ビジネスポータルZ 2018年1月13日

浦島太郎の再発防止策を考える

書きたくないけどノウハウが溜まっている
書きたくないけどノウハウが溜まっている
ビジネスマンが書きたくない書類ナンバーワンは再発防止策である。
だが、書かなければいけない時期が日食ぐらいのタイミングでやってくる。

そのときのためにノウハウやフレーズをまとめたのだ。そのフレーズを活用してサンプルの再発防止策を書いてみた。

サンプルは浦島太郎である。
1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

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再発防止策を提出します

早速だがこのようになった。
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書いていたらだんだん本気になってしまって、「訪問しない、させない、鯛や平目に踊らせないの3ない運動」などの冗談を入れて暗くなるのを防いだ。

アクシデントも起きてないのに再発防止策を考える会を実施

こちらの再発防止策のフレーズは僕ひとりでひねり出したものではない。協力な心強い助っ人に登場願った。
編集プロダクションやじろべえから小野さん、そしてデイリーポータルZ ライターの井上マサキさんだ
編集プロダクションやじろべえから小野さん、そしてデイリーポータルZ ライターの井上マサキさんだ
井上さんはライターになる前は大手電機メーカーの関係会社で15年働いていた。
その経験があるせいか再発防止策のフレーズがぽんぽん飛び出すのだ。いったい会社で何をやらかしたのだろうか。

再発防止策の構成

再発防止策は以下がオーソドックスな構成である。オルタナティブを信条としているがこの手の書類に関してはアヴァンギャルド要素は一切必要ない。
経緯:
なにが起きたか

原因:
なぜ起きたか

対策:
今後どうするか
すぐできること
長期的にできること
スケジュール

締め:
エモく
浦島太郎もこの構成に準じている。それぞれの項目ごとにフレーズを考えた。

1.経緯:

なにが起きたか。ここは素直に書くのが得策。かつてトラブルの経緯をフローチャートにまとめてほめられたことがあるが嬉しくなかった。
ミスを「事故」「事案」「不具合」と書くと責任が個人に帰さないように見える。

2.原因:

悪いときだけに使われるフレーズがあるのでこれを散りばめる(あくまで実際のトラブルに応じて使いましょう)。
属人的
主観
思い込み
誤った認識
一人で判断
コミュニケーション不足
スキル不足
確認不足
認識不足
人員不足
リソース不足
リソースの欠如
ヒューマンファクター
操作ミス

3.対策

Aメロ、Bメロを経て言ってみれば再発防止策のサビである。すぐできることと長期的にやることに分けて考えるともっともらしい。いや、考えるのがよい。
各フレーズはコピペできるようになっています
各フレーズはコピペできるようになっています

3-1対策・準備段階

まずはなにがまずかったのかを探る。そのときのフレーズはこれらである。
関係各位へのヒアリングを行い
過去の事例を洗い出し
該当期間の記録を精査し
チームでの振り返りを行い
リスク評価
事実関係を整理し

3-2対策・みんなで知る

さて、なにが原因かがわかったらそれをみんなに伝える。「みんなに話す」だと森の仲間たちとおしゃべりしているみたいなので漢字にする。
課題を明確化する
関係者に周知し~
情報を共有し
ミーティングを行い
認識を揃え
注意喚起を行い

3-3 対策・すぐできること

それから簡単にできる対策である。「気をつけます」を硬く言う。
細心の注意をはらう
上長の判断を仰ぐ
一人で判断しない
自分ごととしてとらえ
意識の向上を図る
逐次フィードバックを行う

3-4 対策・少し時間がかかること

とりあえずの対策を書いたらもうちょっと時間がかかる対策である。

後から思い返せば
「このとき彼はこれが自分の仕事を増やすことになるとは予想だにしてなかったのである」
とナレーションを入れたくなるシーンである。
多重のチェック体制の確立
リソースの見直し
マニュアル化
ドキュメントの整備
基本動作に落とし込み
業務フローの見直しを行い
ITを活用した情報共有
知識の底上げを行い
手順書の見直し
タスクの整理と優先順位付け
「仕組み化」を行う
「仕組み化」「見える化」など簡単な言葉に「化」をつけるだけでビジネス用語っぽくなるが、料理を「食べる化」とは言わない。

3-5 対策・けっこう時間がかかること

もっと長期的な取り組みである。

書類を書いてるうちにテンション上がって無理めなことを書いてしまいがちだが、半年後意外な役員(監査役とか)に「あれどうなった?」と言われるので注意しよう。
専門部署と連携し
外部の専門家を招き
品質管理部署との連携も視野に入れ
ドキュメントを活用した教育
eラーニングを実施
グループワークを実施する
ケーススタディを含めた教育
教育体制を整え
勉強会・講習会
議論の場を設けます
「品質管理部署との連携も視野に入れ」は井上さん作だが、「視野に入れ」と実際にやるとは言ってないところに達人の腕を感じる。

フレーズの活用

ここまで紹介したフレーズは以下のような語尾をつけることが多い。「の計画と実行」「するとともに、~を行い」など動詞を2個つなげるのは政治家もよくやっている。
の計画と実行。
するとともに~する
とあわせ、
を推進します
の確立
の確保
を徹底し
確立は誤変換して「確率」としないようにしたい。再発防止策で誤字があると気まずさK点超えである。

4.締めはエモく

再発防止策に詳しい井上さんも「締めはエモく!」とアドバイスしていた。ただ「最後は人ですよ」「愛があるかどうかですよ」までエモくなくてよい。
フェイルセーフの考えにもとづき
人間は間違えるものであるという認識で
個人ではなく組織の問題として
真摯に受け止め
業務に望む所存です
組織の風土改革を

なんと楽しかった

再発防止策を考える会はとても楽しかった。実際のトラブルが起きてないのに
「Wikiまでは具体的に言わずにITを活用ぐらいじゃないですか」
「『関係各位へのヒアリング』はマストですよね」
「でた!『コミュニケーション不足!』」
などとディスカッションするのはこれまで人に披露できなかったスキルを自慢できてわくわくした。なにも起きてないときこそ再発防止策ではないだろうか。
爆笑
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