特集 2018年6月22日

夢に出てきた工場でシャツを作るのが夢

こういうめくるめく工場の海の夢を見ます
こういうめくるめく工場の海の夢を見ます
「工場萌え」であるぼくは、年に一度ぐらい「今まで見たこともないすごい工場」の夢を見る。

複雑で巨大な構造物がどこまでも続く光景に「どうしていままでここを知らなかったんだ!」と興奮して写真を撮ろうとしたそのときに目が覚める。

なんだ夢か……と落胆して、枕を涙で濡らす。そんなことで泣くな、とお思いかもしれないが、ほんとうに悲しい。

悔しいのでその光景を再現してみようと頑張った、というのが今回の話です。
もっぱら工場とか団地とかジャンクションを愛でています。著書に「工場萌え」「団地の見究」「ジャンクション」など。(動画インタビュー

前の記事:すごく気になる「手描き間取り図」

> 個人サイト 住宅都市整理公団

全国の工場、夢の共演

結論を言うと、上の冒頭写真がその再現。この写真を見てもらうのが本記事の目的で、以上終了。なのだが、これで終わってはなんなのでその過程などをご紹介しよう。
今回制作した夢の全体。→こちらに大きな画像が置いてあります。同好の士のみなさんは壁紙などにしてみてください。
今回制作した夢の全体。→こちらに大きな画像が置いてあります。同好の士のみなさんは壁紙などにしてみてください。
装置の大きさやパースなどが狂っているが、夢なので許してほしい。

これはいままでぼくが撮った工場が9枚合成されている。
手前は有田の製油所。これだけで十分夢のようではある。
手前は有田の製油所。これだけで十分夢のようではある。
中腹を固めるのは工場鑑賞会における関東の雄、川崎。
中腹を固めるのは工場鑑賞会における関東の雄、川崎。
もちろん四日市も夢に参加。
もちろん四日市も夢に参加。
鹿島も欠かせない。
鹿島も欠かせない。
周南はふつうに夢に出てくる。すばらしいよね、周南の工場。
周南はふつうに夢に出てくる。すばらしいよね、周南の工場。
宇部も入ってます。
宇部も入ってます。
全国の製油と化学系工場が一堂に会したまさに夢の光景。

とはいえ、夢の中のものはもっとすごかった。どうすごかったのかを自分に対しても説明できないのが悔しい。なんせ夢だから。

おそらく、光景的にはこの合成画像の方がダイナミックなはず。でも夢特有の感情操作にはかなわない。かなしい。
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四十肩との戦い

夢にはかなわないのには、ひとつ理由がある。

もっと大量の工場写真を合成したかったのだが(工場写真ならハードディスクにいくらでもある)、やってみたら制作がけっこうたいへんだったのだ。

実際、この画像作るのに1ヶ月ぐらいかかっている。暇を見つけて少しずつ作業してそれぐらいだ。
合成にあたっては、一枚一枚、手作業で切り抜きをした。これがすごくしんどかった。
合成にあたっては、一枚一枚、手作業で切り抜きをした。これがすごくしんどかった。
「ほしい部分だけが自動で綺麗に切り抜かれる」というPhotoshopのデモがよくあるが、あれはうそだ。ぜんぜんうまくいかない。結局手作業がいちばんだった。たぶん領域選択アルゴリズムに工場の場合が想定されていないのだろう。
このためにペンタブを引っ張り出した。来る日も来る日も切り抜き。あやうく工場が嫌いになるところだった。
このためにペンタブを引っ張り出した。来る日も来る日も切り抜き。あやうく工場が嫌いになるところだった。
いや、たぶんぼくのやり方が下手くそなだけなのだろうとは思う。きっといくつかの方法を賢く組み合わせればそれほど労力をかけずにちがいない。仕事でモデルの髪の毛を切り抜いている人などには鼻で笑われそうだ。
切り抜きのマスクの色が赤かったため、作業途中の画面が構成主義っぽかった。これはこれでかっこいい。
切り抜きのマスクの色が赤かったため、作業途中の画面が構成主義っぽかった。これはこれでかっこいい。
いずれにせよ、もくろみでは50枚ぐらいの写真を合成してめくるめく工場の大海原を現出させるつもりだったのだが、今回は断念。この中途半端さが夢に及ばない理由だ。無念。

なぜ断念したのか。それは目下ぼくが四十肩に悩まされているからだ。
ここのところ痛み止めの湿布に詳しくなったよ。
ここのところ痛み止めの湿布に詳しくなったよ。
右肩と左肩、交互に四十肩が襲ってきた。半年前は左だったけど、いまは右がいたい。
右肩と左肩、交互に四十肩が襲ってきた。半年前は左だったけど、いまは右がいたい。
切り抜き作業の姿勢はほんとうにつらくて、湿布を貼りまくっております。
切り抜き作業の姿勢はほんとうにつらくて、湿布を貼りまくっております。
ペンタブレットで工場の細かいパイプを切り抜く、という作業はなぜか肩だけではなく、二の腕および一の腕も痛くさせる。つらい。

というか、いま書いて思ったが「一の腕」って使わない。そもそも肘を境にどっちが「一」か「二」かって、ぜんぜん直感的じゃない。

「上腕」「前腕」っていう言い方も変だし。なぜ「上下」あるいは「前後」に統一しないのだ。腕界は混乱している。

とにかく、四十肩が夢の実現を阻んだ、ということだ。いずれ四十肩でなくなったら、100枚ぐらいを合成したい。
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団地スカートと工場シャツの夢

さて、団地マニアでもあるぼくは「すごい団地に出会う夢」もしばしば見る。

街を歩いていたら理想の団地が突如現れ、大興奮でカメラを取り出すと……あとは工場と同じだ。

「理想の団地」って何だ、って話ですが、これも説明が難しい。いくつか要素はあるが、やっぱり「大きい」というのはポイント。

で、この「夢の団地」に関しても以前画像合成したことがある。
視界いっぱいにどこまでも続く都営団地。大きな画像は→こちら
視界いっぱいにどこまでも続く都営団地。大きな画像は→こちら
これを作ったのは数年前で、四十肩になやまされていなかったので楽しく快適に作業できた。

なにより工場のように細かい切り抜きが必要ないのがいい。団地ってすばらしい。

で、過日、妻が急にこの夢の無限団地の画像がほしい、と言ってきた。いいよ、とデータをあげたらこんなものを作って帰ってきた。
団地スカート! ちょうすてき!
団地スカート! ちょうすてき!
自分で好きな柄の布を作って、それでスカートを作るワークショップに参加したのだという。なぜ団地にした。いやすてきだけど。

ワークショップの担当者は変な顔してなかった? と聞いたら「理解を示してくれた」とのこと。いい人だ。

ちなみにこの夢の団地の元は拙著団地写真集の表紙にもなっているすてきな団地。
自分の本のなかでいちばん好き。
自分の本のなかでいちばん好き。
梁と柱が印象的なこのテクスチャは都営団地の特徴。このスカートに名前をつけるとしたら「都営スカート」になるだろう。

ともあれ、この妻の所業を見て思ったのだ。夢の工場も生地にしたらすてきなのでは、と。

話の流れ的には「こちらがその夢の工場布地でーす!」となるべきだが、まだそこまでいっていない。この「工場柄布地を作ってくれる人募集」っていう感じだ。

残念ながらぼくはスカートをはかないので、シャツあたりを作りたい。完成予想図としては以下。
こういう感じ。イメージ画像なのだが、思ってたよりうまく加工できてしまった。
こういう感じ。イメージ画像なのだが、思ってたよりうまく加工できてしまった。
やっぱり100枚ぐらい合成して、もっと工場の柄が細かい方がいいような気がする。四十肩がよくなりしだい制作しよう。

都営シャツも作りたい

いつかシャツの制作を記事にしよう。これこそ新たな夢だ。
タータンチェックとかギンガムチェックに加えて「団地チェック」を普及させたい。
タータンチェックとかギンガムチェックに加えて「団地チェック」を普及させたい。
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