特集 2016年5月20日

友人と平和友好条約を締結する

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平和友好条約締結
あなたには友人がいますか? 沢山いますか? 悪そうなやつは大体友達ですか?

それほど数は多くないが、僕にも大切な友人がいる。しかし、ふと不安に思うことがある。僕は友達だと思っていても、向こうはそう思ってないかもしれない。もし、そうだとしたら大変だ。何らかの方法で2人が友人関係にあることを証明しておく必要がある。

そうだ、友人と平和友好条約を締結しよう。
1970年神奈川県生まれ。デザイン、執筆、映像制作など各種コンテンツ制作に携わる。「どうしたら毎日をご機嫌に過ごせるか」を日々検討中。


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外交の舞台を参考に

友人と平和友好条約を締結するにあたり、外交の舞台を参考にすることにした。それぞれの国の代表が条約にサインして握手してカメラ目線。国際舞台で繰り広げられる友好的なあの場面を再現しよう。

条約締結の場面に必要なものは何か。ネット検索をかけて、過去の締結場面を分析してみた。

例えば、外務省の報道発表にあった「日・ニュージーランド租税条約の署名」のニュース。

両国の代表が並んで座り、条約に署名をしている。机には両国の国旗が飾られていて、条約には立派なブックカバーのような物が施されている。署名する代表者はもちろんスーツ姿だ。

その他の締結場面も大体同じ雰囲気だった。

よし、まずは卓上でクロスする国旗を調達しよう。

条約締結に必要なものを揃える

新宿御苑前にある鈴木旗店は、旗や幕などを製作するお店だ。電話で問い合わせると卓上でクロスする国旗も販売しているという。
鈴木旗店
鈴木旗店
派手な店内
派手な店内
鈴木旗店では、正式な国際会議でも使用する卓上国旗を取り扱っているのだが、それが結構な値段だった。
正式な国際会議用の卓上クロス国旗
正式な国際会議用の卓上クロス国旗
台だけで2,645円
台だけで2,645円
台だけで2,645円して、それに国旗2本を合わせると5,000円を超えてしまう。もう少しリーズナブルな卓上国旗はないだろうか。
プラスチック製の物があった
プラスチック製の物があった
プラスチック製で価格を抑えた物も用意されていた。旗とセットで2,288円。

正式な国際会議ではあまり使用されない物らしいが、今後、僕が正式な国際会議を主催する機会もないだろう。プラスチック製の方を購入することにした。

この他に胸元を彩るリボンバラも売っていたので、それも購入した。
特小バラ 272円
特小バラ 272円
お買い得な商品も置いてあったが、今回は買わなかった。
お買い得な商品も置いてあったが、今回は買わなかった。
さらに、条約を保管する立派なブックカバーには、証書ホルダーというものを使用することにした。契約書や卒業証書などに使用する布製のものがネットショップで売られていた。
布製証書ホルダー 1つ912円。
布製証書ホルダー 1つ912円。
そして、署名用のボールペンも購入した。
革張り風ボールペン 1本1,080円
革張り風ボールペン 1本1,080円
以上で条約締結に必要と思われるものは揃った。合計で6,816円かかっているが、これで友情が買えると思えば安い買い物である。

条文の作成

条約締結に必要なグッズは揃ったが、肝心の平和友好条約の条文が出来ていない。過去に取り交わされた国際的な友好条約に習って条文を作成することにした。参考にしたのは、1978年に日本と中国で締結された「日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約」、一般的には日中平和友好条約と呼ばれている条約である。

まず、条文の前文として、以下の文章を作成した。
「二人は、
二〇十六年五月十七日(友引)に三軒茶屋で共同声明を発出して以来(三茶合意)、
二人の友好関係が新しい基礎の上に大きな発展を遂げていることを満足の意をもつて回顧し、
前記の共同声明が二人の平和友好関係の基礎となるものであること及び前記の共同声明に示された諸原則が
厳格に遵守されるべきことを確認し、アジア及び世界の平和及び安定に寄与することを希望し、
二人の平和友好関係を強固にし、発展させるため、平和友好条約を締結することに決定した。」
条約の締結日を5月17日に設定した。ちょうどこの日が友引だったのだ。
友引に締結
友引に締結
僕が勝手に条約を作って友人を三軒茶屋に呼び出すだけなので、共同声明の発出などないのだが、それっぽい雰囲気を演出するために「三茶合意」というネーミングにしていおいた。為替レートの安定化に関するプラザ合意を真似ている。

また、前文から「アジア及び世界の平和」などと大風呂敷を広げているが、元になっているのが日中平和友好条約なので、このようになってしまった。

前文から5つの条文を作成したが、その内容は後ほどお伝えすることにしよう。

疎遠になりかけている友人

5月17日の友引に友人と平和友好条約を締結することに決まったが、一番大切なのは「誰と条約を取り交わすのか」である。

ここ最近、疎遠になりかけている友人として、ダーリンハニーの吉川正洋さんがまず思い浮かんだ。出会ってから10年ほどの付き合いになり、二人で何年もインターネットラジオ「ラジオすみましん」をお届けしてきた仲である。ラジオの放送回数は122回、ピーク時は毎週のように収録してお酒を飲んでいた。

しかし、そのラジオも2年前の夏を最後にお休みしていて、吉川さんと会う機会もグッと減ってしまった。

このままでは吉川さんに忘れられてしまう!

吉川さんに「17日、お時間ありますか?」とメールをして約束を取り付けた。平和友好条約を取り交わす旨は伝えず、ただ「スーツで三茶に来てください」とだけお願いしておいた。

平和友好条約締結の会場は、三軒茶屋の貸し会議室である。
三茶の貸し会議室で締結
三茶の貸し会議室で締結
貸し会議室の使用料は1時間2,700円。グッズ費用と合わせると9,516円である。今後、友人と平和友好条約を締結したいとお考えの皆さんの参考になればと思います。

会議室のセッティングを整え、吉川さんの登場を待つ。
三茶合意を経て、
三茶合意を経て、
ついに平和友好条約締結の日
ついに平和友好条約締結の日
緊張して吉川さんを待つ
緊張して吉川さんを待つ

ついに平和友好条約の締結へ

吉川さんが条約締結会場に現れた。

ついに、時は来た。
吉川さんが登場
吉川さんが登場
とりあえず胸にバラを
とりあえず胸にバラを
どうぞどうぞ
どうぞどうぞ
条約を覗き込む吉川さん
条約を覗き込む吉川さん
突然、外交の舞台に立たされて戸惑っているのが分かる。僕が逆の立場だったら同じような気持ちになるだろう。しかし、時には強引な手法が必要とされるのが外交だと聞いている。吉川さんが深く考え始める前に、さっさと署名してしまおう。
平和友好条約に署名
平和友好条約に署名
状況を把握できない
状況を把握できない
吉川さん
吉川さん
吉川さんが条約の中身を吟味し始めてしまった。

そして、

「何かの保証人とかじゃないですよね?」

と言った。

なんてことだ!

友情を確かなものにするための条約なのに、相手国は借金の連帯保証人の心配している。これだから友情は信用ならない。だからこそ、この平和友好条約の締結は重要である。
なかなか
なかなか
サインしようとしない
サインしようとしない
吉川さん
吉川さん
まぁ、確かに強引過ぎたのかもしれない。これが国と国との平和友好条約なら、事前に事務方が何度も内容を精査するのだろう。締結の日に初めて内容を知る、なんてことはあり得ない。
中々サインしようとしない吉川さんに条約の内容を説明することにした。

以下、平和友好条約の条文である。
第一条
・今後二人は、恒久的な平和友好関係を発展させるものとする。
・二人は、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し及び武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する。

第二条
二人は、善隣友好の精神に基づき、二人の経済関係及び文化関係の一層の発展のために努力する。

第三条
この条約は、第三者の立場に影響を及ぼすものではない。

第四条
・条約内容は必要に応じて見直す。その場合には一年前に通達を行う。
・本条約は二〇十六年五月二十日より有効である。

第五条
本条約を二〇十六年五月十七日(友引)に三軒茶屋にて調印する。
悩む吉川さん
悩む吉川さん
「そもそも揉めていた訳じゃないんだよなぁ…」

ボソッと吉川さんがそう漏らした。

揉めていた訳ではないが、このままだと疎遠になってしまうのだ。僕の真意を伝え、なんとか署名に持ち込むことに成功した。
ついに条約締結へ!
ついに条約締結へ!
こうして、僕と吉川さんの平和友好条約は締結された。これにより、これまでの10年を反省し、さらなる友好関係の発展へと努力することが求められている。
平和友好条約締結の記念写真
平和友好条約締結の記念写真
あちらのカメラにも
あちらのカメラにも
こちらのカメラにも
こちらのカメラにも

こうして、僕たちの友情は紙切れによって保証されることとなった。条約締結後、久しぶりに三軒茶屋でお酒を飲み、またラジオやりましょうと盛り上がった。これまでの流れだと、飲んで盛り上がってもそれぞれ忙しくてうやむやになっていた。だが、これからは違う。平和友好条約の第二条に「二人の経済関係及び文化関係の一層の発展のために努力する」と書いてある。がんばらなくては。
住と吉川との間の平和友好条約
住と吉川との間の平和友好条約
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