出して、実物を見た瞬間「おっ」と声が出た。なかなか綺麗だ。

しかしこのブルーハワイの拳銃、強度が足りなくなったのか、型から取り出すときに折れてしまい。触れば触るほどぽろぽろと崩壊していった。豆腐メンタルなどという表現があるが、言ってみればこれはブルーハワイメンタルである。(意味はよくわからない)

いざ実食!

つくったカキ氷を持って、近所の橋まで来た。食べるまでが完全犯罪なのだ。もしこれが遠足だったら、かき氷はおやつに含まれるのだろうか。
サクラの開花には少し早かった。
サクラの開花には少し早かった。
ひと口食べて冬にシロップが売ってないわけがわかった。寒いからだ。
ひと口食べて冬にシロップが売ってないわけがわかった。寒いからだ。
思わず歩き回るほどには冷たくて寒い。
思わず歩き回るほどには冷たくて寒い。
撮影を行った日は3月にしては暖かかったのだが、それでも上着も着ないでカキ氷を食べるのは間違っていたようだ。無理やりかきこんでいるうちに、頭がキンキンし始めた。これにはアイスクリーム頭痛という名前がついているらしい。

完全犯罪は、アイスクリーム頭痛との闘いである。
イチゴ味だったので、ちょっと事件の匂いがする写真になった。
イチゴ味だったので、ちょっと事件の匂いがする写真になった。

やってみてわかる完全犯罪のつらさ

「凶器の正体は氷だったのだ!」
「犯人は凶器を食べてしまったのです!」
探偵が言うのはこれだけだが、実際にやってみるとなかなかに苦労があった。
ミステリの犯人たちもキンキン痛む頭を抱えながら必死に警察から逃げていたのかもしれない。

次に読んだ推理小説で、冬なのにかき氷を食べている人物がいたら、きっとそいつが犯人です。
ブルーハワイの拳銃。折れなければかき氷に刺すつもりでした。
ブルーハワイの拳銃。折れなければかき氷に刺すつもりでした。
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