特集 2017年8月17日

丸い氷を作りたい(デジタルリマスター版)

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ちょっと高級なバーなどで見かけるデカくて透明でまん丸い氷。本来、味にあまり影響なさそうな氷にまでこだわってる感じがとってもステキですよね。

普段は自宅の冷蔵庫で作った白くて四角い氷でガマンしていますが、たまにはあの丸い氷を心ゆくまで堪能してみたいもの。

自分でアレを作れるようになれば……。

2010年7月に掲載された記事の写真画像を大きくして再掲載したものです。
1975年群馬生まれ。ライター&イラストレーター。
犯罪者からアイドルちゃんまで興味の幅は広範囲。仕事のジャンルも幅が広過ぎて、他人に何の仕事をしている人なのか説明するのが非常に苦痛です。変なスポット、変なおっちゃんなど、どーしてこんなことに……というようなものに関する記事をよく書きます。(動画インタビュー)

前の記事:顔つきパッケージを「顔ハメ」にしたら複雑な気持ちになりました

> 個人サイト Web人生

夏場は冷たい飲み物スキスキ!

もう、ホントーに暑い暑い暑い暑い、そして蒸し蒸しチキンな日がつづいていますが、デイリーポータルZ読者の皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。

ボクはもう全然ダメです。暑いのってすごい苦手なんですよ。毎年、夏が近づいてくるとシュルシュルとやる気がなくなってしまい、引きこもりになりがち。

……ということで、せめて題材だけは涼しげな感じの記事にしたいと思います。
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夏場を乗り切るために欠かすことのできないのが、冷たい飲み物。脳みそがしびれるくらいカッキンカッキンに冷えた飲み物をグバーッと豪快に飲み干せば、暑さも吹っ飛ぶってモンですよね。

そんな冷たい飲み物を堪能する時に、あると嬉しい“氷”。自販機の缶ジュースを直にグビグビでも冷たくて美味しいんですけど、ギッシリと氷を詰め込んだグラスに飲み物をいったん注いでから飲むと、冷たさの質がちょっと違うというか、もうタマランものがありますな。
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今回は、そんな氷にこだわってみたいと思います。ボク、ちょっと気になってる氷があるんですよね。

ボクが自腹で行くような「ザ・デフレ価格!」な飲み屋じゃまずお目にかかれませんが、仕事の打ち合わせなどでちょいと高級な感じのバーに連れてってもらうと時々見かける丸い氷。
こんな氷。ちなみにこのカクテルはジャイアンをイメージした「パワーG」というカクテルです
こんな氷。ちなみにこのカクテルはジャイアンをイメージした「パワーG」というカクテルです
直径6センチくらいの球体の氷がロックグラスにドーンと入れられ、そこにお酒が注がれてて……。ウハッ! なんかゴー☆ジャス!

球体にすると表面積が小さくなるので、氷が溶けづらく、飲み物の味が薄まらなくて、美味しく飲めるそうです。

基本的に大した味覚は持っちゃいないので、こういう風に理屈で攻められると美味しい気になっちゃう理屈派グルメなの。
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まあそんなワケで、丸い氷(ボールアイス)を自分で作ってみたいと思います。

単純に丸い氷を作るならば……

さて、さっそく丸い氷を作ってみたいと思うのですが、どうやって作ればいいのか……。
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……うーん、まあ、コレかな。

ガチャガチャのカプセル! コレに水を入れて凍らせれば、とりあえず丸い形の氷ができると思うのですが。
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しかし、最近のカプセルって、こんなにデッカイ穴が空いてるんですね。子供が誤って飲み込んじゃった時の気道確保……とかの理由なんですかね。
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とりあえず穴をパテで埋めて、丸い氷の型にしてみました。

ものすごく余談ですが、このカプセルを手に入れるため、えらく久しぶりにガチャガチャをやったんですが、値段が400円もしてビビリました。ボクが子供の頃は20円とかだったのになぁ……。

まあ、中身もその頃とは比べものにならないくらい豪華になってますが。
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さてさて、中に水を入れて、一晩凍らせたカプセルはどうなったでしょう……。
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まあ、丸いっちゃあ丸いけど、なんか汚らしいし……。これじゃあ高級感もクソもあったもんじゃありません。

冷蔵庫で作る氷の限界なんでしょうか……。
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やっぱり、丸い型で凍らせりゃいいってモンじゃないんだろうな……ということで、実際の現場ではどのように丸い氷を作っているのか、バーテンダーさんに作り方を見せてもらうことに。

……最初っからこうすりゃよかったですね。
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まずはこのように、巨大な氷を用意しまして……。
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アイスピックでガッシュガッシュと砕いていくだけ。
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ほい、完成! ……って、全然参考にならねぇー。

「木や石を彫刻するのに比べたら、氷はすごく扱いやすいから、意外と簡単ですよ」とのことですが
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アドバイスとしては「とりあえずアイスピックの先は尖らせておけ」だそうです。……まあ、とりあえずやってみますか。
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6月1日は氷の日

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さて、まずはキレイな氷を手に入れることから……ということで氷屋さんに。「氷屋なんてどこにあるんだろ?」と思って調べてみたら、ウチのすんごく近くにありました。

しょっちゅう前を通っていたのに、氷専門店で氷を買おうなんて思ったこともなかったんで、気にも留めていませんでしたよ。
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誇らしげに掲げられた氷のぼりが頼もしい。「ほんものの味」に期待!
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そして「6月1日は氷の日」だということもはじめて知りました。

なんでも江戸時代、旧暦の6月1日に加賀藩が将軍家に氷を献上したことに由来するんだとか……。へぇー。
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お店(?)からは。こんな巨大な氷がバンバン運び出されています。しかし、あまりにも業務用感があふれすぎてるので、個人に小売りしてくれるのかどうか不安だったので聞いてみることに。
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このような、ほのぼのエピソードがあったことを一応記しておきましょう。

ちなみに、基本的には飲食店などに配送するのがメインなものの、小売りもやっているということで、ちゃんと売ってもらえました。
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氷屋さんで入手した氷がこちら。

「クリスタルキューブアイス」という商品で、7センチ角の正方形の氷が15個入って840円!

結構な量はあるものの、一個56円と考えると高いような安いような……。
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しかし、いい値段するだけあって、さすがに超キレイ! 透明度が高くてスケスケ。さすが「クリスタルキューブアイス」! なんとなく……どころか、思いっきりクリスタルです。
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氷は冷たい

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おっしゃ、それでは氷を砕いていきましょうか。
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ガッシュガッシュ!

確かに、思ったよりも簡単に砕いていけます。ガシッとアイスピックを振り下ろすとビシビシ氷のかけらが飛び散って気持ちイイ! 涼しいし。しかし……
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当たり前ですが、氷ってすんごく冷たいですね。

ちょっとつかんでるだけで後頭部がジンジンきちゃうくらい冷たい! バーテンダーさんは平気で氷を手づかみしながらガッシュガッシュしてましたが……。

とてもマネできん。手、ちぎれちゃうよ。
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つーことで、ゴム手袋を装着。

指先にボツボツがついているのは、コレがゴム手袋というか、手袋をしてゴシゴシこすると野菜の皮がキレイにむけてしまうという夢のようなアイテム「ムッキー」(ちょっと前に通販番組でよく売ってたアレね)だから。

だってコレしかなかったんだもん。まあ、滑り止めにもなってちょうどいいかなー……と。
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手が冷たい問題が解決すれば、あとは黙々と氷を砕いていくのみ。砕き過ぎちゃうと取り返しがつかないので、慎重に慎重に……。
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「ねーねー、何やってるの?」
「氷を丸くしてるんだよ」
「ねーねー、何で氷を丸くしてるの? 仕事?」
「……仕事だよ!」
「ねーねー、氷を丸くする仕事って給料いいの?」

……ウチの近所にある公園に集う子供たちは人なつっこいというか物怖じしないというか……。大体撮影とかやってると近寄ってきて、色々と話しかけてくるんですよ。

ボクが親だったら、真っ昼間から公園にいる30代男性。しかもアイスピックをガシガシやってる人になんか絶対に近づいちゃダメって言い聞かせますけどね……。日本って平和だな。
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ま、延々と氷を砕いていくというかなり地味な作業なので、ぼちぼち子供たちも飽きて離れていった頃、わりといい感じに丸くなってきたんじゃないですかね?

しかし、アイスピックだけじゃどうしても氷のボコボコ感を消すことができません。
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ホントはナイフの背などで氷の角を削っていくらしいんですが、さすがに日中の公園でナイフを使ってたら即通報間違いナシなので(アイスピックでもどうかとは思いますが)、鉄やすりで削っていくことにします。こっちの方が使いやすそうだし。
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ショリショリショリショリ……。

氷をやすりで削るのって初めての経験ですが、シュッと削ると、その部分の氷が一瞬粉状になって、すぐに溶けてボトボトと垂れていく感じが新鮮で楽しい!
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おっ、形もかなり丸くなってきたんじゃないでしょうか。
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もう一押し、さらになめらかにしていきたいということで、ここから紙やすりで磨き上げていきます。
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ショコショコショコショコ……。

こういう延々と磨き上げていく、みたいな単純作業ってツボにはまると思いっきりハマッちゃいますよね。もう完全に無心。僧侶のような気分で氷を磨いていきます。
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その結果がコレ!
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おおーっ、スケスケでツルツルで丸くって……結構いい感じじゃないですか!?
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コレコレ! こういうのがやりたかったの。

氷は意外と加工しやすいですね。ある程度角さえ取ってしまえば、あとは溶けていくので、わりとそれっぽく丸くなってくれます。そんなにテクニックは必要なく丸い氷を作ることができるんじゃないでしょうか。
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ただ、元のサイズと比べると思いっきり小さくなってまして……。そりゃあ丸くするのに30分近くかかってますからね、かなり溶けちゃったんだろうな。

もうちょっと手軽で楽ちんかつスピーディーに丸い氷を作る方法はないもんでしょうか。
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丸い氷が確率変動状態でザックザク

キレイで丸い氷を自分で作ることは一応できるものの、結構面倒くさいものです。

もっと簡単に作る方法は……と調べていたら、こんな装置があるそうです。
キャプション!
その名も「アイスモールド」!

丸い氷を作るためだけに存在する、丸い氷作りのプロフェッショナルです。
キャプション!
使い方は簡単。

下の部品に氷を乗せて……
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上の部品で氷を挟み込むだけ。
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すると上の部品が自重でズズズ……っとゆっくり降りてきて。
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上下の部品がピッタリくっついたら完成!
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うおおっ、超キレイ! そして超丸い!
このアイスモールド、電気などは一切使用せず、熱伝導率の高い金属で作られた上下の部品が氷の冷気を奪ってガンガン溶けさせていき、丸い型にはめ込むことによっていともたやすく丸い氷を作ってしまうというナイスアイテムなのです。
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型を変えることによって、こんな形の氷を作るのも自由自在。
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これさえあれば丸い氷作り放題ですよ! 楽しい……嬉しい……。
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見よ、このドラゴンボール状態! 神龍呼べそうですよ。
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念願の丸い氷でお酒も飲み放題ですよ。ひゃほー!

さすがに素晴らしい丸氷で飲む酒はひと味違う! ……ような気がします。とりあえず冷たいです。
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丸い氷、100円ショップで売ってるらしいですが……

味どうこうはおいといて、とりあえず丸くてピカピカでスケスケでツルッツルの物体を見ると人は本能的にテンションが上がるのではないかと思うくらい、キレイな丸氷が完成するとワクワクしてしまいます。

自分の手でガシガシ削っていって作るのもいいですが、装置を使って自動的にバンバン丸い氷ができていく様子たるや……いやー、今回メーカーさんから貸し出してもらっただけなんですが、このアイスモールド自分用に欲しいくらいです。業務用のメカなので、個人で買うのはちょっと勇気がいりますが……。

そんなことを思っていたら、ライターのほそいさんより

「丸い氷なんて、100円ショップで売ってるからそれ買ってくればいいじゃないですか」

とのご意見が。あ、そうなんだ……売ってるんだ、しかも100円。最初から100均で買ってくればよかったかもね。何やってたんだろ、ボク。

でも、でも、氷の質が全然違うと思うんだ、100均じゃ……多分、多分……。

機材協力:株式会社大信製作所
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