特集 2016年12月22日

大垣のMakerFaireで変形する車椅子や小学生発明家に出会った

去る12月3、4日にOgaki Mini Maker Faireに行ってきた。

Maker Faireは電子工作やハンドクラフトなど、DIYなものづくりが好きな人たちが集まり、作ったものを展示してキャーキャー楽しむ、コミケのようなイベントである。

東京のMaker Faireはビッグサイトでやるほどの巨大なイベントだが、こちらは名前に"Mini"と付いているように規模は小さい。

しかし参加者の熱量はそのまま、ぎゅっと濃いイベントだった。
今回はその模様をお届けします。
1987年兵庫生まれ。会社員のかたわら、むだなものを作る活動をしています。難しい名字のせいで、家族が偽名で飲食店の予約をするのが悩みです。(動画インタビュー

前の記事:ガスター10の文字が飛び出す服を作る

> 個人サイト むだな ものを つくる

いきなり1/1装甲車がお出迎えする会場

まずは何といってもこれだ。
まずは何といってもこれだ。

紹介したい気持ちが先走っていきなり写真を出してしまった。
プラモデルを1/1で作る会さんの1/1装甲車である。

タミヤの1/35スケールのプラモデルを35倍して、1/1スケールで作ってしまったのである。
これがイベント会場にどーんと置いてある。
突然現れる装甲車。
突然現れる装甲車。

男の子のロマンの塊みたいな作品だが、これで終わらない。
なんとこれ、自走するのである。
コンバインのエンジンをバラして載せているのだ。
コンバインのエンジンをバラして載せているのだ。
シートも実際のシートを「元に」(そのまま載せてるわけではないのだ)手作りしている。
シートも実際のシートを「元に」(そのまま載せてるわけではないのだ)手作りしている。
小学生の僕だったら、雪が降ったときの犬のように喜んで庭を駆け回るところだ。

さらにさらに、オプションで後ろに砲台を付けて、ペットボトルロケットを砲弾のように発射出来ると言う。
実物を見たい!超見たい!
実物を見たい!超見たい!
これには来月で30歳になる僕も庭を駆け回ってしまった。

なんでもペットボトルロケットに詳しいおじさんが、出来るよ!といって作ってくれたらしい。

面白がって人が集まり、そうして出来たコミュニティの中でものを作るという、Makerの教科書のようなお手本だ。
1/1プラモデルに乗り込む人、ということで自分の1/1パネルを用意している。この徹底ぶりよ。
1/1プラモデルに乗り込む人、ということで自分の1/1パネルを用意している。この徹底ぶりよ。
当サイトのYouTubeのように見えるファイルをいたく気に入って貼っていた。要素の多い写真だ。

この装甲車、なんと岐阜の自宅に保管しているそうだ。
なかなか東京ではやりづらいことだ。狭さはクリエイティビティの敵なのではないか。

茨城県の大洗(戦車と女の子が出てくるアニメの聖地だ)までこの装甲車を持って行き、コスプレーヤーの女の子に囲まれたとのことだ。役得である。

ワンフェスへ出展するそうなので、興味がある方は見てほしい。みんなで庭を駆け回ろう。

1作品の紹介で1ページ使ってしまったが、まだまだ続きます。
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機構がすてきな作品

スピログラフという、歯車に空いた穴にペンを刺してぐるぐる回すときれいな模様が出来る、文具とおもちゃの中間みたいなやつがある。

あれをおしゃれにしたのがインスタ部さんのLEDスピログラフだ。
ペンの代わりにLEDが付いていて、下にあるハンドルをぐるぐる回す。
結構勢い良く回す。
結構勢い良く回す。
星空を撮るときのようにシャッタースピードを遅くしたカメラで撮影すると、こういう画像が出来上がる。
きれい!
きれい!

LEDの色を自由に変えられるので、元のよりもカラフルな画像が出来る。

木で出来た歯車もかわいい。
木で出来た歯車もかわいい。
Pロボ204さんのExo-Wheelは、一見車いすである。
何かガチャガチャ付いてはいるが。
何かガチャガチャ付いてはいるが。

ところがレバーをガチャッと引くと、変形するのである。

AKIRAの金田バイクのように前に開く。
AKIRAの金田バイクのように前に開く。
変形してどうなるかというと、前輪が浮いて代わりに中にあったローラーブレードが接地する。
乗っている人がスキーのように右に左に足を傾けると、そちらへ曲がることが出来るのだ。

説明が難しいので、動画をご覧ください。
僕がひたすら楽しんでいる動画。
手元のレバーで前進と後退を操作し、方向は自分の足で決める。この操作が楽しい!

うっかり足を開くと股裂きになるという罠があるが、この自分で操作してる感がたまらない。

ところでものづくり界隈ではとんでもない技術力に対して「変態」というほめ言葉がある。
ものすごい動き方をする機構や、常人では作れないようなプログラムに対して、変態だー!と言ったりする。最大級の賛辞である。

で、このExo-Wheel、なんと設計図なしで作られたそうなのだ。

あのレバーを引くだけで変形する機構が!
筐体にキレイに収まっているあの機構が!
設計図なしで…!変態だ!

設計図なしで作るという点では当サイトの工作記事でもほとんどがそうだが、これはもちろんクオリティが段違いである。
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細かい展示もすごい

大物を紹介したので、今度は逆に細かい作品も紹介しよう。

強力替え芯工房さんの替え芯ケース改造は、その名の通りシャーペンの替え芯ケースを改造した作品だ。
芯を出そうとすると、中のLEDが光る!
芯を出そうとすると、中のLEDが光る!
細かい電子工作界隈ではフリスクのケースを改造する、というものがいちジャンルとしてあるのだが、このシャー芯ケースはさらに小さい。
中に入れるスイッチの種類を試行錯誤して、いい感じにオンオフが出来るものを見つけたそうだ。

しかし強力替え芯工房さんには申し訳ないが、絵面がすごく地味なのだ。
傍目には机にシャー芯ケースが置いてあるだけにしか見えない。
バージョンが若干違ったり、ブザーが埋め込まれていて音が鳴ったりする。
バージョンが若干違ったり、ブザーが埋め込まれていて音が鳴ったりする。
だが、その小さなスペースに大きなこだわりが詰め込まれている。そういうこだわりを聞くのもとても面白いじゃないですか(机ドン)!

わかりやすく「こまかーい!」と驚けるのが、@kimino_kosakaさんのMessage in a Bottleだ。
ボトルシップの中にある帆船の代わりに、ドットマトリクスLEDという電光掲示板に使われるようなLEDを詰め込んだ。
ビンの中でLEDが光り輝く。
ビンの中でLEDが光り輝く。
「ビンに入れた手紙」のように、SOSと光りながら波に揺られることも出来る。
「ビンに入れた手紙」のように、SOSと光りながら波に揺られることも出来る。
すごいのは先を曲げた半田ごてを使って、実際のボトルシップよろしくビンの中で作業しているのだ。
細かい、これは細かい。
こんなの出来る気がしないぞ…!
こんなの出来る気がしないぞ…!

工作機械萌えな人に是非見てほしいのは、Yara:Makersさんの旋盤型鉛筆削りである。

この造形!
この造形!
鉛筆、回ってます。削られてます。
鉛筆、回ってます。削られてます。

旋盤は金属の棒材を削る機械なので、ミニサイズを作って鉛筆削りにしてしまったのだ。
かっこいいしかわいい。学校のテストに持っていって、おもむろに鉛筆を削りたい。
ただし削る専門の機械なので、ものすごい角度で削れる。
ただし削る専門の機械なので、ものすごい角度で削れる。

おもしろ工作の行商人たち

東京の会場だと見に来る人たちでごった返すが、ここ大垣の会場はまだゆったりしている(もちろん見に来る人は多いですが!)。
すると展示している人たちが隙をみて他の展示を見るついでに自分たちの作品を見せにくるのだ。

そんなおもしろ工作の行商人たちに出会えるのも実際に会場へ見に来る醍醐味のひとつだ。
名刺がネクタイから出てくる。
名刺がネクタイから出てくる。
GPS内蔵の傘が目的地の方向に倒れて誘導してくれる「カサナビ」という作品。(カサネタリウムさん)
GPS内蔵の傘が目的地の方向に倒れて誘導してくれる「カサナビ」という作品。(カサネタリウムさん)
そこらじゅうを歩き回っていたガイコツ。作品名は「前骨格ロボット」でかっこいい。(create_clockさん)
そこらじゅうを歩き回っていたガイコツ。作品名は「前骨格ロボット」でかっこいい。(create_clockさん)
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遭遇、小学生発明家

大人が多いブースの中で、1人の小学生に出会った。
小学5年生の平野正太郎さんだ。

なんでも正太郎くん(と、親しみを込めて呼びたい)は2年生でプログラミングを触り、3年生でArduinoを使って電子工作をするようになったそうなのだ。
彼が正太郎くん。これまでに作った作品を展示している。
彼が正太郎くん。これまでに作った作品を展示している。
例えば、これは「わくわくクイズマシン」。
クイズのカードを挿して、番号のボタンを押すと正解か教えてくれる。
スピーカーが入っていて、ピンポンとかブーとか鳴っている。
スピーカーが入っていて、ピンポンとかブーとか鳴っている。

それから、シャクトリムシの動きで進むロボ。
前に距離センサーが入っていて、障害物があると下がるようになっている。
音ゲーもある。これはすごいですよ。
もう見た目がしっかりしている。
もう見た目がしっかりしている。
上から落ちてくるマークに合わせてボタンを押すのだが、ちゃんとピアノの音が鳴るようになっているし、遊ぶ度に落ちてくる場所がランダムになっている。
間違えた回数をインジケーターで表すようにもなっていて、しっかり遊べるのだ。
実際に遊ぶ様子。僕のリズム感のなさが露呈している。

それにしても正太郎くんは説明がうまい。
すごく楽しそうに説明してくれるので、すっかり彼のファンになってしまった。

最新作は「火星に文明を起こそう」。急に文章になった。
これです。どうなるかは動画を!
これです。どうなるかは動画を!
彼のストーリーテリングに注目してほしい!

火星にロケットが着陸して、文明が誕生するまでが描かれた作品だ。
一気にワッと出てくるところが気持ちいい。
バネを押さえていて、タイミングが来たらモーターを動かして開放している。
バネを押さえていて、タイミングが来たらモーターを動かして開放している。
回路の設計図。線の密度がすごい。
回路の設計図。線の密度がすごい。
会場の中でも展示作品の数は一番多かったんじゃないだろうか。
2年で9作品も作ったとのことで、これからどんなものを作ってくれるのか本当に楽しみだ。
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あんまり東京ではやれないものも

東京ではあまり見なくなった展示も出されていた。
その一つがテスラコイルである。
簡単にいうと、高い電圧により電気がバリバリになる装置だ(雑すぎて説明になっていない)。
簡単にいうと、高い電圧により電気がバリバリになる装置だ(雑すぎて説明になっていない)。

FET_ELさんが大きいテスラコイルを、dominoTECHさんが小さいテスラコイルを出展していた。

dominoTECHさん。フロッピーディスク男になっているのは、フロッピードライブを制御して曲を演奏する展示をメインで出していたからだ。この人、テスラコイルをおまけで出しているぞ!
dominoTECHさん。フロッピーディスク男になっているのは、フロッピードライブを制御して曲を演奏する展示をメインで出していたからだ。この人、テスラコイルをおまけで出しているぞ!
放電するときに出る音をうまいこと調整して、曲を演奏することも出来る。
それから、蛍光灯を近づけると光らせる性質があるので、こんな展示をしていた。
テスラコイルでスターウォーズ。蛍光灯がライトセーバーに!
かっこいい!
他にも電球やナトリウムランプ(高速道路のトンネルに使われたりする明かりだ)を近づけたり、色々見せてもらった。
こう火花がバーって出るのがかっこいいですよね。この僕の表現力ったらない。
こう火花がバーって出るのがかっこいいですよね。この僕の表現力ったらない。
お二人には懇親会で「高圧電線の下に蛍光灯持っていったら光るんですよ」「尼崎にいい高圧の電線がある」「雪国で山の方だと高圧電線が低いところにあるんでいいですよ」「石英や氷砂糖に圧力をかけると光るんですよ」とすごく濃い、いい話をしていただいて本当に楽しい時間を過ごすことが出来た。

人生で一番高圧電線や発光についての話を聞いた瞬間だった。ありがとうございます。

最後におなじみデカ顔です

そうそう、デイリーポータルZで何をしたかを紹介し忘れていました。

まずはライターさくらいさんから「心拍に合わせて動く心臓」。
さくらいさんは外科医の格好だった。術後でしょうか。
さくらいさんは外科医の格好だった。術後でしょうか。
「いま私の心臓触ってますよ!」と心臓を触らせるさくらいさん。みんな「あぁ~」とどういう感情か測りづらい返答をしていた。
「いま私の心臓触ってますよ!」と心臓を触らせるさくらいさん。みんな「あぁ~」とどういう感情か測りづらい返答をしていた。
ガスター10をさくらいさんに着けてもらった。要素が多い写真である。
ガスター10をさくらいさんに着けてもらった。要素が多い写真である。
べつやくさんはUFOにさらわれ体験、林さんはデカ顔の展示で今回も大盛り上がりであった。

デカ顔はタイのチェンマイ、さらに中国の成都でも同時にやっていて、なんと3カ国同時デカ顔開催であった。
みんなさらわれるのがうまい(ガイコツを含む)。
デカ顔は今回も大人気で、このまま全国民一度は
デカ顔は今回も大人気で、このまま全国民一度は
顔をデカくした方がいいんじゃないかと思わされる。
顔をデカくした方がいいんじゃないかと思わされる。
このデカ顔は…あれ?
このデカ顔は…あれ?
最後のデカ顔はいやにリアルだ。

デイリーブースの隣で出展していた、ダンボールアーティストのいわいともひささんの作品である。
ワークショップ用に同じようなデカ顔を作った、テクノ手芸部の吉田さんと林さんがその出来栄えを絶賛していた。

デカ顔を体験する人だけでなく作る人の輪も広がった。
このままデカ顔コミュニティが世界を制圧する日も近いかもしれない。
耳があるのがすごい!細かい!と言っていた。
耳があるのがすごい!細かい!と言っていた。

まったりと濃い、大垣

大垣のMaker Faireに念願叶って行くことが出来た。
東京のように大きい会場ではないが、逆にそれがまったりとした空気感を醸し出していてとても居心地が良かった。
一方で展示している作品は濃いものが多くて、そのギャップが面白い。

広い会場でバリエーション豊かな東京、まったりと濃い大垣と会場によってイベントの表情が違うのも楽しい。
この違いを楽しむために、来年も両方行ってみたい。
目を離した隙にいわいさん作のかっこいいダンボール像がガスター10仕様になっていた。
目を離した隙にいわいさん作のかっこいいダンボール像がガスター10仕様になっていた。
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