特集 2018年2月9日

スマートスピーカーはどこまで沖縄の事を理解してるのか

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スマートスピーカーが話題だ。声をかけるだけで、天気予報やニュースを聞けたり、色々な質問に答えてくれたりする。

そんな未来のガジェットは沖縄のことをどれだけ知っているのだろうか。ぜひ問うてみたい。
新潟出身。沖縄に来てそろそろ15年くらい経つのに泳げないため全然沖縄を満喫できていない気がする。最近の悩みは高血圧。

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未来がやってきた

さて、話題のスマートスピーカーである。デイリーポータルZでも呼び名をお母さんにしてみたり他の女の名前で呼んでみたりとネタにされているのを見て、ついつい買ってしまった。しかも二つも。

ところで音声に反応するアシスタントといえばiPhoneのSiriを思い浮かべる方も多いのではないだろうか。かつてiPhoneにはじめて日本語版のSiriが搭載された時にどこまで沖縄の苗字を理解してくれるのかというのを試したことがあるのだが、いくら言っても「喜屋武(きゃん)」を認識しなかったり「根路銘(ねろめ)」が「ねろうね」だったりと沖縄のことには少々疎かった。2012年のことである。
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そして2018年の今、スマートスピーカーはどこまで沖縄の事を知っているのだろうか。教えて!スマートスピーカー!

それでは今回検証するために用意したスマートスピーカーを紹介していこう。

Google Home(グーグルホーム)

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Google HomeはGoogle社が販売しているスマートスピーカー。音声認識に定評があるらしい。形は餅っぽい。「オッケー、Google」と話しかけることで色々できるのだが、ちょっと恥ずかしい。

Amazon Ehco(アマゾンエコー)

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Amazon EhcoはAmazonが販売しているスマートスピーカー。欧米で最も普及しているらしい。アマゾンプライムという有料サービスに加入しているとスピーカーから買物できるのだが、たまによく分からないものを購入させられそうになる。この前息子が熱心にしゃべってると思ったらへんなものを買わされそうになっていた。押し売りか。かけ声は「アレクサ」。

他にもにスマートスピーカーにはLineから発売されている「Clova」というアシスタントを搭載したものが発売されているのだが、そこまで購入する勇気がなかった。

沖縄に関する質問にスマートスピーカーはなんと答えるか

まずは小手調べから。「沖縄」について教えてもらおう。
「沖縄」って何?
ウィキペディアでは沖縄県は日本で最も西に位置する県であり、沖縄本島・宮古島・石垣島など多くの島々から構成されるとされています。
こんな説明が見つかりました。沖縄は、日本海軍の海防艦。
初っぱなからものすごいことになった。どちらも恐らくウィキペディアから得た情報を答えてくれたのだが、アレクサが読み上げたのはは「沖縄 (海防艦)」という項目の説明。沖縄の事を知りたくてスマートスピーカーに聞いたのに、思わずネットで日本海軍の海防艦「沖縄」のことを調べてしまった。

続いてはこんな質問をしてみよう。
沖縄県の県庁所在地はどこ?
10件以上見つかりました。1番目は那覇市の泉崎の1丁目2-2にある沖縄県庁舎でここから3キロメートル先です。
沖縄県の首都は那覇市です。
グーグルホームは位置情報に基づいた沖縄県庁舎を、アレクサは回答的にはあってるのに県庁所在地ではなく「首都」という言い方。

続いてはこんな質問を
「スクガラス」って何?
「スクガラス」とはアイゴの稚魚を塩漬けにしたもので、県内スーパーではだいたい販売されている。主な食べ方は豆腐に乗せて食べるのだが、逆に言うと他の食べ方を聞いたことがない。さて、スマートスピーカーは何と答えるのだろうか。
関連すると思われる情報がウェブで見つかりました。大城海産物加工所によるとスクガラス:スクガラスはアイゴの稚魚を塩漬けにしたものです。塩が効いている一品ですが、沖縄ではお酒のつまみとして豆腐の上にのせて食べるのが一般的です。
すみません。よくわかりません。
ウィキペディアにもスクガラスについての情報が載っているのだが、グーグルホームは一歩踏み込んで大城海産物加工所といサイトから概要を検索して教えてくれた。ちょっと未来を感じる回答で地味にすごい。アレクサはもっとがんばれ。
沖縄県の大きさを教えて
沖縄県の面積は2,271平方キロメートルです。
沖縄県の面積は2,271平方キロメートルです。
これは両方クリア。

以前Siriで試した時に判明した音声認識の鬼門中の鬼門。「喜屋武(きゃん)」についても聞いてみよう。ちなみに喜屋武は沖縄の地名でもあり、苗字に喜屋武さんという人もいる。
「喜屋武」って何?
ウィキペディアでは『CanCam』(キャンキャン)は、小学館の発行による月刊女性ファッション雑誌とされています。
こんな説明が見つかりました。ちゃんは父親を指す略式語。幼児語に派生すると思われるという意味です。
どっちもわりと酷い結果になった。続いて聞いてもフランスのワインだったり父だったりやはり喜屋武の聞き取りは難しそうだ。

しかし聞き方を変えて
「南風原喜屋武(はえばるきゃん)」に行きたい
と聞くと
現在地から喜屋武まで車で行く場合、県道241号線と県道82号線が最適ルートです。渋滞が無い場合、所要時間は約18分です。
すみません。わかりません。
グーグルホームはほぼ完璧な答え。これは単純に聞き方の問題だったのかもしれない。アレクサはまだ経路情報などを調べることができないらしく、わかりませんとの回答。
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聞くことが無くなってきたので、沖縄の辞典的なものから単語をピックアップしてちょっと突っ込んだ沖縄のことも聞いてみる事にした。
「神人(カミンチュ)」って何?
神人は琉球王朝時代から脈々と受け継がれてきた沖縄の祭祀を司る役職のこと。主に女性がなることが多く、今でも集落の祭祀などを取り仕切っていたりする。ではスマートスピーカーはどのような回答をするのだろう。
女神。
すみません。今は分かりませんがもっと勉強しておきます。
グーグルホームは当たらずとも遠からず。しかし何かを勘違いしている気もするモヤモヤした回答。
「ビタロー」って何?
ビタローはフエダイ科の魚の方言名で沖縄では素揚げしたものにバターをかけたバター焼きという料理で出てくることが多い。海鮮料理屋でよく見かける魚である。スマートスピーカーの回答は以下。
すみません。よくわかりません。
こんな説明が見つかりました。鬼太郎は、水木しげるの漫画『ゲゲゲの鬼太郎』の主人公である妖怪。
ここにきてアレクサがグーグルホームが答えられない質問に回答したかと思ったらまさかの鬼太郎だった。そうきたか。しかも鬼太郎を「おにたろう」と読み上げたので一瞬意味が分からなかった。

他にも「百十踏揚(ももとふみあがり:第一尚氏王統第六代国王・尚泰久の娘。)」についてグーグルホームはウィキペディアから情報を読み上げることに成功。「沖縄慰霊の日はいつ」という質問についてもアレクサが「わかりません」という回答をしたのに対して、グーグルホームは総務省のサイトから「6月23日」である旨をきちんと調べることがでた。沖縄の質問についての回答はグーグルホームのほうがきちんと対応できているようだ。

スマートスピーカーは沖縄民謡を再生できるのか

続いては「音楽をかける」という機能について検証してみよう。この2つのスマートスピーカーでは「○○の音楽をかけて」みたいな発話で音楽を再生する機能を持っている。それぞれ使用している音楽サービスが異なる(グーグルホームはSpotify無料版、アレクサはamazon unlimited music)ため、そもそも曲のラインナップは違うのだが、以下のような質問をしてみた。
「沖縄民謡」をかけて
Spotifyで沖縄民謡を再生します…(時間があって)…すみません。エラーがおきました。もう一度試して下さい。
沖縄民謡ミュージックを見つけられませんでした。
グーグルホームは何度やってもエラーが起きて再生できず。一応「沖縄民謡」という言葉はちゃんと認識しているようだ。アレクサは有料サービスに登録しているにも関わらず楽曲を見つけられないとの回答に。

ちなみに本件と全く関係無いのだが、アレクサで息子と「おっぱいがいっぱい」を流そうと日々努力しているのだが一度も成功したことがないのだ。なんとなくだが、アレクサでは「おっぱい」という言葉が規制されているのではないだろうか。グーグルホームは「おっぱいがいっぱいを再生します」と言ってくれるのだが、やはりエラーが起こって未だおっぱいがいっぱいを聞けた事がない。

スマートスピーカーで沖縄のものは買えるのか

さて、最後はスマートスピーカーから商品の購入を試してみよう。この機能は現在アレクサのみ(アマゾンプライムというサービスに加入している人のみ、ちなみにグーグルホームは買物リストが作れる)なのでアレクサで沖縄のものを買えるのかを検証してみることにする。
「泡盛」を買って
泡盛はみつかりませんでした
「久米島の久米仙」を買って
「久米島の久米仙」は具体的な泡盛の商品名である。
「くめのくめせん」はみつかりませんでした
なかなか見つからない。じゃあこれならどうだ。
「ちんすこう」を買って
雪塩ちんすこうが見つかりました。購入しますか?
あんなに沖縄の質問では「わからない」を連発していたアレクサだったが商品の購入となるとかなりの精度で商品を提示してくれるようだ。他にも「ゴーヤーマン」だったり「シーサー」でも商品がヒットして回答が帰ってきた。スマートスピーカーでは割と沖縄のものが買える。…しかし、読み上げ機能のみなので商品名と価格だけで購入するのは結構ハードルが高そうな気がする。

未来はもうちょっと先なのかもしれない

というわけでスマートスピーカーにいろいろと沖縄のことを聞いてみた。スマートスピーカーは想像していたよりもずっと沖縄の事を知っていたが、実用レベルかと言われればまだまだ厳しい感じではないだろうか。ただ検証を終えて、そんな駄目なところもちょっと可愛く思えてきた。これがスマートスピーカーの魅力なのかもしれない。たぶん。

各スマートスピーカーとも処理はインターネットを通して行われているので、どんどん精度も上がっていくと思うし、すでに色々な会社や人が開発したサービスを機能追加できるのでそのうちスマートスピーカーが沖縄方言を理解し、沖縄方言でしゃべるかける、沖縄の事ならなんでも答えてくる、そんな日もやってくるのかもしれない。
ちなみに検証していて気づいたのだがグーグルホームはすでに「ハイサイ(沖縄方言でこんにちは)」を理解してくれた。この調子で頑張って欲しい。
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