とくべつ企画「怖いはなし」 2018年6月25日

本当はガチで怖い文房具

文房具は怖いということをもっと知って欲しい
文房具は怖いということをもっと知って欲しい
普段から仕事や勉強に使われている文房具だが、みんな、ちょっと使う時に油断しすぎてないだろうか。

基本的にファンシーなキャラクターがついてたり、夢々しくカラフルだったりする文房具だが、実はかなり怖いヤツもいるということを、ぜひ知っておいてもらいたいのだ。

わりと本気で命の危険がありそうなのも、精神に食い込んできそうなのもいるので、くれぐれも注意していただきたい。

※この記事はとくべつ企画「怖いはなし」のうちの1本です。
1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

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本格的に危険度の高い文房具

初っ端からで恐縮だが、使い方をミスると命も危ない系の文房具から紹介していこう。
小学生男子が考えた最強のハサミっぽいビジュアル。
小学生男子が考えた最強のハサミっぽいビジュアル。
見た目と製品名に1㎜の乖離もなくて恐縮だが、これは『包丁バサミ』というものだ。

もちろんと言っちゃなんだが、製品名と機能も全くズレることなく包丁とハサミがくっついたものである。シンプル。そして怖い。
刃を開くと、あー、やっぱそうくるよなー、という感じ。危険すぎる。
刃を開くと、あー、やっぱそうくるよなー、という感じ。危険すぎる。
しかもこれがまた、良く切れるのだ。

なんといっても、刃物の本場である岐阜県関市で作られた、包丁としてガチのやつだから。
これまでも料理中にうっかり包丁で指を切ったことはあるが、これはうっかりが相当なダメージになりそうな予感しかない。
これまでも料理中にうっかり包丁で指を切ったことはあるが、これはうっかりが相当なダメージになりそうな予感しかない。
コピー用紙程度なら、スーッと切れる。ヘタすると刃の自重だけでさっくり両断できるんじゃないか。

さすが関の刃物、冗談では済まない切れ味だ。
魚もさばけるハサミ、という表現でいいのか。
魚もさばけるハサミ、という表現でいいのか。
そしてさらには、分解すれば普通に包丁としても使える。

それならもう最初から包丁で良かったじゃないか、と思わなくもない。これ購入して以降、いまだに包丁がハサミになっているメリットが見出せずにいる。

危険性は無さそうだが、意味が分からなくて怖い文房具

さて、続いてもうひとつ包丁の文房具をご紹介しよう。

えっ、そんなに包丁の文房具ってあるのか?と驚かないで欲しい。僕が持ってるのもこれだけだ。
やたらとギラつきのある中華包丁型。
やたらとギラつきのある中華包丁型。
昨年に仕事で中国に行った際、たまたま見つけて購入したものだ。

日本ではあまり見慣れない形だが、パッケージにもちゃんとそう書いてあるので、間違いなく包丁型の文房具なはず。
ほら、ちゃんと「KITCHEN KNEF」と書いてあるだろう。
ほら、ちゃんと「KITCHEN KNEF」と書いてあるだろう。
謎のブルース・リー風が描かれてはいるが、文字で「KITCHEN KNEF」とあるからには包丁なんだろう。

見れば見るほど謎が深まる方向にしか進まないが、機能的には単純明快。
包丁型の、修正テープでした。
包丁型の、修正テープでした。
柄と刃をパコッと分解すると、中から現れたのは修正テープのヘッドである。

日本人はすっかり「消えるボールペン」に馴染んでしまったが、中国人は修正テープが大好きらしい。

文房具問屋が並ぶ問屋街に行くと、修正テープ専門の問屋が何軒もあったりするぐらいだ(これも修正テープ問屋で買った)。

見てるとじんわり怖い、精神に来る系文房具

包丁(刃物)というプリミティブな怖さが続いたので、次はまた別の怖いやつを行ってみよう。

見てるだけで精神がザシザシと削られていく系の文房具だ。
最近またパンダ流行ってるしね。“クッチャー”の字がややホラーコメディみある。
最近またパンダ流行ってるしね。“クッチャー”の字がややホラーコメディみある。
これまたパッケージが謎っぽいが、『えんぴつけずり えんぴつクッチャー』と書いてあるので、少なくともこのパンダが鉛筆削りであるということは理解できる。

だいたいホラーなんかでも、一番怖いのは「理解できない恐怖」だと言うじゃないか。その点、こいつは「ああ、口に鉛筆入れて削るんだな」というのも見れば分かるので、やや安心だ。
口に鉛筆を突っ込んで、後ろのハンドルを回して削るんだな、というところまでは見て取れる。
口に鉛筆を突っ込んで、後ろのハンドルを回して削るんだな、というところまでは見て取れる。
目が虚ろで視線が定まってない辺りはちょっと怖い気もするが、まぁ「パンダちゃん、かわいー」と声に出して呼びかけてみれば、気持ちも落ち着くだろう。

では落ち着いたところで、実際に鉛筆を入れて削ってみよう。
クッチャ…クッチャ…クッチャ…
無理無理。キモイキモイ。怖い怖い。

パンダが鉛筆をくわえて、クッチャクッチャとねぶるように食べていくのだ。クッチャーという名前は、そういうことだったのか。

パンダ自体がシリコンで作られており、ハンドルを回すとそれに連動して顔が歪む。それがこの動きになっているのである。

なんというか、気がつけば鉛筆だけじゃなくて自分の指までクッチャ…クッチャ…と食われていきそうで、怖い。目が虚ろなパンダに指から少しずつ食われていくのは、間違いなく恐怖だろう。

人間の尊厳まで奪う、怖い文房具

最後は、これもまた精神に来る系。しかも、何一つ理解できない怖いやつだ。
帯の「この本を破壊せよ」という惹句がもう意味不明。
帯の「この本を破壊せよ」という惹句がもう意味不明。
これは『レック・ディス・ジャーナル』というノート…なのか日記帳なのか微妙だが、ともかく自分で書き込みなどをする帳面だ。
ちなみに「書き込みなど」と濁したのは、書き込む以外にもいろいろとやることがあるからである。

この『レック・ディス・ジャーナル』、ページを開くとそこに指示が印刷されているので、ユーザーはその指示通りにする、というルールとなっている。
「えんぴつで穴をあけろ」
「えんぴつで穴をあけろ」
例えば、「えんぴつで穴をあけろ」という指示があれば、それに従う。

なぜ?とか何の意味が?といった疑問に対する答えはどこにも記載されていない。ただ何も考えずに言われた通りにするだけだ。
「線にそってビリビリ切ろう」 はい、よろこんで。
「線にそってビリビリ切ろう」 はい、よろこんで。
「この本と一緒にシャワーを浴びよう」 濡れる?だからどうした。さっさとやれ。
「この本と一緒にシャワーを浴びよう」 濡れる?だからどうした。さっさとやれ。
「ページを縫おう」 濡れてゴワゴワになった紙を縫うのは想像以上に難しい、という知見は得られた。今後の人生に何の光明ももたらさない知見だ。
「ページを縫おう」 濡れてゴワゴワになった紙を縫うのは想像以上に難しい、という知見は得られた。今後の人生に何の光明ももたらさない知見だ。
指示には「ペンを口にくわえて落書きしろ」などちょっと微笑ましくてやってみると楽しいものもあるが、大半は意味不明。

何が目的なのか。結果どうなるのか。指示を遂行していくうちに、そういった疑問もどんどんと脳から消えていく。人間性の喪失である。そしてそれは一冊のノートが奪っていくのだ。
「この日記にひもをくくりつけ、引きずりながらお散歩してね」 ○○してね、というお願い口調だが、もう僕にはそういう命令としか受け取れない。
「この日記にひもをくくりつけ、引きずりながらお散歩してね」 ○○してね、というお願い口調だが、もう僕にはそういう命令としか受け取れない。
なので実行するだけだ。外は雨だったけど。
なので実行するだけだ。外は雨だったけど。
もしかして、いま誰かに「不審者がいる」と通報されて警察に職務質問を受けたとしても、僕は「ノートに命令されたから…」としか自分の行為を説明できない。事案とかそんなレベルじゃなくヤバいやつだ。

これ、完全にアウトだ。
「このページを無くそう。(捨てるとかね) そして、その喪失感を受け入れよう」
「このページを無くそう。(捨てるとかね) そして、その喪失感を受け入れよう」
ところで、このノートの指令のうち、未だに躊躇して実行しきれないものが一つある。

自分でページを破いてどうにかしたとして、その喪失感を受け入れられるか、ちょっと自信がないのだ。

どうだろうか。自分が文房具に対してガード緩すぎた、ということを自覚してもらえただろうか。
今後は、文房具もここまで怖いやつがいる、ということを理解した上で日々使っていってほしい。

ちなみに、最後の『レック・ディス・ジャーナル』だが、与えられた指示をたかだか10ページ達成しただけで、こんな感じになった。
指示を最後まで達成しきったとき、原形をとどめているのかは不明である。
どんどん「地獄から来たノート」感が高まっていく。
どんどん「地獄から来たノート」感が高まっていく。

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