特集 2017年1月5日

今年の抱負を看板にする

趣味としての看板作りです!
趣味としての看板作りです!
4年前、会社をクビになった。

そもそもその会社にはいづらかったのだが、そのときやっていた仕事がアクリル板とカッティングシートを使った看板作りで、それ自体は楽しかった気がする。

今趣味として看板を作ってみたい。
1986年埼玉生まれ、埼玉育ち。大学ではコミュニケーション論を学ぶ。しかし社会に出るためのコミュニケーション力は養えず悲しむ。インドに行ったことがある。NHKのドラマに出たことがある(エキストラで)。(動画インタビュー)

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看板を作っていたらクビになった

会社をクビになった話は以前書いた。看板を作っていたらクビになったという話だ。(『僕がクビになった日』)
クビになった日の記念写真
クビになった日の記念写真
入社してふつうの事務とかをするのが仕事だったはずなのだが、年があけたころ会社の看板を新調するということになって、それを作る作業を手伝った。本来業者に頼むべき仕事である。しかしやってみると意外と楽しい。看板は何枚かあったので1週間くらいやってただろうか。そうしたら、ある日偉い人に呼び出された。

「君には社会人として必要なあいさつとコミュニケーションが足りない」と言われてクビになった。熱心に看板を作っていたことについては「もっと他にやることがあっただろう」と。入社して2ヶ月半くらいの話である。社会って難易度高いな、と思った。
過日、冷やかしに会社を見に行ったら看板はまだ使われていた。
過日、冷やかしに会社を見に行ったら看板はまだ使われていた。
言われたことをやっていたのに、「やっぱりそうじゃない」とひどい扱いをうけることを「看板を作る」というのはどうか。現代の故事成語として。

看板作りはたのしいかもしれない

しかし問題は細分化しなければならない。あの会社については今もネガティブな気持ちがあるが、看板を作るのは楽しかった。看板に罪はない。

ではいまやってみよう、というのが今回の話である。趣味としての看板作りだ。
材料をホームセンターで買ってきた。基本的に適当なサイズのアクリル板とカッティングシートがあればできる。
材料をホームセンターで買ってきた。基本的に適当なサイズのアクリル板とカッティングシートがあればできる。
320mm×215mmのお手頃なサイズにした。あまり大きすぎても設置する場所がないし、持て余してしまう。何より大きすぎると手間がかかりすぎて苦痛だろう。趣味はほどほどが大切である。

まずアクリル板にカッティングシートを貼っていく。
水で50倍くらいに薄めた中性洗剤を霧吹きで吹きかける。乾いたまま貼る方法もあるが、それだと綺麗に貼るのに神経を使うのでこうした方がいいと思う
水で50倍くらいに薄めた中性洗剤を霧吹きで吹きかける。乾いたまま貼る方法もあるが、それだと綺麗に貼るのに神経を使うのでこうした方がいいと思う
カッティングシートの粘着面にも液を吹きかける。画像が壊れているが、これはなんらかの呪いである。
カッティングシートの粘着面にも液を吹きかける。画像が壊れているが、これはなんらかの呪いである。
位置を調整して、硬いカードで水を抜いていけばぴったり貼れる。
位置を調整して、硬いカードで水を抜いていけばぴったり貼れる。
ちなみに使っているカードは定期のSuicaなので割れると一大事である。なんのカードでもいいが、こういうスリルを楽しむのも一興だ。
きれいに貼れた。
きれいに貼れた。
ここまでは下準備のようなものだ。ここからが看板作りの楽しいところ。

文字を切り抜くのが看板作りの真骨頂

文字を切り抜いていく。架空の会社の看板を作ることにしよう。社名は社会人にとって必要な要素を取り入れて「株式会社あいさつ&コミュニケーションズ」とした。
なんの会社なのかはわからない
なんの会社なのかはわからない
デザインカッターでクリクリと切り抜いていく
デザインカッターでクリクリと切り抜いていく
そういえば、会社で看板作りを一緒にやっていた新人の同僚が、デザインカッターをはじめて使ったらしく「これすごい切りやすいですね、感動しました!」とか言っていて、こいつものを知らないなと思ったものである。一方ぼくはその直後にクビになるのを知らなかった。
あー、いい
あー、いい
それはそれとして、切り文字のちまちました作業は無心になれていい。わくわくする楽しさとはちがうが、落ち着いた気持ちになれる。
できた
できた
完成した看板を持って外に出てみる。適当なところに貼り付けてみよう。
株式会社 あいさつ&コミュニケーションズです
株式会社 あいさつ&コミュニケーションズです
電柱に貼っても
電柱に貼っても
木に貼っても会社
木に貼っても会社
看板を持ち歩けば世界じゅうが会社になる。それがなんなのだと言われると答えに窮するが、ふんわりとした独特の権力感を味わうことが可能である。

光らせよう

いまいち迫力が足りない。これなら画用紙を切り貼りして作ったものとあまり変わりがない。

光らせよう。アクリル板を貼り合わせた箱に、LEDテープというものを敷いて光らせることにした。
車などを装飾するのに使われるLEDテープ
車などを装飾するのに使われるLEDテープ
LEDテープ用のコネクタをつなげる
LEDテープ用のコネクタをつなげる
LEDテープ自体が既に珍しいのだが、さらに「LEDテープを電池につなげるためのコネクタ」という部品が売られていた。はんだ付けをしないでもLEDテープを電源に繋げられる便利なグッズだ。世の中はぼくがしらない専用パーツであふれている(そしてAmazonで売っている)。

さきほど作った看板で箱にフタをして、スイッチを入れる。
光った。
光った。
周囲が暗いと看板だけ明るい写真になってしまって何がなんだかわからなかったので、電灯があって夜でもある程度明るい公園にやってきた。
!
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公園の地面に適当に置いてみたら、禍々しさだけが際立った結果になった。しかし看板自体はなかなかのものである。看板作りの才能もついえていないようだ。なかなか楽しいぞ看板作り。

次ページでは、もう少しちがうバリエーションも試してみよう。
いったん広告です

文字を大きく

試しに作ったのもなかなかの具合だったが、もとのサイズが小さかったのもあって少々文字が読みづらい。これではいまいち満足感がえられない。

満足感がえられないのは趣味としてどうだろう、ということでもうすこし字を大きくしてみたい。本来なら看板自体のサイズを大きくすべきだが、アクリル板がけっこう高い。大きいのはもう少しおとなになってからだ。

新年を祝う「賀正」を看板にしよう。とりあえず板に何か書けば看板だろう。ただ祝う看板である。
同様にしてつくっていく
同様にしてつくっていく
シートを貼る工程、切り抜く工程、ペリペリと剥がす工程、どれも工作としてちょうどいい難易度で楽しい。これはハマる。

会社で働いていた当時、ささくれだった心が看板を作っているときだけは安らいだのを思い出す。看板を新しくしたところで業績が上がるわけでもないのだが。思考を麻痺させる軽い毒なのかもしれない。
文字が大きいと剥がすところが大胆にできて気持ちがいい
文字が大きいと剥がすところが大胆にできて気持ちがいい
2文字だと作業もすぐ終わる。剥がす肯定も気持ちよかったり、いいことづくめだ。看板作り初心者は大きい2文字から始めるのがいいだろう。
あけましておめでとうございます。
あけましておめでとうございます。
異常なめでたさがある。ある程度の大きさがあると、めでたさは加速するのだ。

これだけだと地味なのでやっぱり光らせてみよう。
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めでたさよ。創英角ポップ体の妙な安定感には感服するところがある。離れてみたり近づいてみたりしたが、距離にかかわらずそのめでたさは一定だった。

今年の抱負を看板に

さて年初なので今年の抱負でも看板にしてみよう。抱負なんて来月にはもう忘れてそうなものだが、看板にすることで深く心に刻まれる効果が期待できる。
今年の抱負は「快楽」
今年の抱負は「快楽」
去年も楽しい一年だったが、今年はもっと快楽を味わいたい。1日何時間寝るのがベスト快楽だとか、利己心と利他心の快楽的バランスだとか、とにかく快楽を中心にして生きていくにはどうしたらいいかばっかり考えて過ごすのが今年の目標だ。不断の快楽的努力をしたい。
いったん書いた文字を看板にした。
いったん書いた文字を看板にした。
いまいち抱負っぽさがない。
いまいち抱負っぽさがない。
部屋に飾ってみた。手書きの文字が下手だからだろうか、すでにこの抱負でよかったのかなという気分になってくる。夜中に考えたのもよくなかったかもしれない。2017年はまだ360日以上残っているというのに。

例によって、いろいろなところに貼ったり光らせたりしてみよう。なんとかなるかもしれない。
快楽公園
快楽公園
快楽電話
快楽電話
快楽の滑り台
快楽の滑り台
今年も頑張ります
今年も頑張ります
ますます抱負らしくない。深夜1時、ややホラーみのある満足感だけがそこにあった。

光らせよう

そこまで難しくないのに「できあがった!」という達成感がある。手軽に自己信頼を鼓舞させるアクティビティである。

さらに光らせると満足度が格段にアップした。人間には光らせる快楽というものがあるのかもしれない。今年はいろいろなものを光らせていきたい。抱負なので。
デイリーポータルZ友の会会員制スナックの看板もつくった。(イベント情報はこちら)
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