特集 2018年5月30日

神々しいまでの美ハブ発見!ハブのいる島めぐり渡名喜島~久米島 

ハブが綺麗ですね(I Love You)
ハブが綺麗ですね(I Love You)
デイリーポータルZの記事でたびたびお伝えしてきたが、ハブを探してハブのいる島を回っている。そんなハブ好きの私の遍歴の最大の汚点が「ぜんぜんハブ見つけられてないじゃんかばか」という、存在意義が根底からそよいだりゆらいだりするものである。

でもね、今回は見つかったんですよ。しかもハブだけでなくかなりの珍蛇とも出会う事ができたのだ。むろん、私の力ではない。
1975年神奈川県生まれ。毒ライター。
普段は会社勤めをして生計をたてている。 有毒生物や街歩きが好き。つまり商店街とかが有毒生物で埋め尽くされれば一番ユートピア度が高いのではないだろうか。
最近バレンチノ収集を始めました。(動画インタビュー)

前の記事:殺し屋参上! 天文館のシロアリビルを訪ねて

> 個人サイト バレンチノ・エスノグラフィー

いざ渡名喜島

沖縄本島から60kmほど西、那覇と久米島のほぼ中間に渡名喜島という小さな島がある。
どうですかこの小ささ。
どうですかこの小ささ。
知名度は低く、私も正直よく知らなかったが昨年の夏、久米島でハブ情報をいろいろ教えてくれたネイチャーガイドの保玖村(ほくむら)さんが「隣の渡名喜島にもハブがいるから今度行ってみなさい、それでまた久米島にも来なさいね」と提案してくれた。
昨年の久米島取材にて。保玖村さんは携帯電話に私を「ハブ伊藤」と登録していた。
昨年の久米島取材にて。保玖村さんは携帯電話に私を「ハブ伊藤」と登録していた。
異論の挟みようがないご提案だったので一生懸命働いて費用を捻出し、那覇の泊港から渡名喜島へ向かうフェリーに乗り込んだ。
「ニューくめしま」その名のとおり那覇~渡名喜~久米島を結ぶ船。
「ニューくめしま」その名のとおり那覇~渡名喜~久米島を結ぶ船。
トレードマークのイルカがロン毛っぽい。
トレードマークのイルカがロン毛っぽい。
泊(那覇)~渡名喜の航路。渡名喜島の西にある入砂島は米軍の演習場となっており周辺の海域は立ち入り禁止。
泊(那覇)~渡名喜の航路。渡名喜島の西にある入砂島は米軍の演習場となっており周辺の海域は立ち入り禁止。
自販機が暴走してコーヒーががんがん送出されていた。
自販機が暴走してコーヒーががんがん送出されていた。
見えてきた。山が伸び伸びと連なってるな。
見えてきた。山が伸び伸びと連なってるな。
泊港を出て2時間ほどで渡名喜港へ到着。
コンパクトでかわいいターミナル。
コンパクトでかわいいターミナル。
南北の山に挟まれた集落に400人弱が暮らしているこの島には大きなホテルも24時間営業のコンビニもない。
人通りのなさよ。
人通りのなさよ。
港のそばにいきなりいい擬木をみつけた。
港のそばにいきなりいい擬木をみつけた。
いわゆるリゾートのような喧噪とは無縁の、ただゆったりと時間が流れる穴場スポットである。
「赤瓦の宿 ふくぎ屋」に宿泊。なんと赤瓦の古民家まるごと貸切り。
「赤瓦の宿 ふくぎ屋」に宿泊。なんと赤瓦の古民家まるごと貸切り。
集落の路地では赤瓦の屋根やふくぎの並木など沖縄の原風景を味わう事ができる。
視界をさえぎる青々としたふくぎ並木をかきわけるようにして散策するのが楽しい。
視界をさえぎる青々としたふくぎ並木をかきわけるようにして散策するのが楽しい。
曲がりくねった石塀サイコー。
曲がりくねった石塀サイコー。
集落を少し離れると山と海が織りなす絶景のオンパレード。
崖下に石を積んで作った通路(アマンジャキ)昔は満潮時に海岸線の道が使えなくなるためここを使っていたという。実際通行するのは怖かっただろうな。(現在は通行禁止)
崖下に石を積んで作った通路(アマンジャキ)昔は満潮時に海岸線の道が使えなくなるためここを使っていたという。実際通行するのは怖かっただろうな。(現在は通行禁止)
海辺の崖アイドル イソヒヨドリ。
海辺の崖アイドル イソヒヨドリ。
とんでもない透明度の海、満潮時にはウミガメが見られる。
とんでもない透明度の海、満潮時にはウミガメが見られる。
目つきがいかついハブ注(ハブ注意看板)
目つきがいかついハブ注(ハブ注意看板)
急峻な坂道が続き、小さな島とはいえ歩いて回るのは容易ではないが歩いて回ったほうがいい。へらへら歩いても3時間程で周遊道路を1周できる。
展望台がいたるところにある。人はこんなにも展望に飢えているのだ。
展望台がいたるところにある。人はこんなにも展望に飢えているのだ。
海を見下ろす展望台で海中の解説を見る。
海を見下ろす展望台で海中の解説を見る。
島尻毛散策道からの眺め。一面の緑から顔を出すカリカリの岩石がクール。
島尻毛散策道からの眺め。一面の緑から顔を出すカリカリの岩石がクール。
こんな感じで、この島での過ごし方はまあとにかくのんびりとぶらぶらする事に尽きるのだが、私のぶらぶらは夜も続く。
ヤモリが東芝のところに出てきたら出陣。
ヤモリが東芝のところに出てきたら出陣。
夜はフットライトで道がライトアップされる。これも見ごたえあり。
夜はフットライトで道がライトアップされる。これも見ごたえあり。
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ついにハブ登場

林道に入るとアカマタが早速顔を出す。
私にとってはビーチやハイビスカス、ゴーヤチャンプルー以上に南国情緒を感じさせてくれるヘビだ。
おばんです。
おばんです。
ヘビは危険を感じるとくさいにおいを出すがアカマタのそれはずば抜けてくさい。つかんでにおいをかがされるとしばらく近寄るのを躊躇する程のくささだ。
私も仕事で怒られたらくさいにおいを出せば身を守れるかな。

大自然でたくましくサバイブする彼らの叡智はコンクリートジャングルでおびえて暮らすか弱き我らに思わぬ気付きを与えてくれる。週明けから出していこう、くさいにおいを。
いいから離せこのヤロー。
いいから離せこのヤロー。
北の風が吹き込み、やたら気温が低いのが気になっていたが爬虫類はあまり活動的でない感じである。
シリケンイモリ、間違えてつけられたっぽい模様がいい。
シリケンイモリ、間違えてつけられたっぽい模様がいい。
轢かれるかと思う程にでかいヤシガニ
轢かれるかと思う程にでかいヤシガニ
時間が経つにつれ側溝でくねくねしている世界最小のヘビぐらいしか見かけなくなってしまった。
ブラミーメクラヘビ。どう見てもミミズだがヘビ。ちなみにこいつもくさい攻撃をする。
ブラミーメクラヘビ。どう見てもミミズだがヘビ。ちなみにこいつもくさい攻撃をする。
頭部を拡大、ほら、ヘビでしょ。
頭部を拡大、ほら、ヘビでしょ。
ライトの充電が切れて携帯電話だけになってもハブぶらぶらは続く。
ネコがこわい。
ネコがこわい。
アップダウンの激しい林道を歩き回って畑のほうとかも回って6時間が過ぎた。ハブはまったく姿を見せない。実家にでも帰ったのか。
ハブだ!(違う)
ハブだ!(違う)
歩き通しで疲れ果てた足をひきずるようにして、もうこのままこっちがヘビになるわなんちゃってとか思いながら山道をゆくと、すぐ先で曲がっていたでかい何かがまっすぐになろうとしていた。
ハブじゃん!(違くない)
ハブじゃん!(違くない)
全長約1.3m程の立派なハブが道を塞ぐようにして横たわっている。小躍りしてシャッターを切る。
なにこのかっこよさ。
なにこのかっこよさ。
昨年、久米島で出会ったハブには一瞬で逃げられた。なのでじっくり観察する初めての野生のホンハブである。
ハブの体色や模様(斑紋)は住んでいる島や個体によってもいろいろ異なるが、渡名喜島で見たこのハブは黄褐色の地に刻まれた精巧な斑紋が美しい典型的な沖縄本島タイプだった、とか言わせてください。今こそ、見てきたようなことを。
戦慄のテヘペロ
戦慄のテヘペロ
とにかく神々しいまでに美しい。美ハブだ、村一番の美ハブだ。もう美肌とか地デジみたいに言ってしまおう。
威厳にみちた表情。ハブに生まれてよかったって顔をしている。
威厳にみちた表情。ハブに生まれてよかったって顔をしている。
美ハブはこっちをチラ見しながら悠然と姿を消した。
お先しまーす。
お先しまーす。
もう人前に現れるんじゃないよと思ったが、この時間だとむしろこっちがそっち前に現れてるな。すんませんでした。
ルンルン下山の深夜2時
ルンルン下山の深夜2時
ハブ酒などで知られているようにハブには滋養強壮の効能があると言われている。本当のところはどうなんだかよくわからないが、とろけるほどに疲労困憊した1人のおっさんを完全に蘇生、スキップで帰すだけの力は間違いなく、持っていた。
まあ2日探して1匹見られただけだったんですが。
まあ2日探して1匹見られただけだったんですが。
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久米島がいい感じだった

渡名喜島に別れを告げさらに西の久米島へ。先に述べたとおり、昨年の夏、ついにハブを見つけたが瞬時に逃げられた悲しみの島だ。
久米島のターミナルもシンプルでかわいい。
久米島のターミナルもシンプルでかわいい。

珍蛇降臨!

夜にうれしい出会いがあった。林道を捜索しているとゆるいカーブの前方に明かりが見える。よく見ると若い男性が、屈むというか四つん這い状態で一心に一眼レフカメラのシャッターを切っていた。

なんだトカゲモドキでも見つけたのかと思ったら「いや、クメジマハイですよ!」だって。
まじだ!クメジマハイ!
まじだ!クメジマハイ!
昨年このヘビの死体を見つけた。それだけでもかなり運がいいと言われたがまさか2回目の来島で生きたクメジマハイが見られるとは!

コブラ科のハイというヘビの亜種で、久米島の固有種である。小さいながらもハブより強い神経毒を持つ。
性格がおとなしくまず咬まないと言われているがれっきとした毒へビなので要注意。
性格がおとなしくまず咬まないと言われているがれっきとした毒へビなので要注意。
生息数も少ない上に生態も謎に包まれていて久米島に住んでいる人でもめったに見かけないという。
この尻尾で刺して走っている馬をも殺すという迷信があるが実際そんなのは到底ムリ。馬でかくて速いしね。
この尻尾で刺して走っている馬をも殺すという迷信があるが実際そんなのは到底ムリ。馬でかくて速いしね。
「いやーこのヘビの良さをわかる人に会えてうれしいです」と通りがかりの私にクメジマハイを心ゆくまで観察させてくれたナイスガイは鷹野(たかの)さんといい、あの平坂さんを輩出してしまった琉球大学で生物学を学びながら各地でヘビを中心に生物の写真を撮影しているという。「ハブが好きすぎて琉球大に入りました」おお、ハブ好きだ、しかも私の2000倍くらいハードコアーだ。

ハブも発見!森林での琉球大生の頼もしさ半端ない

「久米島でハブだったらこの道をしつこく探したほうがいいです」鷹野さんにアドバイスをもらい、うろうろすると若々しいハブに出会うことができた。
彫り物のような斑紋がくっきり、健康ランドで入場断られるなこれは。
彫り物のような斑紋がくっきり、健康ランドで入場断られるなこれは。
久米島のハブは独特で、体の模様がシンプルで都会的な感じになっているものが多いがこのハブは渡名喜島で見たような沖縄本島型だ。
これがシンプルで大人の装いを見せる久米島型のハブです。久米島ホタル館での飼育個体。
これがシンプルで大人の装いを見せる久米島型のハブです。久米島ホタル館での飼育個体。
残念ながら久米島型のハブを見つける事はできなかったが、鷹野さんからは「こっちのほうが珍しいですよ!」とはげまされた。
また久米島に行く理由ができてそれはそれでうれしい。
また久米島に行く理由ができてそれはそれでうれしい。

かってないハブ充の旅となった。それもみな島で会った名人達のあたたかい支援のおかげだ。ハブを通じたコミュニケーションが生まれ、チャンスが拡大された成果である。
これこそまさにハブがハブ(HUB)になったという事ではないかと書こうとしてやめたほうがいいよと思い直したけどもう書いちゃった。
久米島のホテルのディスプレイが素朴でよかった。
久米島のホテルのディスプレイが素朴でよかった。
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