特集 2018年9月3日

ハンダごてを買わされ、そして教わる

ハンダづけ、ビフォーアフター。こんなに上達するなんて……!
ハンダづけ、ビフォーアフター。こんなに上達するなんて……!
前回の記事で、ハンダづけに挑戦した。ものすごく下手だ。できるようになれば工作の幅も広がるかもと考えていたたが、その考えも完全に消え失せ、記事のラストでもそう締めた。

記事が公開された当日の夜だったか。ハンダづけのプロから「そんなことになるはずがない」と連絡が入り、「教室を開きましょう」という展開になった。

いや、苦手なんで……と返したが、どうやらハンダづけには苦手もへったくれもないらしい。本当だろうな!?

そんな訳で、教えてもらう流れになりました。
島根県生まれ。毛糸を自在に操れる人になりたい。地元に戻ったり上京したりを繰り返してるため、一体どこにいるのか分からないと言われることが多い。プログラマーっぽい仕事が本業。

前の記事:「武家諸ハットを作ってみた」
人気記事:「なんでも展開図にできる!「りぼん」組み立て紙ふろくの設計者」

> 個人サイト それにつけてもおやつはきのこ

「ハンダづけが苦手」を全否定される

前回の記事で、ハンダづけをやってみた。中学の技術の授業ぶりなので、記憶をたどりつつも……まあどうにかなるだろう! 軽い気持ちで挑戦してみた。
前回の記事「武家諸ハットを作ってみた」より。こういうのを「いもハンダ」というらしい
前回の記事「武家諸ハットを作ってみた」より。こういうのを「いもハンダ」というらしい
これはもう今後、手を出すまい……と思っていた。

そんなところに、「なぜこんなことに」と原因を考えてくれる人たちが現れ出した。テクノ手芸部のよしだともふみさんと、当サイト編集部の石川さんだ。

よしださんは、ハンダづけのワークショップもよく開催しており、最近ハンダづけの本の監修もした。石川さんも電子工作が趣味でハンダづけ慣れしている。

そのふたりが「こんな風になるのは絶対におかしい」と言い出し、「教室を開きましょう」という展開になった。

最初こちらは弱気だったが、「そんなはずはないから」と繰り返し言われる。
誰でもできるらしい
誰でもできるらしい
これ以外にも、
・コツを掴めば苦手意識は持たないはず
・初心者こそちゃんとした道具を使った方がいい
・簡単なのに、最初に安物を選んだせいで苦手意識を持つ人が多いのが悲しい

というようなことを繰り返し言われ続け、

「言うことを聞けばこの苦手意識をくつがえせられるのかも……?」と徐々に思えてきた。私は押し売りに弱いのだろうか。

そして次第に「じゃあやってやるか!」という気持ちになってきて、徐々にワークショップの計画は具体化してきた。

マイハンダごてを買おう

そして当日、ハンダごてを買いに行くところからスタートした。前回は「電子工作用」という文字だけを頼りに、ホームセンターで一番安いものを購入したが、それだと初心者にはかなり扱いづらいようなのだ。
初心者にオススメなのは温度調節できるものらしい
初心者にオススメなのは温度調節できるものらしい
最初あんなに渋ってたのに、初っ端から「使いやすいハンダごての購入」ってどうなんだ。本当に今後使う機会はあるんだろうか。
この日はもう「さくらいさんにまずハンダごてを買わせます」とハッキリ言われていた。「買わせられた」らしい
この日はもう「さくらいさんにまずハンダごてを買わせます」とハッキリ言われていた。「買わせられた」らしい
言われるがまま、オススメされたものを買ってしまった。一応「もしダメだったら買い取るから」と言われつつの購入ではある。本当だろうな!?
温度調節ができる
温度調節ができる
ここまでの流れを軽く振り返ると

・今まで苦手だったのがウソのように上手くなる
・価値観もきっと変わる
・そんなアナタにはコレ!

なんだかインチキ通販のようだ。いいのだろうか。

ここから同じくハンダづけ初心者の友人たちにもくわわってもらい、ワークショップに入ります。
監修した本をパラパラ見るよしださんと教わる我々(左からぬいぐるみ作家・せこなおさん、私、羊毛フェルト作家・のそ子さん。図らずも全員手芸活動をしているが、我々の持論として共通してるのは「専門外のものまで器用にできるだなんて思うな!」だ)
監修した本をパラパラ見るよしださんと教わる我々(左からぬいぐるみ作家・せこなおさん、私、羊毛フェルト作家・のそ子さん。図らずも全員手芸活動をしているが、我々の持論として共通してるのは「専門外のものまで器用にできるだなんて思うな!」だ)
ところでこの本は洋書の翻訳書で、特有のテンションだからかたまに思いがけないことを唐突に言い出す。
「心が落ち着く」ってなんだ。裏表紙もテンション高め
「心が落ち着く」ってなんだ。裏表紙もテンション高め
「万が一、ハンダづけをやめたいと思ってしまったら? まあ、そんなことは起こらないと思いますが!」って、急激に詰めてきたな
「万が一、ハンダづけをやめたいと思ってしまったら? まあ、そんなことは起こらないと思いますが!」って、急激に詰めてきたな

道具選び、なにが悪かったのか

電子工作キットを使う場合だと、このようなプリント基板にハンダづけすることが多い。
プリント基板
プリント基板
前回私がなぜ盛大に失敗したのかというと、使ってた道具が原因のひとつにあるようだ。

借り物のハンダごてと自分で買ったハンダごて、2本が手元にあったのだが、ひとつはすごくよく溶ける。もうひとつは溶けづらい。
!

慣れてる人だと扱えるもののようだが、初心者には難易度が高かった……。

どれを選べばいいのかさっぱり分からない初心者にはよくある失敗らしい。

さらにこのとき使ってたハンダが「鉛フリー」のものだった。これは使い慣れてる人でも難易度が高い。
何も知らずに使っていた鉛フリーは、初心者にはハードル高い
何も知らずに使っていた鉛フリーは、初心者にはハードル高い
ハンダごては強力すぎたり弱すぎたり、ハンダは扱いづらいものだったり、もう使ってる道具すべてが初心者向きじゃなかった。うまくいかず、グイグイと押し付け、熱しすぎ、どうやらもう壊れてる。
ボロッボロ……
ボロッボロ……
なのでハンダづけに慣れない初心者が道具選びをするときには、

・温度調節ができるものを選んだほうが無難
・鉛フリーのものは避けたほうが無難

このポイントだけでも抑えたほうが良さそうだ。

正しいハンダづけのやり方

今回はよしださんの助言で道具は万全になったということで、実際にハンダづけのやり方を教わっていこう。

まずポイントは、こて先を当てる位置にある。

1.プリント基板の「ランド」と部品の足に同時にこて先を当てて温め、
2.じっくりあったまったところにハンダを軽~く付けて、
3.「いち、に」と数え、
4.ハンダを先にどかして、
5.こてを離す。
まずこて先を付ける!!
まずこて先を付ける!!
足とランドを温めると、ここら辺一帯は熱くなってるんで、どこにハンダを当てても溶けます。ハンダごては最初に付けて、最後に離すんです。間違えてハンダよりハンダごての方を先に離すと、ハンダが冷めてくっついちゃいますから。
くっついて欲しいところを温めるんですね。ホットボンドみたいにハンダのほうを溶かしてから、ハンダごてで乗せるのかと思ってた!
くっついて欲しい同士を温めて、そこにハンダを溶かし込む。
「溶かしたハンダを流し込む」って、「盗んだバイクで走り出す」みたいな。
めちゃめちゃホットボンドの糊(のり)と同じ扱いしてましたよ。接着剤みたいなものなのかと……!
溶かせばなんとかなるものでも、ホットボンドの糊でもない。「溶かしたハンダを流し込む(あのメロディで)」なのだ。

ノウハウを教わったうえで挑戦してみる。
ノウハウを知るだけで、今までより格段に上達した気が……! とはいえまだまだ手がおぼつかない。

ハンダを付けたら、部品の足を切る。こんなにギリギリに切ってもよかったのか。
足が見えないぐらいにギリギリのところで切る
足が見えないぐらいにギリギリのところで切る
針金部分がうっかりどっかに飛んでいった場合を想定して、このサイバーぽいメガネをかけると安全だ。
メガネをかける。未来から来たっぽいと評判
メガネをかける。未来から来たっぽいと評判

珍しい道具あれこれ

ハンダづけ初心者にとっては珍しい道具が目白押しだ。ちょっと使い方を教えるだけでいちいち驚くので、教える方も面白かったことだろう。
そもそもハンダづけって手が一本足りないんですよ。ハンダごて持ってハンダ持つと、部品持つ手がない。
あー、確かにそうだ!
ハンダごてからハンダがジュルジュル出てくればいいのに。
これ、なんていう名前なんですか?
サードハンズ。
だ、第三の手!! かっこいい!
なんか触手みたいなやつありますよ。これがタコみたいに8本ぐらいあるやつ。
あれかっこいいよね。
8本も支えるってどんな状況なんですかね。
サードハンズ。第三の手……
サードハンズ。第三の手……
もっと手の数が多い「手が8本ある触手みたいなやつ」は前に石川さんが「書評のコーナー」で紹介してた。
これ。8本じゃなくて6本じゃないか! けどかっこいい
これ。8本じゃなくて6本じゃないか! けどかっこいい
そして話の中に出てきた「ハンダごてからハンダがジュルジュル出てくればいいのに」というやつ、これはほんとにあるらしい。
1月に取材で行った工場にあったらしい(撮影:よしださん)
1月に取材で行った工場にあったらしい(撮影:よしださん)
つぎにハンダづけの失敗もこれでキレイに除去できるという「ハンダ吸い取り器」。そんな便利なものが……!
電動のハンダ吸い取り器
電動のハンダ吸い取り器
こっちは電動じゃないハンダ吸い取り器 (石川さんの私物)
こっちは電動じゃないハンダ吸い取り器 (石川さんの私物)
ハンダづけアイドルっていますけど、僕だってハンダ吸い取りおじさんとして活躍したいですよ! 「吸い取っちゃうぞー!」って言って全部吸い取る。
そういうキャラづくり、分かりやすいですね!
それやって欲しすぎる……! で、これどこでどうやって吸い取るんですか?
こんなドリルみたいな音を発して吸い取るのか! 思いのほか響く。ここはもうよしださんに「ハンダ吸い取りおじさん」としての活躍を期待するしかない。

楽しさを掴んでくる

しばらく安定しなかったハンダづけのクオリティだが、突然うまくなってきた。チャリに乗れるようになったときのように、一度コツを掴むともう大丈夫っぽい。
なんだ、簡単じゃないですか! なんでだろう。なんかいきなり勝手に上達したような感じがする……。
やっぱ良いコテだとやりやすいでしょう!? きれいな富士山型になるといいんですよ。
ちゃんとできるようになると、手も痛くならないんですね。すごい! 前回の記事ではハンダ付けのあとに写経もしたんですけど、手が痛くなりすぎてペンが持てなくて、休憩入れつつじゃないと書けなかったんですよ……。
普段使わない筋肉使ってる感じありますよね。
それは慣れますよ。
こちらがよしださん作。ほんとだ、富士山だ! 理想のハンダづけについてはこちらでも解説されている
こちらがよしださん作。ほんとだ、富士山だ! 理想のハンダづけについてはこちらでも解説されている
どうやら今まで力を入れ過ぎてたのだ。力は抜けてきたけど、まだハンダ付けの最中に息を止めてしまったりする。
ハアハア…… ハアハアハア……
なんで息切らしてるんですか?
なぜか集中すると息を止めてしまって……。グッタリしてきた。
集中しだすと、息も止まるし姿勢も悪くなる。大丈夫だろうか。
猫背がひどすぎる
猫背がひどすぎる
むしろ姿勢よくできる人はいるのだろうか……
むしろ姿勢よくできる人はいるのだろうか……
苦戦しつつも、徐々にできるようになって楽しくなってきた!

テクノ手芸部が作っているキットで、光るブローチを完成させよう。

つぎは、ゴマ粒みたいな部品(抵抗というやつ)を付けていくのだが……。
抵抗。小さい……!!
抵抗。小さい……!!
小さい!! こんなに小さいの、本当に必要なんですか!?
40代殺し!!! (←見るのがつらい)
小さすぎてハンダに埋もれてしまわない!?
カスみたいですね。落ちてるカスと紛れたら分からなくなる! なんでこんなに小さいんですか?
小さくしたかったんじゃないですか……?
これはさっきの部品と違って、基板に穴が開いていないし、そこに通す部品の足もない。あらかじめ基板にハンダを溶かして盛っておいて、その後でこの部品を乗せて、もう一度温めてくっつける。ちょっとぐらいなら浮いても良い。
初のピンセットでのハンダづけ
初のピンセットでのハンダづけ
つまんで取り付ける。細かい……!
つまんで取り付ける。細かい……!
この基板には、テクノ手芸部のふたりがプログラムを組んで書き込んでるらしい(上の写真ではんだごての左下にある黒いマイコンに書き込む)。私もプログラムは組んだりするが、「こんなにも小さなマイコンに書き込む」というのがどんな作業なのか想像がつかない。
小さすぎるパーツの取り付けは、写真で見ててもちょっと冷や冷やする
小さすぎるパーツの取り付けは、写真で見ててもちょっと冷や冷やする
つぎつぎとパーツを取り付けていく。慣れてくるとスムーズにいくので楽しい……!
つぎつぎとパーツを取り付けていく。慣れてくるとスムーズにいくので楽しい……!
この作業は楽しい。 できないつらさから解放された気がする……!
パパパパパパパパパッとできますよね。
そんなに早くはできないけど。
すごい、できるようになってきた。楽しい! 気持ちいい~! アルバイトやりたいわ、これ。チュンチュンチュンチュンできちゃう!
チュンチュンチュンチュンいくでしょ! 一緒に働きましょうよ。
これができたら、きっともう(前回失敗した)時計も作れますよね!?
もう余裕でしょう。だってこんなに小さいハンダづけなかったでしょ?
分かりやすくみんな上手くなってきた。

あとは光らせるためのLEDを装着し、スイッチを入れる。ハンダづけは上手くいっていれば光るのだ。緊張の一瞬……!
光った……!
光った……!
あら……?
あら……?

長押しなどでモードを切り替え、光り方は3パターンあるはずなのだが、2パターンしか光らない……?

そこはもう自分ではどこがおかしいのかわからないので、よしださんに渡してチャチャッとなおしてもらう。1カ所だけハンダの付きが悪かったらしい。

あとはブローチのフェイス(動物のかたちなど何種類かある)を、好きなのを選んで取り付けて……
できた……!! 人のブローチの裏側も気になる……
できた……!! 人のブローチの裏側も気になる……
裏側。完成!
裏側。完成!
いつの間にか「前回失敗した時計を作るなら余裕」ぐらいのレベルまで、すんなり来てしまったらしい。

せっかくハンダごても買ったことだし、今後使わないともったいないよなぁ。なに作ろうか……。忘れないうちになんかやらなきゃな、と思う。

ハンダごて、なんと簡単だった

出来ないことをその分野の人に教えてもらうって、手っ取り早くてすばらしいな……! と今更ながら気づいた。

なにか得意なものがある人たちで集まって、自分の得意分野を人に教え合っていくのもいいんじゃないか。そうなると自分もなにかを教えられないと不公平だが、教えるのは苦手すぎる。改めて、教える能力ある人すごいな……というところから感心したのだった。

紹介した書籍:ハンダづけをはじめよう

Marc de Vinck (著), テクノ手芸部 (監訳), 鈴木 英倫子 (翻訳)
レッツビギン!
レッツビギン!

撮影協力(会場提供):スイッチサイエンス

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