特集 2017年8月8日

佐渡島には個人オーナーの伊勢丹がある!

佐渡島の伊勢丹にやってきました。
佐渡島の伊勢丹にやってきました。
佐渡島在住の友人に、島民のみんなから「イセタンさん」と呼ばれている人がいる。名字が伊勢なのか、あるいは伊勢丹が大好きだからだろうか。

私も深く考えずにイセタンさんと呼んでいたのだが、先日になってあだ名の由来を聞いてみたところ、佐渡の伊勢丹に勤めているからそう呼ばれているという答えが返ってきた。

いやいや、佐渡に伊勢丹はないでしょう。え、本当にあるの?
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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本当に伊勢丹があった!

佐渡島は島といっても結構広くて、メインストリートには全国チェーンの店だってたくさんある。洋服の青山、ファッションセンターしまむら、蔦谷書店、吉野家、ミスタードーナツ、タリーズコーヒーなどなど。

でもさすがに伊勢丹はないだろうと思ったが、本当にあった。
これが佐渡島の伊勢丹だ!
これが佐渡島の伊勢丹だ!
カーナビの検索でたどり着いた場所は、佐渡で一番高い建物だという8階建ての立派なビルだった。そこには確かに伊勢丹のロゴが!

本当に佐渡島に伊勢丹はあったのだ!
ほら、本当に伊勢丹だ!
ほら、本当に伊勢丹だ!
出迎えてくれたイセタンさん。本当に伊勢丹の人だったんですね。
出迎えてくれたイセタンさん。本当に伊勢丹の人だったんですね。

佐渡の伊勢丹は直営店じゃなくてフランチャイズ店

イセタンさんの案内で店内に入ると、ちょうどコンビニくらいの広さのスペースだった。そしてこれがこの店のすべて。二階以上もデパ地下もない。

このビルの伊勢丹部分はこのフロアのみで、二階から上は保険屋さんや歯医者さんが入っているのだ。

けっして広くはないが、ちょっと良いもの感がある、いわゆるデパートらしい商品が幅広く並んでおり、「このフロアには、新潟伊勢丹の機能が全部詰まっています!」と、イセタンさんは熱く語る。

この日は中央の催事スペースで、ミキハウスの販売会をやっていた。フェラガモ、フェンディ、エルメスといった海外の一流ブランドの販売会も頻繁にやっているそうだ。
「ミキハウスは作りがしっかりしていますよ!」
「ミキハウスは作りがしっかりしていますよ!」
このコンパクトな伊勢丹が、どんな位置づけなのかを説明してもらったのだが、これが興味深かった。

まず組織の一番上に三越伊勢丹ホールディングスがあって、その下に各地方ごとの伊勢丹があり、その中のひとつに株式会社新潟三越伊勢丹がある。

新潟伊勢丹にはサテライトショップと呼ばれる小さな伊勢丹が新潟県内に8つあり、その一つがこの佐渡ショップなのだ。
安心してください、本物の伊勢丹です。
安心してください、本物の伊勢丹です。
ちょっと他のサテライトショップと違うのは、ここだけ直営店ではなくフランチャイズ制の店で、オーナーは佐渡島内で「ファッションルームれい」というブディックを営む方であること。

詳しい経緯はわからないが、全国でも相当珍しい(ここだけかも)、個人オーナーの伊勢丹なのである。経営システムも店の規模もコンビニだが、今年で28年目と歴史はそれなりに古く、しっかりと佐渡の地に根付いている。

これが佐渡の伊勢丹のラインナップだ

サテライトショップの中でもダントツで一番小さいらしい佐渡ショップだが、その中身は他のショップに負けていないというので、各フロア(棚)を案内してもらった。

まずはお中元や贈り物のコーナーから。基本的には島内のお客さんが島内の方に贈るパターンが多いので、地元の名産品などは少なく、お馴染みの定番品がほとんど。でも、それがいい。

お中元なんて送ったことがないけれど、せっかくだからと買いたくなってきた。
小さい缶ジュースってお中元らしいよね。
小さい缶ジュースってお中元らしいよね。
ヨックモックなどの定番ももちろん揃えている。
ヨックモックなどの定番ももちろん揃えている。
売れ筋商品だという「彩果の宝石」。我が埼玉のお菓子なので、ここで買って佐渡の方にお土産として渡すという手が使えるな。
売れ筋商品だという「彩果の宝石」。我が埼玉のお菓子なので、ここで買って佐渡の方にお土産として渡すという手が使えるな。
ちょっと高級路線の贈り物なら千疋屋という選択肢も用意されている。
ちょっと高級路線の贈り物なら千疋屋という選択肢も用意されている。

このように素敵な伊勢丹だが、佐渡における伊勢丹は、もう一つの形態がある。

半年に一回、近所の体育館を借りて、全国から集めた食品や洋服、アクセサリーなどを並べた出張版伊勢丹の販売会が行われのだ。

出張版といってもここよりも全然広い場所で、年に二回のイベントを楽しみにしているお客さんがとても多い。まだ島内にはないスターバックスが出店した時は、島にこんなにコーヒー好きがいたのかと驚くほど長蛇の列ができたとか。
もちろんスターバックスのギフトも揃えております。
もちろんスターバックスのギフトも揃えております。

なんでもあるぞ、佐渡の伊勢丹

他のコーナーも駆け足でご紹介しよう。通販でいいじゃんと思う人もいるかもしれないが、佐渡は離島なので、本土よりも届くまで時間がかかる。

その点、この店に置いてない商品でも、新潟伊勢丹にある商品であれば、午前中に頼めば翌日のオープン時に届くのだ(フェリーが欠航しなければ)。

佐渡島でアマゾンよりも(たぶん)早く商品が届くのが、この伊勢丹なのである!
デパ地下にあたる棚には、ちょっと高級な食材や調味料などが充実。
デパ地下にあたる棚には、ちょっと高級な食材や調味料などが充実。
一番安い商品は、伊勢丹オリジナルの炭酸水とジャスミン茶。お土産に買おう。
一番安い商品は、伊勢丹オリジナルの炭酸水とジャスミン茶。お土産に買おう。
紳士コーナーだって充実の品揃え。
紳士コーナーだって充実の品揃え。
なにかと思ったらステテコだった。
なにかと思ったらステテコだった。
よくわからない感情なのだが、なぜかこの店を猛烈に応援したくなっています。

美術品コーナーだってある

デパートといえば、美術品コーナーだって必要だ。この店で扱っているのは、佐渡が誇る陶芸家であり、人間国宝の伊藤赤水先生の作品だ。

このあたりがスーパーマーケットには真似のできない部分だろう。月に何個売れるのかは知らないけど。
「とっくりでも一つどうですか?」
「とっくりでも一つどうですか?」
ほほう、108,000円かー。
ほほう、108,000円かー。
ところでイセタンさんは、普段この店にいない。イセタンファンの皆さん、がっかりですよね。

では何をしているかというと、そんな商いが存在すると噂には聞いたことがある「外商」なのだ。

デパートの外商とは、お店ではなく家に訪問をして販売すること。イセタンさんは佐渡で唯一の外商担当なのだ。ちなみに男性社員は、オーナーをのぞくと彼だけである。
「三浦小平二先生の版画、いいでしょう?」
「三浦小平二先生の版画、いいでしょう?」
新潟で育ったイセタンさんの前職は、大手酒造メーカーの営業マン。おじいさん、おばあさんが佐渡の人で、「孫ターン」という形(初めて聞く言葉だが本人がそういっている)で佐渡に移り住み、飛び込みを中心に家々を回って、美術品などを一人で売り歩いている。

想像しただけでも疲れてしまう仕事である。人にはいろんな背景があるなーと、当たり前のことに関心してしまった。
孫ができたら贈りたい伊勢丹のランドセル。
孫ができたら贈りたい伊勢丹のランドセル。
ウエッジウッドのデパートっぽさたるや。
ウエッジウッドのデパートっぽさたるや。
移動の季節である三月はハンカチがよ出るそうです。ちなみにバレンタインに佐渡で一番チョコが売れる店でもある。
移動の季節である三月はハンカチがよ出るそうです。ちなみにバレンタインに佐渡で一番チョコが売れる店でもある。

この場所は交通の要所なのだ

ところでこの伊勢丹の存在を私が全然知らなかったのは、メインストリートからちょっと奥まったところにあるから。デパートといえば目抜き通りにバーンと立つイメージなのに。

それにはちゃんとした理由があるようで、このビルには佐和田というバスターミナルがあり、島内からバスで来店するには一番便利な場所なのだ(もちろん電車は存在しない)。まさに扇のかなめ。

佐渡は完全なる車社会だが、バス利用者にも優しいのが佐渡の伊勢丹。佐渡病院へ行く途中などにも寄れる利便性が、車を運転しないご高齢の方にも愛されている一因なのだろう。
「佐和田のバスターミナルと直通です!」
「佐和田のバスターミナルと直通です!」
左の湾奥部分が佐和田。島の中央に位置し、どこからもバスで来店しやすい。
左の湾奥部分が佐和田。島の中央に位置し、どこからもバスで来店しやすい。
店の目の前がバス停になっている。佐渡が日本の縮図だとすれば、ここは東京駅の前なのだと思う。
店の目の前がバス停になっている。佐渡が日本の縮図だとすれば、ここは東京駅の前なのだと思う。
佐渡の重要なターミナルなので、観光客が立ち寄ることも多く、「うわ、伊勢丹じゃん!ちいさ!」「二階はどうやっていくんですか?え、ないの?」「本物?ニセタンじゃね?」と、びっくりする人もたくさんいるとか。

観光で訪れた方へのオススメは、酒蔵がたくさんある佐渡の島だけに、やっぱりお酒だそうです。
ロバート・デ・ニーロが愛飲する北雪酒造の「YK35」が売れ筋。
ロバート・デ・ニーロが愛飲する北雪酒造の「YK35」が売れ筋。
廃校を利用して仕込んだ杉の香りがするお酒「学校蔵」なんていうのも。
廃校を利用して仕込んだ杉の香りがするお酒「学校蔵」なんていうのも。
最後に豆知識だが、佐渡島内で百貨店共通商品券が使えるのは、この伊勢丹だけである。なぜなら他にデパートがないからだ。

このすぐ近くにマルイがあるけど、新潟県のローカルスーパーなので気をつけよう。
お中元にヨックモックのお菓子を買いました!
お中元にヨックモックのお菓子を買いました!

実は雨が降ってすることがなかったので、半分ひやかしでいったのだが、想像以上に楽しめた。この規模だからこその濃縮されたセレクトが堪らない。

イセタンさんの本名は、聞いたけど忘れた。イセタンさんは伊勢丹がよく似合う。だから、これからもイセタンさんと呼ばせてください。
紙袋もちゃんと伊勢丹ですよ!
紙袋もちゃんと伊勢丹ですよ!
そんなイセタンさんが、佐渡市温泉活性化協議会の「つるつる♨スベスベ」~佐渡島温泉ソング~のPVに、ちらっと出ているから探してみよう!
イセタンさんを探そう!

最後に自分の告知です。コミケに出ます。8/13(日)東ホールX-07a 「私的標本」で、新刊は「趣味の製麺6号」です。デイリーポータルZ有志のブース(東V-32a)と同じ日なので、ぜひ弊ブースにもお寄りください!
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