これ、絶対やるよね
秘技、とんがりクロー。
とんがりコーンを指にはめて食べる。
子供のころには全員やっただろうし、大人でも8割の人はやっているのではないかと思う。もし「自分はやらない」という人がいたら、残り2割の少数派だ。
指にはめると、次は「腕にはめればドリルみたいになるな」と考えるはずだ。男子なら思わないわけがない。そのままドリルへの欲求を抑えきれずに、箱を拳にはめて遊んだはずだ。間違いない。
カラーコーンを買った今なら、あの夢が叶う。
巨大なサイズのとんがりコーンをつくれば、指と言わずに腕でも頭でも好きな部位にはめて、とんがりコーンを全身で味わうことができるのだ。
カラーコーンのある暮らし
大きいだろうな、と思っていたが実際に届いてみると想定よりも一回り大きく感じた。普段カラーコーンを見るのは屋外なので、屋内にあると余計にそう感じるのだろう。空にある月は小さく見えても、部屋には収まらないのと同じことだ。
玄関がごちゃごちゃしていて申し訳ない。
両手で抱えないと持てないサイズの箱が送られてくるが、中身はカラーコーンなので、予想以上に軽い。宅配便のお兄さんも少し笑っていたような気がする。笑顔ででかい箱を受け取る。アメリカの誕生日みたいだ。
部屋の中には置く場所がないので、座椅子に座らせていた。
やっぱりカラーコーンは外にあるのが似合う。
この写真を撮っているときに、外国人の女性が通りかかったのだが、とんでもないものを見るような表情をしていた。外国の方は感情表現が豊かだ。
もし話しかけられたら「イッツ、ジャパニーズカルチャー!」で乗り切ろうと身構えたが、杞憂に終わった。
巨大とんがりコーンのつくりかた
作り方は簡単。
まず、とんがりコーンの写真を撮って、それをプリントする。
なるべくアップの写真を撮る。
画像フォルダが油っぽくなった。
耐久性を考えて少しいい紙を使う。
プリンタから吐き出されるとんがりコーン。
言われなければ何の紙なのかわからないかもしれない。
こうして印刷した紙をカラーコーンに貼り付けていく。形はとんがりコーンとまったく同じなので、あとは見た目だけ変えてしまえば、大きなとんがりコーンに見えるという目論見だ。
接着剤を塗って、大胆に貼り付ける。
完成。土台の部分は邪魔なので切り落とした。
巨大とんがりコーンあらわる!
「あっ、とんがりコーンが落ちてるぞ」
「わっ、なんて大きいんだ」
「こんなに大きいと食べきれないぞ」
余談ではあるが、この写真を撮るときに無理に口を大きく開けようとしてあごを痛めた。三日たった今でもまだ痛いのでとても不安である。
とんがりコーンのある風景
夜に撮ったのと同じ場所で撮ってみた。
コーンは屋外にあってこそ魅力を発揮する。せっかくなのでつくったとんがりコーンを持って外を散歩してみた。
「わたしがつくりました」
持って歩いていても、意外にも奇異の視線は感じられなかった。ただの黄色いコーンだと思って、とんがりコーンだと気付かなかったのかもしれない。世の中には目を凝らして見ないと気付かないものがあるのだ。
仲間はずれがひとりいるよ。
街中にあるコーンと並べて写真を撮ってみたが、想定していたよりも違和感がない。「そういうコーンもあるかな」くらいのものである。
屋外作業用品メーカーとハウス食品がコラボして、とんがりコーン柄のカラーコーンが発売されてもおかしくないくらいの馴染み方だ。
この写真にとんがりコーンが隠れているとは思うまい。
とんがりコーンになりたい
本物と比較してみると角度以外はほぼ完璧にとんがりコーンだ。
巨大コーンを作ったのだから、もちろん被ってみたい。本当に巨大なものをつくっても、被ると油で顔がギトギトになってしまうだろうから、むしろこの偽物の方が被るのには適している。
被る。
こっちに来たぞ。
ホラーゲームにこんなやついた気がする。
よく見るとしっかり右手にとんがりコーンをはめているのがチャームポイントだ。今なら辛口ファッションチェックに遭遇しても満点をもらう自信がある。
コーンをはめるなら腕よりも頭
「ドリル!」と腕にはめてみたが、しっくりこない。
巨大とんがりコーンをはめるなら、腕よりも頭だ。また再利用しようのない知識が増えてしまった。もし真似をする人がいたら参考にしてほしい。
撮影を手伝ってもらった江ノ島さんにかぶせてみる。
明らかにホラーゲームのモンスターだ。ショットガンを3発当てないと倒せない。
異世界に迷い込んでしまった感がある。
コーンさんぽ
コーンを被ると貝殻を耳に当てたときと同じ音が聞こえた。「コォー」「ザザーン」という海の音だ。当然視界も遮断されるし、視界がほのかに赤くなる。海の音のようなものを聞きながらじっとしていると、徐々に気分が落ち着いてくる。
落ち着いた気持ちのまま、外へ出てみた。
意外と町の風景に馴染む。
商店街に来てみたが、意外と違和感はない。さきほどまでのホラー感はなくなり、なぜか迷子感がでてきた。異世界からうっかり日本に迷い込んでしまったコーンの妖精だ。
自撮りをするコーン。
これだけ違和感がないのなら、もしかしたら被ったままでも普通に生活できるのではないだろうか。
そば屋に入ろうか悩むコーン。
日焼け止めってどれがいいのかしら。
あら、お洋服が安いわね。
この間違いさがし、むずかしいなあ。
実際には写真で見るよりも違和感がなかった。奇異の視線はほぼなく、自然な存在として街に馴染んでいた。阿佐ヶ谷という土地が特別妙なものにやさしいのかもしれない。
そば屋前では当たり前のように隣に男性が並んでメニューを見ていたし、妙なことをしていると思っているのは自分だけで、本当はよくあることなのかもしれない。自意識過剰はやめて、もっと自由な姿で暮らしていこう。
ずっと被っていたら愛着がわきました。
邪魔だけど捨てられない
それなりに大きいのでものすごく邪魔なのだが、愛着がわいてしまった分捨てにくい。カラーコーンとして本来の使い方ができればいいのだが、残念ながら工事をする予定もないし、駐車場も持っていない。
近いうちに引越しをする予定があるのだけど、もしかして引っ越し屋さんのトラックにとんがりコーンを乗せて新居まで運ぶことになるのだろうか。どうしよう。いや、それでもいいかもしれない。抱き枕かナイトキャップにして、コーンとの新生活を楽しもうかしら。