特集 2017年12月3日

ベトナムのテーマパークが大変だ(デジタルリマスター版)

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ベトナムのテーマパークが大変なことになっているという。知り合いのベトナム好きからの目撃情報によると

「でかくて派手で強烈な赤茶色い顔がどかーんと立ってるんです!」

だそうだ。 なんだそりゃ。

ベトナムの方々にとってはポピュラーな観光地で日本で言うところの東京ディズニーランドにあたる場所らしい。外国人観光客が来ることはほとんどないそうだが、旅行でベトナムに行くことになったのでついでに寄ってみることにした。

予想以上に大変なことになってました…! 現地ガイドのチュンさんの案内のもと、レポートします!

2004年7月公開の記事の写真画像を大きくして再掲載したものです。

※ベトナムの現在の様子はベトナム在住ライターのネルソン水嶋さんが鋭意伝えてくれています。どうぞ合わせてごらんください。
東京生まれ、神奈川、埼玉育ち、東京在住。Web制作をしたり小さなバーで主に生ビールを出したりしていたが、流れ流れてデイリーポータルZの編集部員に。趣味はEDMとFX。(動画インタビュー)

前の記事:webメディアの即売会は木とランドセルが買えて穴が覗けて歯を抜ける

> 個人サイト まばたきをする体 Twitter @eatmorecakes

ベトナムにやってきております

そんなわけでこんにちわ、古賀です。ベトナムはホーチミンに来ております。蒸し暑いです。日本の蒸し暑さよりも、よりむわっとする感じ。

いかんせん ベトナム初上陸で右も左も分からない。今回はスペシャルゲストとして現地の事情に詳しいベトナム人のチュンさんにガイドを依頼した。
チュンさんです
チュンさんです
チュンさんは元社会科教師。独学で日本語を学び、日本人観光客専門のガイドとしてツアー会社に転職したという。 ベトナム語に疎い私にとってはこれほど力強い助っ人はいない。

今日は2人で 問題のテーマパーク「Suoi Tien Theme Park(スイティエン公園)」をレポートします。

乗り合いバスで向かう

公園へはホーチミンの中心部からローカルバスで1時間弱。この時期ほぼ毎日降る夕方のスコールを避けるため、朝9時に出発した。

バスは郊外の工場へ仕事に向かう人々でかなり混雑。ちょっと遊園地に向かう雰囲気ではない。実はこの時点で私はベトナム到着から10時間ほどしか経過していない私だ。いきなりの濃厚なベトナム汁にひるみまくり。
地元の方で一杯のバスターミナル
地元の方で一杯のバスターミナル
隣のバスの運転手はハンモックで休憩中
隣のバスの運転手はハンモックで休憩中
ビビって無口になっている私の隣ではチュンさんのガイドトークが炸裂する。

「フォー(米の麺のベトナム的ラーメン)はもう食べましたか? あれって日本の味の素を入れてる店が結構あるんですよ」
「 日本語の“注意”はベトナム語でも“チュウイー”って言いいます」
「ベトナムはフランス領だった関係でパン作りの技術が発達してます。でアジアで一番フランスパンが美味しい国です」
「 ベトナムのメガネはクオリティーが非常に高いです。買っていくといいですよ。因みに自分は目がいいのでメガネは必要ないです」
街を抜け
街を抜け
川を越え
川を越え
市場も通過して行く
市場も通過して行く
街はとにかくバイクの量がハンパなかった。中国の道路が自転車で溢れている映像をよく見るが、その自転車の全てがバイクに変わったという感じ。チュンさんによる豆知識もバイク編は特に豊富だ。
この何倍もいた
この何倍もいた
・ ホーチミンは人口約650万人に対して200万台以上のバイクが街を流れている。
・ “ホンダ”がバイクの代名詞になっているため、「オレ、スズキのホンダ買ったんだぜー」などといった会話がよく聞かれる
・ バイクは現在はみんなノーヘルだが、近く着用義務が強化されるかもしれない。
・ 以前サイドミラーの取付が義務づけられた時はスコールの時に着るレインコートが引っかかって逆に事故が多発。
「ほら、あそこ、5人乗り」 「おお!」
「ほら、あそこ、5人乗り」 「おお!」
・ バイクは5人乗りならザラに見かける。法律上は家族3人乗りまでならOK。
・ 街のバイク量を減らすべく、政府がバス運賃の半分を負担しているが、それでもみんなバイクが好きらしい

(※すべて公開当時、2004年の情報です)
バスで会った人達。ほ乳瓶がピカチュウの柄だった
バスで会った人達。ほ乳瓶がピカチュウの柄だった
日本でマグロの解体をしていたという青年。職場の冷房がキツすぎて国に帰ってきたそう
日本でマグロの解体をしていたという青年。職場の冷房がキツすぎて国に帰ってきたそう
いきなり乗り込んできてネックレスを売り始めた方
いきなり乗り込んできてネックレスを売り始めた方

突如現れる、でかい岩

いろいろためになる知識をさずかり、地元の人々との交流もできた。

もうテーマパークなんて行かなくてもいいんじゃないか、このまま帰って生春巻きでも食べた方が面白い記事になるんじゃないかと徐々に思えてきたころ、それまで軽快に豆知識を繰りだしていたチュンさんが前方を大きく指さした。
ん?
ん?
見ると、素朴な風景に突如として巨大岩が。完全に風景調和無視。遠近感が掴めず、どれぐらいでかいのかうまく把握できない。あれが噂のスイティエン公園か!

バスはメインゲート前に乗り付けた。おっかなびっくり降りる私を出迎えたのが下図。合成画像ではない。しょっぱなから手加減なしの剛速球。相手はどうやら相当本気のようだ…。

ようこそスイティエン公園へ
ようこそスイティエン公園へ
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いきなりすごいテンション

カエルである。金色である。目が赤である。その皮膚感、堂々とした五段腹、鋭利な爪、口にくわえた五円玉みたいな硬貨。しかもゆっくりと回転しているのである。

つっこまなくてもいい場所を探す方が大変だ。何でまたエントランスにフィーチャーされたのかは不明だが、このカエルはお金を司る神様なんだそうだ。
両側のキバみたいなやつもやばい
両側のキバみたいなやつもやばい
早くも完全に取り乱す私を横目にチュンさんはサクっと入場券を買ってくれていた。

「ちょ、ちょっとチュンさん、これ凄い!凄いですね!」
「中はもっと広くて凄いですよ」

どこか誇らしげに笑うチュンさんに差し出されたパンフレットを見る。 ……広い!
奥にかなり広い
奥にかなり広い
10年前にオープンしてから徐々に拡張し、現在何と約106ヘクタールもの広さだそうだ。106ヘクタールって遊ぶ場所の広さじゃないだろう。畑とかの広さだろう。
カエルの両脇のキバみたいなやつは白目の象が必死に支えていた
カエルの両脇のキバみたいなやつは白目の象が必死に支えていた
中には全部で40ものアトラクションがあるらしい。建っているだけのモニュメントをはじめ、水族館やら動物園やら観覧車もある。

このテンションのまま最後まで持つんだろうか…。とにかく気合いで全体をざっと回ってみることにした。
入り口を入ってすぐの塔。あまりにでかいせいで写真が絵のよう。塔の頭の部分は回転してた
入り口を入ってすぐの塔。あまりにでかいせいで写真が絵のよう。塔の頭の部分は回転してた
ベトナム神話のアトラクション入り口。突き出る鳥の首
ベトナム神話のアトラクション入り口。突き出る鳥の首
干支の像を祭るアトラクションの入り口。またキバだ
干支の像を祭るアトラクションの入り口。またキバだ
今度は支えるんじゃなくて口からキバをはやすスタイル
今度は支えるんじゃなくて口からキバをはやすスタイル
ただ、周りのプールをボートで回るアトラクションなのだが、まんなかのが派手
ただ、周りのプールをボートで回るアトラクションなのだが、まんなかのが派手
水族館の入り口
水族館の入り口
「あれを見なさい」
「あれを見なさい」
って言われても…
って言われても…
チュンさん曰く、「食虫植物の像ですね」
チュンさん曰く、「食虫植物の像ですね」
見事なほどにどいつもこいつも「俺が俺が」と激しく主張している。 さすがに文化が違うとここまで表現方法も変わってくるのか…などと、冷静を装ってはいるが正直、大混乱だ。なんなんだ、こいつらは。
気合いの入った像の隣で遊ぶ子供
気合いの入った像の隣で遊ぶ子供
「あ、あのチュンさんこの像って…」
「像は神話や宗教の物語に基づいたものが多いですね。凄い迫力でしょう。でもここから先は日本の遊園地と似てると思いますよ。トランポリンとかジェットコースターとか。売店も一杯並んでます」

そ、そうなのか…? 気を取り直してさらに奥地へと入っていきます。
園内の人々のゆるさにギリギリ癒される
園内の人々のゆるさにギリギリ癒される
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もう、かなりのとっ散らかりぶり

大きな音でロック調の音楽がかかっていると思ったら、屋根付きのステージでバンド演奏をやっていた。ここではコンサートや漫才が披露されるらしい。
電飾は当然のように回転
電飾は当然のように回転
見回すとフロアではかなりカジュアルに皆さんくつろいでいる。
超リラックス状態のフロア
超リラックス状態のフロア
「この公園は朝6:30オープンなんです。郊外から夜行バスで来るお客が多いから。昼になると公園のあちこちで朝早かった人が寝てるんですよ」

時間は丁度12時すぎ。お昼寝タイムということか。

さらに、寝っころがりながらみんな果物を食べている。自分ちか。果物はコンサート会場の脇の道が果物市場になっていて、そこで買ってくるんだそうだ。
フルーツマーケットには様々な果物が。これはドリアン。やっぱりくさい
フルーツマーケットには様々な果物が。これはドリアン。やっぱりくさい
で、みんなキロ単位で買って食ってる
で、みんなキロ単位で買って食ってる
なお、コンサート会場の柱にはぬかりなく細工が
なお、コンサート会場の柱にはぬかりなく細工が

ジェットコースター乗ろう

さらに奥に行くと、やっと普通の遊園地らしい場所が現れた。キャーッ! という悲鳴が聞こえる。ジェットコースターだ。

私もチュンさんも絶叫マシンは苦手ではないということで、2人乗り込むことにした。

混沌の遊園地の中で混乱しきった頭もこれでスッキリさせたいところだ。やや安全バーがゆるい気がするが気のせいだろう。
チュンさんは5年ぶりというジェットコースター。わたしも多分3年ぶりぐらい
チュンさんは5年ぶりというジェットコースター。わたしも多分3年ぶりぐらい
コースターが最初のインパクトまでゆっくりゆっくり上っていくのは世界共通らしい。両側に広い遊園地が一望できる。やっぱり広い。

「ほら、あの岩、行きにバスから見えた岩ですよ(ガタガタガタガタ コースター上る音) 」
「あ、本当だ。そういえばまだ岩のアトラクションって見てないですね。あれ、何なんですか?(ガタガタガタガタ )」
行きにバスから見えた岩だ!
行きにバスから見えた岩だ!
「あそこはプールなんですよ。大きいですよー(ガタガタガタガタ )」
「この遊園地、プールもあるんすか? でもなんでプールに岩?(ガタガタガタガタ )」
「ああ、じゃあ降りたら次はプールに行きましょうか(ガタガタガタガタ 、ピタッ)」
ピタッ
ピタッ
「はい、じゃあお願いしま、わわわ、わーーーーー!!きゃー!!」
わーーーーー!!!
わーーーーー!!!
まさかベトナムまで来てジェットコースターに乗るとは思わなかった。
「日本のやつの方がずっとエキサイティングでしょう?」

チュンさんは謙遜されるが、いやいや、むしろ、むしろです。

絶叫をもって無理矢理テンションをリセットしたところで、最後に例のでかい岩があるというプールを拝みに行きますか。
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岩、顔だった

プールは別料金の入場料が高いからと遠慮するチュンさんに入り口で待ってもらい、一歩足をプールコーナーに踏み入れた途端の景色が上の写真だ。

顔だったよ、岩。

その高さ、70メートルだそうだ。因みに先日窪塚洋介さんが落下したビルは26メートル。さすがにこの顔から落ちれば窪塚さんも助からなかったかもしれない。自宅で良かった(本記事は2004年初出ですが、時事ネタも趣深かろうとそのままにしました)。

でかいだけではなく見れば見るほど穏やかなその顔つき。ベトナムの初代国王の像だという。バスから見た岩は、この顔の裏側だったのだ。
プールの入り口はこんなかんじ
プールの入り口も一切気を抜かないこのテイスト
逆サイドには別の方も
国王の顔の逆サイドには別の方も
で、これ、滑り台の出口
で、これ、滑り台の出口
子供以上にはしゃいでいるプールの造形
子供以上にはしゃいでいるプールの造形
思いつく限りの派手をぶち込んだ龍
思いつく限りの派手をぶち込んだ龍
もう分かった、分かったから今日はこの辺で勘弁してくださいとお願いしたいほど、勢いは止まらない。
もうヒレというヒレが飛び出しまくり
もうヒレというヒレが飛び出しまくり
タコは空を飛び
タコは空を飛び
色とりどりの魚は群れる
色とりどりの魚は群れる
そしてやはり瞳孔は開かれたまま
そしてやはり瞳孔は開かれたまま
そしてまた顔
また顔
こんな事態を予想していなかったため水着を持ってきておらず、写真を撮るだけにとどまったのだが、水しぶきがふいに口に入ったら薄っすらしょっぱかった。海水を模しているのだという。肌にいいのだそうだ。

間違った方向と正しい方向へ、同時に至れり尽くせりだ。完全な全力投球ぶり。

さらに、でかい顔は内部が空洞になっていて、階段かエレベーターで目の高さまで上がることができる。せめてもの負けん気を発揮して意地で階段で登頂した。
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今日一日で一生分のなにか、派手な物を見た気がする。帰りのバスに乗り込んであまりのショックにボーっとしていると、チュンさんが、あっ!と言った。

公園の一番奥に、6,000匹のワニがうじゃうじゃいる沼でワニ釣りができるというアトラクションがあったのをすっかり忘れていたそうだ。そんなものまであるとは。完敗だ。ベトナムのテーマパーク、確かに大変なことになってました!

さらに別れ際、握手する手にぎゅっと力を込めてチュンさんが笑って言うには「ホーチミンの南にも同じような面白い遊園地があるので、次またベトナムにいらしたときにはご案内しますね」

なんと、まだ他にもあるのか…。ぜひまた案内、よろしくお願いします。(再録追記:チュンさんお元気だといいなあ)
お土産屋さん、右側はお面です。日本とだいぶ感じちがう
お土産屋さん、右側はお面です。日本とだいぶ感じちがう
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