特集 2017年12月7日

キミは製品についている取扱説明書を読むか?

取扱説明書、読んでいますか?
取扱説明書、読んでいますか?
私は取扱説明書のイラストを描く「テクニカルイラストレーター」をしています。
マニュアル製作会社に勤めていた頃、社員たちは「こんなの誰も読まない」が口癖で、私もそれに影響されて今まで「取扱説明書は読まれない」と信じ込んでいました。

「本当に取扱説明書は読まれていないのか?」気になりアンケートを取りました。
取扱説明書に関するアンケートなんて前代未聞でドキドキしました。
1987年埼玉生まれの栃木育ち・群馬県在住。
週末は群馬の温泉を巡っています。
漫画やイラストを描いたり、それに付随した講師もたまにしております。(動画インタビュー)

前の記事:人生の節目に憧れのフォークリフトの資格を取りに行った

> 個人サイト Nuki

アンケートの内容

11月9日~11月12日まで取扱説明書についてとったアンケートの内容です。
質問の内容
①製品についている取扱説明書を読みますか?
②読む人に質問です。読んでくれるのは何故でしょうか。
③読まない人に質問です。何かあった時には…?
④取扱説明書を読んでよかったことはありますか?(何かエピソードがあれば教えてください)。
⑤取扱説明書について何か疑問があればお願いします!
117の回答が集まりました!
⑤の疑問は最後にFAQ(困ったときは?)風に作りました。これでマニュアル業界にちょっと詳しくなれます。

①製品についている取扱説明書を読みますか?(回答数117)

あれ?みんな読んでくれるの?私の今までのもやもやは何だったの。
あれ?みんな読んでくれるの?私の今までのもやもやは何だったの。
読む人が70%以上もいるとは驚きました!
「取説は誰も読まない」と思い込んでいた自分が怖いです。むしろ「みんな読まないのでは?」と勝手に疑っていて恥ずかしさで顔が真っ赤になりました。
私が勤めていたマニュアル制作会社の様子。これって一種のマインドコントロールでは…?
私が勤めていたマニュアル制作会社の様子。これって一種のマインドコントロールでは…?

②読んでくれるのは何故でしょうか※複数回答可(回答数128)

だいたい予想はつくのですがあえて聞いてみました!
すごい!さわる前に読んでくれるなんて!私はまず製品に飛びついちゃう欲望派。
すごい!さわる前に読んでくれるなんて!私はまず製品に飛びついちゃう欲望派。
家電でもなんでも新品を買ったらまずはその製品をいじり倒したいじゃないですか。
さわる前に動作確認のため取扱説明書を読む精神力、尊敬します。
きっと目の前にケーキがあっても我慢できる人なのだと思います。私は我慢できません。

暇つぶし。という回答もあり「暇つぶしで取説に手が伸びるなんてどんなに暇なんだ!」と少し心配になりましたが嬉しいです。

その他の回答ピックアップ

・「活字中毒です。活字の書いてあるものは何もかもすべて読まないといられない性質なので」
・「製作者なので」
・「テクニカルライターなので」
・「テクニカルイラストレーターなので」
なんと!アンケート回答者にちらほら同業者さんがいました!
印刷関係の方もいてタッグを組めば取扱説明書を作れてしまいます。やっぱり同業だと「他社の仕事ぶり」が気になるようです。

私も製品の取扱説明書を見ては「こんなやり方があったか!」「ここはこうやらざるを得なかったんだな…」など同業他社に思いを馳せています。
さてここで、突然ですがコラムです。

【取説メモ1 取説に出てくるモデルはだれでしょう。答え.制作会社の人間かも】

社内のアイドル・顔に特徴がある人にしたり、イラスト担当者が勝手に自分にしている場合があります。(会社による)
社内のアイドル・顔に特徴がある人にしたり、イラスト担当者が勝手に自分にしている場合があります。(会社による)
勤めていた制作会社は なぜか取説に出てくるモデルはOさんという社内のオジサンの顔で統一していました。
現在は各国で使い回しができるように素体になりつつあります。

③読まない人に質問です。何かあった時には…?(回答数37)

「読まない」という回答が沢山あったらいたたまれないと思い保身のために作ったアンケートです。
読まないのに家に保管している。さてはツンデレ?
読まないのに家に保管している。さてはツンデレ?
なんだかんだ言っても見てくれていて嬉しいです。
「一切見ない」という回答があるのですが、それでも8%です。「取扱説明書は読まれない」って説(私の思い込みでしたが)はどこへ。
読まない人も「わからないときは見る」という事がわかりました。

【取説メモ2 イラスト・写真に出てくる物の比率に気を使う。】

取扱説明書は使う人を想定して絵を描いています。
例えば私がマニュアル制作会社で作成していた排気量が大きいバイク。男性が乗ることを想定して描いていました。
女性と男性の手では道具の見え方が違ってきます。私と夫の手で写真を撮るとかなりの違いが。
女性と男性の手では道具の見え方が違ってきます。私と夫の手で写真を撮るとかなりの違いが。
極端に手が大きかったり小さかったりしないようにしていますが、うっかりしていると忘れてしまいます。
取説を見ているとたまに巨人や小人さんが作業しているページがあり、物の大きさを注意してみると面白いです。

④取扱説明書を読んでよかったことはありますか?何かエピソードがあれば教えてください(回答数67件)。

マニュアル制作会社に居ると届くことのないお客様の嬉しい回答がたんまりきました。嬉しいお言葉を貰えて感無量です。
多数派の回答はこちら
・わからなかったことがわかった。
・知らない機能を発見した。
・そもそも使い方を間違えていた。
という感想がだいたいをしめていました。
時間がたってなんとなく読んだ時に「こんな機能が!」と興奮している傾向がありました。

回答ピックアップ

・「バラす前提で読める取説だと幸せ」ショートホープさん
・「説明書に書いてあることをしただけなのに、家族から「えっそんなことできるの、すげー!」と言われた。」ピロさん
・「WordとかExcelとかにまだ分厚い紙の説明書がついていた頃、熱を出して学校を休みベッドの中で動けず暇で暇で仕方なかったときにあれがたまたま手元にあってものすごく時間が潰せました。ついでに知らなかった機能も覚えました」あんぢーさん
・「出先でハンドルがロックしたとき、慌ててJAFを呼ばずに取説読んで良かった・・・(簡単に解除できる仕組みでした)」おおじろうさん
・「時計など多言語で書かれた取説は、英単語を知ったり同じ中国語でも北京語と台湾語の違いを知ったりできて面白い」かなうさん
このエピソード集を見て「取説を読まなくては!」と思ったのではないでしょうか。
取扱説明書は見る人によってヒーローになれたり、最高の教科書になったり、修繕費を節約できるものになります。
メーカーさん、取扱説明書にもっと予算を割いてくれ!

同業者回答ピックアップ

・「印刷物を作る仕事をしているので、誰かが締め切りに追われながら制作したんだなと思うと目を通さずにいられないので」kogeさん
・「テクニカルイラストを描く仕事をしています。購入した製品に付属してくる取説は必ず読みます。掲載されているイラストを拝見して、刺激を受けまくります♪」コトホギさん
・「誤記を見つけてほくそえむ」まきをさん
・「同業者の間違いを発見するとニヤリとするよ!あとは自分の仕事の参考にしたり」どりゃんごさん
私もそうなのですが、自分が取説を作っていると舐めまわすように見てしまいます。
無機質なイラストから描いた人のこだわりが見えた時は興奮しますね。
取説を見ている私の様子。気持ち悪いと言われてしまいます。何を見ているかというと、イラストの線の太さの使い分けです。
取説を見ている私の様子。気持ち悪いと言われてしまいます。何を見ているかというと、イラストの線の太さの使い分けです。
「逆に読んで困ることはないです」(カンさん)
という回答に一番衝撃を受けました。「キミが生きているだけで、存在しているだけでいいんだよ」と全部肯定された気がしました。
「私ってば何を悩んでいたんだろう」と目が冷めました。

【取説メモ・3テクニカルイラストレーターは絵が苦手ない人が多い。しかし絵心は無くても務まる職業】

取扱説明書のイラストは「テクニカルイラスト」といいます。
しかし「イラスト」とはいうものの、その作成過程は図面からイラストに起こすので製図に近いのです。
テクニカル「イラストレーター」だから絵心があるとはかぎりません。
説明ができてればいいので、少々デッサンが狂っていてもいいのです(会社による)。説明さえできていれば人は宙に浮いていていいのである。私はちゃんとやるぞ!
説明ができてればいいので、少々デッサンが狂っていてもいいのです(会社による)。説明さえできていれば人は宙に浮いていていいのである。私はちゃんとやるぞ!

次のページでは取扱説明書に関するみなさんの疑問に答えます。
いったん広告です

⑤取扱説明書について何か疑問があればお願いします!

まとめてダウンロードしてもお読みいただけます。

ずっとその業界にいると「これはこういうもの」と業界の常識が蓄積されて違和感を見過ごすことが多くなっていきます。
そこで、みんなの取説の疑問を聞いてみました!回答をみたらライティング関係の疑問が多かったです。

ちょうどいい機会なので全て答えました!
よせられた疑問が業界の闇を煮込んだ感じになっていてちょっと興奮しました。
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私はテクニカルライターにイラストを納品するところで仕事は終わりでライティングの事は詳しくありません。ライティング関係はユニットを組んでいる私の相方、テクニカルライターのもりれいさん(左・黄色)に答えてもらいました!説明書の記事なども執筆されています(リンク)。(撮影:ほりたみわさん)

取説についてのアンケートは前代未聞では?

取扱説明書は(予算と)性質上、どうしても真面目に固くなってしまいます。
そして今回アンケートをとって【取扱説明書は役に立つもの】ということを忘れていた自分がいました。取説は私の中では【読むもの】というよりは【作るもの】なのです。
今回のアンケートでは取説を読んでくれる人が多く、自分の仕事に自身が持てました。人に聞くってとっても大切。
ゲームは人生を救う。うちのニンテンドー64はまだまだ現役。マリオパーティをよくやります。
ゲームは人生を救う。うちのニンテンドー64はまだまだ現役。マリオパーティをよくやります。

私がマニュアル制作会社に勤めていた2011年頃、線画から3Dにするという試みがありました。
ベテラン勢が3D画面に酔って3D用スティックに苦戦する中、私は平気でした。その理由はニンテンドー64と64のジョイスティックに慣れていたからです。人類の進化をゲームの世代で感じた瞬間でした。
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