特集 2017年8月9日

「当店から当たりが出ました!」を足してみました

大金をゲットするノウハウは一文字もありません。
大金をゲットするノウハウは一文字もありません。
世の景気がどうであれ、とにかく景気のいい場所は宝くじ店である。店が発信している「当店から億万長者誕生!」のあまりの景気良さにくらくらした私は、それを足したらすごく気持ちいいんじゃないかと思ったのだ。
1975年神奈川県生まれ。毒ライター。
普段は会社勤めをして生計をたてている。 有毒生物や街歩きが好き。つまり商店街とかが有毒生物で埋め尽くされれば一番ユートピア度が高いのではないだろうか。
最近バレンチノ収集を始めました。(動画インタビュー)

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> 個人サイト バレンチノ・エスノグラフィー

ほろほろと億が舞う

春にグリーンやドリームだったかと思いきやすぐさまサマー、涼しくなったらオータムで締めに年末よと、季節の節目で我々庶民にジャンボな夢をもたらす宝くじ。
億の細道。買わず飛び込むわけにはいかない。
億の細道。買わず飛び込むわけにはいかない。
街のあちこちにある宝くじショップの一番の集客策は何か、それは「実績の誇示」である。
150円でジュースを買う自販機の横で7億。
150円でジュースを買う自販機の横で7億。
街で評判のパン屋さんの創作パンみたいな亀だが5億円をもたらしている。
街で評判のパン屋さんの創作パンみたいな亀だが5億円をもたらしている。
これぞバナー広告。
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この実績をたよりにするとビッグサクセスにつながりやすいのかどうかはよくわからないが、買うなら縁起のいい売場で、というのは当然の心理だろう。
BIGやロトなど、ジャンボ以外の景気いい情報も
BIGやロトなど、ジャンボ以外の景気いい情報も
POP体が躍動する。
POP体が躍動する。

そうだ、こいつら足してみよう

食べ放題で○○○円!とか○○○円均一セール!とか、デフレメッセージで発信される街の販促物の中で、億単位の圧倒的なインフレ感で見るものに夢を振りまく「当店から出ました」を眺めていたら、これ足したらいくらになるかな、多幸感でるかなと。よくわからない思考がとぐろを撒きはじめた。
これだけですでに3億ですよ。いったいいくらになるのよ。
これだけですでに3億ですよ。いったいいくらになるのよ。
さすがに全てをくまなく見る事は不可能なので、対象をJR山手線の駅近くにある宝くじショップとした。
巣鴨からスタート!
巣鴨からスタート!
宝くじ公式サイトのマップを頼りに行脚する。
宝くじ公式サイトのマップを頼りに行脚する。
いきなりひとつも見つからずにへこんだ。
いきなりひとつも見つからずにへこんだ。
めげずに降りては探り、探っては乗る。
日暮里で2000万ゲット!。
日暮里で2000万ゲット!。
鴬谷3億6千万!好景気!
鴬谷3億6千万!好景気!
10万からあるのかと思ったら関係ないやつだった(大塚)
10万からあるのかと思ったら関係ないやつだった(大塚)
得た情報を表計算ソフト、エクセルに入力していく。TDDB(当店から出ましたデータベース)である。
駅名、店名、くじの種類、等級、金額をインプット。作業の大変さに初日で表情が曇った。
駅名、店名、くじの種類、等級、金額をインプット。作業の大変さに初日で表情が曇った。
池袋や新宿など、でかい駅になってくるとかなり賑やかになる。
億がさく裂!
億がさく裂!
スタッフスクロールのようにずらりと億。しめて73億7千万円。
スタッフスクロールのようにずらりと億。しめて73億7千万円。
1000万が小遣いに見える。
1000万が小遣いに見える。
3億と5億の差は2億もあるのにもはやありがたみを感じない。
そういえば子供の頃観ていたテレビアニメのロボット、マジンガーZは胸からブレストファイヤーという摂氏3万度の熱線を発射してあらゆるものを溶かしていた。続編のグレートマジンガーはさらにパワーアップして熱線は摂氏4万度(ブレストバーン)になっていたが「その1万度のパワーアップ、必要なのか?」と思っていた。
(甘い)予想よりはるかに時間がかかる。ついに始発で出かけて朝活するようになった。
(甘い)予想よりはるかに時間がかかる。ついに始発で出かけて朝活するようになった。
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岡持ち店舗のよさ。

駅前の雑踏の中、ラーメン屋の岡持ち(出前の時にラーメン入れて運ぶ箱)の親分みたいな箱型の宝くじ屋が鎮座しているのをたびたび見かけるが、これがよかった。
上野丸井前。
上野丸井前。
そして池袋パルコ前、アパレル兄弟である。
そして池袋パルコ前、アパレル兄弟である。
そしてざっくりした自慢。
そしてざっくりした自慢。
激戦区になってくると装飾が過剰になる。夏祭りで屈強なふんどし姿の男衆が担いで町内を闊歩しそうな装い。
デコトラみたいになってきたな。
デコトラみたいになってきたな。
電飾も加わり、ロボットレストラン。
電飾も加わり、ロボットレストラン。
夜になると格納されている店もある。この台がトランスフォーマーみたいにガチャンガチャンと売場に変形(たぶん違う)。
夜になると格納されている店もある。この台がトランスフォーマーみたいにガチャンガチャンと売場に変形(たぶん違う)。
東京駅のクラシカルでおしゃれな箱。インスタ映えならこれかな。
東京駅のクラシカルでおしゃれな箱。インスタ映えならこれかな。
これも東京駅。大振りの庇とすだれがポイント。
これも東京駅。大振りの庇とすだれがポイント。
最も多く見られたのがシンプルな岡持ちタイプ。
目黒駅前。ストイックな宝くじ売り場っぷり。
目黒駅前。ストイックな宝くじ売り場っぷり。
側面の小窓と細いドアがいい。
側面の小窓と細いドアがいい。
「宝」から伸びる配管、縁起物だ
「宝」から伸びる配管、縁起物だ
このタイプで一番萌える部位は脚だ。
ほら、なんかレトロフューチャーな感じが。
ほら、なんかレトロフューチャーな感じが。
ふだんは宝くじ店を装っているが実は地球に危機が訪れた時、ロケットエンジンで成層圏へいち早く脱出し、月面にシューッと降り立って人類の希望を未来につなぐポッドに違いない。犬とか猫や街路樹のアオマツムシも少し乗せていくのだろう。

気持ちいいぐらい脱線したが岡持ち店舗はTD(当店から出ました)もそれぞれの店の個性が存分に発揮されていて見応えがある。
手書きの味わい。
手書きの味わい。
逆にすごく資料っぽく作られてるのもある。年末ジャンボなんか略して「NJ」と表記されている。
逆にすごく資料っぽく作られてるのもある。年末ジャンボなんか略して「NJ」と表記されている。
見つけてしまったからには入力せなばならない……。
見つけてしまったからには入力せなばならない……。
郷ひろみも胸さわぎ必至の億千万。
郷ひろみも胸さわぎ必至の億千万。
岡持ちタイプの他にもいくつかの系列が見られた。

控え目な主張が奥ゆかしい宝くじロトハウス系

清潔感のある店頭の「宝くじロトハウス」系。店内に入って宝くじを吟味できる造りになっている。TD(当店から出ました)もカチッとしている。
宝くじの「T」を装ったのだろうか。だとしたらTポイントカードより先を行っている。地味だがしっかり4億8千万出ている。
宝くじの「T」を装ったのだろうか。だとしたらTポイントカードより先を行っている。地味だがしっかり4億8千万出ている。
ちゃんとしたポスターが多い。
ちゃんとしたポスターが多い。

みずほ銀行ビルトイン系

宝くじ業務を一手に受託しているみずほ銀行の店舗に組み込まれているビルトインタイプ。派手さはないがどことなく権威を感じるTD(当店から出ました)は、この人についていけば億万長者になれるのでは?いや、ふつうに一生懸命働いた方がいいかと逡巡させるオーラを持つ。
きっちりデザインされている。
きっちりデザインされている。

ゴージャスに装う大黒天系

深紅の大黒様がトレードマーク。照明や原色でにぎにぎしくハレ感を演出。とにかく景気がいい。
バーンとライトアップ億万長者。
バーンとライトアップ億万長者。
飛び出して光る宝くじ。
飛び出して光る宝くじ。
毎回長蛇の列を作る「有楽町大黒天」が有名だ。
当選本数も桁違い。
当選本数も桁違い。

「西銀座チャンスセンター」を擁するチャンスセンター系

招き猫のキャラがかわいいチャンスセンター系。日本で最も長い行列ができるという西銀座チャンスセンターがある。
冒頭の「億の細道」もこのお店の1番窓口へ続く道である。
兵(つわもの)どもが夢の跡になりませんように。
兵(つわもの)どもが夢の跡になりませんように。
ヤクルトの乳酸菌も顔負けのとんでもない数字。億万長者だけで会社つくればいいのに。
ヤクルトの乳酸菌も顔負けのとんでもない数字。億万長者だけで会社つくればいいのに。
今回の調査では「○○宝くじの○等で○億円!」みたいにざっくりでも内容が分かるケースを対象にしたので752億という数字はカウントしていないがそれでもすごい金額をたたき出している。
最近の実績でこれ。
最近の実績でこれ。
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億のパッチワーク

その他でディープインパクトを放つのは御徒町駅前センター
うおー、億万長者ウォール!
うおー、億万長者ウォール!
近づくと細密に書き込まれた大当たりが具象化。綿密に表現が計算された大当たりアートだ。
近づくと細密に書き込まれた大当たりが具象化。綿密に表現が計算された大当たりアートだ。
のぼりベースもめでたい。
のぼりベースもめでたい。
アートといえばモンドリアンみたいなショップも見かけた。
アートといえばモンドリアンみたいなショップも見かけた。
といった案配で山手線29駅、65店舗(TDを発見できた店舗の数なので行った数はもっと)を回り、494TD(当店から出ました)を採取することができた。
ラストを迎えた時には1億とも冷静に向き合えるようになった。
ラストを迎えた時には1億とも冷静に向き合えるようになった。
全然入りきらないしどう表現していいかさっぱりわからないけどこれがビョーンともっと長い表になっている。
全然入りきらないしどう表現していいかさっぱりわからないけどこれがビョーンともっと長い表になっている。
なんのためにこんな事をやったか忘れかけていたが、そう、これ全部足したかったんだ。と表計算ソフトに表を計算させたところ、でました。
どん!52,866,159,876
どん!52,866,159,876
528億6615万9876円のTD(当店から出ました)が私のエクセルに参集した。やったあ、気持ちいい。

足しただけで目的は達成したのだがせっかくエクセルにしたので少し並び替えてみよう。まずは駅別の集計。参考までに駅の乗車員数ランキングを添えてみた。
先ほど紹介した億万長者ウォールを擁する御徒町の健闘が光る(なにが)鴬谷も立派だ(だからなにが) ※ 参照:乗員数順位はJR東日本WEBサイト「各駅の乗車人員2016年度」
先ほど紹介した億万長者ウォールを擁する御徒町の健闘が光る(なにが)鴬谷も立派だ(だからなにが) ※ 参照:乗員数順位はJR東日本WEBサイト「各駅の乗車人員2016年度」

西銀座チャンスセンターすごい

つづいて店別。
上位15店舗を抜粋。あくまで私が発見できたTDなので実態ではありませんよ、念のため。
上位15店舗を抜粋。あくまで私が発見できたTDなので実態ではありませんよ、念のため。
上位4店舗で約257億7000万と全体の約半数を占めている。人気店は購入者が多くなるので本数も増えるのはわかるがそれにしても集中しているな。
何が恐ろしいって前述したとおり、1位の西銀座チャンスセンターのTD(当店から出ました)は内容がはっきり確認できなかったものはカウントしていない。
752億!ギャー
752億!ギャー
これを入れると山手線沿線のTD(しつこいけど当店から出ました)が束になってもかなわない事になる。なんと支配的な。

適当にソートしながら「ほほう」と言うもよし

さらに空虚となるが個別のくじごとに抜き出して見るとなんかいいのだ。
お、633回年末ジャンボは池袋と五反田で6億ずつ出てたのか。
お、633回年末ジャンボは池袋と五反田で6億ずつ出てたのか。
2010年の年末ジャンボは山手線の下半分で1億乱れ打ち!
2010年の年末ジャンボは山手線の下半分で1億乱れ打ち!
ロダンとモネは同じ年にパリで生まれてたんだすごいね、みたいな感慨を勝手に抱いて終わります。
給料明細が宝くじショップみたいだったら心が豊かになるかなと思ったがそうでもなかった。
給料明細が宝くじショップみたいだったら心が豊かになるかなと思ったがそうでもなかった。

俺はエクセルの億万長者

いろいろ話題になったビットコインという仮想通貨がある。私のエクセルにただ無心に貯められた529億のTD(当店から出ました)はビットコインと違い、流通も変動もせず、ただここにある、私だけのいわば無想通貨である。
しかし、こうしてエクセルに打ち込んだ529億や写真をいろいろ並べ替えたりして私の心は豊かになった。
調査を終えた今でも私は資産もない、うだつのあがらない社会人である。だが胸をはって言える「俺はエクセルの億万長者だ」と。
熱中症には気をつけよう!
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