特集 2016年8月30日

リニアモーターカーに乗った自慢

ナチュラル集中線
ナチュラル集中線
リニアモーターカーの試乗に当たった。
JR東海の超伝導リニアだ。

ネットで試乗体験を募集していたので申し込んだら当たったのだ。時速500キロの未来の乗り物だ。

ただ乗るだけじゃなくて、なかで進行方向に60キロの速度でボールを投げるとか企画性のあることをしたほうがいいんじゃないか、そんなことを考えていたのだが、乗ってみたら超楽しかった。

なのでただ乗ったという話を書こうと思う。つまり、自慢である。
1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

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未来でも桃は売っている

リニアの実験線の最寄り駅は大月である。あまりというか、ほとんど行かない場所だ。果物のイメージしかない。
そこがいまやリニアが通って未来になっているとは。

感慨深く駅を降りるとやっぱり桃が売っていた。
これからリニアに乗るというのに買ってしまった。時速500キロは人を浮かれさせる。
これからリニアに乗るというのに買ってしまった。時速500キロは人を浮かれさせる。
ものすごくうまかった。これ以来桃ばっかり食べている
ものすごくうまかった。これ以来桃ばっかり食べている
バスに20分乗ると山梨リニア実験センターがある。手前の畑ではとれたてのトウモロコシを売っていた。リニアが開業したら買いに来よう。

リニアに乗る前から浮かれる

リニア実験センター横にはどきどきリニア館という見学施設がある。ここに来ているのはほとんどが試乗に来た人なので全員がテンションが高い。そのなかでも僕はかなり高い方に入っていた自信がある。
館内にあった「武田信玄と写真を撮ろう」コーナーにもすかさず参加
館内にあった「武田信玄と写真を撮ろう」コーナーにもすかさず参加
撮ってから、リニアにひとつも関係ないことに気づいた。信玄公もそう思っているに違いない。

ほかにもリニアテンションで見るものすべてが面白く感じた。
パンフレットが50部単位で束になっていることに興奮したり
パンフレットが50部単位で束になっていることに興奮したり
ビン詰め放題のリニア消しゴムに見入ったりした。
ビン詰め放題のリニア消しゴムに見入ったりした。
いま実験している車両がL0系というのだ。新幹線と同じでやっぱり最初は0系なのだろうか。

11年後リニアが開業してそれから40年ぐらいしたら「やっぱりリニアは最初の0系が味があるよね」みたいなことをデイリーポータルZのライターみたいなやつが言うのだろう。50年後の話である。

早すぎて短く見えた

リニア館の横には実験線が通っていて、そこを通過するリニアを見ることができる。接近を知らせる電光掲示板があり、それが点灯するとそこにいる全員が固唾を呑んで見守るのだ。
相撲の制限時間いっぱい、みたいな雰囲気である。
シャー!
シャー!
通過とともにiPhoneのシャッター音が響き、おおおというどよめきが漏れる。やっぱり相撲だ。

通り過ぎたリニアは意外に短かった。6両編成ぐらいかなと思ったのだが、きっちり12両編成だった。早すぎて短く見えてしまったらしい。
リニア見学コーナーの向かいにあった飲料コーナー。説明の当たり前さに静かにうなずく。
リニア見学コーナーの向かいにあった飲料コーナー。説明の当たり前さに静かにうなずく。
リニアができると東京~甲府は25分になるそうだ(いまは90分)。西荻窪より近くなる。
東京も名古屋も甲府から1時間以内。日本の中心が甲府になっている地図
東京も名古屋も甲府から1時間以内。日本の中心が甲府になっている地図
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開業前からベテランの風格、リニアみやげ

リニア試乗の手前におみやげ屋がある。おみやげ屋の前には売店が出ていて超電導というか区民プールみたいな雰囲気である。
記念写真のコーナーにも滑り台みたいなリニア。
記念写真のコーナーにも滑り台みたいなリニア。
と思ったらリニア自身が否定していた
と思ったらリニア自身が否定していた
「このリニアはすべりだいじゃないよ!」とリニアモーターカーが言っている。開業前なのにもう吹き出しついちゃってるのだ。
この、まだ開業してないのに昔からあるような雰囲気はみやげもの屋の中でも発揮されていた。
人気商品として置いてあったのはリニアロマンケーキ。餡入り焼きまんじゅう。
人気商品として置いてあったのはリニアロマンケーキ。餡入り焼きまんじゅう。
断面写真に「あん」と書いてあるのがかわいい
断面写真に「あん」と書いてあるのがかわいい
リニアでロマンだからやっぱり普通のあんこじゃなくて白あんであるのも納得がいく。理由は分からないが。普通のあんこじゃ未来じゃない気がする。

ほかにリニアのとんがっている形状をいかしたグッズも多かった。
リンスインシャンプー
リンスインシャンプー
水
ジップバッグ(ジップロック的なもの)
ジップバッグ(ジップロック的なもの)
おはし
おはし
僕は全然リニアチョロQを買った。おみやげといえばチョロQ世代である。
リニアチョロQはまったくとんがってない。
プレミアついているのもむしろ貴重な感じがして嬉しい大人買い
プレミアついているのもむしろ貴重な感じがして嬉しい大人買い
タイヤも見えないし窓もないという不思議なチョロQ
タイヤも見えないし窓もないという不思議なチョロQ
みやげ屋の外にあったゴミ箱
みやげ屋の外にあったゴミ箱
と思ったらリニアのガラスの展示だった
と思ったらリニアのガラスの展示だった
なんだよもう!と言いながらリニアへの期待感が高まる

シャッターは「はい、リニア!」

ながなが引っ張ってきたがようやくこれからが試乗レポートである。試乗会場には当選ハガキを持ってないと入れないため、おみやげ屋とは違うピリッとした緊張感がある。

立っている人もJR東海の制服を着ているのでいよいよ本番っぽさが増してきた。
でも顔ハメがあったので当然やる
でも顔ハメがあったので当然やる
撮ってくれたJR東海の職員は「はい、リニア!」と言ってシャッターを切ってくれた。最後に出てくるリニアモーターカー本物との撮影でも「はい、リニア!」であった。

浮かれた雰囲気は顔ハメが最後で、ここからはしっかり未来の乗り物である。
自動チェックイン機で自分のチケットが出くる。
自動チェックイン機で自分のチケットが出くる。
これ、むかしだったらアルバムに貼る切符だな
これ、むかしだったらアルバムに貼る切符だな
待合室は車両と同じようにイスが並んでいた。待合室でもチケットに記載されている座席番号のところに座るのだ。広い部屋で指定されたところに座るなんて、火星に移住するロケットを待っているようである。そんなもの見たことがないが。

リニアのなかにはトイレがないのでいまのうちにトイレに行っていくよう促される。

リニアのなかでおしっこしたら、外の人には時速500キロで横に移動する液体に見えると思っていたのに残念である。

おしっこが終わったらいよいよリニアである。
うおーリニアだリニアだ(心の声)とぞろぞろ歩いて行くと
うおーリニアだリニアだ(心の声)とぞろぞろ歩いて行くと
飛行機のような感じでリニア登場
飛行機のような感じでリニア登場
こうきたか。リニアが見えるのはドアの両脇のちょっとの部分だけだ。これはもう電車ではなく飛行機のボーディングブリッジである。
興奮のあまりサーモグラフィーで撮った
興奮のあまりサーモグラフィーで撮った
この貴重な機会にあらゆるものを記録をしなければと思い、あらゆる計測器を持って行ったのだ。
サーモグラフィーで撮ってわかるのは係員の腕があったかいということである。暑いのにお疲れさまっす。
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ほとんど地下鉄

そしてリニアが動き始めた。
だが、実験線はほとんどがトンネルだった。
窓の外を撮ろうとしてもカメラとiPhoneを握りしめた自分しか映らない
窓の外を撮ろうとしてもカメラとiPhoneを握りしめた自分しか映らない
頼みは車内にあるモニターだけである
頼みは車内にあるモニターだけである
ときどき、トンネルを抜けてふっと景色が見える。丸ノ内線の四谷やお茶の水みたいなものだが、もっと一瞬である。
折り返し点から見えた甲府盆地らしき景色
折り返し点から見えた甲府盆地らしき景色
ここどこだ?と思ってるあいだにリニアは後ろ向きに進んでまたトンネルに入る。ちなみに座席は回転しないので進行方向後ろ向きに進む。
リニアでボックスシートを向かい合わせにして弁当を食べることはできるだろうか。

リニアは山梨の上野原市から笛吹市にまたがっている42キロの実験線を約30分で往復する。土地勘がないのでそれがどれぐらい離れているのかわからない。

家に帰ってから調べたら新宿から高尾山、久喜、千葉市ぐらいの距離だった。それを往復30分で!速いな!リニア。そして山梨が広い!
時速500キロなら久喜まで15分!(例えであって久喜にリニアは通りません)
時速500キロなら久喜まで15分!(例えであって久喜にリニアは通りません)

タイヤ走行になる瞬間が着陸

リニアは時速130キロぐらいまでタイヤで走り、それ以上は浮上走行になる。逆に減速するときはまた時速130キロあたりでタイヤでの走行に変わるのだ。
そのときの音と衝撃が飛行機の着陸と同じだった。飛行機ほど激しくはないが、どすんという音。
音もなく走るリニアのイメージと異なる物理的な音で、未来もがんばってるなと思わせる。

ボーディングブリッジも窓のシェードも着陸の衝撃も飛行機だ。電車というよりもちょいちょい飛行機らしさを出してくる。
特に衝撃の写真がないので試乗中の僕の心拍数、皮膚温、発汗量のグラフをどうぞ。
特に衝撃の写真がないので試乗中の僕の心拍数、皮膚温、発汗量のグラフをどうぞ。
心拍、皮膚温は変化があまりないが、リニアに乗り始めに汗をかいている。ちょっと緊張したのだ。

パンダのようにリニアと対面

体験試乗が終わると、いま乗ったリニアを間近に見ることができる撮影会である。
はじめてちゃんと見た
はじめてちゃんと見た
しかしうっすら反射していることからわかるように、ガラス越しである。上野動物園のパンダ舎に似ている。確かにあらゆる電車のなかでどれがいちばんパンダに近いかと聞かれたらリニアだろう。
人気すぎてリニアが見えない
人気すぎてリニアが見えない
ライブが終わってから間近で見らるというシステムが演劇っぽいと思ったが(ロビーで役者に挨拶するだろう)、もっとメジャーなものだった。
リニアは駅前劇場ではない。

でも帰りにアンケートを書くところがあって、それはちょっと演劇っぽいなと思った。打ち上げで読んだりするのだろう。

未来の愛おしさ

僕の前に座っている子どもは、窓のシェード(飛行機と同じタイプ)が気に入ったらしく、ずっとそれを上下させていた。
リニアに乗ってそこか。

僕や年上の男性はモニターの写真をずっと撮っている。それに比べたら子どもは未来の扱いが雑である。未来に対する愛おしさが浮き彫りになってるなと思った。
実験線近くで見た貼り紙。100年ぐらいたったらおさるのリニアが出てほしい。
実験線近くで見た貼り紙。100年ぐらいたったらおさるのリニアが出てほしい。
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