特集 2017年7月16日

書き出し小説大賞 第126回秀作発表

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書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)
雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。 著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。

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いちいち謝るのも逆に失礼かと思いますが、申し訳ございません!先週更新をまたも飛ばしてしまい一週遅れとなってしまいました書き出し小説。老化です明らかに……。実は最近無事四十肩デビューし腕の可動範囲が著しく制限されています。地味に辛いです四十肩。カレンダーをめくる、棚から美少女フィギュアを取る、パンツを被るなど、思いもよらぬ動作に激痛が走りその場にうずくまる状態。しかしかような痛みもみなさまからの天罰と受け止め、さらに精進を重ねる所存です。平にご容赦を!
それでは今回もめくるめく書き出しの世界へご案内させていただきます。

書き出し自由部門

昨日から来たオレは日めくりをめくると消えてしまった。
ヘリコプター
回顧展で元カノに会う。
あや幹部
影が動き、身体はそれに服従した。
kwsk
夕暮れどきのバスの中に現実と夢の境界線はある。
もんぜん
降りそうで降らない曇りの日曜、本も持たず喫茶店に入った。
井沢
どこで切っても金太郎だが、次第に表情が歪んでいく。
紀野珍
海女が荷台で運ばれていく。
義ん母
一人で夏祭りに来たのは、君が誰と一緒にいるのか確かめたかっただけなんだ。
チチカステナン号
軽いおじさんから順にブラックホールに吸われていった。
大伴
花言葉に精通している彼は、花束が小説に見えるという。
きつね
誰にも見られぬ流星は、夜と朝の狭間に消えていく。
village-bridge
地面から天へ向かって雨が降る国では、人々は飛ぶ鳥が濡れぬよう傘をさす。
なかちまちたん
暴れるホースの勢いに便乗して国境を越えた。
茂具田
梅雨の晴れ間みたいな色のビートルが僕の前に停まった。
xissa
僕の感傷は、夕暮れにそっと色を足した。
タクタクさん
文庫本を落とし、中の活字を床にぶち撒けた。
ぴすとる
彼女.jpg
ゴロ
寸評●ヘリコプター氏「昨日から~」定番の時間モノを最もシンプルに、しかもドライなオチも効かせて書いた秀作。筒井康隆っぽさもある。●あや幹部氏「回顧展で元カノ~」意味を重ねた洒落だけどそれ以上のニュアンスも感じる。回顧展っていう設定のせいかな。●紀野珍氏「どこを切っても~」最後の方はマーブル状になってそう。●チチカステナン号氏「一人で夏祭り~」リアリティあるなあ。切ない。●xissa氏「梅雨の晴れ間みたいな~」鈴木英人、永井博、もしくはわたせせいぞう的な80テイストのイラストが浮かびました。●ゴロ氏「彼女.jpg」デスクトップの隅に置かれたファイル名。読む人それぞれにそれぞれの想いを起こさせる。書き出しというより単なるファイル名だが、こういう作品が突然現れるところが書き出し小説の面白いところ。

つづいては規定部門。今回のテーマは『探偵』であった。推理不要の書き出しミステリをどうぞ。

書き出し規定部門・モチーフ「探偵」

「アイツ来ると必ず事件起こるからなあ。」
大伴
妙な気怠さとコートの埃を叩いて、僕は依頼人の元へ向かった。
うみさき
母は音楽教師の傍ら、探偵業を営んでいた。
ゆうきせつ
妙に勘が鋭いこの助手が、僕は嫌いだ。
湿った鴉
「だけど刑事さん、明日自殺するつもりの人間が、うんこ漢字ドリルを買いますかねえ…」
くのゐち
浮気調査の依頼に訪れたのは、午前に来た依頼者の妻だった。
セッドあとむ
依頼人の話をまとめると、単なる介護相談だった。
g-udon
真実にしか興味がない探偵が全員を不幸にした。
ミミズグチュグチュ
物語における探偵とは死神に他ならない。
ぐるりん
弁当屋の千切りキャベツにトラウマを持つこの男、残念ながら探偵である。
ぴら
液体探偵に会いたければこの銭湯に来ると良い。
けー
尾行はバレてからが勝負だ。
八重樫
それは探偵ナイトスクープの仕事だ。
カズマンヌ
ブラックコーヒーを噴き出すことで大人になれると、あの頃の僕らは信じていた。
きうい神士
探偵の人差し指に蛍が止まり、被疑者の顔を照らし出した。
いがそ君
赤ペン探偵はトリックの不備を厳しく指摘したあと、どうすればもっとよくなるか分かりやすく解説した。
Mch
「この中に、好きな人がいます」と、探偵が告白を始めた。
伊勢崎おかめ
未来探偵は事件の迷宮入りを告げると、消えた。
ろっさん
繋がりかけた推理が、漂ってきたカレーの匂いでまた散らばった。
エリンギ
応接間に集められた人々の前で、ミュージカル探偵が歌い始めた。
タクタクさん
広大なジャングルにおいて、クロサイは探偵の役割を果たしている。
大丈夫
難しそうだったり、危なそうだったり遠かったり、俺はそんな依頼を絶対に引き受けない。
哲ロマ
「探偵さん」のイメージは関西と関東とでちょっと違う。
xissa
『探偵』と彫られた表札。苗字なのか職業なのか。
住民パワー
今日の依頼は、屋根にのったボール取りに、先代の料理を再現、あとは視聴率調査ね。
ウウタルレロ
一縷の望みを託して、恋人からの別れの手紙をアナグラムで読み替えてみる。
タクタクさん
全部わかったからもう寝ます。
桃アパートおばけ
寸評●大伴氏「アイツが来ると~」事件が先か探偵が先か?●湿った鴉氏「妙に勘が鋭い~」たぶんこういう設定のコメディもあるだろうが、探偵視点からだとなんか可愛い。●くのゐち氏{だけど刑事さん~」旬のネタもひとつ。●ミミズグチュグチュ氏「真実にしか~」ぐるりん氏「物語における~」どちらも探偵小説における探偵の存在理由を突いた秀作。謎解きとはただの性癖かもしれない。●八重樫氏「尾行はバレてから~」バレてからのサスペンス、新しいかもしれない。●きうい神士氏「ブラックコーヒーを~」松田優作、探偵物語OPより。これがアラフィフネタなんて……●いがそ君「探偵の人差し指に~」キメシーンに場違いな叙情性。●伊勢崎おかめ氏「この中に~」わざわざ人集めなくてもいいと思う。●エリンギ氏「繋がりかけた推理が~」集中して!●タクタクさん「応接間に~」ライバルはフラッシュモブ探偵で。●哲ロマ氏「難しそうだったり~」うん、じゃあ絶対に頼まない。●xissa氏「探偵さん」これもナイトスクープの影響か。●住民パワー氏「『探偵』と彫られた表札~」まさか『事務所』が名前とは!?●桃アパートおばけ氏「全部わかったから」結論は寝言で!

それでは次回のモチーフを発表する。
次回モチーフ
「夕立」
次回は季節ネタ。夕立。雨というモチーフは以前もあったが、今回はさらに絞って夕立とした。突然の夏の雨、夕立は雨の中でももっともドラマを含んだ雨ではないだろうか。雷、虹、雨宿り、びしょ濡れの二人、さまざまなシチュエーションで物語を立ち上げて欲しい。締め切りは7月28日、発表は7月30日を予定している。下記の投稿フォームから部門を選択して送っていただきたい。力作待ってます!
最終選考通過者

morin/うぃけっと/珠四季/prefab/多田忠男/もずく酢/君と僕と雨/それでも嬉しかった/熱帯雨林ウーマン//轍眼鏡/まじいい/七世/木乃机/松っこ/魚子/

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