特集 2018年4月12日

青山のおしゃれじゃないところを伝えたい

前職時代に愛用していたわたしの好きな青山たち
前職時代に愛用していたわたしの好きな青山たち
4月である。上京したてで「都会って、東京ってこわい」と思っている人もいるかもしれない。なかでも、港区付近は敷居が高いと思われがちなエリアのひとつなんじゃないだろうか。おしゃれなマダムがつやつやした犬を連れて歩いていたり、大きな皿にちょこんとだけ載った高価な食べ物が提供されるお店がたくさんあると思っている人もいるかもしれない。

たしかにそういう風景もある。だが、そればかりじゃない。大丈夫だ。
そんな気持ちと共に、独断で寄せ集めたおしゃれじゃない「青山」をお伝えしたい。
1981年群馬県生まれ。ライター兼イラストレーター。飲食物全般がだいたい好きだという、ざっくりとした見解で生きています。とくに好きなのはカレー。(動画インタビュー)

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元職場が青山です

とはいえ、そもそも「青山」ってなんだろう。厳密にいうと、港区にあるのは北青山と南青山で、ただの「青山」という地名はない。だけど、わたしたちはしばしば「青山」の存在を思い「青山」ってあんなところだなぁ、こんなところだなぁと思い思いに感じている。「青山」って概念みたいなものなんだろうか。
そこで、ライター6名に「青山」のイメージを描いてもらった。
そこで、ライター6名に「青山」のイメージを描いてもらった。
トルーさん
トルーさん
犬かわいい。そして、犬の飼い主の肩幅と帽子のツバ部分のでかさよ。
北向さん
北向さん
おお。全体の空気感から発するタイプの絵がきた! ちなみにこのタッチは、おしゃれ感を出すために限定的に使ったもので、ふだんからこういう絵を描いているわけではないそうです。
與座さん
與座さん
「ヨックモック」「PRADA」。逆にすごい具体的だ。この名前と、豪華そうな形をしたビルの形のタッグ効果で、白黒なのに彩度が増す気がするのがすごい。
井口さん
井口さん
文字情報だ!ごはんの値段は切実だ。そして「仕事できそう」と書いてあるのにどきどきした。仕事はそんなにできてなかったが6年以上青山で働いていた人間(わたし)もいる。
さくらいさん
さくらいさん
「島根イン青山(図の右側に書いてある)」ってなんだ……? 聞いたところ、青山にある、島根をコンセプトにしたホテルらしい。デザインクロスのモチーフは、島根特産のしじみ。ホームページを見てみたら「都会らしく島根らしく」とも書いてあった。島根、すげえな。
江ノ島さん
江ノ島さん
おしゃれ、そして墓のイメージらしい。ちなみに「おしゃれ町」と描いてあるすぐ右横あたりの絵はカフェらしい。当てた人は「よくわかりましたね」と筆者本人から言われていた。
解読中
解読中
と、総じてみなさん「おしゃれ」を感じているような気がする。だが実際は、わたしのように野良着でうろついているような者でも、すこやかに過ごせる空間は確かにそこにあったのだ。
稀に飲み会で行った店のデザートの盛り付け方に衝撃を受けたこともあったが
稀に飲み会で行った店のデザートの盛り付け方に衝撃を受けたこともあったが
声を大にして言いたい。あの街には魚民も和民も笑笑もあるのだと
声を大にして言いたい。あの街には魚民も和民も笑笑もあるのだと
とくに愛着のある4つを選んだのでお伝えしたい。ちなみに外苑前駅周辺に偏っているのは、わたしの元職場の最寄駅が外苑前駅だったからである。

立ち食いそば屋が味わい深い

まず伝えたいのが大好きな立ち食いそば屋だ。まずこの店の外観が、
こちらです。
こちらです。
このいでたちです。
このいでたちです。
となりは高い料理のお店です。
となりは高い料理のお店です。
食べ物に対峙する前からすでに堪らない。自動販売機にお金を入れ、ボタンを押して出てくるのは、すこし年季の入ったのっぺらぼうのプラスチックプレートなのである。
自販機も良い。
自販機も良い。
風情。
風情。
夜は1人できりもりしていることが多いようだ。
夜は1人できりもりしていることが多いようだ。
出てくる食べ物も最高だ。特筆したいのはトッピングの昆布。麺を覆い隠す勢いで、わっしゃーこんもりと盛ってもらえる。その姿がうれしすぎて、見るたびに写真におさめてしまいがちだ。
もっさもっさ。
もっさもっさ。
そして、よくわからないメニュー「旨塩」。
そして、よくわからないメニュー「旨塩」。
名前だけじゃどんなメニューか想像しづらいのだが、食べたあとでもどんなメニューなのだかを説明するのがちょっと難しい気がしている。
こんな見た目をしている。
こんな見た目をしている。
ありのままを伝えるとこうだ。塩ラーメンのスープ(たぶんインスタント)の中に、うどん(もしくはそば)が入っていて、その上にハムとたまごの天ぷらが乗っかっている。たまごはいい具合に半熟。好みでラー油をどうぞと差し出されることもある。

なぜ、この組み合わせにしたのだろうか。奇怪すぎないし、無難すぎてもいなくて、必然性があるかどうかも判断ができなくて、想像が及んでいかないのだが、そういう微妙なさじ加減がたまらない。

食べてみると、なんだか、なんとなく、ああ、これはなんだか良いものだなぁと、じわじわと美味いがせまってくる。塩ラーメンスープに浸されたうどんは、めんつゆに浸っていたころよりもだいぶケミカルだ。立ち食いそばが、必死にジャンクになってみた姿なのだろうか。

ちなみにこの日は奮発して「旨塩」に、昆布ととろろ芋のトッピングを試みたのだが「旨塩」のトッピングの要であるハムの天ぷらが品切れだったため、店主が「代わりに好きな天ぷらを頼んでいいよ」と言ってくれた。
そしてたまねぎの天ぷらを選びでてきたやつ。卵も天ぷらになってないやつが載っていた。
そしてたまねぎの天ぷらを選びでてきたやつ。卵も天ぷらになってないやつが載っていた。
もはや「旨塩」なのはスープだけだった。なんだろう、この柔軟さ。
もはや「旨塩」なのはスープだけだった。なんだろう、この柔軟さ。
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食欲とおしゃれは共存できる

次は肉を食らいたい。仕事を毎日しているとふと、重そうなお肉をざっくりと盛られたお米と共にがっつり食べたいと願う日があった。そんな日によく行っていたのが「くいしんぼ」だ。「くいしんぼ」、その言葉の持つイメージをそのまま体現したようなチェーン店である。ちなみに、恵比寿、下北沢、中目黒などにも店舗があるらしい。
こんな店構えです。
こんな店構えです。
昼時に行くと、もりもりと米と肉を消費しているサラリーマンがわっさわさしていて、その勢いにつられながら、いきおいよく米と肉を平らげるのが爽快だった。ちなみに米のおかわりは自由だ。
ごはん。けして丁寧に盛られていない感じがいい。
ごはん。けして丁寧に盛られていない感じがいい。
久しぶりに来店したのだが
久しぶりに来店したのだが
かつてよりもスワローズ応援体制が強化されたような気がする。
かつてよりもスワローズ応援体制が強化されたような気がする。
鉄板のジュージューという焼き音も、野性味あふれていてたまらない。
鉄板のジュージューという焼き音も、野性味あふれていてたまらない。
ハンバーグの上にどっしりと鎮座しているアボカドは2分の1カットサイズ。アボカドを出し惜しみしないお店は良い店だと思う。ありがとうと言いたくなる。
ありがとう。てっぺんに生姜が載っているのはなんでだろう。
ありがとう。てっぺんに生姜が載っているのはなんでだろう。
店内のイラストの風情。
店内のイラストの風情。
正月が終わってない。
正月が終わってない。
クリスマスもだった。
クリスマスもだった。
この店を出るとき、もうちょっと食べられるな……とおなかに余裕を感じる日はまずなかった。その思い出はぜんぶ輝いている。

味以外の理由で行きたくなるラーメン屋

次はラーメン屋に行っときたい。すごく正直にいうと、味を理由には推していない。この店は、おいしいとかまずいじゃないのだ。
こちらです。
こちらです。
木彫りの熊の顔が壁に張り付いている。
木彫りの熊の顔が壁に張り付いている。
ビール飲みたい時とかに行きたくなる。
ビール飲みたい時とかに行きたくなる。
つまみもある。
つまみもある。
うめえ。
うめえ。
店員さんも周囲のお客さんも、適度にほっといてくれるから、一人でぷらっと飲みたくなった時とかに寄りつきたくなるのである。
トイレの表記が「WC」になっているの、なんだか最近ぐっと減ったような気がするのは気のせいなのだろうか。
トイレの表記が「WC」になっているの、なんだか最近ぐっと減ったような気がするのは気のせいなのだろうか。
トイレのデンキ、このアナウンスないとかなり迷う。
トイレのデンキ、このアナウンスないとかなり迷う。
この日は、20代くらいの男性2人組が、きのこかたけのこを選べといったのに、アルフォートを選んだ人について言及しながら飲んでいた。その状況でアルフォートを選ぶの、たしかに心が強いと思う。

そっとパンダを推している中華料理屋

ここが最後だ。
この店。
この店。
シャンシャン。
シャンシャン。
地下に続く階段を歩いて行くと
地下に続く階段を歩いて行くと
入り口の手前で出迎えてくれるのはパンダの生首である。
入り口の手前で出迎えてくれるのはパンダの生首である。
ちなみにトイレにもパンダが充実している。
ちなみにトイレにもパンダが充実している。
電気もパンダである。
電気もパンダである。
ここで好きなメニューは「酢辣麺(すらーめん)」である。字面が(スーラータン)っぽいのだが、なんというか絶妙に食べたことのない味をしている。
酸っぱいうまい。
酸っぱいうまい。
あんかけのような質感のニラまじりのスープは、ひたすら酸っぱくて、しょうゆっぽい味もする。この味が大好きすぎて、自分がなにかいいことをすると連れてきたくなるお店だ。



編集担当の橋田さんにも来てもらった。橋田さんもすっぱいものが大好きらしく、ラーメンには途中でお酢を入れる派らしい。わたしもだ。ちなみに餃子のたれは9割強お酢でつくる。

わたしらふたりが満足する酸っぱさとはつまり、けっこう酸っぱいと考えたほうがいいかもしれない。
味、濃いけどおいしいという反応。酢を足さなくても食べられた!と言っていた。
味、濃いけどおいしいという反応。酢を足さなくても食べられた!と言っていた。
わたしは、たまには違うやつ頼もうと思いパイコー麺頼みました
わたしは、たまには違うやつ頼もうと思いパイコー麺頼みました
パイコー麺も美味い!
パイコー麺も美味い!
それにしても昔は壁、こんなきれいな打ちっぱなしじゃなかったような気がするんだよな……
それにしても昔は壁、こんなきれいな打ちっぱなしじゃなかったような気がするんだよな……
と思っていたら、これ、壁紙だ!
と思っていたら、これ、壁紙だ!
壁紙なの、伝わるだろうか。
壁紙なの、伝わるだろうか。
そういうところがたまらなく好きなのである。大丈夫だ。もしかしたら、今見ているおしゃれな景色は、このお店の壁紙みたいなものかもしれない。

というのは極端すぎるかもしれないが、そういう場合だってあるのだ。

ばったり昔の上司に会った

橋田さんに同行してもらった時のことだ。席に座って、メニューを開きはじめたあたりだっただろうか。昔上司だった人が、友人らしき人を2人くらい引き連れて飲みにきているところにばったり遭遇した。隣の席にいたのだ。元職場の最寄駅でうろうろしていれば、こういう機会はきっと少なからず起こることなんだろう。でも、元上司と橋田さんが同じ空間にいることが、無性に不思議でならなかった。
あと、本文に入れきらなかった余談なんだが、最近できたばかりの外苑前駅前のドトールのディスプレイが、若干狂気じみていて良かったです。
あと、本文に入れきらなかった余談なんだが、最近できたばかりの外苑前駅前のドトールのディスプレイが、若干狂気じみていて良かったです。
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