特集 2016年10月25日

さけるチーズを漬ける

さけるチーズを漬けるだけのためにぬか床が我が家にやってきた
さけるチーズを漬けるだけのためにぬか床が我が家にやってきた
ご存知雪印の「さけるチーズ」。

公式サイトに、これをピクルスにするレシピがあった。

ピクルスといえばあれだ、漬物だろう。

チーズを漬けていいのか。

いろいろとやってみました。ど納得の結果が得られました。
東京生まれ、神奈川、埼玉育ち、東京在住。Web制作をしたり小さなバーで主に生ビールを出したりしていたが、流れ流れてデイリーポータルZの編集部員に。趣味はEDMとFX。(動画インタビュー)

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> 個人サイト まばたきをする体 Twitter @eatmorecakes

公式レシピは正座で見る

食品メーカーのサイトにある自社商品を使ったレシピページというのは、現代に清少納言がいたら「枕草子」に読み込むことまちがいなしの「をかし」案件だろう。

今後も長く語り継いでいかねばならないインターネットの良さのひとつであると思う。

なにって自社の商品の可能性を最大限にひろげることが使命であることで生じる無理くりさがたまらない。しかも無理くりなのに作ればちゃんと美味しいのもびびらされる。

かつては(もう10年以上前だが)カルピスの公式サイトにそうめんつゆに使うというレシピをみつけ試したこともあった(そしてそのご縁で公式レシピ開発の現場まで取材させてもらったこともあった)。
カルピスを使って作る商品試作会で見たちらし寿司!
カルピスを使って作る商品試作会で見たちらし寿司!
最近ではクリームチーズのKIRIの公式レシピも熱い。キリを冷奴にしている
冷奴にしたくなる気持ちは分かる
冷奴にしたくなる気持ちは分かる

さけるチーズのピクルス

おっといけねえ、公式レシピの話になるとつい前のめりになってしまうが今日は「さけるチーズ」だ。

さいて食べるというその時点ですでにトリッキーでありギミックは十分のこの商品。

それをさらに調理することにより形体変化させダメ押しの商品訴求をするのだ。チーズ業界の厳しさが垣間見え既に味わい深い。しかもそのレシピがピクルスときた。

漬けんのかい!

である。
言わずもがなですが、さけるチーズです。こんにちは。
言わずもがなですが、さけるチーズです
チーズ、漬けんのかい!

心の中の眠れるつっこみ役がここぞとばかりに目を覚まし勢いで写真をはさんで2度つっこんでしまった。

しかし日夜さけるチーズのことだけを考えているメーカー担当の方が本気で考えたレシピなのだ。まず不味いということはないのだろう。

疑いは1ミリも抱かずただ興味からまずは作ってみた。
白ワインビネガーに砂糖、塩コショウとローリエを鍋で煮立て、荒熱をとる
白ワインビネガーに砂糖、塩コショウとローリエを鍋で煮立て、荒熱をとる
ピクルス液を作ったら、あとはさけるチーズを漬け込んで冷蔵庫で冷やすだけだ。

ふつうのピクルスの作り方と同じであるが、さけるチーズの公式レシピは一般的なレシピよりも砂糖を多く使うようだ。

冷蔵庫で1時間以上おくとあるのでまずは1時間たったところで食べてみた。
1時間経過したものがこちらになります
1時間経過したものがこちらになります(公式にならい、裂かずにスライスしております)
あ、甘い。

「一般的なピクルスのレシピよりも砂糖を多く使ったピクルス」の味である。
いわばそのまんまなわけだが、違和感が一切ないのだ。

それでハッとした。そうだ、我々人類は「さけるチーズに味がある」という事態には慣れっこではないか。

さけるチーズといえば豊富なフレーバーラインナップである。
スーパーで安いとついライン買いする。去年「バター醤油味」が出たときは衝撃だった
スーパーで安いとついライン買いする。去年「バター醤油味」が出たときは衝撃だった
私がいま体験した味というのはまさに「さけるチーズピクルス味新発売!」の味そのものであったのだ。

そしたらぬかにも漬かってもらおうか

漬けるという手段でもってさけるチーズを自由にフレーバー展開させられことが分かってしまった。

となったらピクルス以外の漬け汁にも漬けねば死ねぬというのが人の道ではないか。

早速走って市販の漬け材をいろいろと買い集めてきた。
写真・いろいろ 自分で調味すればいい話なのだが市販品の頼もしさには勝てぬ
いろいろ自分で調味すればいい話なのだが市販品の頼もしさには勝てぬ
ピクルスがうまくいったときに一番食べてみたいと思ったのはやはり「さけるチーズ ぬか漬け味」である。
我が家にはぬか床がないので水とまぜるだけでインスタントにぬか床が作れる商品を用意した。
いつか買うときが来るだろうと思っていた「ぜいたく三昧」がいよいよ我が家に
いつか買うときが来るだろうと思っていた「ぜいたく三昧」がいよいよ我が家に
まぜたてのこ慣れない床ではあるが甘んじてさけるチーズには眠っていただきたい。
眠れさけるチーズよ
眠れさけるチーズよ
そのほかも家中の小ぶりタッパーをかき集めて漬けました
そのほかも家中の小ぶりタッパーをかき集めて漬けました

1時間経過

ここで、短時間の漬け込みで食べられる浅漬けから食べてみよう。

エバラ浅漬けのもと

「さけるチーズ エバラ浅漬けのもと味」ができたらなかなかの夢(寝てるときに見る方の)っぽいなと思ったのだが、さけるチーズ元来の味に浅漬けの素の味が負けてしまった感があった。
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味の方向性が「しょっぱい」一方向だったからか。
ただ、独特のだしの味は感じられるためエバラ浅漬けの素ファンにはぜひ試していただきたい。
あわ漬け

こちらも浅漬けの素。茨城の柴沼醤油醸造というメーカーが作っている。
浅漬けの素という体だが甘めの出汁醤油という感じで、ファンは何にでも使うようだ。
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茨城や栃木では有名らしく、以前うまいから! と友人に激推しされたのをカルディの棚で見つけて思い出した。

甘みがあるのでピクルス同様これもハマった。「これが今や大人気の『さけるチーズしょうゆ味』の誕生の瞬間だとは、このとき誰も気づかなかった…」というナレーションが入ってもさしつかえなかろう。
白キムチ

これもくくりとしては「浅漬けの素」。北杜食品の「浅漬けの素白キムチ」だ。
そもそも白キムチがそこそこの「誰やねん」なのにもかかわらず、いきなりそれでさけるチーズを漬けちゃう順序の逆さには目をつぶって欲しい。

ちなみに白キムチというのは唐辛子を使わずに作るマイルドなキムチとのことだそうだ。
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辛くてすっぱいのがキムチだが、辛さも酸っぱさも確かにマイルドで甘みが強い。さけるチーズにこのあんばいがドンピシャで合い甘辛くてかなりおいしくなった。

「さけるチーズキムチ味」ももはやこれでいいと思う。

半日経過

各種浅漬けの素による「さけるチーズ○○味」の大量生産にすっかり気をよくし、漬け時間のかかる部門を楽しみに早めに寝て早起きした。

ぬか漬け、西京漬けなど漬かるのに時間がかかりそうなものを起きぬけのぼさぼさ頭のまま食べていこう。
期待の朝
期待の朝
西京漬け

西京漬けの素、ではなく「西京漬けのたれ」という商品。この分かっている感じはさすがカルディの専売品である(カルディのロゴが入っていた)。
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切ってみると周りが透き通ってかなりかたくなっている。
あ、そうか。長時間漬けたことでさけるチーズ側の水分が抜けたのか。
なんかでかいお米っぽいなと思った
なんかでかいお米っぽいなと思った
これはさぞ西京漬け味だろうとおもいきや、味自体はあまり染みなかったようで結果として「さけるチーズ かため」という新製品が出来上がってしまった(それはそれでちょっとありそうな気もする)。

意外なところでハシゴを外されたが、デフォルトのさけるチーズがおいしいので心の和平は保たれたままである。

ぬか漬け

ぬか漬けの世界は奥深いと聞くが、われらが「ぜいたく三昧」の急ごしらえのぬか床はどこまでさけるチーズを漬込めるだろう。
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あ、すごい。ぬか漬けの味だ。

かたくなることもなく、ただぬか漬けの味になった。

ぬか漬けの味というか、ぬか漬けを食べたあとにさけるチーズを食べているような味わいである。合うか合わないかでいうと若干微妙な気もする。

しかし「ペプシあずき」があって「ガリガリくん ナポリタン味」があるこの世の中である。「さけるチーズ ぬか漬味」、十分打って出られるフレーバーだとは思う。

ただ、さけるチーズが本当にそのようなご乱心状態に陥ったとしたらそれには待ったをかけるのがわれわれさけるチーズファンの役目なのかなとも思う。消費に対しては常に冷静でいたい。

ピクル酢

公式レシピにのっとってすでにピクルスは試しているが、米酢を使った和風のピクルスの素があったのでこちらでも漬けてみた。
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さけるチーズはどうも半日以上酢漬けにはしないほうが良いらしい。
ぎゅっとかたくなるのはもちろん、食感がかなりボロボロしてしまった。

さけるチーズ○○味の自由は僕達の手の中

浅漬けも半日漬けて食べてみたがどれもかなりかたくなった
1時間後の段階で試食レポートしたあの浅漬けたちも半日漬けて食べてみたがどれもかなりかたくなった
かたくなったさけるチーズはさいたときによくしなって龍っぽくなる
かたくなったさけるチーズはさいたときによくしなって龍っぽくなる
全体的にみて、さけるチーズは1時間程度なんらかの濃い目の汁に漬け込むと「さけるチーズ ○○味」になっておいしいぞ、ということが分かった。

基本的に長時間漬けるとかたくなってしまう(特に酢系は早めに食べたほうがいい)が、ぬか漬は長く漬けてもそれほどかたくはならず、ぬか漬け味としてきちんと味わえた。

さけるチーズのフレーバーの自由がこんなにも手の中にあるとは思わなかった。

だって日々よぼよぼと生きていたら普通さけるチーズのフレーバーを自由に展開したい! なんて思わないだろう。

信じれば夢は叶うというのはおおむね嘘だ。しかし思いもよらず願いもしない夢がうっかり叶うのも現実である。

さけるチーズのぬか漬けはこのまま古漬になるまで漬け込んでみようと思う(今朝2日目のものを食べたが漬かりが進行しおいしかったです)。

完成した商品に手を加えるのにはちょっとしたもったいなさがある。が、さけるチーズの新しいフレーバーを作っているのだと思うと急になにに漬けるのにも許しを得たように思えた。

まるで覚えていないのだが、さけるチーズのプレーンは、1992年まで「塩味」として売られていたらしい

確かにしょっぱい。塩味である。しかし塩味としていまも売られていたとしたらいよいよそれをピクルスやぬか付けにしようとは思わなかっただろう。

「塩味」を「 (プレーン)味」ととらえることによりスキができ幅が広がったのだ。レッテルをはがすことにより自由度が高まるという話がさけるチーズに応用できるとは思わなかった。
明治が突如ぶつけてきたこちらもついでに今回食べてみた。さけるチーズよりマイルドな味でさき心地も柔らかかったです
明治が突如ぶつけてきたこちらもついでに今回食べてみた。さけるチーズよりマイルドな味でさき心地も柔らかかったです
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