特集 2017年7月12日

香港で5種類のカレーを食べ歩いてみた

ジェットスターのセールチケットで香港に行ってカレーばっかり食べてきた話です
ジェットスターのセールチケットで香港に行ってカレーばっかり食べてきた話です
カレー摂取量が多いほうだ。月曜日から金曜日までカレーを食べていることもある。だが、香港でもカレーばかり食べるのはアリなんだろうか。他にも、食べておいたほうがよいものって沢山あるんじゃないだろうか。

そう思いつつも、5食分のカレーを食べ歩いてみた。
1981年群馬県生まれ。ライター兼イラストレーター。飲食物全般がだいたい好きだという、ざっくりとした見解で生きています。とくに好きなのはカレー。(動画インタビュー)

前の記事:静岡県吉原駅近くのスーパー「オカムラ」のあじ丼がうまい

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カレーは野菜とスパイスだけで完全体になれる

いちばん好感度が高かったカレーから話をすすめていきたい。
5軒目、飛行機に乗る直前に食べたカレーだ。
じゃがいものカレー。構成要素が、じゃがいも・スパイス・たまねぎしかない
じゃがいものカレー。構成要素が、じゃがいも・スパイス・たまねぎしかない
香港にはカレーがわりとあるらしいぞというのは入国前に確認していた。旅先に好物があるか確認したくて「香港 カレー」でグーグル検索をかけたのか、香港を調べていた時にサジェストででてきたのか。詳細は忘れてしまったのだが、インターネットが教えてくれた。

実際に訪れてみて、たしかに他の東アジア圏(中国、韓国、台湾、モンゴル)と比べて、格段にカレー遭遇率は高いと感じている。東京都内の磯丸水産くらいはあったんじゃないか。

この日も、グーグルマップでカレー屋を探して、店舗情報に紐づいているレビューを見ていたところ、不審な日本語の羅列が飛び込んできた。
「子羊が起動するように」「カレーソースは鼻水」
「子羊が起動するように」「カレーソースは鼻水」
事実をより混沌とさせている翻訳機能に心を駆り立てられてしまう。
レビューの読解はできなかったが、泊まったドミトリーの近辺にカレー屋が複数あるのはわかった
レビューの読解はできなかったが、泊まったドミトリーの近辺にカレー屋が複数あるのはわかった
この店はまだ開店前
この店はまだ開店前
さらに3分くらい歩いた先にもカレー屋
さらに3分くらい歩いた先にもカレー屋
ほの暗いが営業している
ほの暗いが営業している
正午前の店内は閑散
正午前の店内は閑散
直立のメニュー
直立のメニュー
けちって最安値の「じゃがいもカレー」を頼んだ直後に、てんこもりのお肉を発見してしまった
けちって最安値の「じゃがいもカレー」を頼んだ直後に、てんこもりのお肉を発見してしまった
しまった。肉の入ったカレー頼めばよかったのでは
しまった。肉の入ったカレー頼めばよかったのでは
と、やや後悔しかけたところでカレーが到着した。やはりお肉は見当たらない
と、やや後悔しかけたところでカレーが到着した。やはりお肉は見当たらない
だが口にしたら、あっという間に肉のことがどうでもよくなってしまった。カレーは肉、いや、たんぱく質がなくても完全体になれるとわかったのだ。もしかしたら豚汁も、豚肉がなくても成立するのかもしれない。

タマネギはカレー液をどろっとさせる担当ではなく、しゃきっとした食感を担当している。キリっとしていて、いつものたまねぎよりちょっとかっこいい。
知ってる食材同士が知らない世界を形成している。噛むのが楽しい
知ってる食材同士が知らない世界を形成している。噛むのが楽しい
自分の美味いって表情が祖母の顔によく似ていると感じた写真
自分の美味いって表情が祖母の顔によく似ていると感じた写真
下方に鎮座するじゃがいもが満腹への危機感をあおる
下方に鎮座するじゃがいもが満腹への危機感をあおる
食べごたえがある。写真に撮り忘れているが、ここにはお茶碗2杯分くらいの白米も同席している。白米を見る目をすこし細めてしまいたい。ああ、なんて幸せな悩みなんだ。

だけどこのカレーに行き着くまでにはすこし紆余曲折があった。
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形容の仕方に悩むセブンイレブンのカレー

飛行機から降り立って最初に見つけたのはセブンイレブンのカレーだ。
香港、セブンイレブンが多い
香港、セブンイレブンが多い
おそらくカレー
おそらくカレー
いちばんパッケージが好みだったやつを購入
いちばんパッケージが好みだったやつを購入
電子レンジ、800Wなのかー
電子レンジ、800Wなのかー
具は全体的にでかい。液はスープカレーのようにさらっとしている
具は全体的にでかい。液はスープカレーのようにさらっとしている
味は日本のカレーともインドのカレーともちがう。ややムリヤリに「しいて言えば真ん中?」と思っていたのだが、香港のカレーはマレーシア風なことも多いらしい。まんざら間違いでもなかったということにしておこう。

肝心なうまいかどうかなのだが、なんともよくわからない。
わかったことは、香港のプラスチックのスプーンがとても小さいということ
わかったことは、香港のプラスチックのスプーンがとても小さいということ
ただ今後、おにぎりかこれかどちらか選べと言われたら、わたしはおにぎりを選ぶかもしれない。

ちなみに、そのころ日本ではスープストック東京でじゃっかん狂ったカレー祭りが開催されていた。最大3つのカレーが同時に食べられるのと引き換えにスープたちが姿を消したのだという。最高すぎないかそれ。自分が留守にしていただけなのであれなんだが、近いうちにまたやってほしい。

お粥のお店でカレー麺を食べて疎外感を感じる

翌日は、スープストックに行けない悲しみを乗り越えるために朝からカレーを食べる決意を固めていた。
「弥敦粥面家」カレーのかかった麺があるようだと知り、お粥の専門店にやってきた
「弥敦粥面家」カレーのかかった麺があるようだと知り、お粥の専門店にやってきた
わりと有名店なうえに朝なので、お粥を頼む人が9割強
わりと有名店なうえに朝なので、お粥を頼む人が9割強
強い心でカレーのかかった麺を頼んだ。が、来たのはカレーがかかっていない麺。伝達能力が足りなかったらしい
強い心でカレーのかかった麺を頼んだ。が、来たのはカレーがかかっていない麺。伝達能力が足りなかったらしい
しゅるしゅると心が弱りはじめ、ちゃんと言った方がいいかあきらめるかを悩みながら3分の1くらいを食べたあたりで決意を固めた。あきらめちゃだめだ。
口頭で伝える自信のなさをグーグル翻訳にたくす
口頭で伝える自信のなさをグーグル翻訳にたくす
ルーが単体で登場した
ルーが単体で登場した
どわっと放流
どわっと放流
味はちょっとしょっぱみが強い印象だ。スパイスとはちがう部分で風味が強い。ああ、どうしようちょっとお粥が食べたくなる。優しい口当たりで塩分を相殺したいのだ。でも、もうこれ以上はお腹にキャパが見当たらない。うーん。
こらえきれず次の日の夜に粥を食べにいったら美味すぎでした
こらえきれず次の日の夜に粥を食べにいったら美味すぎでした
粥のお店では、周りの空気に流されて粥を食うのがまちがいないことがよくわかりました。

インスタ映えしそうな店のカレーが白い猿のようだ

香港には「茶餐廳(ちゃさんちょう)」という軽食と喫茶をかねた施設がある。定番メニューとしてカレーが置かれていることも多いらしい。
茶餐廳の老舗「美都餐室」
茶餐廳の老舗「美都餐室」
なるべく2階にお客さんを入れ込む方式らしく、1階はがらがら
なるべく2階にお客さんを入れ込む方式らしく、1階はがらがら
カメラを向けるたびに良い表情をする店
カメラを向けるたびに良い表情をする店
いちいち良い
いちいち良い
壁のタイルもたまらん
壁のタイルもたまらん
とはいえ、意図的におしゃれにしようとは思ってない雑然さを感じる
とはいえ、意図的におしゃれにしようとは思ってない雑然さを感じる
静止画だとわかりづらいが、2階はかなり賑やか
静止画だとわかりづらいが、2階はかなり賑やか
イオンのフードコートのテンションでお客さんが集まっている
イオンのフードコートのテンションでお客さんが集まっている
メニューの多さよ。裏もびっしり
メニューの多さよ。裏もびっしり
牛タンカレーがいらっしゃいました
牛タンカレーがいらっしゃいました
白米の無造作感
白米の無造作感
カレー以上にタンの主張が強い。1センチ以上は厚みのある牛の舌が5枚か6枚。噛んでいるだけで満腹中枢がやられていく
カレー以上にタンの主張が強い。1センチ以上は厚みのある牛の舌が5枚か6枚。噛んでいるだけで満腹中枢がやられていく
たまねぎやじゃがいもは口にすると「しゃり」っという予想外の反応をしめしてくる。
…………… えっ
…………… えっ
すごいカレーに出会ってしまった。おいしくないカレーって、実験でやらかした時以外にはまだ遭遇してなかった。白い猿のように、めずらしい生き物を見るような目で見つめていたい。ついに出会ってしまったという感慨すらある。
ちなみに、ここで飲んだ「檸檬珈琲」はうまかったです
ちなみに、ここで飲んだ「檸檬珈琲」はうまかったです
コーヒーにレモンの輪切りが3つも。香港やロシアの飲み方らしい
コーヒーにレモンの輪切りが3つも。香港やロシアの飲み方らしい
味もそのまんまコーヒーにレモン汁が混入しましたって感じなんだが、わりと違和感なく飲めてしまった
味もそのまんまコーヒーにレモン汁が混入しましたって感じなんだが、わりと違和感なく飲めてしまった
今後コーヒーと紅茶を取り違えて、コーヒーにレモンをぶっこむ事態があったとしても悲しむ必要はない。むしろ、積極的に取り組みたい飲み方である。東京全土に伝染してくれないだろうか。

重慶マンションのカレーをテイクアウトした

体験としての希少性と言ってはみたものの、そろそろ美味いカレーが食べたい。
重慶(チョンチン)マンション。インドカレーが豊富らしい。世界各国からバックパッカーが集う場所としても知られている
重慶(チョンチン)マンション。インドカレーが豊富らしい。世界各国からバックパッカーが集う場所としても知られている
ブッキングコムで香港のホテルを安い順で見ていくと、住所がこのマンションになっていることは多い。『深夜特急』にも出てくる(深夜特急、読んだことないのだけど)。わりと危険地帯だという説も複数見た。「女性は一人で行かないほうが」ともインターネットに書いてあるのを読んだが、わたしはあいにく一人旅なので同行者がいない。
万が一の時を考えて「とりあえず1階だけ覗く」って決めて、なるべく貧乏そうな見た目になるべく便所サンダルを装着した
万が一の時を考えて「とりあえず1階だけ覗く」って決めて、なるべく貧乏そうな見た目になるべく便所サンダルを装着した
中野ブロードウェイの地下一階とか、ニュー新橋ビルの上方の階に行った時のような空気の詰まり具合。窓がほしい
中野ブロードウェイの地下一階とか、ニュー新橋ビルの上方の階に行った時のような空気の詰まり具合。窓がほしい
そこら中のお惣菜がインド
そこら中のお惣菜がインド
単独行動じゃないが、立ち食いしている女子はいた
単独行動じゃないが、立ち食いしている女子はいた
美味そうなカレーと目が合う
美味そうなカレーと目が合う
イートインもあったが、食べ終わるまでここにいるのがちょっとこわくて、持ち帰ったら液もれが発生
イートインもあったが、食べ終わるまでここにいるのがちょっとこわくて、持ち帰ったら液もれが発生
吉牛や松屋の牛丼を、テイクアウト一択で家で食べるという行動が今までよくわかってなかったのだが、ちょっと理解が進んだ気がした。

その場で食べたくなければ、食べたい場所まで自分で運べばいい。
上方がきみどり色のやつはペットボトルの水
上方がきみどり色のやつはペットボトルの水
骨付きチキンのカレーです
骨付きチキンのカレーです
米が長い
米が長い
スパイスが体に効いてきてかーっと熱い。ああそうだ。これが本気のカレー!

食べ物は勝ち負けではないと思っているが、はっきり白黒つけるのなら2勝3敗が今回のスコアなんだろう。完全に個人の感想だが、アップダウンが激しいと、反動でカレーを食べるのが止まらなくなるみたいだ。この旅行以来、カレー熱の上昇が止まらない。

飛行機に乗り遅れた

ところで、最初に書いたカレーを食べた後すぐ空港へ向かったのだが、うっかり飛行機に乗り遅れてしまった。せっかくジェットスターのセールで手に入れたチケットは無効である。つまりあのカレー、飛行機代を含めると20000円を超えてしまうが、すぎたことは仕方がない。飲み会の帰りにうっかり電車を降りすごして、高尾まで行ってしまったんだと思ってさくっとあきらめたい。

心のダメージが最小にすんだのは、カレーが美味かったからだと信じている。この1ヶ月で何回も「一体なにがどうなってそうなってしまったんだ……」と困惑が止まらなくなるカレーに出会えたことは、たぶんあと10年くらいは忘れないんじゃないかと思う。(ちなみに、昨日公開の江ノ島さんの記事でも困惑のカレーを食べています)
バーモントだけカレールーが売ってた
バーモントだけカレールーが売ってた
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