特集 2018年5月29日

モノレールから見える「ポンジュース」の看板と記念撮影した

わからないことが多いと、ついちょっと知っている場所に近寄ってしまうときもある
わからないことが多いと、ついちょっと知っている場所に近寄ってしまうときもある
何があるかわからない場所がある。

何かあるかもしれないけど、何もないのかもしれない。もし、大々的な観光資源や、楽しげな娯楽施設や飲食店などがそこにあるのならば、すでに話題になっている可能性が高いだろう。話題になっていないということはつまり、大々的な何かはないのかもしれない。

でも何かしらはあるんじゃないだろうか。本当に何もない場所なんてない気がしている。

これは、そんな思いで散策をはじめ、高ぶり、ラーメンが伸び縮みするボールペンを衝動買いするまでの記録です。
1981年群馬県生まれ。ライター兼イラストレーター。飲食物全般がだいたい好きだという、ざっくりとした見解で生きています。とくに好きなのはカレー。(動画インタビュー)

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空港以外がよくわからない沿線

そんなわけで「何があるかわからない場所」に向かった。選んだのは東京モノレール沿線である。東京モノレールは、浜松町駅と空の玄関口、羽田空港をつなぐ鉄道だ。空港に行く用事がある時に乗りがちな一方で、空港に行く用事がないとなかなか乗る機会がない。
年を重ねた焦げ茶色に胸がぎゅっとなる、東京モノレールのレール
年を重ねた焦げ茶色に胸がぎゅっとなる、東京モノレールのレール
「天王洲アイル」「天空橋」、かっこいい駅名が多いなぁと感じたり、車窓に見えた昭和島駅のモノレール車庫にどきどきした記憶はあるのだけど、ずっと降りそびれていた。駅の先の世界はどうなっているのだろう。
降り放題の、1dayパスを買ったところ「沿線お散歩」と書いてあった
降り放題の、1dayパスを買ったところ「沿線お散歩」と書いてあった
「散歩」の意味をあらためて確認してみたところ、「特別の目的をもたずに、気の向くままに歩くこと。散策。」(三省堂/大辞林 第三版)と書いてあった。
駅は全部で11駅
駅は全部で11駅
おぼろげながらも「何かを探したい」という目的を持ってしまっているのは、「特別な目的」に該当してしまうだろうか。わからないけど、なるべく気の向くままに歩いてみたい。

ちなみに、そう思ってググらないでいようと心がけていたら、当サイトで13年前に1度、東京モノレール各駅停車の旅が行われいたことが後々わかってかなり動揺した。ググらなすぎも危険である。

天王洲アイルにはがっしりとした水門があった

まず浜松町から天王洲アイルに向かう。光沢感のありそうな名前だなぁと、通り過ぎるたびに思っていた。
もし「天王洲アイルさん」という人がいたら、その人のお家には中庭があり、そこには薔薇が植えられているんじゃないかと思う
もし「天王洲アイルさん」という人がいたら、その人のお家には中庭があり、そこには薔薇が植えられているんじゃないかと思う
そんな天王洲アイルに降り立ったとき、ハッと目についた建造物があった。
こちらです。大きい。わたしの部屋いくつ分だろう(不毛な計算)
こちらです。大きい。わたしの部屋いくつ分だろう(不毛な計算)
これは「天王洲水門」という名前で、高潮や津波などによる、潮位の上昇による浸水を防ぐために整備されたものだという。
水門、肉眼ではじめて見た。絵はたぶんかもめ
水門、肉眼ではじめて見た。絵はたぶんかもめ
でかいものに急に遭遇すると、ただただ「すごい」しか発せない生き物になってしまいがちだ。この日も10回くらい繰り返していた。まわりに人がいなくてほんとうによかったと思う。
反対側からの姿も良い。ほんとはもっと接近して仕組みの細部を眺めたい
反対側からの姿も良い。ほんとはもっと接近して仕組みの細部を眺めたい
ただ、正直なところ写真よりも実物のほうが大きかったのになぁ、とも思う。どすーんと目の前に立ちはだかるその存在感が、フレームにおさめた途端、実物以上には伝わらなくなっちゃう現象は、でかいものあるあるなのか、それともわたしの技術の問題なのか。前者であってほしい。
水門周辺に流れている川のようなものは、高浜運河。時折船が通過していく
水門周辺に流れている川のようなものは、高浜運河。時折船が通過していく
ちなみにこの周辺、建造物も川もベンチも、構成要素のほとんどが大きい。
かなり存在感のあるベンチ
かなり存在感のあるベンチ
こちらのベンチも、一見ナチュラルな風貌でありながら大きい。通常のベンチがおにぎり1個分だとすると、おにぎり2個分くらい。
こちらのベンチも、一見ナチュラルな風貌でありながら大きい。通常のベンチがおにぎり1個分だとすると、おにぎり2個分くらい。
地面に足が届いていない
地面に足が届いていない
地面に届かない足をぶらぶらさせていたところ「しばらくここでぼーっとしていたい」という気持ちになりはじめた。ただ川の流れだけ見ていたくなる。大きいものに囲まれると、心もゆったり、大きくなるものなのだろうか。
時間の流れ方、比較の図
時間の流れ方、比較の図
気が大きくなって、お腹空いてないのにアメリカンドッグを買ってしまった
気が大きくなって、お腹空いてないのにアメリカンドッグを買ってしまった

大井競馬場周辺の公園のゆったり感は尋常じゃない

続いて大井競馬場駅に向かう。
大井競馬場駅、駅舎の骨組みがすごい
大井競馬場駅、駅舎の骨組みがすごい
駅名からして、少なくとも近くに競馬場がある。心の準備はしていたのだが、到着してみたら想像以上に馬のにおいがした。いる。馬たちは、確実に近くにいる。
においのイメージ
においのイメージ
とても躍動感のある写真
とても躍動感のある写真
馬のいる世界ってこういうことなのか……!という興奮が高まる一方、この日の競馬場はがっしりと閉まっていた。馬には会えない。ならば、どこへ行こう。
と思った先にあったのがホームセンターとスーパー。あとサイゼリヤ
と思った先にあったのがホームセンターとスーパー。あとサイゼリヤ
個人的に最高な組み合わせだ。好きな場所にはいつだって立ち寄ってしまう。どうにかサイゼリヤは自粛したものの、ホームセンターをふらふらしたあと、スーパーのお惣菜に手をのばしてしまった。
心のままに買ってみたら、酒の肴っぽいラインナップだった
心のままに買ってみたら、酒の肴っぽいラインナップだった
お父さんではないけど食べたい
お父さんではないけど食べたい
ほや! 
ほや! 
なお、さっきから背景に写り込んでいる緑色は公園である。買ったお惣菜を即座に広げて、ゆったりと食べられる公園を、駅の対岸に見つけた。そういう場所、どこかしらあるんじゃないかなーと漠然と思っていたものの、想像していた以上だった。

ひと気が少なく、刺身を広げていても空気に違和感がうまれない。景色もよいので、食事がすすむ。最高な場所との遭遇である。
とても静かな公園。けっこう本格的に森が茂っている
とても静かな公園。けっこう本格的に森が茂っている
周囲には、釣りしている人、ほぼ動かず静かにあぐら組んで、瞑想するでもなくぼーっとしている人、猫に囲まれながらスケッチしている人などがいたが、みんな周りを気にしている様子はまるでなく、鳥だけが激しく鳴いていた。
背後の森、数十匹、いや数百匹くらい鳥がいそう
背後の森、数十匹、いや数百匹くらい鳥がいそう
ここがもし家の近所だったらしょっちゅうごはん食べにくるだろうと思う。でも片道約1時間となると、なかなか大変だ。だから以後、わたしはこの場所に何度も足を運ぶことはないのかもしれない。

最高な場所との遭遇とか言っておきながらなんなんだろう。公園との距離感ってむずかしい。

何かありそうだと食いついてしまう心の弱さを流通センターで知る

つづいて流通センター駅
つづいて流通センター駅
ところで「流通センター」って聞くと、脳裏に「東京靴流通センター」がよぎってしまう呪いってありませんか。
ちなみに「靴流通センター」とは、流通センターという名の靴屋だ
ちなみに「靴流通センター」とは、流通センターという名の靴屋だ
駅舎の窓に空が写り込んでいる
駅舎の窓に空が写り込んでいる
駅前には周辺の地図があり、そこから、どうやらこの周辺には公園が多くあることや「海苔のふるさと館」があることがわかった。内心、周辺になにもなかったらさみしいなぁと思っている矢先に見つけた「館」の文字。この言葉がついていると、何か歯ごたえのあるものがありそうに感じる。
若干遠いが行ってみたさが沸く
若干遠いが行ってみたさが沸く
ついでに手書きで描かれた「東京港野野鳥公園」にも興味が沸く
ついでに手書きで描かれた「東京港野野鳥公園」にも興味が沸く
そして行ってみてわかったことがある。「わたしは野鳥と海苔の歴史にあまり興味がない」ということだ。自分の興味の有無を無視してはいけなかった。これはひとつの教訓である。
行く途中にあった、はじめて見るトラックの側面はなんだか良かった
行く途中にあった、はじめて見るトラックの側面はなんだか良かった
あと、周りの建物の高さ
あと、周りの建物の高さ
工場や道路など、まわりがものすごく大きくて、対する自分がものすごく小さい生き物のような気がしてくる。たのしい。ガリバーの逆のような状態だ。
あと、大田市場への道案内のイラストが味わい深くてよかった
あと、大田市場への道案内のイラストが味わい深くてよかった

天空橋駅の近くには天空橋があり、その先には銭湯があった

うっかり昭和島と整備場の駅を通りすぎてしまい、天空橋についた
うっかり昭和島と整備場の駅を通りすぎてしまい、天空橋についた
天空橋。天と空、どちらも地上じゃない。神話に出てきそうな名前だ。そして、やっぱり思ってしまう。近くには「天空橋」という名前の橋があるのだろうか。
画像はイメージ
画像はイメージ
あった
あった
「天空」という言葉から勝手に寒色を想像していたのだが、暖色でびっくり
「天空」という言葉から勝手に寒色を想像していたのだが、暖色でびっくり
駅のモチーフはジェットエンジンだそうだ
駅のモチーフはジェットエンジンだそうだ
なお、橋を超えた先には路地の細い住宅街があって
なお、橋を超えた先には路地の細い住宅街があって
犬の糞にまつわる注意喚起が、電柱にがっつりとくくりつけられていて、
犬の糞にまつわる注意喚起が、電柱にがっつりとくくりつけられていて、
寺社の鳥居のような色合いの銭湯があった
寺社の鳥居のような色合いの銭湯があった
流通センター駅周辺で感じていたガリバーの逆転現象から、もとの世界に戻ってきたような気持ちになった。近所と似ている。2階くらいの戸建て住宅が多かったりして、街を構成する要素の大きさが同じくらいなのだ。
さらに気になるものも見つけた
さらに気になるものも見つけた
ポンジュースの看板だ。この看板、東京モノレールを使って羽田空港に行く機会が多い人限定でおなじみな気がする。羽田空港方面行きの列車が天空橋駅に向かう途中、トンネルに入る手前くらいのところで、右手側に見える。
車窓から見るとこんな感じ(撮影のベストタイミングは逃しました)
車窓から見るとこんな感じ(撮影のベストタイミングは逃しました)
近くで見ると大きいんだろうと思っていたが、やっぱり大きかった
近くで見ると大きいんだろうと思っていたが、やっぱり大きかった
セルフタイマーを発動して記念撮影した
セルフタイマーを発動して記念撮影した
見慣れたものを慣れない距離で見る機会に恵まれると、うれしくなって近寄ってしまいがちなことがわかった。記念撮影をしたのは「ここまで来た以上は、その記録をのこさねば」という、謎の使命感にかられたからだ。なお、もし興味のある人がいたら、駅から徒歩10分くらいなので、ぜひ足を運んでみてほしい。

残りの駅は急ぎ足でいきます

気がつくと30000歩くらい歩いていた。ふだん1日5000歩くらいしか歩いていない人にとっては激しい衝撃だ。
なので整備場駅では
なので整備場駅では
近隣から駅舎を撮影するに留まり
近隣から駅舎を撮影するに留まり
昭和島駅では
昭和島駅では
フェンス越し、モノレールがすごく近くにきているところを眺めて
フェンス越し、モノレールがすごく近くにきているところを眺めて
新整備場駅では
新整備場駅では
飛行機と夕日をながめ、
飛行機と夕日をながめ、
羽田空港に到着したころには、足に蓄積された疲労感をしみじみ感じながら、とてもぼんやりとしていた。
浮かれている箸っていいなぁとぼんやり見つめていた。おかしい人だと思われてなかったか心配である
浮かれている箸っていいなぁとぼんやり見つめていた。おかしい人だと思われてなかったか心配である
そんな矢先に出会ったボールペン。麺が伸び縮みする
そんな矢先に出会ったボールペン。麺が伸び縮みする
気がつくと、羽田空港国際ターミナル内にある「伊東屋(文房具屋)」で衝動的にラーメンが伸び縮みするペンを見つめていた。

レジに向かったら「1080円です」と言われてびっくりした。値段を見るのは忘れていたのだ。1000円を超えるボールペンを買うのは、はじめてである。この流れじゃないと買っていなかったかもしれない。大切にしたい。

旅行と似ている

何があるかわからない場所にいくと、何かないだろうかと探す気持ちが普段以上に強まり、その結果、歩き慣れない距離をいつの間にか歩いていたり、元々そんなに興味がないところでも、「もしかしたらおもしろいかもしれない」と行ってみようとしたり、買い慣れないものを買ってみたりしてしまったりすることがわかった。

と書いてみてふと思ったんだが、それ、旅行と似ている。
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