特集 2018年1月18日

電車の音が聞こえてホームに降りたら逆の電車じゃん問題

ホームまで行かなくても電車の状況が分かりやすい駅を探します
ホームまで行かなくても電車の状況が分かりやすい駅を探します
電車の音が聞こえてホームに降りたら、行きたいのとは逆向きの電車だった、てことないだろうか。

いまホームにどんな電車が来ようとしているのか、ホームに行かないと分からない。

でもそうじゃない構造の駅もあると知った。めぐってみた。
1976年茨城県生まれ。地図好き。好きな川跡は藍染川です。(動画インタビュー)

前の記事:地面に書かれた謎の記号から地下が見える

> 個人サイト ツイッター(@mitsuchi)

どんな問題なのか

こういうことありませんか。
改札をくぐったら、すでに電車の来る音が聞こえる。
改札をくぐったら、すでに電車の来る音が聞こえる。
自分の行きたい方向の電車が来てるのか? 階段の上からでは分からない
自分の行きたい方向の電車が来てるのか? 階段の上からでは分からない
ホームまで降りて初めて分かる。逆向きの電車だった。
ホームまで降りて初めて分かる。逆向きの電車だった。
こういうことってあまりにもよくある。そして、そういうものだと思っていた。

でもこれって駅の構造の問題なんだということに、このまえ初めて気づいた。「駅をデザインする」という本を読んだときだ。
「駅をデザインする」(赤瀬達三著、筑摩書房、2015年)
「駅をデザインする」(赤瀬達三著、筑摩書房、2015年)
本にはこうあった。

「(前略)東京の地下鉄では多くの駅で、階段の両側が壁で覆われている。このため上からホームの様子はまったく分からない」(208ページ)
両側が壁になってるからホームが見えない
両側が壁になってるからホームが見えない
いや、そのとおりだ。

実際、地上の駅だと階段の両側には壁がなくて、多少は見やすい。いうほどでもないけど。
JR巣鴨駅の例。ここが空いてて多少は見やすい。
JR巣鴨駅の例。ここが空いてて多少は見やすい。
本ではミュンヘン地下鉄駅を例にあげ、「階段の上下双方から互いによく見える空間がつくられれば、利用者のストレスは大幅に軽減できるはずだ。」(209ページ)という。
すてきなミュンヘン地下鉄駅
すてきなミュンヘン地下鉄駅
そうなのか。海外の駅、いいなー。

でも日本の、とくに東京周辺だと、こんなふうになってる駅はなかなか見当たらない。どこかにないのか。

本では、改札階とホーム階が違う場合に、改札階からホームの見通しがよい駅としてはJR田端駅が挙げられていた。

たしかにそうだ!
改札をくぐるとこんなふう。つきあたりの左右にホームへ降りるエスカレーターがある。
改札をくぐるとこんなふう。つきあたりの左右にホームへ降りるエスカレーターがある。
上からはホームの状況がよく見渡せる
上からはホームの状況がよく見渡せる
エスカレーターを降りながらでも状況が見やすい
エスカレーターを降りながらでも状況が見やすい
下からも上がよく見える
下からも上がよく見える
たしかにこれなら、電車の音がしてもホームまでいかずとも状況がよく分かる。田端駅のことをそんなふうに捉えたことは今までなかった。田端、すごいじゃん!

こんな駅は他にないんだろうか? 田端駅みたいなすばらしい駅を探してみることにした。
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工夫はある

田端みたいに見通しよくしようと思うと、相当な駅の作り替えが必要になる。なのでそれぞれの駅では、できる範囲で工夫がしてある。

たとえばJR横浜駅。
行先の表示板がここにある
行先の表示板がここにある
階段の根元に電光掲示板があるので、時計と見くらべれば、いま来てるのはどっち向きのどの電車なのかがいちおう分かる。

他にも、左右の壁のうち電車が来ている側に灯りをともす、みたいな工夫もあるようだ。

もちろん、田端みたいに一覧できる分かりやすさにはかなわないけど。

改札階からホームの見通しのいい駅をさがせ

田端みたいに見通しのいい駅を探したい。

そうなると、屋根を大きくとった大空間の駅ということになる。そういうのは西欧や中国など海外には多いらしい。
そんな駅の例、リエージュ・ギユマン駅。「ヨーロッパのドボクを見に行こう(八馬智著、自由国民社)」74ページより
そんな駅の例、リエージュ・ギユマン駅。「ヨーロッパのドボクを見に行こう(八馬智著、自由国民社)」74ページより
日本にはこんな駅あるかなあと思ったら、あった。大阪駅だ。
大阪駅、すばらしい。「定礎は南東にあるのか」(斎藤公輔さんのDPZ記事より)
大阪駅、すばらしい。「定礎は南東にあるのか」(斎藤公輔さんのDPZ記事より)
大阪駅はすばらしい。こんなに何路線もあるのに、すべてが一覧できる。分かりやすい。空間としても気持ちいい。

でも東京周辺にはこんなのないなあ。あるかなあ。

駅を思い浮かべてみる。新宿駅。ちがう。東京駅、違う。渋谷駅、ちがう。

でも、渋谷駅にはいちおうそれっぽいのがあるのでした。
改札階のこのガラスから副都心線ホームがのぞき込めるようになってまして
改札階のこのガラスから副都心線ホームがのぞき込めるようになってまして
のぞきこむと、こう
のぞきこむと、こう
いちおう、ホームが見える。

田端や大阪と比べると見通しは狭いけど、地下で制約が多いなかではこれが精一杯だったんだと思う。ほんとはもうちょっと見えてほしかったけど・・。

そういえば、横浜のみなとみらい線の駅は空間が大きかったような気がする。行ってみた。
みなとみらい線の元町・中華街駅
みなとみらい線の元町・中華街駅
地下鉄なのに天井が高い! 期待がたかまる。

ホームに降りるエスカレーターは奥にある。なので改札階からの見通しはよくない。ところが、エスカレーターをちょっと降りてみるとこれがいいのだ。
エスカレーターで降りていくと・・
エスカレーターで降りていくと・・
中腹で一気に視界が開ける!
中腹で一気に視界が開ける!
なので、ホームのかなり手前から状況が分かる。便利だし、気持ちもいい。
逆からみると、こう
逆からみると、こう
ホームの中ほどは、ふつうに天井が低い。エスカレーターの手前だけ天井を高くすることによって、見通しをよくしているのだ。

なるほどー。いいねー。
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千里中央駅があった

改札階とホーム階の見通しがいい駅といえば、大阪の千里中央駅があった。忘れてた。
ホームから見上げたところ。
ホームから見上げたところ。
階段の両側に壁がいっさいない。
改札階からホームを見たところ
改札階からホームを見たところ
見通しがいい。いま電車がちょうど来たのか、しばらく余裕があるのか、すぐ分かる。

すばらしい。東京メトロもこうなってほしい。

約束の地、みなとみらいへ

みなとみらい線は全般的に見通しがよくて素敵なんだけど、いちばん感動したのは、みなとみらい駅だ。

ホームを降りると、いきなりこんな景色。
地下鉄なのに、ホームの上が筒抜けになってる。
地下鉄なのに、ホームの上が筒抜けになってる。
本では、こういうパターンを「吹き抜けでつながるホームとコンコース」と書いてあった。なるほど、「ホームが筒抜け」よりそれっぽい。

そして上の階からの景色がこれだ。これを見たときは本当に感動した。
改札とホームを見下ろす
改札とホームを見下ろす
画面の左下にホームがある。改札に向かうエスカレーターを降りる人は、この時点でホームと電車のようすがよく分かる。実際、エスカレーターを利用する多くの人が電車を見ていた。

そして、画面右上にでかいガラス張りが見える。これもそれっぽく言うとカーテンウォールというようなんだけど、とにかく外の光が差し込んでるということだ。地下鉄に!

地下鉄のホームに日光が直で届いてる駅なんて、他にあるんだろうか。この駅は全体的に、お客さんが分かりやすいように、そして過ごしやすいようにという意図がバシバシ伝わってきて、感動した。

番外:改札とホームが同じ階ならふつうに分かりやすい

いままでの話は、改札階とホーム階が違う駅のことだった。といっても東京周辺のたいていの駅はそうなんだけど。

小さな駅だと改札とホームが同じ高さにあるので、これまでの話は関係なく、ふつうに見通しがいい。
分かりやすい!
分かりやすい!
だからすべての駅がこんなふうなら、それはそれでいいんです。

みなとみらい線はいい

まず、田端を見直した。サマンサ田端とか言ってる人は反省したほうがいい。ぼくのことだ。

それから、日常のちょっとした「不便だな」という感覚を忘れて、そういうものだと思っちゃいけないということだ。

みなとみらい線の駅は空間が広いなと思ってたけど、ちゃんと意図があってそうしてるんだと、はじめて理解できました。

あと、いくらホームのようすがわからなくても、階段を駆け下りたり、かけこみ乗車はやめましょう。ぜったい。

なお、今回の記事作成にあたって知人の大貫剛さんにアドバイスをもらいました。ありがとうございました。
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