特集 2017年10月3日

おつまみをおかずに白飯が美味い

下戸は、酒のつまみで白飯を食うのだ。
下戸は、酒のつまみで白飯を食うのだ。
先日、とある飲み会の席で「いやー、僕は酒飲まないんですけど、酒のつまみでごはんを食うのは好きなんですよ」という話をしていた。
僕としては、イカの塩辛とかそういうウェットなつまみを想定して喋ってたのだが、話し相手はもうちょい違う方向…バーなどでお通し的に出てくる、いわゆる“乾き物”を考えたらしい。
「おかきとかツナピコとかでごはん食べるの、無理じゃないですか?レーズンバターとか」
なるほど、そう来たか。いいよ、食ってやろうじゃないか。
1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

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おつまみのチョイスは専門店にて

食ってやろうじゃないか、と啖呵は切ったものの、当然のように現状はノープランである。
こういう時はプロにまず相談するのが鉄則。
とはいえ残念ながら「乾き物でごはんを食うプロ」はいないと思うので、もうちょい前段階に戻って、乾き物のプロに話を聞いてみよう。
外見からは何屋か分かりにくいが、ここが乾き物パラダイス。
外見からは何屋か分かりにくいが、ここが乾き物パラダイス。
銀座7丁目にある岡田かめやさんは、いわゆる乾き物のおつまみ専門店。銀座から新橋にかけて数多あるバー・スナックにおつまみを卸している老舗である。
店内はそう広くはないが、酒飲みが泣いて喜ぶ(僕は飲まないので、あくまで想像だが)ようなおつまみがぎっしり並んでいる。
ナッツ類やおかきなども銀座御用達の厳選されたものばかり。
ナッツ類やおかきなども銀座御用達の厳選されたものばかり。
スナック系乾き物の定番、こけし。おかきと豆のコンビがかわいい。
スナック系乾き物の定番、こけし。おかきと豆のコンビがかわいい。
岡田かめや人気No.1はドライみかん。これは白飯無理っぽいなー。
岡田かめや人気No.1はドライみかん。これは白飯無理っぽいなー。
あまりに種類がありすぎて、見ているだけではどれが白飯に合うのかピンとこない。
やはり手っ取り早くプロに相談しよう。
ということで、岡田かめや社長の岡田さんにお話を聞いてみた。
岡田かめや社長の岡田桂一さん。すごいフレンドリーに相談に乗ってもらえた。
岡田かめや社長の岡田桂一さん。すごいフレンドリーに相談に乗ってもらえた。
岡田「うーん、お米と合わせるのは考えたこと無かったなあ。うちは味の濃いのを揃えてるから、いけないことはないと思うんだけど」

確かに店内を見回してみると、味が濃くてパンチの効いてそうなものばかりだ。
「ぱくちいあられ」「グリーンカレーせん」「ゆず塩こうじあられ」など、パンチの効いてそうなラインナップ。
「ぱくちいあられ」「グリーンカレーせん」「ゆず塩こうじあられ」など、パンチの効いてそうなラインナップ。
岡田「そうそう。これ美味しいしイケるかな?って仕入れたやつでも、味が薄いと全然売れないんだよ」

製品の絶対評価が味の濃さ。酒を飲まない人間としては、これまであまり考えてこなかった価値基準である。

岡田「お米となら…これとか、いまうちでイチオシの商品なんだけど、どうですかね」
つまんで食べられるキューブ状の『焼うに』。1パック1000円の高級おつまみだ。
つまんで食べられるキューブ状の『焼うに』。1パック1000円の高級おつまみだ。
…と紹介してくれたのは、店内のど真ん中に陳列してあった『焼うに』。

岡田「これ、塩ウニと魚肉を練り合わせて固めて焼いたものなんだけど、美味しいんだよ。テレビで取材にきた大地真央さんがハマって召し上がってたね」

原材料表示を見ると、一番最初に「塩ウニ」と書いてある。ウニ風味、とかじゃなくて本当にうにの加工品なのだ。
しかも口の肥えたベテラン女優さんが気に入るぐらいだから、味も間違いなさそう。

ウニとごはんなら組み合わせもばっちりだし、これはいけるんじゃないか。
最終的に、4000円ほどの乾き物おつまみを購入。おかず代としては高額。
最終的に、4000円ほどの乾き物おつまみを購入。おかず代としては高額。
この『焼うに』以外にも、岡田さんから「こうしたらいいんじゃないか」といくつかアドバイスをいただいた。
よし、あとは実践あるのみだ。見てたら次第にお腹も減ってきたし、帰って米炊くか。

まずは懸案のレーズンバターごはん

さて、最初に勝負したいのは、飲み会の席で「無理だろう」と言われたレーズンバター。
最近はどうかは知らないが、うちの父親など団塊世代には、小岩井のレーズンバターがちょっとおしゃれなバーのおつまみとして大定番だったものだ。

でも、バターごはんは美味しいし、カレー用のライスにレーズンが入ってるやつもある。
これ、実は普通にイケるんじゃないかと最初から思ってたのだ。
レーズンバター&ミニカルパス。どう見てもここから飲みが始まる流れだ。
レーズンバター&ミニカルパス。どう見てもここから飲みが始まる流れだ。
そこにさらに旨味を加えるために、こちらもお馴染みのミニカルパスをプラスしてみよう。
ほらほら、どうだろう。どんどんイケそうな気がしてこないか?
カルパスレーズンバター醤油ごはん。
カルパスレーズンバター醤油ごはん。
炊きたてのホカホカごはんに刻んだミニカルパスを混ぜ込み、輪切りのレーズンバターをオン。さらに醤油をちょいと垂らす。
これどうだ。もう見ただけで美味くないか?どうよ?
うひょー、やっぱり美味いじゃーん!
うひょー、やっぱり美味いじゃーん!
目論見通り、ばっちり美味い。
バターのコクと醤油が米に絡んで、さらにたまにカルパスの塩気とレーズンの甘味が来る。しょっぱい・甘い・バター醤油、しょっぱい・甘い・バター醤油。味の変化が止まらないので、延々と食べられるやつだ。
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銀座でバーテンダーがやっている乾き物ごはん

続いては、岡田社長に教えてもらった「銀座のバーでバーテンダーさんがやっている」という、乾き物を使ったご飯の食べ方にトライしてみよう。
海苔を巻いた醤油おかきでお茶漬けである。
海苔がたっぷり巻いてある、高級めなおかき。海苔の香りがすごくいいやつ。
海苔がたっぷり巻いてある、高級めなおかき。海苔の香りがすごくいいやつ。
言われてみればお茶漬けの素にだってあられが入ってたりするし、なによりこれだけ海苔が巻いてあれば立派な海苔茶漬けになるだろう。
イメージの上では何の違和感もない。
言われてみればお茶漬けの素にだってあられが入ってたりするし、なによりこれだけ海苔が巻いてあれば立派な海苔茶漬けになるだろう。 イメージの上では何の違和感もない。
言われてみればお茶漬けの素にだってあられが入ってたりするし、なによりこれだけ海苔が巻いてあれば立派な海苔茶漬けになるだろう。 イメージの上では何の違和感もない。
ごはんのうえに海苔巻きあられをバラーッの、お茶をダバーッの。あまりにバカっぽすぎて誰もつくれぽ書かないタイプのクックパッドレシピみたいなやつだ。
お茶をかけているとすぐに醤油と海苔の香りがふわーっと上がってきて、なかなか食欲をそそる。
うん、海苔茶漬けだね。
うん、海苔茶漬けだね。
食べてみると、まったくもって普通に海苔茶漬けだ。あっけないぐらいに海苔茶漬け。
時間が無いときなど、これでザラザラッとごはんをカッ込んだらそれで充分って感じだ。美味い。

ただ、直前に食べたカルパスレーズンバターごはんがインパクトありすぎたので、なんか普通すぎて物足りない。パンチが無いのだ。

そこで、さらに岡田社長おすすめの一品をプラスしてみようと思う。
食べかけの写真で申し訳ないが、途中でわさびを投入。
食べかけの写真で申し訳ないが、途中でわさびを投入。
社長おすすめの『烈火わさび』というおかき、これが名前通り、どエラくわさびの効いた味なのだ。
どれぐらい効いてるかというと、食べた瞬間に味よりまずキィィィィッとした鼻の痛みがくるぐらい、ガチのわさび味。手加減なし。
店頭表示でも「苦情が多い」と書かれるほどのわさび味。
店頭表示でも「苦情が多い」と書かれるほどのわさび味。
このわさび味のおかきを砕いて海苔おかき茶漬けに投入することで、わさびおかき海苔おかき茶漬けに味変ができるのではないか、という試みである。
ふへへ、うめぇ。大人の味ですよ。
ふへへ、うめぇ。大人の味ですよ。
やってみると、これが非常に効果的。本当に海苔茶漬けにおろしわさびを乗せたような、ちゃんとした大人っぽいお茶漬けになったのである。わー、これ美味いわー。
苦手な人には無理にオススメはしないが、わさび好きなら絶対にこれハマるに違いない。

ただ、お手軽なおかき茶漬けにも弱点が一つ存在する。お茶の水分を吸いすぎると、おかきがかなりだらしない歯応えになってしまうのだ。
一度食べ始めたら、可能な限りノンストップですすり切ってしまうことをおすすめしたい。

『焼うに』炊き込みごはん最強説

最後は、前ページでも紹介した『焼うに』で豪華なごはんにチャレンジだ。
とりあえずごはんに合わせる前にそのままでつまんでみたが、これウニだ。製法としては「ウニを魚肉と練り合わせた」と聞いているが、魚肉っぽさはゼロ。単にうにを練り固めたんじゃないか、というぐらい完全にウニ。
『焼うに』に『貝ひもしぐれ』という高級魚介セット。
『焼うに』に『貝ひもしぐれ』という高級魚介セット。
ここまでウニなら、炊き込みごはんにしちゃっても美味いんじゃないだろうか。
ついでに、ホタテの貝ひもを甘辛く味付けして干したおつまみ『貝ひもしぐれ』をプラスして、ウニとホタテの炊き込みごはん。これ、どうだ。
炊く前のお米におつまみをぶっ込むと、ちょっと「大丈夫か」って気にはなる。
炊く前のお米におつまみをぶっ込むと、ちょっと「大丈夫か」って気にはなる。
調理は、お米に『焼うに』と刻んだ『貝ひもしぐれ』をぶっ込んだら、ちょっと水多めにして炊くだけ。調味料はいっさいいらない。だって味の濃いおつまみだもの。
で、炊きあがったら、キューブのまま形の残ってるウニを潰してごはんに絡めるように混ぜると、 ウニ色に輝くウニとホタテの炊き込みごはんの完成だ。
やばい。ウニの香りすごい。
やばい。ウニの香りすごい。
うわー。これやばーい。ウニだわー。ウニごはんだわー。1㎜のズレも無くウニごはんだわー。やーばーい。
なんかもう語彙が一気に減ったけど、それぐらい美味いウニごはんなのだ。
うわーマジかー。ウニごはんちょっとやばくないか。
うわーマジかー。ウニごはんちょっとやばくないか。
口に入れると鼻にほわっとウニの香りが抜けるし、ごはんに染みこんだウニの甘みとしょっぱさがもうたまらん味。また、柔らかく戻った貝ひもがコリッとした歯応えで存在を主張してくるのも良い。
以前、どこかの土産物でレトルトの『ウニ炊き込みごはんの素』みたいなのもらって食べた事はあるが、そんなのより余裕でこっちの方がウニ。
1000円の高級おつまみとはいえ、その中からほんの10粒ほど(米一合に対して)使っただけなので、コスパもいい。これ最高じゃないか。

結論として、乾き物おつまみでごはんは超余裕だった。
飲み会後でおつまみが余ったときに…とかそういう消極的理由ではなく、むしろ積極的におつまみをごはんに投入していくべきなので、年末年始の飲み会シーズンを待たずにみんなおつまみを買いに走ると良いと思う。お酒とかいらないって。
岡田かめや店頭でみつけた乾き物パック。寿司っぽい包装がかわいい。
岡田かめや店頭でみつけた乾き物パック。寿司っぽい包装がかわいい。
取材協力:岡田かめや
東京都中央区銀座7丁目12-2 林ビル
03-3542-6606(日・祝定休)
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